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歩行器とシルバーカーの違い ― 介護保険で借りられる歩行器と選び方のポイント

歩行が不安定になったご家族に、どんな歩行器が合うのか迷っていませんか。シルバーカーとの違い、介護保険で借りられる歩行器の種類、選ぶときのポイントをわかりやすくお伝えします。

📅 2026年5月5日 更新読了目安 34分

この記事のポイント

  • 歩行器は体重を支えながら歩行を補助する福祉用具です。シルバーカーは「自立歩行できる方の外出支援具」であり、根本的に役割が異なります
  • 介護保険の福祉用具貸与では、要支援1以上の方が1〜3割の自己負担で歩行器をレンタルできます
  • 固定型(ピックアップ型)・交互型・前輪付き・四輪歩行車など、身体状態に応じた選択肢があります
  • 2024年の制度改正により、一部の歩行補助具では貸与と購入を選べる「選択制」が導入されました
  • 関連記事:移動と社会参加車椅子の基本

はじめに──「歩く」を支える道具の世界

ご家族の歩き方が不安定になってきたとき、「杖を使ったほうがいいのかな」と考える方は多いと思います。でも、杖だけでは十分に体を支えられないこともあります。そんなとき、頼りになるのが歩行器です。

歩行器は両手でフレームを持ち、体重を預けながら安全に歩くための道具です。杖と車椅子の間にある選択肢として、とても大切な役割を担っています。

ただ、「歩行器」と聞いても、どんな種類があるのか、シルバーカーとどう違うのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、歩行器の種類や選び方のポイントをわかりやすくお伝えします。

シルバーカーと歩行器──似て非なるもの

最大の違いは「誰のための道具か」

シルバーカーと歩行器は、見た目が似ているものがあるため混同されがちですが、根本的に異なる道具です。

歩行器は、歩行が不安定な方が体重を預けながら歩くための支持具です。フレームに体重をかけることを前提に設計されており、構造的な強度と安定性が確保されています。

一方、シルバーカーは、自力で歩行できる方が荷物の運搬や休憩のために使う外出支援具です。買い物袋を入れるカゴや、疲れたときに座れるシート(座面)が付いています。体重を支える設計にはなっていません。

具体的な違いを整理する

項目歩行器シルバーカー
目的歩行の支持・安定荷物運搬・休憩・外出支援
対象者歩行が不安定な方自力歩行できる方
体重支持できる(設計上の前提)できない(想定されていない)
介護保険福祉用具貸与の対象対象外
構造体重を支えるフレーム構造荷物カゴ+座面付きの手押し車
ブレーキロック式(停止して体重をかける)ハンドブレーキ(速度調整)
使用場面屋内・屋外の歩行訓練・生活動作主に屋外の買い物・散歩

なぜシルバーカーは介護保険の対象外なのか

介護保険の対象になるのは、日常生活の自立を助ける福祉用具です。シルバーカーは「自分で歩ける方の便利な道具」という位置づけなので、対象外になっています。

気をつけたいのは、見た目が歩行器に似たシルバーカーもあるということです。シルバーカーとして売られている製品に体重をかけて使うと、転倒事故の原因になります。購入する際はお店や作業療法士に確認しましょう。

介護保険における歩行器の位置づけ

福祉用具貸与の対象

介護保険の福祉用具貸与(レンタル)で、歩行器を借りることができます。

利用できるのは要支援1以上の認定を受けた方です。車椅子は原則として要介護2以上ですが、歩行器は軽度の認定でもレンタルできるのがポイントです。

自己負担は所得に応じて1割・2割・3割のいずれかです。たとえば月額3,000円の歩行器なら、1割負担で月々300円で借りることができます。

貸与の対象となる歩行器の定義

制度上の定義としては、「体重を支える構造があるもの」が歩行器の条件です。シルバーカーにはこの構造がないため、介護保険の対象から外れているのです。

2024年の制度改正──貸与と購入の選択制

2024年(令和6年)の介護保険制度改正で、一部の福祉用具について貸与と購入を選択できる制度が導入されました。

歩行補助具の一部(固定型歩行器など、比較的安価で長期利用が想定されるもの)がこの選択制の対象となっています。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談のうえ、利用者の状況に応じてレンタルか購入かを選べるようになりました。

ただし、四輪歩行車のように高額な歩行器は、引き続き貸与が基本です。

歩行器の種類──4つの基本タイプ

歩行器は、車輪の有無とフレーム構造によって大きく4つのタイプに分類できます。

1. 固定型歩行器(ピックアップウォーカー)

