この記事のポイント
- 2018年の副業・兼業ガイドライン改定以降、医療職を含む多くの職種で副業が広がりつつあります
- 作業療法士の資格・スキルはセミナー講師、執筆、自費リハビリ、住環境コンサルなど多方面で活かせます
- 副業を始める前には就業規則の確認、確定申告の準備、社会保険の取り扱いを必ずチェックしましょう
- 収入だけでなくスキルアップやキャリアの幅を広げる効果も期待できます
- 一方で本業への影響や体調管理には十分な注意が必要です
はじめに
「作業療法士の資格を活かして、本業以外にも何かできないだろうか」──そう考えたことはありませんか。
近年、働き方改革の流れの中で副業・兼業に対する社会的な関心が高まっています。厚生労働省も2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、モデル就業規則から副業禁止の規定を削除しました。こうした動きは医療・福祉分野にも広がりつつあり、作業療法士の間でも副業に興味を持つ方が増えています。
この記事では、作業療法士が資格や経験を活かしてできる副業アイデアと、始める前に知っておくべき注意点を整理します。
作業療法士(OT)は、リハビリの現場だけでなく、さまざまな場面で専門スキルを発揮しています。
ここでは、作業療法士が持つ専門的なスキルがどんなことに役立つのかをご紹介します。
OTの副業が注目される背景
働き方改革と副業解禁の流れ
政府が推進する「働き方改革」により、副業・兼業を容認する企業や法人が増加しています。かつては「副業禁止」が一般的でしたが、現在は届出制で副業を認める職場が増えてきました。医療法人や社会福祉法人においても、就業規則を見直す動きが出ています。
作業療法士ならではの強み
作業療法士には、他の職種にはない独自の強みがあります。
- 生活全般を見渡す視点 — 身体・精神・認知・環境を包括的に評価できる
- 活動分析のスキル — あらゆる作業を段階づけ・分析できる
- コミュニケーション能力 — 対象者やご家族との対話を日常的に行っている
- 福祉用具・住環境の知識 — 生活を支える道具や環境調整に精通している
- 国家資格の信頼性 — 医療・福祉領域での専門性が社会的に認められている
こうした強みを活かせば、本業で培った知識や技術を別のフィールドでも発揮できます。
収入面の現実
作業療法士の平均年収は約430万円前後(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」参考)とされています。経験年数や勤務先によって幅はありますが、「もう少し収入を増やしたい」「将来に向けて収入の柱を複数持ちたい」という声は決して少なくありません。副業は収入面の不安を和らげる手段としても注目されています。
作業療法士が持っている専門スキル
作業療法士は、リハビリの技術だけでなく、以下のような幅広いスキルを持っています。
- 生活全体を見る力: 体の状態だけでなく、心の状態や住まいの環境まで総合的に評価できます
- 活動を分析する力: 日常の動作を細かく分解して、どこに困りごとがあるかを見つけます
- 環境を整える力: 自助具の選定や住まいの改修のアドバイスができます
- 対話する力: ご本人やご家族の気持ちに寄り添いながら、一緒に目標を考えます
資格を活かせる副業アイデア7選
ここでは、作業療法士の資格や経験が直接活きる副業アイデアを7つ紹介します。
1. セミナー講師・研修講師
- 概要 — 介護職員向けの勉強会、地域の市民講座、企業研修などで講師を務めます
- 活かせるスキル — 活動分析、認知症ケア、転倒予防、生活動作指導などの専門知識
- 始め方 — 職場内の勉強会講師から始めて実績を積み、外部依頼を受ける流れが自然です
- 収入の目安 — 1回の講演で5,000〜30,000円程度。実績と知名度に応じて上がります
特に介護施設向けのリハビリテーション研修や地域の介護予防教室は、OTの知識がそのまま活きるフィールドです。講師としての信頼性を高める土台として、認定・専門作業療法士の資格取得を目指すのもひとつの方法です。
2. 執筆・ブログ・Webライティング
- 概要 — 専門誌への寄稿、Web記事の執筆、自身のブログやSNSでの情報発信を行います
- 活かせるスキル — 専門知識を一般の方にもわかりやすく伝える力
- 始め方 — クラウドソーシングサイトで医療・福祉系のライティング案件を探すか、自分のブログを開設します
- 収入の目安 — Web記事1本あたり3,000〜20,000円程度。ブログは広告収入で月数千円〜数万円
