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ADHDのお子さんが「困っている」こと ── 家庭と学校でできる10の工夫

ADHDのお子さんは怠けているのではなく、本当に困っています。家庭と学校で今日からできる10の具体的な工夫を、わかりやすくまとめました。

📅 2026年3月24日 更新読了目安 35分

この記事のポイント

  • ADHDの子どもは「困らせている」のではなく「困っている」。注意機能・実行機能・感覚調整の特性が背景にある
  • 家庭と学校でできる10の工夫を紹介。環境調整・タイマー活用・視覚的手がかり・褒め方のコツなど
  • 学校との連携方法や相談先、作業療法士が果たせる役割も解説

「困った子」ではなく「困っている子」

「授業中に立ち歩く」「忘れ物が毎日ある」「友達とすぐケンカになる」。こうしたお子さんの行動に、悩んでいませんか。

実は、最も困っているのはお子さん自身です。「ちゃんとしたいのにできない」「また怒られた」と感じているお子さんはたくさんいます。

ADHDは脳の働き方の特性であり、本人の努力不足ではありません。作業療法士(OT)は、お子さんの「やり方が合っていない」部分を見つけて、「できた」を増やす工夫を一緒に考える専門家です。

ADHDの子どもが「困っている」具体的な場面

お子さんの「困りごと」には、いくつかのパターンがあります。

集中が続かない・気が散りやすい

  • 宿題をしていても、すぐに別のことが気になる
  • 好きなことに夢中になると、声をかけても聞こえない
  • 忘れ物が多い、持ち物の管理が苦手

体が動いてしまう・衝動的に行動する

  • じっと座っていることがつらい
  • 思いついたことをすぐに口に出してしまう
  • 順番を待つことが難しい

友達関係がうまくいかない

  • 悪気はないのに、相手を傷つける言葉を言ってしまう
  • ルールを守れず、遊びの輪から外れてしまう
  • 本人は仲良くしたいのに、トラブルになることが多い

こうした経験が積み重なると、お子さんの「自分はダメな子だ」という気持ちが強くなってしまいます。だからこそ、早めの環境調整が大切です。

作業療法士の視点 ── 行動の「裏側」にあるもの

作業療法士は、お子さんの「困った行動」をそのまま見るのではなく、なぜその行動が起きるのかを考えます。

たとえば「じっとしていられない」お子さんは、体を動かすことで脳をちょうどよい状態に保とうとしている場合があります。「忘れ物が多い」のは、複数のことを同時に覚えておく力(ワーキングメモリ)が弱いからかもしれません。

作業療法では、「お子さんを変える」のではなく「環境や活動をお子さんに合わせる」という考え方で支援します。

家庭でできる5つの工夫

工夫1: 環境から「気が散るもの」を減らす

お子さんが集中しやすいように、まわりの刺激を減らすことが最も基本的な工夫です。

  • 学習机は壁に向けて置く(窓やテレビが見えない方向)
  • 机の上は今使うものだけにする
  • おもちゃやゲームが目に入らない場所で勉強する
ご家庭でできること

段ボールで小さなパーテーションを作り、机のまわりを囲むだけでも効果があります。お子さんと一緒にデコレーションすると、自分だけの特別な場所として愛着が生まれます。

工夫2: タイマーを活用して時間を「見える化」する

お子さんは「あと10分で終わりだよ」と言われても、10分がどのくらいかわかりにくいことがあります。目で見て時間がわかるタイマーを使ってみましょう。

  • 残り時間が色で減っていくタイムタイマーがおすすめです
  • 宿題は「30分やる」ではなく「10分×3セット」に分けましょう
  • タイマーが鳴ったら「よくがんばったね」と声をかけてあげてください

工夫3: 感覚入力を調整する ── 体を動かしてから集中する

体を動かしてから集中するのは、とても効果的な方法です。

  • 宿題の前に: トランポリンで5分跳ぶ、壁を手で押す運動をする、重い荷物を運ぶお手伝いをする
  • 宿題の最中は: バランスクッションに座る、足元にゴムバンドを置いて足で押せるようにする
  • 休憩には: ストレッチ、冷たい水を飲む、好きな音楽を1曲聴く

重いものを持つ・押す・引っ張るなどの体に力を入れる活動は、脳の調子を整える効果があります。感覚の工夫について詳しくは感覚過敏の環境調整と10の工夫もご覧ください。

工夫4: 指示は「短く・具体的に・一つずつ」

「早く準備して!」と言っても、お子さんには何から手をつければいいかわかりません。一度に一つだけ伝えましょう。

  • × 「早く準備して学校に行きなさい」
  • ○ 「まず歯を磨こう」→ 終わったら「次は着替えよう」
  • お子さんの近くに行って、目を見てから伝えてください
  • 「走らない」ではなく「歩こうね」と肯定的な言い方に変えてみましょう

工夫5: 「できたこと」をすぐに・具体的に褒める

ADHDのあるお子さんは、「がんばればいつかいいことがある」よりも、「今すぐ褒めてもらえる」ことのほうが力になります。

  • できた直後に褒める(「座って宿題ができたね!」)
  • 「えらい」ではなく、何ができたかを具体的に伝える
  • シールやポイントを貯めるごほうびシステムも効果的です
  • 叱るよりも褒める回数を多くすることを心がけてください

学校でできる5つの工夫

工夫6: 座席の配慮で刺激を減らす

座席の位置はお子さんの集中力に大きく影響します。先生に以下を相談してみてください。

  • 教室の前方で、窓や廊下から離れた席
  • 先生の近くで、さりげない声かけがもらいやすい位置
  • バランスクッションやゴムバンド(椅子の脚に取り付けて足で押せるもの)の使用許可

