この記事のポイント
- 作業療法士の平均年収は約427万円(令和5年賃金構造基本統計調査)で、理学療法士とほぼ同水準です
- 年収には経験年数・勤務先の種類・地域・役職が大きく影響します
- 年収を上げるには転職・専門資格取得・管理職・副業・独立の5つの方法があります
- 新卒OTの初任給は月額20〜24万円程度で、他の医療職と比較しても標準的な水準です
- キャリアプランを早い段階で描くことが、将来の収入アップにつながります
はじめに──作業療法士の年収、気になりませんか?
「作業療法士の給料って、実際どれくらいなの?」──これは、OTを目指す学生さんや、すでに働いている若手OTが最も気になるテーマのひとつではないでしょうか。
やりがいのある仕事だからこそ、長く続けるためには経済的な見通しも大切です。この記事では、厚生労働省の公的データをもとに作業療法士の年収・給料の実態を明らかにし、年収を上げるための5つの具体的な方法をお伝えします。
作業療法士(OT)は、日常の活動を通じて心や体の回復を支える国家資格の専門家です。
ご家族が作業療法士にお世話になっている方や、「作業療法士ってどんな仕事?」と気になっている方に向けて、この仕事の概要をわかりやすくお伝えします。
進路を検討中の高校生の保護者の方へ。この記事の年収は調査の平均値で、個人の収入や特定の領域の収入を保証するものではありません。求人と将来の需給推計をあわせて見るには作業療法士の就職は狭き門?を、進路全体は作業療法士を目指す高校生へ ── 進路ガイドをご覧ください。
作業療法士の平均年収──データで見る実態
賃金構造基本統計調査のデータ
厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」は、日本の賃金実態を把握するための最も信頼性の高い統計です。この調査では、作業療法士は理学療法士・言語聴覚士・視能訓練士とまとめて集計されています。
令和5年(2023年)の調査結果によると、作業療法士(理学療法士等を含む)の主な数値は以下の通りです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年収 | 約427万円 |
| 平均月収 | 約29.7万円(きまって支給する現金給与額) |
| 年間賞与 | 約70.7万円 |
| 平均年齢 | 34.7歳 |
| 平均勤続年数 | 7.4年 |
平均年収の約427万円は、日本の給与所得者全体の平均(約458万円、国税庁「民間給与実態統計調査」令和4年)と比較すると、やや低い水準にあります。ただし、平均年齢が34.7歳と若い点を考慮すると、同年代の一般労働者と比べて大きな差はありません。
理学療法士(PT)との比較
「OTとPT、どっちが給料が高いの?」という疑問をよく耳にしますが、結論から言えば統計上ほぼ同じです。
賃金構造基本統計調査では作業療法士と理学療法士が同じカテゴリで集計されており、統計的に有意な年収差は確認されていません。求人サイトのデータを見ても、同じ施設で募集されるOTとPTの給与条件はほぼ同一であることがほとんどです。
ただし、理学療法士は有資格者数が多く就職競争がやや激しい傾向にあるため、地域や施設によっては作業療法士のほうがやや有利な条件で採用されるケースもあります。
作業療法士の収入はどれくらい?
作業療法士の平均年収は約427万円です。病院、介護施設、訪問リハビリなど、さまざまな場所で活躍しています。
経験を積んだり、管理職になったりすることで収入は上がっていきます。また、訪問リハビリなど働く場所によっても収入に差があります。
年収に影響する4つの要因
1. 経験年数
作業療法士の年収は、経験年数に応じて緩やかに上昇します。一般的な昇給カーブは以下の通りです。
| 経験年数 | 推定年収レンジ |
|---|---|
| 1〜3年目 | 300〜370万円 |
| 4〜7年目 | 370〜430万円 |
| 8〜15年目 | 430〜500万円 |
| 16年目以降 | 500〜600万円以上 |
注意すべきは、昇給幅が比較的小さい点です。一般企業のように年功序列で大幅に給与が上がるわけではなく、10年経験を積んでも年収が100万円程度しか上がらないケースも珍しくありません。これが「作業療法士は給料が上がりにくい」と言われる理由のひとつです。
2. 勤務先の種類
勤務先によって給与水準には明確な差があります。
| 勤務先 | 年収の傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大学病院・公立病院 | 高め(450〜550万円) | 公務員準拠の給与体系、福利厚生が充実 |
| 一般病院(回復期等) | 中程度(380〜480万円) | 施設規模により差がある |
