この記事のポイント
- 作業療法士は動作能力の評価・旅行に向けた動作訓練・自助具選定・行程計画・バリアフリー情報確認・緊急時対応計画・旅行支援サービスとの連携という7つの支援で、障害や要介護があっても旅行の実現を後押しできます
- 旅行は単なるレジャーではなく、その方にとって意味のある大切な「作業」であり、リハビリテーションの強力なモチベーションになります
- 介護保険の訪問介護は旅行の介助には使えないため、トラベルヘルパーなどの自費サービスやバリアフリー旅行会社の活用が現実的な選択肢です
旅行は「作業」である
「もう旅行なんて無理」と諦めていませんか。病気や障害があっても、介護が必要でも、工夫とサポートがあれば旅行を楽しむことはできます。
作業療法士は、その人にとって大切な活動を支える専門家です。「温泉に行きたい」「孫と一緒に出かけたい」「もう一度故郷を訪ねたい」──そんな願いは、リハビリを頑張る大きな力になります。
この記事では、旅行のために作業療法士がお手伝いできることと、旅行に付き添ってくれる心強いサービスを、わかりやすくご紹介します。
作業療法士が旅行のためにできる7つのこと
「旅行に行きたいけれど、体のことが心配」というとき、担当の作業療法士に相談すると、次のようなお手伝いが受けられます。
- 体の状態のチェック — どれくらい歩けるか、車の乗り降りやトイレの動作ができるかを一緒に確認します
- 旅行に向けた練習 — 段差の上り下りや長く歩く練習など、旅先で必要な動作を目標にしたリハビリができます
- 便利な道具のアドバイス — 折りたたみの杖や滑り止めマットなど、旅先で役立つ道具を提案してもらえます
- 無理のない旅行プランづくり — 疲れをためないよう、休憩をはさんだゆとりのある予定を一緒に考えます
- 宿や観光地の設備の確認 — 部屋の段差やお風呂の手すりなど、事前に調べておきたいポイントを整理します
- もしものときの備え — お薬手帳のコピーや旅先の病院のリストなど、安心のための準備をお手伝いします
旅行という目標があると、毎日のリハビリにも張り合いが出ます。「旅行のための練習」と思えると、頑張る理由がはっきりするからです。
旅先で役立つ自助具選びについても、遠慮なく聞いてみてください。
知っておくべき「旅行支援サービス」
「いつものヘルパーさんに、旅行にも付き添ってもらえないの?」と思われるかもしれません。実は、介護保険のヘルパーさんにお願いできる外出は、通院や日用品の買い物など、日常生活に必要なものに限られています。旅行や観光への付き添いは対象外です。
でも、がっかりしないでください。自費で利用できる付き添いサービスや、バリアフリー旅行専門の旅行会社があります。次から順にご紹介します。
トラベルヘルパー・介護付き旅行サービス
介護の資格を持ったスタッフが、旅行の計画づくりから当日の付き添いまでサポートしてくれるサービスがあります。
- あ・える倶楽部 — 30年以上の実績がある介護旅行の草分け。車いすの介助やトイレ・入浴のお手伝いまで頼めます
- クラウドケア — スマートフォンから気軽に依頼できる付き添いサービス。国内だけでなく海外旅行にも対応しています
- 日本介護トラベルサービス・東京さんぽ — 介護福祉士や看護師などの資格を持つスタッフが同行してくれます
「家族だけで連れて行くのは不安」というときも、介護のプロが一緒にいてくれる安心感は大きなものです。
トラベルヘルパーという専門職
トラベルヘルパーという、介護の技術と旅行の知識を併せ持つ専門家もいます。旅行の計画づくりから当日のお手伝いまで、まとめてお任せできます。
「どこから手をつけていいかわからない」というときの、心強い相談相手になってくれます。
バリアフリー旅行専門の旅行会社
車いすのまま参加できるツアーや、体の状態に合わせたオーダーメイドの旅行を扱う専門の旅行会社もあります。
- 心の翼バリアフリーツアー — 40年以上の実績。温泉での入浴のお手伝いや、車いすに対応した添乗員同行ツアーがあります
- HIS ユニバーサルツーリズムデスク — 大手旅行会社の専門窓口。車いすの方向けのツアーや手話での相談にも対応しています
- Rehavel(リハベル) — リハビリの専門家が体の状態を確認したうえで、無理のない旅行プランを考えてくれます
NPO・公的支援
看護・介護付きの旅行を手がけるNPO法人もあります。また、国も「誰もが旅行を楽しめる環境づくり」を進めており、バリアフリーに対応した宿や観光地は年々増えています。
「近くにサービスがあるかわからない」というときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに聞いてみると、身近な団体を教えてもらえることがあります。
料金の目安
付き添いサービスの料金は、1時間あたりおよそ3,000円〜6,000円台が目安です。このほかに、付き添いスタッフの交通費や宿泊費などの実費がかかります。
決して安い金額ではありませんが、「安全に、安心して旅行を楽しめる」ことには、それだけの価値があります。多くのサービスで見積もりや相談は無料なので、まずは問い合わせてみるのがおすすめです。
また、お住まいの自治体によっては、福祉タクシー券などの制度が旅行の移動に使える場合もあります。あわせて確認してみましょう。
OTとして大切にしたいこと
「旅行に行きたい」という気持ちは、わがままではありません。人生の楽しみや、大切な人との思い出づくりにつながる、とても大事な願いです。
「この体では無理」と感じても、まずは担当の作業療法士やリハビリスタッフ、ケアマネジャーに「旅行に行きたい」と伝えてみてください。体の状態の確認から練習、道具選び、サービス探しまで、一緒に考えてくれるはずです。
旅行の実現は生活の質(QOL)を高め、その後の毎日にも良い変化をもたらします。「行けてよかった」の一言のために、できることはたくさんあります。
- 「行きたい場所」をご家族で話してみましょう。目的地が決まると、リハビリの目標がぐっと具体的になります。まずは日帰りの近場からでも十分です
- 旅行の希望を担当のリハビリスタッフやケアマネジャーに伝えてみましょう。必要な練習や便利な道具、付き添いサービスの情報を教えてもらえます
- 宿や観光地には事前に電話で相談してみましょう。車いすで使える部屋や食事の配慮など、伝えておくだけで当日の安心感が大きく変わります
ご本人・ご家族の方へ ― 大切なポイント
- 障害や介護が必要な状態でも、工夫とサポートがあれば旅行はできます
- 介護保険のヘルパーさんは旅行に付き添えませんが、自費の付き添いサービスやバリアフリー旅行専門の会社があります
- 付き添いの料金は1時間3,000円台からが目安。交通費などの実費も別にかかるため、まずは無料相談や見積もりを活用しましょう
- 旅行したい気持ちはリハビリの何よりの原動力。まずは担当の作業療法士やケアマネジャーに伝えてみてください
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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