この記事のポイント
- パーキンソン病の振戦は「安静時振戦」が特徴で、動作中は軽減することが多い
- 重みのあるスプーン、太柄グリップ、蓋付きコップなど道具の工夫で日常動作が楽になる
- 肘を固定する、両手で操作するなどの動作の工夫とOTの介入で生活の質を維持できる
パーキンソン病の振戦の特徴
パーキンソン病の手の震えには、他の病気とは違う特徴があります。
- じっとしているときに震える: 手を動かしているときは震えが軽くなります
- 片方の手から始まることが多い
- 緊張やストレスで震えが強くなることがあります
- 疲れているときにも強くなりやすい
「何もしていないときに手が震えるのに、物を取ろうとすると震えが止まる」という経験はありませんか? これがパーキンソン病の震えの特徴です。この特徴を知っておくと、日常生活の工夫がしやすくなります。
日常生活での困りごと
手の震えがあると、日常生活のさまざまな場面で困ることがあります。
食事
- 箸で食べ物がつかめない
- スプーンの上で食べ物がこぼれてしまう
- コップの水をこぼしてしまう
- 人前での食事で緊張して、震えが強くなる
字を書く
- 字がだんだん小さくなる
- 線がふるえてまっすぐ書けない
着替え
- ボタンの留め外しが難しい
- 靴ひもが結べない
そのほか
- コップの蓋が開けられない
- 鍵の操作が難しい
- スマートフォンの操作がずれる
こうした困りごとは、「人に見られたくない」という気持ちにつながり、外出を避けるようになることがあります。でも、道具や動作の工夫で解決できることがたくさんあります。
道具の工夫 ── 自助具・便利グッズ
手の震えがあっても、道具を工夫することで日常の動作がぐっと楽になります。
食事で使える道具
- 重みのあるスプーン・フォーク: 重さで震えが抑えられ、安定して食べられます
- 太い柄のグリップ: 今使っているスプーンやフォークに取り付けるだけで、握りやすくなります
- 蓋付きコップ: こぼれにくくなります。ストロー付きのものも便利です
- 滑り止めマット: お皿の下に敷くと、お皿が動かず食べやすくなります
字を書くための道具
- 太い軸のペン: 握りやすく、震えが伝わりにくくなります
- 重みのあるペン: 重さで手が安定します
着替えで使える道具
- マグネットボタン: 見た目は普通のボタンですが、磁石でパチッと留まります。指先の細かい操作が不要です
- ボタンエイド: ワイヤーのループでボタンを引き通す道具です
- 伸びる靴ひも: 一度結んでおけば、あとは靴を引っ張るだけで履けます
すべてを一度に揃える必要はありません。まず (1) 太柄グリップ(100円ショップのスポンジグリップでも代用可)、(2) 蓋付きコップ、(3) マグネットボタン の3つから試してみてください。日常のストレスがぐっと減ります。
動作の工夫 ── 体の使い方を変える
道具だけでなく、体の使い方を少し変えるだけでも震えへの対処ができます。
肘をテーブルにつける
食事のとき、肘をテーブルにつけた状態で食べると、手の震えが軽くなります。マナーが気になるかもしれませんが、安全に食事をするための大切な工夫です。
両手で持つ
- コップは両手で持つと安定します
- 字を書くときは、書かない方の手で書く腕を支えると震えが抑えられます
ゆっくり動く
- 急がないことが大切です。急ぐと震えが強くなります
- 動作を一つずつに分けて、確実にこなしましょう
- 始める前に深呼吸をするのも効果的です
座って行う
- できるだけ座った状態で動作を行いましょう。立ったままだと震えが出やすくなります
- 足を床にしっかりつけて、体を安定させてから手を動かしましょう
スマートフォンや音声入力の活用
- 字を書くのが大変なときは、スマートフォンの音声入力を使いましょう
- スマートフォンのタッチ感度を調整すると、誤操作が減ります
食卓のセッティングを少し変えるだけで、食事が楽になります。(1) 滑り止めマットの上にお皿を置く、(2) 肘をつきやすい高さにテーブルを調整する、(3) 蓋付きのコップを使う。この3つの工夫で、食事中のストレスが大きく減ります。食べこぼしが気になる場合は、エプロンを使うのも一つの方法です。
OTの介入 ── 専門家に相談するメリット
作業療法士(OT)に相談すると、以下のようなサポートが受けられます。
- 震えの状態を詳しく評価してもらえます
- その方に合った道具を選んでもらえます
- 効率的な動作の方法を一緒に練習できます
- ご自宅の環境を見てもらい、改善点を提案してもらえます
- ご家族のサポート方法についてもアドバイスがもらえます
「できないこと」より「できること」に目を向けましょう
手の震えは目立つ症状ですが、パーキンソン病の震えは動かしているときには軽くなるという特徴があります。道具と動作の工夫を組み合わせれば、多くのことは自分でできます。「震えがあるからできない」と諦めず、まずはOTに相談してみてください。
振戦との長いつきあいに向けて
パーキンソン病の震えとは、長くつきあっていくことになります。大切なのは、震えがあっても自分らしい暮らしを続けることです。
- 症状の変化に合わせて、道具や方法を見直していきましょう
- 「震えがあるから」と活動を減らしすぎないことが大切です
- 外食や趣味の活動も、工夫次第で続けられます
- 困ったことがあれば、そのつど主治医やOTに相談してください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。