最もシンプルな歩行器です。四本の脚にゴムキャップが付いたフレーム構造で、車輪はありません。

使い方

  1. 歩行器を両手で持ち上げる
  2. 前方に置く
  3. 歩行器に体重をかけながら足を踏み出す
  4. 1〜3を繰り返す

「持ち上げて→置いて→歩く」の3ステップを繰り返すため、ピックアップウォーカーとも呼ばれます。

特徴と適応

  • 安定性がいちばん高いタイプです。4本の脚すべてが床についた状態で体重をかけるので、とても安定しています
  • ただし、歩行器を持ち上げる腕の力が必要です
  • 歩く速度はゆっくりになるので、屋内の短い距離での使用に向いています

2. 交互型歩行器(レシプロカルウォーカー)

固定型歩行器のフレームに関節機構を加え、左右のフレームが交互に動くようにしたものです。

使い方

  1. 右側のフレームを前に出す
  2. 左足を踏み出す
  3. 左側のフレームを前に出す
  4. 右足を踏み出す
  5. 1〜4を繰り返す

通常の歩行に近い交互パターンで進めるため、固定型より自然な歩容が得られます。

特徴と適応

  • 持ち上げる必要がないので、腕の力が弱い方にも使いやすいです
  • 左右を交互に動かすので、普通の歩き方に近い感覚で進めます
  • ただし、左右の動きを合わせる必要があるため、慣れるまで少し練習が必要です

3. 前輪付き歩行器(キャスター付き歩行器)

固定型歩行器の前脚2本にキャスター(車輪)を取り付けたものです。後脚はゴムキャップのままで、ストッパーの役割を果たします。

使い方

  1. 歩行器を前に押し出す(前輪が回転して進む)
  2. 体重をかけながら足を踏み出す(後脚のゴムが制動)
  3. 1〜2を繰り返す

持ち上げ動作が不要で、押すだけで前に進むため、上肢の負担が大幅に軽減されます。

特徴と適応

  • 前に押すだけで進むので、いちばん操作がかんたんなタイプです
  • 後ろの脚のゴムが自然にブレーキの役割をしてくれます
  • 屋内の日常的な移動に向いていますが、段差には注意が必要です

4. 四輪歩行車(歩行車)

4つすべての脚に車輪が付いた歩行器で、ハンドブレーキ座面を備えたものが一般的です。

使い方

  1. ハンドルを握り、ブレーキを解除して前に押す
  2. 歩行器と一緒に前進する
  3. 止まるときはブレーキを握る(またはブレーキレバーを押し下げてロック)
  4. 疲れたら座面に腰を下ろして休憩

連続的な歩行が可能で、最も歩行効率が高いタイプです。

特徴と適応

  • スムーズに歩けるので、外出に向いています
  • 座面つきなので、疲れたらその場で座って休めます
  • カゴやバッグがついているタイプなら、買い物の荷物も運べます
  • ただし、ブレーキの操作を覚える必要があります。認知機能が低下している方は、ブレーキのかけ忘れに注意が必要です

特殊なタイプの歩行器

基本の4タイプに加えて、特定のニーズに応える歩行器も存在します。

前腕支持型歩行器(サークル歩行器)

ハンドルではなく腕を載せるパッドがついた歩行器です。手や手首に痛みがある方(関節リウマチなど)でも、腕全体で体重を支えられるので使いやすくなっています。

馬蹄型歩行器(U字型歩行器)

U字形のテーブルのようなフレームに両腕を置いて体を支えるタイプです。体幹が不安定な方の歩行訓練に使われることが多く、主にリハビリ施設で見かけます。

モーター付き歩行器(電動アシスト歩行器)

歩行車にモーターを搭載し、上り坂でのアシスト下り坂での自動ブレーキを行うものです。坂道の多い地域に住む方にとって、外出の大きな助けになります。

また、歩行速度やリズムを検知して、異常歩行(急な加速や不安定な動き)を感知すると自動的にブレーキがかかる機能を搭載したモデルもあります。

介護保険の対象となるモデルもありますが、高額なため貸与が基本です。

歩行器の選び方──OTの視点から

選定の基本フレームワーク

歩行器は「どれがいちばんいいか」ではなく、「ご家族の暮らしにどれが合うか」で選ぶことが大切です。選ぶときに確認しておきたいポイントをまとめました。

1. 体の状態

  • 足にどれくらい体重をかけられる
  • 腕の力は十分か(持ち上げる動作ができるか)
  • ブレーキの操作を覚えて使えるか

2. おうちの環境

  • 廊下やドアの幅は歩行器が通れるか
  • 段差(玄関や部屋の境目)はないか
  • 使わないときの置き場所はあるか

3. どんな場面で使いたいか

  • トイレや食事の場所への移動(屋内)
  • 買い物や通院への外出(屋外)
  • 一人で歩くのか、誰かと一緒か

タイプ別の選定指針

身体状態生活環境活動目標推奨タイプ
下肢荷重制限あり、上肢筋力十分屋内・平坦短距離移動固定型
すくみ足あり、リズム獲得が目標屋内・平坦短〜中距離移動交互型
上肢筋力低下、持ち上げ困難屋内中心日常生活の移動前輪付き
比較的活動的、外出希望あり屋外含む買い物・通院・散歩四輪歩行車
手指の痛み・変形あり屋内〜屋外日常生活の移動前腕支持型
体幹不安定、リハビリ段階施設内歩行訓練馬蹄型

