この記事のポイント
- 福祉用具は介護保険でレンタルできるもの(13種目)と購入できるもの(5種目)に分かれており、正しく使えば自己負担を大幅に抑えられます
- 福祉用具と自助具は目的が異なり、福祉用具は「安全の確保」、自助具は「動作の自立」を主な目的としています
- 用具選びでは「本人の生活動作を観察してから選ぶ」順序が重要で、カタログだけで決めると失敗しやすくなります
- 作業療法士は生活全体を見て用具を提案できる専門職であり、選定から適合・フォローアップまで関わります
- よくある失敗を避けるには、試用・フィッティング・定期的な見直しの3ステップが欠かせません
はじめに ── 福祉用具ひとつで生活が変わる
「退院したけれど、トイレまで歩くのが怖い」「ベッドからの起き上がりに毎回苦労する」──こうした日常の困りごとに対して、福祉用具は大きな力を発揮します。
適切な福祉用具があれば、転倒のリスクを減らしながら、自分でできることを維持できます。逆に、合わない用具を使い続けると、かえって危険が増したり、体の機能が落ちてしまうこともあります。
この記事では、作業療法士の視点から、福祉用具の種類と正しい選び方を整理します。「何を選べばいいかわからない」という方が、最初の一歩を踏み出せるようになることを目指しています。
「退院して家に帰ったけれど、トイレまで歩くのが怖い」「ベッドから起き上がるのに毎回苦労している」──こうしたお悩みはありませんか。
適切な福祉用具があれば、転倒の心配を減らしながら、ご本人ができることを続けられます。一方で、体に合わない用具を使い続けると、かえって危険が増してしまうこともあります。
この記事では、福祉用具の種類と選び方のポイントを、わかりやすくお伝えします。
福祉用具と自助具 ── 似ているようで違うもの
まず整理しておきたいのが、福祉用具と自助具の違いです。混同されがちですが、目的と制度上の位置づけが異なります。
| 項目 | 福祉用具 | 自助具 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 安全の確保・介護負担の軽減 | 動作の自立・自分でできることを増やす |
| 具体例 | 車椅子、介護ベッド、手すり、歩行器 | 太柄スプーン、ボタンエイド、リーチャー |
| 介護保険の適用 | レンタルまたは購入で適用あり | 原則として適用なし |
| 選定に関わる専門職 | 福祉用具専門相談員、OT、PT | 主に作業療法士(OT) |
| 費用感 | レンタル月額数百円〜数千円(1割負担) | 数百円〜数千円(自費) |
ヒント
作業療法士は福祉用具と自助具の両方に精通しています。「どちらが必要なのかわからない」という段階でも、作業療法士に相談すれば、生活動作の評価をもとに適切な種類を提案してもらえます。
ポイントは、福祉用具と自助具は「どちらが優れている」というものではなく、目的に応じて使い分けるものだということです。たとえば、歩行が不安定な方には歩行器(福祉用具)を、食事で箸がうまく使えない方には太柄スプーン(自助具)を提案します。
福祉用具と自助具は、似ているようで違います。
福祉用具は、車椅子や介護ベッド、手すりなど、安全を守るための道具です。介護保険を使えば、月々数百円からレンタルできるものもあります。
自助具は、太柄スプーンやボタンエイドなど、ご本人が自分でできることを増やすための道具です。こちらは介護保険の対象外で、数百円から数千円で購入できます。