医療・介護分野の記事は専門知識を持つライターの需要が高く、資格保有者の執筆は信頼性が評価されます。
3. 自費リハビリテーション
- 概要 — 保険外で個別リハビリを提供します。退院後のフォローアップや保険期間が終了した方を対象にします
- 活かせるスキル — 評価・介入の技術、個別プログラムの立案力
- 始め方 — レンタルスペースの利用や訪問型から小規模にスタートできます。開業届の提出が必要です
- 収入の目安 — 1セッション(60分)5,000〜10,000円程度
自費リハビリは近年ニーズが高まっている分野です。ただし、医師の指示なく医療行為に該当する介入を行わないよう注意が必要です。作業療法士法で定められた業務範囲を正しく理解した上で実施しましょう。
4. 福祉用具アドバイザー・コンサルタント
- 概要 — 福祉用具の選定相談、適合調整のアドバイス、福祉用具メーカーとの連携を行います
- 活かせるスキル — 身体機能評価、活動分析、福祉用具の知識
- 始め方 — 福祉用具貸与事業所やメーカーからの業務委託、または個人で相談サービスを立ち上げます
- 収入の目安 — 相談1件あたり3,000〜10,000円程度。メーカーとの契約ではアドバイザー報酬が発生する場合もあります
OTは日常的に福祉用具を扱っているため、利用者の生活に合った用具を提案する力は大きな武器になります。
5. 非常勤・パートの掛け持ち
- 概要 — 本業の休日に別の施設や病院で非常勤として勤務します
- 活かせるスキル — 臨床スキルがそのまま活かせます。異なる分野を経験することで視野が広がります
- 始め方 — 求人サイトや知人からの紹介で見つかることが多いです
- 収入の目安 — 時給1,500〜2,500円程度が一般的です
最もシンプルな副業の形です。身体領域が本業なら精神科の非常勤を経験するなど、異なる分野を経験することで臨床力の向上にもつながります。休日の非常勤先として人気の高い訪問リハビリの働き方については訪問リハビリで働くOTのリアルで詳しく解説しています。
6. オンライン相談・カウンセリング
- 概要 — ビデオ通話を使い、生活の困りごとや環境調整について遠隔で相談に応じます
- 活かせるスキル — 面接技術、生活評価の視点、環境調整のアドバイス力
- 始め方 — オンライン相談プラットフォームに登録するか、個人でサービスを立ち上げます
- 収入の目安 — 1回(30〜60分)2,000〜8,000円程度
コロナ禍以降、オンラインでの相談サービスは急速に普及しました。場所を選ばず自宅からでも対応できるため、時間の融通が利きやすい副業です。
7. 住環境コンサルティング
- 概要 — 高齢者や障害のある方の自宅を訪問し、住宅改修や環境調整のアドバイスを行います
- 活かせるスキル — ADL/IADL評価、住環境整備の知識、福祉住環境コーディネーターの資格があれば強みが増します
- 始め方 — 地域包括支援センターやケアマネジャーからの紹介、工務店・リフォーム会社との連携
- 収入の目安 — 1件あたり5,000〜20,000円程度
住宅改修のアドバイスは、OTの生活動作分析と環境評価のスキルが最も直結する領域のひとつです。介護保険の住宅改修制度に関する知識があれば、さらに価値が高まります。
始める前の確認事項
副業を始めたい気持ちが固まったら、実際に動く前に以下の3つを必ず確認しましょう。
就業規則の確認
副業を始める前に
副業を始める前に、必ず現在の勤務先の就業規則を確認してください。届出や許可が必要な場合は、所定の手続きを踏んでから開始しましょう。
勤務先が副業を認めているかどうかは、就業規則の「兼業」「副業」の項目で確認できます。主なパターンは以下の通りです。
- 全面禁止:副業が認められていない(違反すると懲戒処分の対象になり得ます)
- 届出制:事前に届出を行えば副業が認められる
- 許可制:上長や人事部門の許可を得れば副業が認められる
- 制限なし:特に制限はない
公務員として勤務する作業療法士の場合は、国家公務員法・地方公務員法による兼業制限がありますので、特に注意が必要です。営利目的の副業は原則禁止ですが、非営利の講演活動や執筆などは許可を得て行える場合があります。
確定申告の基礎知識
副業で収入を得た場合、年間の副業所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
- 副業の所得(収入から経費を引いた金額)が年間20万円を超えたら申告が必要
- 「雑所得」か「事業所得」かは副業の規模や継続性によって判断される
