この記事のポイント
- リハビリの時間は1日40〜60分。残りの23時間の過ごし方が回復のスピードを左右します
- 自主トレーニングは「OTに確認」「痛みの範囲を守る」「転倒予防」の3原則を守れば安全に取り組めます
- ベッド上・座位・立位、それぞれの段階に合った練習メニューを作業療法士と一緒に組み立てましょう
リハビリの時間だけでは回復は進まない?
入院中のリハビリの時間は、1日あたり40〜60分が一般的です。「えっ、それだけ?」と驚かれるかもしれません。
残りの23時間をベッドの上でじっとしているだけでは、せっかくのリハビリの効果が十分に発揮されません。リハビリの時間以外に、自分でできる練習(自主トレーニング)に取り組むことで、回復のスピードが変わってきます。
ただし、やみくもに動けばいいわけではありません。作業療法士(OT)に相談しながら、安全な練習メニューを組み立てることが大切です。
自主トレーニングの3原則
安全に自主トレーニングを行うために、必ず守っていただきたい3つの原則があります。
原則1: 必ずリハビリの先生に確認する
「これをやっていいですか?」と、担当のリハビリの先生に必ず確認しましょう。今の回復段階でやっていい練習とやってはいけない練習があります。
原則2: 痛みが出たらストップ
「痛みを我慢するほど効果がある」は間違いです。痛みが出ない範囲で行うのが基本です。痛みを押して続けると、かえって回復が遅れることがあります。
原則3: 転ばないことが最優先
自主トレ中に転んでしまうと、骨折などで入院期間が大幅に延びることがあります。立って行う練習は必ず手すりのそばで。ナースコールが手の届く位置にあることを確認してから始めましょう。
注意
自主トレーニングは、担当のリハビリスタッフに内容を確認してもらってから始めてください。特に術後や急性期の方は、医師の許可なく自己判断で練習を行わないでください。
自主トレーニングの種類
自主トレーニングにはいくつかの種類があります。リハビリの先生が、今の状態に合わせて組み合わせてくれます。
1. 関節を動かす練習
関節が固まらないように動かす練習です。
- 肩を上げ下げする(タオルを使って)
- 手をグーパーする(スポンジを握る)
- 足首を曲げ伸ばしする
2. 筋力をつける練習
弱っている筋肉を鍛える練習です。
- 膝を伸ばしてベッドに押し付ける
- 仰向けでお尻を持ち上げる
- ゴムバンドを使った腕や脚の運動
3. 日常の動作を練習する
実際の生活動作を繰り返し練習します。
- ボタンの留め外し、靴下の着脱
- 歯磨き、洗顔、髪をとかす
- ベッドと車いすの乗り移り
4. 頭の体操
考える力や記憶力を維持するための練習です。
- 計算ドリル、漢字の書き取り
- パズル、ナンプレ
- 日記を書く(思い出す力、文章を組み立てる力の練習になります)
自主トレプログラムの組み立て方
自主トレのメニューは、リハビリの先生と一緒に4つのステップで組み立てます。
ステップ1: 目標を決める
「退院後にお風呂に一人で入れるようになりたい」「杖で家の中を歩けるようになりたい」など、具体的な目標を決めましょう。
ステップ2: 練習する種目を選ぶ
目標に合った練習を3〜5種目選びます。多すぎると続けられなくなるので、無理のない数にしましょう。
ステップ3: 回数を決める
基本は10回を2〜3セットが目安です。疲れすぎないことが大切です。
ステップ4: いつやるか決める
リハビリの前後は避けて、体力に余裕のある時間帯がおすすめです。
- お昼ごはんの前
- 午後のリハビリがない時間
- 夕食後の軽いストレッチ
ヒント
練習メニューを紙に書いてベッドのそばに貼っておくと、忘れずに取り組めます。終わったらチェックを入れると達成感につながります。
段階別の練習メニュー
ベッドの上でできる練習
まだベッドから起き上がるのが難しい方でもできる練習です。
- 膝の裏でベッドを押す: 太ももの前の筋肉を鍛えます(10回×3セット)
- お尻を持ち上げる: 仰向けで膝を立て、お尻を浮かせます(10回×2セット)
- 手のグーパー: 握る・開くを繰り返します(20回)
- 足首の曲げ伸ばし: 血栓予防にもなります(20回×2セット)
- 深呼吸: おなかを膨らませるようにゆっくり呼吸します(5回×3セット)
座ってできる練習
ベッドの端に安定して座れるようになったら取り組めます。
- 座ったまま手を伸ばす: 前後左右に手を伸ばしてバランスをとります
- タオルを絞る: 手の力と指先の動きを鍛えます
- 着替えの練習: ボタンの留め外し、靴下の着脱を繰り返します
- テーブルを拭く: 腕を大きく動かす練習になります
- 頭の体操: 計算ドリルや新聞の音読
立ってできる練習
立っていられるようになったら、必ず手すりのそばで行います。
- 軽いスクワット: 手すりを持ち、浅く膝を曲げます(10回×2セット)
- つま先立ち: 手すりを持って背伸びします(10回×2セット)
- 洗面台での歯磨き・洗顔: 立って行う日常動作の練習です
- 廊下の歩行: 歩行器や杖を使って(リハビリの先生の許可を得てから)
やりすぎ注意のサイン
「がんばりすぎ」は逆効果です。以下のサインが出たら、練習をやめて休みましょう。
- 練習の前にはなかった痛みが出てきた
- 関節の周りが腫れたり、赤くなったり、熱を持った
- 練習のあとにぐったりして食事もつらい
- 翌朝まで疲れが残る
- めまいがする、ふらつく
- 息が切れる、動悸がする
このようなサインが出たら、無理をせずナースコールを押してください。
注意
自主トレの目的は「追い込む」ことではなく、リハビリの効果を日常生活に定着させることです。やりすぎはかえって回復を遅らせます。
家族ができるサポート
ご家族のサポートがあると、自主トレーニングの効果がぐんと上がります。
- 見守り: 立って行う練習のときは、転ばないようそばにいてあげてください
- 声かけ: 「がんばって」よりも「昨日より上手にできてるね」と変化に気づく声かけが効果的です
- 一緒に記録を見る: 練習の記録表を一緒に確認すると、進歩が目に見えてモチベーションが上がります
- 道具の準備: タオル、スポンジ、計算ドリルなど、練習に使うものを用意しておく
- 気づいたことを伝える: 「今日は痛そうだった」「前より動きがスムーズになった」など、リハビリの先生に教えてあげてください
面会の際、一緒に自主トレに取り組んでみましょう。手のグーパー運動を一緒にやったり、計算ドリルの問題を出し合ったり。「一人でやるのは退屈」という方も、家族と一緒なら楽しく続けられます。ただし、無理にやらせるのは逆効果です。本人の気分に合わせてください。
まとめ
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。