「どちらが必要かわからない」というときは、作業療法士に相談してみてください。生活の様子を見て、最適な道具を提案してもらえます。
太柄スプーン・フォークセット(極太グリップ)
握力が弱くても握りやすい極太グリップのスプーン・フォークセット(大)。オールステンレスでお手入れが簡単。小サイズもあります。
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ボタンエイド(グッドグリップ)
太めのクッショングリップで握りやすく、ボタンの着脱をサポート。ファスナーフック付き。
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リーチャー 楽らくハンド(ソフトタイプ・ロング)
離れた物をつかむ・引き寄せるための定番リーチャー。かがまずに床の物を拾えて、更衣の補助にも活用できます。
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介護保険で利用できる福祉用具
介護保険を利用すれば、福祉用具を1〜3割の自己負担でレンタルまたは購入できます。ただし、対象となる種目と利用条件が決まっています。
レンタルできる福祉用具(13種目)
介護保険でレンタルできる福祉用具は以下の13種目です。
車椅子
自走式・介助式・電動式。移動の安全と活動範囲の拡大に
車椅子付属品
クッション、テーブル、電動補助装置など
特殊寝台(介護ベッド)
背上げ・脚上げ・高さ調整機能付き
特殊寝台付属品
マットレス、サイドレール、ベッド用手すりなど
床ずれ防止用具
エアマット、ウレタンフォームマットなど
体位変換器
寝返りや体位変換を助ける用具
手すり
工事不要の据え置き型。廊下・トイレ・浴室の移動補助に
スロープ
段差解消用。玄関や室内の段差に設置
歩行器
四輪歩行器、ピックアップウォーカーなど
歩行補助つえ
多点杖、ロフストランドクラッチなど(T字杖は対象外)
認知症老人徘徊感知機器
離床センサー、GPS端末など
移動用リフト
床走行式、固定式、立ち上がり補助リフト
自動排泄処理装置
尿や便を自動的に吸引・処理する装置
注意
要支援1・2および要介護1の方は、原則として車椅子・特殊寝台・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフトのレンタルが認められていません。ただし、医師の意見書等により必要性が認められれば例外的に利用できる場合があります。ケアマネジャーに確認しましょう。
購入できる福祉用具(5種目)
衛生面の理由からレンタルに馴染まない用具は、購入の対象になります。年間10万円を上限として、1〜3割の自己負担で購入できます。
腰掛便座
ポータブルトイレ、補高便座、立ち上がり補助便座など
自動排泄処理装置の交換可能部品
チューブやタンクなどの消耗品
排泄予測支援機器
膀胱内の尿量を測定し排泄タイミングを通知する機器
入浴補助用具
シャワーチェア、浴槽用手すり、浴槽内椅子、すのこなど
簡易浴槽
居室内で入浴できる簡易的な浴槽
入浴補助用具は特に利用頻度が高い種目です。シャワーチェアひとつで入浴の安全性が大きく向上するため、作業療法士としても積極的に提案する用具のひとつです。
介護保険を使えば、福祉用具を1割から3割の自己負担で借りたり買ったりできます。
どんなものが借りられるの?
レンタルできるのは、車椅子、介護ベッド、手すり、歩行器、スロープなど13種目です。月々数百円から数千円で借りられるものが多くあります。
どんなものが買えるの?