- 経費として計上できるもの(交通費、書籍代、通信費など)のレシートは必ず保管する
- 確定申告の時期は毎年2月16日〜3月15日
- 住民税の申告は副業所得が20万円以下でも必要な場合がある
確定申告書の「住民税の徴収方法」で「自分で納付(普通徴収)」を選ぶと、副業分の住民税が本業の給与から天引きされず、勤務先に知られにくくなります。ただし、自治体によっては対応が異なる場合がありますので、事前に確認しましょう。
社会保険の取り扱い
複数の事業所で勤務する場合、社会保険の取り扱いに注意が必要です。
- 非常勤の掛け持ちで、副業先でも社会保険の加入条件を満たす場合は「二以上事業所勤務届」の提出が必要です
- 個人事業として副業を行う場合は、本業の社会保険がそのまま適用されるため、追加手続きは基本的に不要です
- 労災保険はそれぞれの事業所ごとに適用されます
不明な点があれば、社会保険労務士や税理士に相談することをおすすめします。
副業のメリット・デメリット
副業には多くの魅力がある一方で、注意すべき点もあります。両面を理解した上で判断しましょう。
メリット
- 収入の増加 — 本業だけでは得られない収入を確保できる
- スキルアップ — 異なるフィールドでの経験が本業の臨床にも活きる
- キャリアの幅が広がる — 将来の独立や転職の選択肢が増える
- 人脈の拡大 — 本業では出会えない人とのネットワークが生まれる
- やりがい — 自分の知識が直接誰かの役に立つ実感が得られる
- リスクの分散 — 収入源を複数持つことで経済的な安定感が増す
副業で広がった経験は、領域変更や一般企業への転職、独立といったキャリアの選択肢にもつながります。詳しくは作業療法士の転職ガイドで解説しています。
デメリット
- 体力面の負担 — 本業と副業の両立は身体的に大きな負荷がかかる
- 時間の確保 — 休日や夜間を使うことが多く、プライベートの時間が減る
- 本業への影響 — 疲労から本業のパフォーマンスが低下するリスクがある
- 責任の拡大 — 副業先でも専門職としての責任を負う
- 事務負担 — 確定申告や経費管理など事務的な作業が増える
特に医療専門職である作業療法士にとって、本業での注意力や判断力が低下することは絶対に避けなければなりません。副業の量は、本業に支障が出ない範囲にとどめることが大前提です。
まとめ
- 動き出す順番は、やりたいことを選ぶより前に自分の職場でどこまで認められているかを読むことからです。全面禁止・届出制・許可制のどれに当たるかで、そもそも選べる範囲が変わります。公務員として働く方は根拠になる法律自体が別なので、なおさら先に確かめる必要があります
- 最初の一歩に向くのは、初期費用も手続きもほとんど要らないものです。職場の勉強会で登壇する、自分の専門分野について書いて出す──ここで残った実績が、外部からの依頼につながっていきます
- 自費リハビリのような開業を伴う形は、業務範囲の線引きと届出がセットで必要になるぶん、順番としては後半に置くのが無理がありません。臨床の腕とは別の準備が要る領域だと考えておきましょう
- お金まわりは、収入が出てから整えようとすると後手になります。領収書の保管と住民税の納付方法をどうするかは、始める日に決めておくと後が楽です
- 続けるか縮めるかの判断基準は、稼げた額ではなく本業で注意力と判断力を保てているかに置きます。ここが揺らぐ量なら、収入が増えていても減らす決断が要ります
どこまで手を広げるかに唯一の正解はありませんが、本業の質を落とさないという一点だけは譲らないことをおすすめします。その枠の中でなら、小さく試して合わなければやめる、という進め方で十分です。
作業療法士は、リハビリの技術に加えて生活全体を見る力・環境を整える力・対話する力など、幅広い専門スキルを持っています。
- 自助具の提案や住まいの改修など、生活を便利にするアドバイスが得意です
- 介護予防教室や地域のセミナーなどでも、OTの知識が活かされています
- ご家族のリハビリで気になることがあれば、担当のOTに気軽に相談してみてください
- 生活で困っていることがあれば、担当のOTに相談してみてください。リハビリの時間以外のことでもアドバイスがもらえることがあります
- 地域の介護予防教室にOTが講師として参加していることがあります。ご家族で参加してみるのもおすすめです
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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