この記事のポイント
- ADLとIADLの違いは動作の複雑さです。ADLは食事・入浴・着替えなど生きるために必要な基本動作、IADLは料理・買い物・金銭管理など判断力や計画力を伴う応用動作を指します
- ADLはFIMやバーセルインデックス、IADLはロートンIADL尺度などで評価され、求められる能力と評価の視点が異なります
- 加齢や認知症ではIADLのほうが先に低下しやすく、料理の味付けの変化や同じ物の買い込みは早期発見の手がかりになります
- 8分野の比較表・評価方法・ご家族が気づける変化のサインを具体例で解説します
本記事は「ADLとIADLの違い」を比較表で整理することに特化した記事です。ADLそのものの定義や評価方法、自助具・家族の手助けの基礎はADL(日常生活動作)の解説記事で、IADLの8項目や低下のサインの詳細はIADL(手段的日常生活動作)の解説記事で詳しく解説しています。
ADLとIADL、ひとことで言うと
ADLは「身体を整える動作」、IADLは「暮らしを回す動作」です。
- ADL(Activities of Daily Living)=日常生活動作。食事、入浴、着替え、トイレなど、生きていくために最低限必要な基本的な動作。
- IADL(Instrumental Activities of Daily Living)=手段的日常生活動作。料理、買い物、金銭管理、服薬管理など、地域で自立して暮らすために必要な、より複雑な動作。
ADLが「身の回りのこと」なら、IADLは「身の回りの"その先"にあること」と考えるとイメージしやすいでしょう。
ADLは「身体を整える動作」、IADLは「暮らしを回す動作」です。
- ADL=食事、入浴、着替え、トイレなど、毎日の基本的な動作
- IADL=料理、買い物、お金の管理、お薬の管理など、考える力が必要な動作
ADLが「身の回りのこと」なら、IADLは「身の回りの"その先"にあること」とイメージするとわかりやすいです。
具体的な項目の違い
| 分類 | ADL(基本的日常生活動作) | IADL(手段的日常生活動作) |
|---|---|---|
| 食に関すること | 食べ物を口に運ぶ、噛む、飲み込む | 献立を考える、食材を買う、調理する |
| 身だしなみ | 着替える、歯を磨く、顔を洗う | 季節に合った服を選ぶ、クリーニングに出す |
| 清潔 | 入浴する、身体を洗う | 浴室を掃除する、洗剤を補充する |
| 排泄 | トイレで用を足す、後始末をする | トイレットペーパーを買い足す |
| 移動 | 歩く、車いすで移動する | バスに乗る、時刻表を読む、切符を買う |
| 健康管理 | (該当なし) | 薬を正しく飲む、通院の予約をする |
| お金 | (該当なし) | 家計を管理する、ATMを使う、請求書を払う |
| コミュニケーション | (該当なし) | 電話をかける、メールを送る |
このように、ADLは主に身体機能が中心ですが、IADLは身体機能に加えて認知機能(判断力・計画力・記憶力)が大きく関わります。
このように、ADLは主に体の力が中心ですが、IADLは体の力に加えて考える力(判断・計画・記憶)が大きく関わります。
求められる能力の違い
ADLに必要な力
ADLは主に以下のような能力で成り立っています。
筋力・体力
身体を起こす、腕を動かす、立ち上がる
関節の動き
腕を上げる、指を曲げる、足を踏み出す
バランス
立位や座位を保つ、移乗時に転倒しない
基本的な感覚
熱い・冷たいがわかる、物をつかむ感覚がある
もちろんADLにも認知面は関わりますが、多くの動作は繰り返しによって身体が覚えている(手続き記憶)ため、ある程度は自動的に行えます。
ADLに必要なのは、主に体を動かす力です。筋力やバランス、関節の動きなどが土台になります。
多くのADL動作は体が覚えている動きなので、意識しなくてもある程度は自動的にできます。
IADLに必要な力
IADLには、ADLの土台となる身体機能に加えて、以下のような高次の認知機能が求められます。
計画力
何をどの順番でやるか組み立てる(例:調理の手順)
判断力
状況に応じて適切な選択をする(例:何を買うか決める)
記憶力
必要な情報を覚えておく(例:薬の飲み方、バスの時刻)
注意の配分
複数のことに同時に気を配る(例:鍋を見ながら野菜を切る)
問題解決力
予想外の状況に対処する(例:いつもの店が休みだったとき)
つまり、IADLは「考えながら行う動作」の比重が大きいのが特徴です。
IADLには体の力だけでなく、考える力が必要です。
- 計画する力 ― 料理の手順を組み立てる
- 判断する力 ― 何を買うか決める
- 覚えておく力 ― お薬の飲み方やバスの時刻を覚える
- 同時に気を配る力 ― 鍋を見ながら野菜を切る
つまり、IADLは「考えながら行う動作」が多いのが特徴です。
低下する順番が違う
加齢や認知症による低下の場合
一般的に、IADLのほうが先に低下します。認知機能の低下に伴い、複雑なIADLから順に自立度が低下していくことが報告されています(出典: 田平隆行「地域在住認知症高齢者の手段的日常生活活動に対するリハビリテーション」精神神経学雑誌, 2022年)。
IADL の低下(初期)→ ADL の低下(進行期)
例えば認知症の場合、初期には以下のような変化が見られます。
この段階では、食事や入浴、着替えといったADLはまだ問題なくできることがほとんどです。ADLに困難が出るのは、認知症がさらに進行してからです。