シャワーチェアやポータブルトイレなど、衛生面からレンタルに向かないものは購入の対象です。年間10万円を上限に、1割から3割の自己負担で購入できます。
特にシャワーチェアは、1つあるだけで入浴の安全性がぐっと上がります。ご家族の介助の負担も減りますので、ぜひ検討してみてください。
注意
要支援1・2や要介護1の方は、車椅子や介護ベッドなど一部の用具がレンタルできない場合があります。ただし例外もありますので、ケアマネジャーに確認しましょう。
シャワーチェア 楽浴デラックス(楽々健・背もたれ手すり付き)
背もたれ・ひじ掛け付きの軽量アルミ製。座面高さ6段階調整。福祉用具専門相談員が開発監修。※特定福祉用具購入(保険給付)を使う場合は事業者経由になり、Amazonでの購入は自費です。
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福祉用具選定の正しいプロセス
福祉用具を選ぶとき、カタログを見て「これが良さそう」と決めてしまうケースがあります。しかし、正しい選定にはプロセスがあります。
ステップ1: ニーズの把握
- 1本人がどの動作で困っているかを具体的に確認する
- 2「トイレに行くとき」「入浴のとき」など場面を特定する
- 3現在の身体機能・認知機能を評価する
- 4住環境(廊下の幅、段差、手すりの有無)を確認する
ステップ2: 用具の候補選定
- 5困っている動作に対応する用具の種類を絞る
- 6介護保険の対象かどうかを確認する
- 7複数の候補をリストアップする
- 8福祉用具専門相談員やOTに相談する
ステップ3: 試用とフィッティング
- 9実際の生活場面で試してみる
- 10高さ・サイズ・重さが本人に合っているか確認する
- 11介助者にとっても使いやすいか確認する
- 12必要に応じて調整や別の用具への変更を行う
ステップ4: 導入とフォローアップ
- 13正しい使い方を本人と家族に説明する
- 14使い始めて1〜2週間後に状況を確認する
- 15身体機能の変化に応じて用具を見直す
- 16定期的なメンテナンスを行う
用具は「買って終わり」ではなく、「使い始めてからが本番」です。身体の状態は変わります。季節や生活パターンが変われば、必要な用具も変わります。定期的な見直しが、福祉用具を最大限に活かす鍵です。
— 作業療法の臨床現場から
特に大切なのはステップ1のニーズ把握です。「歩行器が欲しい」という要望に対して、すぐに歩行器を手配するのではなく、「なぜ歩行器が必要だと感じているのか」「どの場面で困っているのか」を丁寧に聞き取ることが、適切な選定の出発点になります。
どうやって選べばいいの?
福祉用具を選ぶときに大切なのは、カタログだけで決めないことです。以下の順序で進めると失敗しにくくなります。
1. 困っていることを具体的にする:「トイレに行くとき怖い」「お風呂で立ち上がれない」など、場面を特定します。
2. 専門家に相談する:ケアマネジャーや作業療法士、福祉用具専門相談員に相談すると、適切な用具を提案してもらえます。
3. 実際に試してみる:必ず実物を試してから決めましょう。高さやサイズが合っているか、ご本人が使いやすいかを確認します。
4. 使い始めた後も見直す:体の状態は変わっていきます。半年に1回くらいは、今の用具が合っているか確認しましょう。
よくある失敗例と対策
福祉用具の選定でよくある失敗を、作業療法士の視点から紹介します。
- カタログだけで選んでしまう — 写真や説明文だけでは、本人の体格や住環境に合うかわかりません。必ず実物を試してから導入しましょう
- 「大は小を兼ねる」で大きすぎる用具を選ぶ — 車椅子が廊下を通れない、歩行器が玄関に入らないといった問題が起こります。住環境の採寸が必須です
- 本人ではなく家族だけで決めてしまう — 本人が使いにくいと感じた用具は、結局使われなくなります。本人の意見と試用を重視しましょう
- 介護度が変わっても同じ用具を使い続ける — 身体機能の変化に合わせて用具も見直す必要があります。半年に1回は再評価を
- 安全のためと過剰に用具を導入する — 手すりだらけ、補助具だらけの環境は、かえって本人の「自分でやる力」を奪うことがあります。必要最小限が原則です
ヒント
5番目の「過剰な導入」は見落とされがちです。作業療法士は「この用具がなくてもできる動作」と「この用具がないと危険な動作」を見極める専門家です。すべての場面に用具を入れるのではなく、本当に必要な場面を絞ることが重要です。