| 訪問リハビリ | やや高め(420〜520万円) | 訪問件数によるインセンティブがある場合も |
| 介護老人保健施設 | 中程度(370〜450万円) | 夜勤手当が加わるとやや高くなる |
| デイケア・通所施設 | やや低め(350〜420万円) | 残業が少なく、ワークライフバランスは良好 |
| クリニック | 幅広い(350〜480万円) | 院長の方針や経営状態により大きく異なる |
公立病院や大規模病院は安定した昇給が見込める一方、訪問リハビリは件数に応じた手当がつくため高収入を狙いやすいという特徴があります。作業療法士が働ける分野や勤務先の全体像については作業療法の職域と主要5分野で詳しく解説しています。
3. 地域差
作業療法士の年収には地域差があります。一般的に都市部のほうが給与水準は高いですが、生活費(特に住居費)を考慮すると、実質的な暮らしやすさは地方のほうが上回る場合もあります。
賃金構造基本統計調査の都道府県別データを見ると、上位と下位で年間100万円近い差がつくこともあります。ただし、地方は求人倍率が高く、人材不足のために好条件で採用される可能性もあるため、一概に「都市部が有利」とは言い切れません。
4. 役職・管理職への昇進
一般のスタッフから主任・副主任、さらにリハビリテーション科長・部長といった管理職に就くと、役職手当が加算されます。管理職手当は月額2〜8万円程度が相場で、年収にすると24〜96万円のプラスになります。
管理職は年収アップの有力な手段ですが、マネジメント業務が増えるため、臨床に集中したい方には向かない場合もあります。
どんな場所で働いているの?
作業療法士は、病院だけでなくさまざまな場所で働いています。
- 病院: 入院中の方のリハビリを担当します
- 介護施設: 高齢者の日常生活を支えるリハビリを行います
- 訪問リハビリ: ご自宅に訪問して、生活の場でリハビリを行います
- 児童発達支援施設: お子さんの発達を支援します
ご家族のリハビリを担当してくれている作業療法士がどんな場所で働いているかを知ると、より安心してサポートを受けられるかもしれません。
年収を上げる5つの方法
方法1:転職で年収を上げる
作業療法士が年収を上げる最も即効性のある方法は転職です。同じ経験年数でも、施設によって年収が50〜100万円異なることは珍しくありません。
転職で年収アップを実現するためのポイントは以下の通りです。
- 訪問リハビリへの転職は年収アップにつながりやすい(インセンティブ制度がある場合)
- 公立病院・大学病院は昇給カーブが安定しているため、長期的には有利
- 賞与の支給月数は施設によって大きく異なるので、月給だけでなく年収ベースで比較する
- 転職エージェントを活用し、非公開求人にもアクセスする
ただし、転職のたびに勤続年数がリセットされるため、退職金の面ではデメリットがあります。短期間で何度も転職を繰り返すのではなく、しっかりとキャリアプランを立てた上での転職が大切です。
方法2:専門資格・認定資格を取得する
専門性を高めることは年収アップだけでなく、キャリアの幅を広げることにもつながります。
| 資格 | 概要 | 年収への影響 |
|---|---|---|
| 認定作業療法士 | 日本作業療法士協会が認定する上級資格 | 直接的な手当は施設による(月額5,000〜20,000円程度) |
| 専門作業療法士 | 特定の専門分野で高い実践力を認定 | 認定作業療法士と同様 |
| 3学会合同呼吸療法認定士 | 呼吸リハビリの専門資格 | 資格手当がつく施設あり |
| 心臓リハビリテーション指導士 | 心臓リハの専門資格 | 配置基準に関わるため重宝される |
| 福祉住環境コーディネーター | 住環境整備の知識を証明 | 訪問リハ分野で評価されやすい |
| ケアマネジャー | 介護支援専門員 | 兼務で手当がつく場合あり |
資格手当の金額自体は大きくないことが多いですが、専門性の高い人材は転職市場での価値が上がるため、間接的に年収アップにつながります。認定作業療法士・専門作業療法士の取得要件や勉強法については認定・専門作業療法士のガイドで詳しく解説しています。
方法3:管理職を目指す
前述の通り、管理職に就くことで役職手当が加算されます。リハビリテーション科長や部長クラスになると、年収500〜700万円に達することも可能です。
管理職を目指すために必要なスキルは以下の通りです。
- チームマネジメント:スタッフの育成、シフト管理、チームビルディング
- 経営的視点:診療報酬の理解、収益への貢献、業務効率化
- 多職種連携:医師・看護師・MSW等との調整力
- 教育・指導力:後輩や実習生の指導経験
管理職は「なりたい」と思ってすぐになれるものではありません。日頃からリーダーシップを発揮し、経営的な視点を持つことが、管理職への近道です。