このため、IADLの変化は認知症の早期発見の重要な手がかりになります。
一般的に、IADLのほうが先にできなくなります。
たとえば認知症の初期には、着替えや食事はまだできるのに、次のような変化が現れます。
- 料理の味付けがおかしくなる
- 同じ食材を何度も買ってくる
- お薬の飲み忘れが増える
ADLが難しくなるのは、もっと進行してからです。だからこそ、IADLの変化は認知症の早期発見の大切な手がかりになります。
- 冷蔵庫に同じ食材がいくつもないか
- 料理の味が以前と変わっていないか
- お薬が飲み残しになっていないか
脳卒中や骨折など急性期の場合
一方、脳卒中や骨折のように急に身体機能が低下する場合は、ADLとIADLが同時に、あるいはADLが先に影響を受けることがあります。
例えば脳卒中で片麻痺になった場合、着替え(ADL)も料理(IADL)も同時に困難になります。
回復の場合
リハビリテーションによる回復は、低下とは逆の順序をたどることが多いです。
ADL の回復(まず基本動作から)→ IADL の回復(より複雑な動作へ)
まず食事や着替えといった基本的ADLが改善し、その後に買い物や調理といったIADLの回復へと進みます。リハビリでは、この回復の段階に合わせて目標を設定します。
まず食事や着替えなどの基本的な動作(ADL)が先に良くなり、その後に買い物や調理などのIADLが回復へと進みます。リハビリでは、この回復の段階に合わせて目標を立てていきます。
評価方法の違い
ADLの主な評価ツール
| ツール名 | 特徴 |
|---|---|
| FIM | 運動13項目+認知5項目、各7段階評価(合計18〜126点)。日本のリハビリ病院で広く普及(出典: 厚生労働省 中医協資料「FIMの概要」, 2017年) |
| BI | 基本的ADL 10項目、100点満点。世界的に広く使用(出典: 厚生労働省 LIFE関連資料「ADL: Barthel Index」) |
| ツール名 | 特徴 |
|---|---|
| FIM | 18の項目を7段階で評価。日本のリハビリ病院で最もよく使われています |
| BI(バーセルインデックス) | 10の項目を100点満点で評価。世界中で広く使われています |
IADLの主な評価ツール
| ツール名 | 特徴 |
|---|---|
| ロートンIADL尺度 | 8項目(電話・買い物・調理・家事・洗濯・移動・服薬・金銭管理)。IADL評価の代表格(出典: Lawton & Brody, 1969) |
| FAI | 15項目、過去3〜6か月の活動頻度で評価。「実際にしているか」を重視(出典: Holbrook & Skilbeck, 1983) |
| ツール名 | 特徴 |
|---|---|
| ロートンIADL尺度 | 電話・買い物・調理など8つの項目で評価します |
| FAI | 過去数か月で「実際にしているか」を15項目で確認します |
評価の視点の違い
ADLの評価は「できるかどうか」「どの程度の介助が必要か」に焦点を当てます。一方、IADLの評価は「実際の生活で行っているか」「安全に遂行できるか」という視点も加わります。
例えば、評価の場面で調理ができたとしても、自宅で毎日安全に調理を続けられるかは別の問題です。IADLの評価では、こうした「生活の実態」が重視されます。
ADLの評価は「できるかどうか」が中心です。一方、IADLの評価では「実際の暮らしの中でやっているか」「安全にできるか」という視点も加わります。
たとえば、病院では調理ができても、自宅で毎日安全に続けられるかは別の話です。IADLの評価では、こうした暮らしの実態が大切にされます。
リハビリでの扱いの違い
ADLのリハビリ
ADLのリハビリは、比較的目標が明確です。
練習の場所は病院の訓練室や病棟が中心で、繰り返し練習によって動作を定着させていきます。自助具の導入や環境調整も重要なアプローチです。
ADLのリハビリは目標がわかりやすいのが特徴です。「一人でトイレに行ける」「自分で食事ができる」など、はっきりしたゴールに向けて繰り返し練習します。自助具や環境の調整も大切な方法です。
IADLのリハビリ
IADLのリハビリは、より個別性が高くなります。
IADLの練習は、できるだけ実際の環境に近い場面で行います。病院内のキッチンでの調理練習、実際のスーパーでの買い物練習、公共交通機関を使った外出練習などです。
また、IADLのリハビリでは「できないことを補う工夫」も重要です。お薬カレンダー、買い物リスト、ネットスーパーの活用など、道具やサービスを組み合わせて生活を組み立てます。
IADLのリハビリは、その方の暮らしに合わせた練習になります。病院のキッチンでの調理練習や、実際のスーパーでの買い物練習など、できるだけ本番に近い場面で行います。
また、「できないことを道具で補う」工夫も大切です。お薬カレンダーや買い物リスト、ネットスーパーなどを組み合わせて暮らしを整えます。
目標設定の違い
ADLのリハビリ目標は「自立」か「介助量の軽減」が中心です。一方、IADLの目標はその方の暮らし方によって大きく異なります。
一人暮らしの方なら調理や買い物の自立が重要ですが、ご家族と同居していてそれらを分担できるなら、服薬管理や金銭管理の自立のほうが優先される場合もあります。作業療法士は、ご本人の生活環境と希望に合わせて目標を調整します。
