この記事のポイント
- AMPSは実際の生活動作(IADL・PADL)を遂行する様子を観察し、運動技能とプロセス技能を評価する標準化された評価ツール
- OTのみが実施できる評価であり、OTの専門性を示す重要なツール
- 国際的な基準(Rasch分析)に基づくため、文化や年齢を超えた比較が可能
AMPSとは
AMPS(Assessment of Motor and Process Skills)は、Anne G. Fisherが開発した作業遂行の質を評価するための標準化された観察型評価ツールです。
AMPSの最大の特徴は、実際の生活動作を遂行する場面を観察して評価する点にあります。筋力テストや関節可動域測定のような機能評価ではなく、「料理をする」「掃除をする」「着替える」といった意味のある作業の中での技能を評価します。
AMPSはOTのみが実施・採点できる評価ツールであり、5日間の公式講習会(AMPS研修)を修了し、キャリブレーション(評価者の校正)を完了したOTだけが使用を許可されています。
AMPSは、実際の生活動作を行っている様子を見て評価する方法です。
一般的なリハビリの評価は、「握力を測る」「関節がどれくらい動くか」などテスト形式で行います。AMPSはそうではなく、「料理を作る」「洗濯物をたたむ」「着替える」といった日常の動作を実際にやってもらい、その様子を専門家が観察して評価します。
この評価は作業療法士(OT)だけが行える、OTならではの評価方法です。
評価の構成 ── 運動技能とプロセス技能
AMPSは16の運動技能と20のプロセス技能の2つの側面から作業遂行を評価します。
運動技能(Motor Skills)── 16項目
体の動きに関する技能です。
| カテゴリ | 技能の例 |
|---|---|
| 身体の位置 | 安定させる(stabilizes)、位置を合わせる(aligns)、位置づける(positions) |
| 物の取り扱い | 届く(reaches)、曲げる(bends)、つかむ(grips)、操作する(manipulates)、協調する(coordinates) |
| 身体の動かし方 | 動かす(moves)、持ち上げる(lifts)、歩く(walks)、運ぶ(transports)、調整する(calibrates) |
| エネルギー | 持続する(endures)、ペース配分する(paces)、力を入れる(flows) |
プロセス技能(Process Skills)── 20項目
作業を効率的・安全に進めるための認知的・組織的な技能です。
| カテゴリ | 技能の例 |
|---|---|
| エネルギー | ペースを維持する(paces)、注意を向ける(attends) |
| 知識の利用 | 選ぶ(chooses)、使う(uses)、扱う(handles)、聞く(heeds)、質問する(inquires) |
| 時間的な組織化 | 始める(initiates)、続ける(continues)、順序立てる(sequences)、終わりにする(terminates) |
| 空間的な組織化 | 探す(searches/locates)、集める(gathers)、整理する(organizes)、片づける(restores)、回り込む(navigates) |
| 適応 | 気づく(notices/responds)、調整する(accommodates)、利点を活かす(benefits) |
各技能は4段階(4: 有能、3: 疑わしい、2: 非効率、1: 欠如)で採点されます。
AMPSでは、動作を2つの側面から見ています。
体の動き(運動技能)- 体がふらつかないか
- 物をしっかりつかめるか
- 動作を続ける体力があるか
- 力加減が適切か
- 作業の手順がわかっているか
- 必要な道具を正しく選べるか
- 途中で手が止まらないか
- 間違いに気づいて修正できるか
この2つの視点で観察することで、どこに支援が必要かを具体的に把握できます。
評価の流れ
ステップ1:課題の選択
AMPSには125以上の標準化された課題が用意されています。クライアントにとって意味のある課題、かつ適度な難易度の課題を2つ以上選びます。
課題の例:
- トーストとコーヒーを準備する
- 野菜サラダを作る
- 洗濯物をたたんでしまう
- テーブルを拭いて食器を洗う
- 着替えをする
ステップ2:面接と環境設定
クライアントに普段の方法を聞き、必要な道具と環境を準備します。クライアントの慣れた方法で遂行してもらうことが原則です。
ステップ3:観察と採点
クライアントが課題を遂行する様子を観察し、36の技能それぞれを4段階で採点します。
ステップ4:コンピュータ分析
採点結果をAMPSソフトウェアに入力し、Rasch分析に基づく能力値(logit)が算出されます。
カットオフ値
- 運動技能: 2.0 logit以上 → 地域での自立生活が可能
- プロセス技能: 1.0 logit以上 → 地域での自立生活が可能
これらを下回る場合、日常生活活動に何らかの支援が必要であることを示唆します。
AMPSの評価は以下のように進みます。
- やってもらう動作を選ぶ: 料理、洗濯、着替えなどから、ご本人にとって意味のある動作を選びます
- 普段の方法でやってもらう: 特別な方法ではなく、いつもやっている方法で行ってもらいます
- OTが観察する: 動作の様子を、体の動きと段取りの2つの視点で細かく観察します
- 結果を分析する: 専用のソフトで分析し、どこに支援が必要かを明らかにします
AMPSは「テスト」ではないので、うまくやろうとする必要はありません。いつもどおりにやってください。いつもどおりの様子こそが、最も正確な評価につながります。
AMPSの臨床的意義
OTの専門性を可視化する
AMPSはOTにしか実施できない評価ツールであり、OTの専門性を客観的に示すことができます。「作業を通じた評価」というOTの独自性を、標準化された数値で表現できる点が大きな強みです。
機能と作業遂行のギャップを明らかにする
握力や関節可動域は問題ないのに、実際の料理がうまくできない。筋力は回復したのに、着替えに時間がかかる。AMPSは、機能レベルと実際の作業遂行のギャップを明らかにし、そのギャップに対する介入を計画するための根拠を提供します。
介入計画への直結
36の技能のどこに問題があるかが明確になるため、焦点を絞った介入が可能になります。
- 「つかむ(grips)」に問題 → 自助具の導入、把持方法の指導
- 「順序立てる(sequences)」に問題 → 手順書の作成、環境の構造化
- 「気づく(notices/responds)」に問題 → エラーモニタリングの訓練
AMPSでわかること
AMPSの結果から、以下のようなことがわかります。
- どの動作で困っているか: 料理の中でも「切る」は問題ないが「手順」で混乱する、など
- どんな支援が必要か: 道具の工夫で解決するのか、手順書が必要なのか
- 自宅での生活が自立してできるか: 数値で客観的に判断する材料になる
AMPSは「何ができないか」だけでなく、「なぜできないのか」を明らかにする評価です。
まとめ ── AMPSの臨床的位置づけ
- AMPSは実際の作業遂行を観察して運動技能とプロセス技能を評価する、OT独自の標準化ツール
- Rasch分析に基づく国際基準で、文化・年齢を超えた比較が可能
- 機能と作業遂行のギャップを明らかにし、焦点を絞った介入計画に直結する
- OTの専門性を客観的に示す強力なツールであり、積極的な活用が推奨される
ご家族の方へ ── 大切なポイントのまとめ
- AMPSは実際の生活動作を見て評価する方法です。テストではないので緊張しなくて大丈夫
- 「何ができないか」だけでなく「なぜできないか」がわかるので、的確な支援につながります
- いつもどおりにやってもらうことが最も正確な評価になります
- 結果について不明な点は、担当の作業療法士に遠慮なく質問してください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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