方法4:副業で収入源を増やす
近年、副業を認める医療機関が増えてきました。作業療法士のスキルを活かせる副業には以下のようなものがあります。
- 非常勤での掛け持ち勤務:休日に別の施設で訪問リハビリなど
- セミナー講師・研修講師:専門知識を活かした講演活動
- 執筆活動:専門誌への寄稿、書籍の執筆
- Webコンテンツ制作:医療・介護分野の記事執筆、監修
- 自助具の製作・販売:OTの専門性を活かしたものづくり
副業を始める際には、就業規則を必ず確認してください。副業禁止の施設で無断で副業を行うと、懲戒処分の対象になる可能性があります。また、確定申告が必要になるケースもあるため、税務上のルールも把握しておきましょう。
方法5:独立・開業する
最も大きな年収アップの可能性を秘めているのが独立・開業です。作業療法士が開業する場合、主な形態は以下の通りです。
- 訪問看護ステーションの開設(看護師との共同開業)
- 自費リハビリ施設の運営
- 児童発達支援・放課後等デイサービスの開設
- コンサルティング業(住環境整備、福祉用具アドバイス等)
独立すれば年収1,000万円以上も夢ではありませんが、経営リスクも伴います。臨床スキルだけでなく、経営・マーケティング・財務の知識が求められるため、十分な準備期間を設けることが重要です。
新卒OTの給料の現実
初任給の相場
新卒の作業療法士の初任給は、月額20〜24万円程度が一般的です。これは手取りではなく額面(総支給額)の数字で、ここから社会保険料や所得税が差し引かれるため、手取りは17〜20万円程度になります。
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 基本給 | 18〜21万円 |
| 資格手当 | 1〜3万円 |
| その他手当(通勤、住宅等) | 0〜3万円 |
| 額面合計 | 20〜24万円 |
| 手取り | 17〜20万円 |
初年度のボーナスは夏が寸志(数万円)、冬が満額の半分程度というケースが多く、1年目の年収は280〜340万円程度に落ち着くことがほとんどです。
新卒OTが知っておくべきこと
新卒の段階では給与に大きな差はつきにくいですが、将来の年収を左右する選択はこの時期から始まっています。
- 最初の職場選びが重要:教育体制が充実している施設で基礎力を身につけることが、長期的なキャリアと年収に影響します
- 奨学金の返済計画を立てる:養成校の学費を奨学金で賄った方は、返済額を考慮した生活設計が必要です
- 早めのキャリアビジョン:「5年後にどうなっていたいか」を考えることで、必要なスキルや資格が見えてきます
- 貯蓄の習慣をつける:将来の転職や独立に備えて、少額でも貯蓄を始めておくことが大切です
これから働き始める新人OTの方は、入職初日までに準備しておきたいことをまとめた新人作業療法士のチェックリストもあわせて参考にしてください。
まとめ
- 作業療法士の平均年収は約427万円(令和5年賃金構造基本統計調査)。理学療法士と統計上の差はほぼありません
- 年収には経験年数・勤務先の種類・地域・役職が影響し、同じ経験年数でも勤務先によって50〜100万円の差が出ることがあります
- 年収を上げる方法は5つあります。転職(即効性が高い)、専門資格取得(市場価値の向上)、管理職への昇進(役職手当)、副業(収入源の複数化)、独立・開業(最大のリターンとリスク)
- 新卒OTの初任給は月額20〜24万円。1年目の年収は280〜340万円程度が一般的です
- 大切なのは早い段階からキャリアプランを描くことです。「何年後にどうなりたいか」を意識して行動することが、結果的に年収アップにつながります
作業療法士は「やりがいはあるけれど給料が安い」と言われることがあります。しかし、戦略的にキャリアを設計すれば、年収500万円以上も十分に現実的な目標です。まずは自分の現在地を把握し、できることから一歩ずつ始めてみてください。
作業療法士は、日常の活動を通じて心と体の回復を支える国家資格の専門家です。
- 病院・介護施設・訪問リハビリなど、さまざまな場所で活躍しています
- 経験を積むことで専門性が高まり、より質の高いリハビリを提供できるようになります
- ご家族のリハビリを担当してくれるOTがどんな仕事をしているか知ることで、より良い連携ができます
- リハビリで気になることがあれば、担当の作業療法士に遠慮なく質問してみてください
- 自宅での生活の困りごとを伝えると、作業療法士がより的確なリハビリを提案してくれます
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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