ADLの目標は「自分でできるようになる」が中心ですが、IADLの目標は暮らし方によって変わります。
一人暮らしなら調理や買い物の自立が大切ですが、ご家族と一緒に暮らしているなら、お薬やお金の管理のほうが優先されることもあります。作業療法士が、ご本人の暮らしと希望に合わせて目標を一緒に考えます。
ご家族に知っておいてほしいこと
ADLとIADLの両方に目を向ける
入院中のリハビリでは、ADLの回復に注目が集まりがちです。「食事が自分でできるようになった」「歩けるようになった」という変化はわかりやすく、ご家族も安心されます。
しかし退院後の暮らしでは、IADLの自立度が「一人で暮らせるか」を左右します。退院が近づいたら、担当の作業療法士に「買い物は一人でできますか?」「薬の管理はどうすればいいですか?」など、IADLについても確認しましょう。
入院中は「食事ができるようになった」「歩けるようになった」などADLの回復が目につきやすいです。
しかし退院後の暮らしでは、IADLの自立度が「一人で暮らせるか」を左右します。退院が近づいたら、作業療法士に「買い物は一人でできますか?」「お薬の管理はどうしたらいいですか?」と聞いてみてください。
「できること」と「していること」は違う
評価場面や病院の中で「できる」ことと、自宅で日常的に「している」ことには差があることがあります。
例えば、病院の訓練では調理ができても、自宅では「面倒だからやらない」「やる気が出ない」ということがあります。これは身体機能の問題ではなく、意欲や環境の問題かもしれません。
「できるのにしていない」状態が続くと、その能力自体が低下していくことがあります。ご本人が生活の中でIADLを実際に行い続けられる環境を整えることが大切です。
病院で「できる」ことと、自宅で「している」ことは違うことがあります。
たとえば訓練では調理ができても、家では「面倒だからやらない」ということも。これは体の問題ではなく、やる気や環境の問題かもしれません。
「できるのにしていない」状態が続くと、その力自体が落ちてしまうことがあります。ご本人がIADLを続けられる環境を整えることが大切です。
- 完璧を求めず、ご本人のペースで取り組めるようにする
- 「やって」ではなく「一緒にやろう」と声をかける
- 危険がなければ見守って任せることも大切です
変化のサインを見逃さない
先述のとおり、IADLの低下は認知症の初期サインになることがあります。以下のような変化に気づいたら、早めに専門家に相談してください。
- 料理のレパートリーが減った、味付けが変わった
- 同じものを何度も買ってくる
- 請求書の支払いを忘れるようになった
- 薬の飲み忘れや飲みすぎが増えた
- バスや電車の乗り方に迷うようになった
- 季節に合わない服を着ている
こうした変化は「年のせい」で片づけず、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
まとめ:ADLとIADLは「暮らしの両輪」
ADLは「身体を整える基本の動作」、IADLは「暮らしを回していく複雑な動作」。この2つは別々のものではなく、どちらも揃って初めて「自分らしい暮らし」が成り立ちます。
リハビリテーションでは、ADLの回復を土台にしつつ、IADLの自立も視野に入れた支援が行われます。ご家族としては、ADLだけでなくIADLにも目を配り、変化に早く気づくことが、ご本人の暮らしを守る大きな力になります。
気になることがあれば、いつでも担当の作業療法士に相談してください。
ADLは「身体を整える基本の動作」、IADLは「暮らしを回す応用の動作」。この2つが揃って、自分らしい暮らしが成り立ちます。
退院後の暮らしではIADLの自立がとても大切です。ADLだけでなくIADLにも目を配り、変化に早く気づくことが、ご本人の暮らしを守る力になります。気になることがあれば、担当の作業療法士に気軽に相談してください。
- 厚生労働省 中医協資料「(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要」(2017年)
- 厚生労働省 LIFE関連資料「別添資料2-2 ADL: Barthel Index」
- Lawton MP, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. Gerontologist. 1969;9(3):179-186.
- 田平隆行「地域在住認知症高齢者の手段的日常生活活動に対するリハビリテーション」精神神経学雑誌 124(10), 2022年
- Strokengine「Frenchay Activities Index (FAI)」(原著: Holbrook M, Skilbeck CE. An activities index for use with stroke patients. Age Ageing. 1983)
関連記事
- ADLの基本: 「ADL(日常生活動作)とは?」
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この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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