やりがちな失敗にご注意ください
カタログだけで選ぶ:写真だけでは体に合うかわかりません。必ず実物を試しましょう。
大きすぎるものを選ぶ:車椅子が廊下を通れない、歩行器が玄関に入らないということがあります。家の中の寸法を測っておくことが大切です。
ご本人の意見を聞かない:ご家族だけで決めると、ご本人が使いにくくて結局使わなくなることがあります。必ずご本人の意見を聞いて、試してから決めましょう。
ずっと同じものを使い続ける:体の状態は変わります。半年に1回くらいは「今の用具で大丈夫かな」と見直すことをおすすめします。
作業療法士に相談するメリット
福祉用具の選定には、福祉用具専門相談員、ケアマネジャー、理学療法士など多くの専門職が関わります。その中で、作業療法士に相談するメリットは何でしょうか。
- 生活動作の専門家である — 「歩く」だけでなく「トイレで座る」「浴槽をまたぐ」など具体的な動作を分析できる
- 身体機能と認知機能の両方を評価できる — 認知症の方が安全に使えるかどうかも判断できる
- 自助具と福祉用具の両方を提案できる — 介護保険の対象外でも、安価な自助具で解決できる場合を見逃さない
- 住環境との適合を総合的に判断できる — 用具単体ではなく、住まい全体の中で最適な配置を考える
- 「できることを残す」視点を持っている — 過剰な補助を避け、本人の能力を最大限に活かす提案ができる
作業療法士に相談できる場所は、病院やクリニックのリハビリテーション科、介護老人保健施設、訪問リハビリテーション、地域包括支援センターなどです。特に訪問リハビリテーションでは、実際の自宅環境を見ながら用具の選定ができるため、ミスマッチが起こりにくいという大きな利点があります。
なぜ作業療法士に相談するとよいの?
作業療法士は、日常生活の動作を詳しく分析できる専門家です。「歩く」だけでなく、「トイレで座る」「お風呂で浴槽をまたぐ」といった具体的な場面を見て、最適な用具を提案してくれます。
また、訪問リハビリを利用すると、実際のご自宅の環境を見ながら用具を選んでもらえるので、「家に合わなかった」という失敗を防げます。
相談先としては、担当のケアマネジャー、病院のリハビリテーション科、地域包括支援センターなどがあります。
まとめ
- 福祉用具は介護保険を活用すれば1〜3割の自己負担で利用できます。レンタル13種目・購入5種目の対象を正しく理解しましょう
- 福祉用具と自助具は目的が異なります。安全の確保には福祉用具を、動作の自立には自助具を、と使い分けることが大切です
- 用具選定では「ニーズ把握 → 候補選定 → 試用・フィッティング → フォローアップ」の4ステップを省略しないことが成功の鍵です
- よくある失敗はカタログだけで選ぶ・住環境を測らない・本人不在で決めるの3つ。いずれも事前の確認で防げます
- 作業療法士は生活動作の専門家として、身体機能・認知機能・住環境を総合的に評価し、本人に最適な用具を提案できます
福祉用具は「あったほうがいいもの」ではなく、「正しく選べば生活を変える力を持つもの」です。迷ったときは、ひとりで悩まずに作業療法士や福祉用具専門相談員に相談してみてください。適切な用具との出会いが、毎日の暮らしに安心と自信をもたらしてくれます。
- 福祉用具は介護保険を使えば少ない自己負担で借りたり買ったりできます
- 用具選びで大切なのは「カタログだけで決めない」「必ず試す」「ご本人の意見を聞く」の3つです
- 体の状態は変わります。半年に1回は見直しをしましょう
- 迷ったときはケアマネジャーや作業療法士に相談してください
正しく選んだ福祉用具は、ご本人の安全と自信を守り、ご家族の介護負担も軽くしてくれます。
- 家の中の寸法を測っておきましょう:廊下の幅、ドアの幅、浴室の広さなどをメモしておくと、用具選びのときにスムーズです
- 「困っている場面リスト」を作ってみましょう:ご本人が日常生活のどの場面で困っているかをリストにして、ケアマネジャーや作業療法士に見せると、的確なアドバイスがもらえます
- 福祉用具のお試しを活用しましょう:レンタル業者では試用期間を設けている場合があります。遠慮なく「試してみたい」と伝えてください
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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