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ADLとIADLの違いって? ― 基本動作と暮らしの動作を知るガイド

ADLは食事や入浴などの基本動作、IADLは料理や買い物など暮らしに必要な応用動作。2つの違いや低下のサイン、ご家族にできることをわかりやすく紹介します。

📅 2026年3月24日 更新読了目安 26分

この記事のポイント

ADL(日常生活動作)とIADL(手段的日常生活動作)は、どちらも「生活の自立度」を表す指標ですが、対象となる動作の複雑さや求められる能力が異なります。ADLは食事・入浴・着替えなど身体的な基本動作、IADLは料理・買い物・金銭管理など判断力を伴う複雑な動作です。この記事では、2つの違いを具体的な例を交えてわかりやすく解説します。

ADLとIADL、ひとことで言うと

ADLは「身体を整える動作」、IADLは「暮らしを回す動作」です。

  • ADL=食事、入浴、着替え、トイレなど、毎日の基本的な動作
  • IADL=料理、買い物、お金の管理、お薬の管理など、考える力が必要な動作

ADLが「身の回りのこと」なら、IADLは「身の回りの"その先"にあること」とイメージするとわかりやすいです。

具体的な項目の違い

分類ADL(基本的日常生活動作)IADL(手段的日常生活動作)
食に関すること食べ物を口に運ぶ、噛む、飲み込む献立を考える、食材を買う、調理する
身だしなみ着替える、歯を磨く、顔を洗う季節に合った服を選ぶ、クリーニングに出す
清潔入浴する、身体を洗う浴室を掃除する、洗剤を補充する
排泄トイレで用を足す、後始末をするトイレットペーパーを買い足す
移動歩く、車いすで移動するバスに乗る、時刻表を読む、切符を買う
健康管理(該当なし)薬を正しく飲む、通院の予約をする
お金(該当なし)家計を管理する、ATMを使う、請求書を払う
コミュニケーション(該当なし)電話をかける、メールを送る

このように、ADLは主に体の力が中心ですが、IADLは体の力に加えて考える力(判断・計画・記憶)が大きく関わります。

求められる能力の違い

ADLに必要な力

ADLに必要なのは、主に体を動かす力です。筋力やバランス、関節の動きなどが土台になります。

多くのADL動作は体が覚えている動きなので、意識しなくてもある程度は自動的にできます。

IADLに必要な力

IADLには体の力だけでなく、考える力が必要です。

  • 計画する力 ― 料理の手順を組み立てる
  • 判断する力 ― 何を買うか決める
  • 覚えておく力 ― お薬の飲み方やバスの時刻を覚える
  • 同時に気を配る力 ― 鍋を見ながら野菜を切る

つまり、IADLは「考えながら行う動作」が多いのが特徴です。

低下する順番が違う

加齢や認知症による低下の場合

一般的に、IADLのほうが先にできなくなります

たとえば認知症の初期には、着替えや食事はまだできるのに、次のような変化が現れます。

  • 料理の味付けがおかしくなる
  • 同じ食材を何度も買ってくる
  • お薬の飲み忘れが増える

ADLが難しくなるのは、もっと進行してからです。だからこそ、IADLの変化は認知症の早期発見の大切な手がかりになります。

ご家庭でできること
  • 冷蔵庫に同じ食材がいくつもないか
  • 料理の味が以前と変わっていないか
  • お薬が飲み残しになっていないか

脳卒中や骨折など急性期の場合

一方、脳卒中や骨折のように急に身体機能が低下する場合は、ADLとIADLが同時に、あるいはADLが先に影響を受けることがあります。

例えば脳卒中で片麻痺になった場合、着替え(ADL)も料理(IADL)も同時に困難になります。

回復の場合

リハビリテーションによる回復は、低下とは逆の順序をたどることが多いです。

まず食事や着替えなどの基本的な動作(ADL)が先に良くなり、その後に買い物や調理などのIADLが回復へと進みます。リハビリでは、この回復の段階に合わせて目標を立てていきます。

