この記事のポイント
- 作業療法の評価は「心身機能」「ADL・活動」「作業遂行・参加」の3つの層で捉えると整理しやすくなります
- ADL評価はFIMとBarthel Index、認知機能スクリーニングはMMSEとHDS-R、作業遂行の評価はCOPMとAMPSが代表格です
- 検査の数値はあくまで入り口です。数値に表れない生活の困りごとを見落とさないことが、作業療法士の評価の本質です
評価は「測ること」ではなく「その人を理解すること」
作業療法における評価(アセスメント)は、単に点数をつける作業ではありません。対象者がどのような生活を送り、何に困り、何を大切にしているのかを理解し、介入の方針を立てるための情報収集のプロセス全体を指します。
そのため、一つの検査だけで評価が完結することはなく、目的に応じて複数の評価法を組み合わせるのが基本です。この記事では、代表的な評価法を「何を測るのか」という軸で整理し、それぞれの詳しい使い方は個別記事で解説します。
心身機能の評価
認知機能・運動機能など、身体と心の働きそのものを測る(MMSE・HDS-R など)
ADL・活動の評価
食事・入浴・移動など、日常生活動作がどこまで行えるかを測る(FIM・Barthel Index など)
作業遂行・参加の評価
本人にとって意味のある作業ができているかを、本人の視点も含めて測る(COPM・AMPS など)
ADL評価の代表格 ── FIMとBarthel Index
日常生活動作(ADL)の自立度を数値化する評価として、臨床で最も使われるのがこの2つです。
- FIM(機能的自立度評価表) — 運動13項目+認知5項目の計18項目を各1〜7点で採点(126点満点)。「しているADL」を介助量で細かく評価でき、回復期リハでの効果測定の標準
- Barthel Index — 食事・移乗・整容など10項目を100点満点で採点。短時間で実施でき、スクリーニングや研究・多施設比較で広く使われる
FIMの採点方法と臨床での使い方はFIM(機能的自立度評価表)の解説記事で、Barthel Indexの項目と activityの捉え方はBarthel Indexの解説記事で詳しく説明しています。ADLそのものの考え方から確認したい場合はADL(日常生活動作)とはから読むのがおすすめです。
認知機能のスクリーニング ── MMSEとHDS-R
認知症や認知機能低下が疑われるときに、最初に行われるのがスクリーニング検査です。代表的なMMSEとHDS-Rはどちらも30点満点で、課題の構成と得意な場面が異なります。2つの検査の項目・カットオフ値・実施時の注意点はMMSE・HDS-Rの解説記事にまとめています。
スクリーニングはあくまで「疑いの目安」であり、点数だけで認知症と診断されるものではありません。生活の中での様子と合わせて解釈することが大切です。認知症の方の評価では、数値化された検査と本人の語り(ナラティブ)を組み合わせる視点も欠かせません。この視点は認知症の作業療法評価の記事で掘り下げています。
作業遂行の評価 ── COPMとAMPS
作業療法らしさが最も表れるのが、この層の評価です。
- COPM(カナダ作業遂行測定) — 本人が大切にしている作業を面接で挙げてもらい、遂行度と満足度を10段階で自己評価する。クライアント中心の目標設定に直結する
- AMPS(運動とプロセス技能の評価) — 実際の生活課題の遂行場面を観察し、運動技能16項目とプロセス技能20項目を評価する。国際的な基準値と比較できる観察型評価
面接の進め方と目標設定への活かし方はCOPMの解説記事、観察評価の考え方はAMPSの解説記事を参照してください。COPMの背景にあるカナダモデルの考え方はCMOP-Eの解説記事とセットで読むと理解が深まります。
場面別の評価 ── 臨床でよく出会うテーマ
特定の場面・領域に特化した評価については、それぞれ個別記事で解説しています。
- 運転再開の可否をどう判断するか ── 運転適性評価の実際
- 見えにくい障害をどう捉えるか ── 高次脳機能障害の評価
- 就学に向けた準備性をどう見るか ── 学校準備性の評価
- リハビリテーション実施計画書の書き方と評価情報の整理
運転については運転適性評価の記事、高次脳機能障害については高次脳機能障害の評価の記事、子どもの領域は学校準備性評価の記事、書類作成はリハビリテーション実施計画書の記事がそれぞれ入り口になります。
評価の落とし穴 ── 「検査で問題なし」に潜むもの
標準化された検査は強力な道具ですが、検査の数値だけでその人の生活を判断してしまう「評価の矮小化」には注意が必要です。検査室ではできるのに自宅ではできない、点数は正常なのに本人は強い困難を感じている ── そうしたギャップにこそ、作業療法士が評価すべき情報が隠れています。
この問題は「検査で問題なし」が見落とすものの記事で詳しく論じています。評価を介入につなげる思考の流れは臨床推論の基礎の記事、評価の背景にある理論的枠組みは理論・モデルのガイドも参考にしてください。
評価法を選ぶときの考え方
- 目的から選ぶ ── 効果測定ならFIM、スクリーニングならBarthel IndexやMMSEのように、評価の目的を先に決める
- 対象者の負担を考える ── 検査の実施時間と疲労を考慮し、必要最小限の組み合わせにする
- 主観と客観を組み合わせる ── 数値化された検査(客観)とCOPMのような本人の視点(主観)を必ず併用する
- 再評価を前提にする ── 介入前後で同じ評価を使い、変化を捉えられる設計にする
作業療法の評価は、「心身機能」「ADL・活動」「作業遂行・参加」の3層で整理すると全体像がつかめます。FIM・Barthel Index・MMSE・HDS-R・COPM・AMPSといった代表的な評価法は、それぞれ測る対象と得意な場面が異なるため、目的に応じた使い分けが重要です。そして、どの検査を使う場合でも、数値の向こうにある「その人の生活と価値観」を見ることが、作業療法士の評価の本質です。各評価法の詳しい使い方は、本文中の個別記事から確認してください。
よくある質問
- FIMとBarthel Indexはどちらを使えばよいですか?
- FIMは「している ADL」を運動13項目+認知5項目の計18項目で細かく評価でき、リハビリテーションの効果測定に向いています。Barthel Indexは10項目で簡便に評価でき、スクリーニングや多施設間の比較に向いています。目的が効果測定ならFIM、簡便な把握ならBarthel Indexという使い分けが基本です。
- MMSEとHDS-Rの違いは何ですか?
- どちらも30点満点の認知機能スクリーニング検査です。MMSEは国際的に広く使われ、書字や図形模写など動作性の課題を含みます。HDS-Rは日本で開発され、質問がすべて口頭で完結するため、手の麻痺などがあっても実施しやすいのが特徴です。
- COPMはどんなときに使う評価ですか?
- COPM(カナダ作業遂行測定)は、対象者自身が「大切にしている作業」を挙げ、その遂行度と満足度を自己評価する面接式の評価です。数値で機能を測る検査と違い、本人の主観と価値観を介入目標に直結させたいときに使います。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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