工夫7: 「合法的に動ける」機会をつくる

学校では「動いてもいい」機会を意図的に作ることが大切です。先生に以下を相談してみましょう。

  • プリント配りや黒板消しなど、「役割」として動ける機会をもらう
  • 水を飲みに行く許可をあらかじめ出してもらう
  • 長い授業の途中に全員でストレッチする時間を設けてもらう

工夫8: 「忘れ物ゼロ」を仕組みで実現する

忘れ物が多いのは、お子さんが怠けているのではなく、覚えておくことが苦手な特性です。「気をつけなさい」ではなく、忘れても大丈夫な仕組みを作りましょう。

  • カバンの中身の置き場所を決める(このポケットには筆箱、ここにはハンカチ)
  • 玄関に持ち物チェックリストを貼る
  • 学校と家の両方に同じ文房具を置いておく(ダブル持ち
ご家庭でできること

鉛筆、消しゴム、定規など、よく忘れるものを学校用と家用に2セット用意しておくと、忘れ物のストレスが大幅に減ります。完璧を目指すよりも、「忘れても困らない環境」を作ることが大切です。

工夫9: ごほうびシステムで「できた」を積み重ねる

ADHDのあるお子さんには、すぐにもらえる小さなごほうびが効果的です。

  • 課題を1つ終えたらシールを1枚。5枚たまったら好きな活動を10分
  • 「今、手を挙げてから発言できたね」のように、具体的な行動をその場でほめる
  • 「できなかったらペナルティ」ではなく「できたらごほうび」の姿勢が大切です

工夫10: 連携ノートで家庭と学校をつなぐ

家庭と学校の連携はお子さんの支援のかなめです。連携ノートを活用しましょう。

  • 学校での様子と家庭での様子を、お互いに書いて共有します
  • 「できたこと」を中心に書くルールにすると、お子さんの長所に目が向きます
  • 問題行動の報告ばかりにならないように気をつけましょう

学校との連携方法

学校への伝え方のコツ

学校に相談するときは、具体的な場面と、効果があった工夫をセットで伝えると理解されやすくなります。

  • × 「うちの子はADHDなので配慮してください」
  • ○ 「集中が途切れやすいので、前方の席にしてもらえると助かります」
  • ○ 「家ではタイマーを使うと集中できています。学校でも試してもらえますか」

お子さんが受けられる配慮

学校には、お子さんが力を発揮できるように環境を整える義務があります(合理的配慮といいます)。

  • 座席の配慮(前の方、窓際を避ける)
  • テスト時間の延長
  • イヤーマフの使用
  • タブレット端末の使用

これらは「特別扱い」ではなく、お子さんが本来の力を発揮するための工夫です。遠慮せずに相談してみてください。

不登校の兆候が見られた場合は、不登校の子どもとの向き合い方もあわせてご確認ください。

自己肯定感を守る ── 二次障害を予防するために

二次障害を防ぐために

ADHDそのものよりも心配なのが二次障害です。叱られ続けることで不安やうつ、不登校につながることがあります。

二次障害の多くは、不適切な環境や対応の積み重ねによって起こるものです。つまり、適切な支援で予防できるものです。

  • 「できたこと」に注目して、具体的にほめましょう
  • 結果ではなくがんばった過程を認めましょう
  • 他のお子さんと比べないようにしましょう
  • 「あなたが悪いのではないよ」と伝えましょう

相談先・支援リソース

こんなときは専門家に相談を
  • 家庭での工夫だけでは改善が見られない
  • 学校生活に大きな支障が出ている
  • お子さんの自己肯定感が著しく低下している
  • 友達関係のトラブルが繰り返されている
  • 不登校や登校しぶりが見られる
相談先内容
発達障害者支援センター各都道府県に設置。相談・情報提供・関係機関との連携
発達支援センターOTによる感覚統合療法・発達支援
小児科・児童精神科専門的な評価・診断・薬物療法
スクールカウンセラー学校との橋渡し、心理的支援
放課後等デイサービス療育的な活動、社会性の育成
ペアレントトレーニング保護者向けの関わり方の学習プログラム

使える制度については支援制度まるわかりガイドもあわせてご確認ください。

保護者自身のケアも大切です

保護者の方ご自身のケアも忘れないでください。一人で抱え込まないことが大切です。

  • 地域の発達障害者支援センターに相談してみましょう。「お子さんのこと」だけでなく「ご自身のつらさ」も話してよい場所です
  • 同じ悩みを持つ保護者の会やオンラインコミュニティも助けになります
  • 「完璧な親」を目指さなくて大丈夫です。「まあまあの親」で十分です

ポイント

ADHDのあるお子さんは、「困った子」ではなく「困っている子」です。

お子さんの行動には必ず理由があります。この記事で紹介した10の工夫を、できるところから一つずつ試してみてください。完璧にやろうとしなくて大丈夫です。親御さん自身も無理をしないことが、長く続けるコツです。困ったときは、作業療法士や発達障害者支援センターに遠慮なく相談してください。

ご家庭でできること
  • 「宿題の前にトランポリン5分」を試してみましょう: 体を動かしてから取り組むと、集中力が高まることがあります。壁を手で10秒押す運動でもOKです
  • タイムタイマーを導入してみましょう: 残り時間が色で見えるタイマーは、時間の感覚がつかみにくいお子さんの強い味方です
  • 「今日できたこと」を寝る前に1つ伝えましょう: 「今日、自分で持ち物を準備できたね」のように具体的にほめると、お子さんの自信が少しずつ育ちます

免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。

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