評価方法の違い

ADLの主な評価ツール

ツール名特徴
FIM18の項目を7段階で評価。日本のリハビリ病院で最もよく使われています
BI(バーセルインデックス)10の項目を100点満点で評価。世界中で広く使われています

IADLの主な評価ツール

ツール名特徴
ロートンIADL尺度電話・買い物・調理など8つの項目で評価します
FAI過去数か月で「実際にしているか」を15項目で確認します

評価の視点の違い

ADLの評価は「できるかどうか」が中心です。一方、IADLの評価では「実際の暮らしの中でやっているか」「安全にできるか」という視点も加わります。

たとえば、病院では調理ができても、自宅で毎日安全に続けられるかは別の話です。IADLの評価では、こうした暮らしの実態が大切にされます。

リハビリでの扱いの違い

ADLのリハビリ

ADLのリハビリは目標がわかりやすいのが特徴です。「一人でトイレに行ける」「自分で食事ができる」など、はっきりしたゴールに向けて繰り返し練習します。自助具や環境の調整も大切な方法です。

IADLのリハビリ

IADLのリハビリは、その方の暮らしに合わせた練習になります。病院のキッチンでの調理練習や、実際のスーパーでの買い物練習など、できるだけ本番に近い場面で行います。

また、「できないことを道具で補う」工夫も大切です。お薬カレンダーや買い物リスト、ネットスーパーなどを組み合わせて暮らしを整えます。

目標設定の違い

ADLの目標は「自分でできるようになる」が中心ですが、IADLの目標は暮らし方によって変わります

一人暮らしなら調理や買い物の自立が大切ですが、ご家族と一緒に暮らしているなら、お薬やお金の管理のほうが優先されることもあります。作業療法士が、ご本人の暮らしと希望に合わせて目標を一緒に考えます。

ご家族に知っておいてほしいこと

ADLとIADLの両方に目を向ける

入院中は「食事ができるようになった」「歩けるようになった」などADLの回復が目につきやすいです。

しかし退院後の暮らしでは、IADLの自立度が「一人で暮らせるか」を左右します。退院が近づいたら、作業療法士に「買い物は一人でできますか?」「お薬の管理はどうしたらいいですか?」と聞いてみてください。

「できること」と「していること」は違う

病院で「できる」ことと、自宅で「している」ことは違うことがあります。

たとえば訓練では調理ができても、家では「面倒だからやらない」ということも。これは体の問題ではなく、やる気や環境の問題かもしれません。

「できるのにしていない」状態が続くと、その力自体が落ちてしまうことがあります。ご本人がIADLを続けられる環境を整えることが大切です。

ご家庭でできること
  • 完璧を求めず、ご本人のペースで取り組めるようにする
  • 「やって」ではなく「一緒にやろう」と声をかける
  • 危険がなければ見守って任せることも大切です

変化のサインを見逃さない

先述のとおり、IADLの低下は認知症の初期サインになることがあります。以下のような変化に気づいたら、早めに専門家に相談してください。

IADLの変化のサイン
  • 料理のレパートリーが減った、味付けが変わった
  • 同じものを何度も買ってくる
  • 請求書の支払いを忘れるようになった
  • 薬の飲み忘れや飲みすぎが増えた
  • バスや電車の乗り方に迷うようになった
  • 季節に合わない服を着ている

こうした変化は「年のせい」で片づけず、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

まとめ:ADLとIADLは「暮らしの両輪」

ポイント

ADLは「身体を整える基本の動作」、IADLは「暮らしを回す応用の動作」。この2つが揃って、自分らしい暮らしが成り立ちます

退院後の暮らしではIADLの自立がとても大切です。ADLだけでなくIADLにも目を配り、変化に早く気づくことが、ご本人の暮らしを守る力になります。気になることがあれば、担当の作業療法士に気軽に相談してください。

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