調整のポイント

歩行器は選ぶだけでなく、身体に合わせて調整することが重要です。

ハンドル(グリップ)の高さ

適切な高さの目安は、立位で腕を自然に下ろしたときの手首の高さです。これにより、肘がわずかに屈曲(約20〜30度)した状態でハンドルを握ることができ、体重をかけやすくなります。

高すぎると肩が上がって疲れやすく、低すぎると前かがみになって腰への負担が増します。

ブレーキの操作力

四輪歩行車のブレーキは、握力が弱い方でも確実に操作できる必要があります。ブレーキの効きが悪いもの、操作力が大きすぎるものは避けます。

車輪のサイズ

  • 小さめの車輪:屋内で使いやすく、小回りが利きます
  • 大きめの車輪:屋外の段差や砂利道に強いですが、屋内ではやや場所を取ります

座面の高さ(四輪歩行車の場合)

座面に座ったとき、膝が約90度に曲がる高さが適切です。座面が高すぎると足が地面に届かず不安定になり、低すぎると立ち上がりが困難になります。

歩行器を安全に使うために

よくある事故パターン

歩行器に関連する事故は決して珍しくありません。代表的なパターンを把握しておくことが予防につながります。

  • ブレーキのかけ忘れ:四輪歩行車に座ろうとしたとき、ブレーキをかけ忘れて歩行車が動き、転倒する
  • 段差での転倒:前輪が段差に引っかかり、歩行器ごと前方に倒れる
  • 過信による事故:歩行器があるからと安心し、能力を超えた場面で使用して転倒する
  • 不適切な使い方:歩行器を杖のように片手で使う、シルバーカーに体重をかけるなど

予防のポイント

  • 座る前にブレーキを習慣化する(声に出して確認する方法も有効です)
  • 段差の手前で一旦停止し、安全を確認してから進む
  • 定期的な点検:ゴムキャップの摩耗、ブレーキの効き、車輪の回転を確認する
  • 使用環境の整備:通路の障害物を除去し、滑りやすいマットは固定または撤去する

リハビリ専門職との連携

歩行器の選定や調整は、リハビリの専門家に相談するのがいちばんです。作業療法士(OT)は、歩行器を使いながらトイレに行く方法台所での動き方など、実際の暮らしの中での使い方を一緒に考えてくれます。

担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員にも気軽に相談してみてください。

歩行器と「歩くこと」の意味

歩行器を使い始めることに、抵抗を感じるご家族もいらっしゃるかもしれません。「こんな道具を使うなんて」と、ご本人が落ち込んでしまうこともあります。

でも、歩行器は「歩けなくなった証」ではなく、「歩き続けるための道具」です。

歩行器があれば、トイレに自分で行ける、食堂まで歩ける、散歩に出かけられる。「自分でできること」が増えていくことで、気持ちも前向きになっていきます。

まとめ

ご家庭でできること
  • シルバーカーと歩行器の違いを確認してください。ご家族が使っている道具が適切かどうか、見直すきっかけになります
  • 歩行器のゴムキャップやブレーキをチェックしてみましょう。すり減っていたら交換のサインです
  • 歩行が不安定なご家族がいたら、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してみてください。介護保険で月数百円からレンタルできます
ポイント

シルバーカーと歩行器は見た目が似ていても、根本的に異なる道具です。歩行器の4つの基本タイプはそれぞれ異なる身体状態と生活場面に対応しており、身体機能・生活環境・活動目標の3つの視点から選定し、身体に合わせた調整を行うことが不可欠です。歩行器は「歩けなくなった証」ではなく、「歩き続けるための積極的な選択肢」です。

ポイント

歩行器は、ご家族の「歩く」を安全に支えてくれる心強い道具です。シルバーカーとは役割が違うこと、介護保険で月数百円からレンタルできることを知っておくだけでも、いざというとき選択肢が広がります。

「どのタイプがいいのかわからない」と思ったら、ケアマネジャーや作業療法士に相談してみてください。ご家族の体の状態や暮らしに合った歩行器を、一緒に選んでくれます。

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