この記事のポイント
- 介護を理由に離職する人は年間約10万人。しかし退職後の再就職は厳しく、経済的・精神的リスクが大きい
- 介護休業(93日・3回分割)、介護休暇(年5日・時間単位)など法律で守られた制度がある
- OTの視点で住環境を調整すれば、介護負担そのものを減らすことができる
「仕事を辞めるしかない」と思い込んでいませんか
家族の介護が必要になったとき、「仕事を辞めるしかない」と思い込んでいませんか。
介護のために離職する人は年間約10万人。しかし、退職後の再就職は想像以上に厳しく、収入が大幅に下がるケースがほとんどです。経済的な不安が介護の質にも影響し、悪循環に陥ることがあります。
作業療法士(OT)は、介護を受ける方だけでなく、介護する側の生活全体を見渡して、仕事と介護を両立するための工夫を一緒に考えてくれる専門家です。
介護離職後のリスク
介護離職した人のうち、精神面の負担が「増した」と回答した人は約6割にのぼります。仕事を辞めても介護の負担が減るとは限らず、社会とのつながりが途切れることで孤立感が深まるケースもあります。「辞めない選択肢」をまず検討してください。
法律で守られている ── 知っておきたい両立支援制度
介護休業制度
法律により、家族の介護のために最大93日間の休業を取ることができます。3回まで分割できるので、介護の状況に合わせて使えます。
- 期間: 家族1人につき合計93日まで
- 分割: 3回に分けて取得できる
- お金: 休業中は介護休業給付金(給与の約67%)が支給される
- 手続き: 休業の2週間前までに会社に申し出る
大切なのは、この93日を「介護に専念する期間」ではなく、「介護の体制を整える期間」として使うことです。ケアマネジャーとの相談やサービス手配に充てましょう。
介護休暇
介護休暇は、通院の付き添いやケアマネジャーとの面談などに使える短期の休暇です。
- 家族1人の介護なら年5日、2人以上なら年10日
- 1時間単位で取得できるので、午前中だけ休んで午後は出勤ということも可能
- 取得を理由に会社から不利益な扱いを受けることは法律で禁止されている
その他の柔軟な働き方
休業・休暇以外にも、働き方を調整する制度があります。
- 短時間勤務: 勤務時間を短くできる(3年間で2回以上利用可能)
- フレックスタイム: 出退勤の時間を柔軟に変えられる
- 残業の免除: 残業をしなくてよいように会社に申請できる
- テレワーク: 在宅勤務の導入が事業主の努力義務に
これらは介護休業とは別に使える制度です。まずは会社の人事部に「介護に関する支援制度」を確認してみてください。
介護が必要になったら、できるだけ早く会社の人事部や上司に相談しましょう。「迷惑をかけたくない」と一人で抱え込むと、突然の離職につながりやすくなります。多くの企業が両立支援の制度を整えていますが、従業員が申し出なければ利用できません。
介護保険サービスを活用する
「自分がすべてやらなきゃ」と思い込む必要はありません。介護保険サービスを上手に使えば、仕事をしながらでも介護は成り立ちます。
- デイサービス: 日中に施設で過ごしてもらえるので、仕事中の時間帯をカバーできる
- ショートステイ: 数日〜2週間、施設に泊まれるサービス。出張や繁忙期に便利
- 訪問介護: ヘルパーさんが自宅に来てくれるサービス。食事や入浴の介助、掃除や調理も
- 訪問リハビリ: OTなどが自宅に来て、生活動作の練習や家の環境調整を行ってくれる
これらを組み合わせれば、仕事の時間帯に介護の空白をつくらない体制がつくれます。
OTの視点 ── 環境調整で介護負担を減らす
介護に時間がかかりすぎて仕事と両立できないと感じていませんか。OTは家の環境を整えることで、介護の手間そのものを減らす専門家です。
家の改修で介護が楽になる
介護保険を使った住宅改修(上限20万円、自己負担は1〜3割)で、こんなことができます。
- 手すりの設置: トイレやお風呂に手すりをつけると、一人で移動できるようになることも
- 段差の解消: つまずきや転倒のリスクを減らせる
- 引き戸への変更: 車いすでも自分で出入りしやすくなる
福祉用具で「一人でできる」が増える
福祉用具を上手に使えば、ご本人が自分でできることが増え、介護者の負担が減ります。
- ポータブルトイレ: 夜中のトイレ介助が減る
- シャワーチェア: お風呂が安全になる
- 介護用ベッド: 起き上がりが楽になり、介助の手間が減る
「仕事があるので、介護に使える時間が限られている」とケアマネジャーに正直に伝えてください。仕事のスケジュールに合わせたサービスの組み合わせを一緒に考えてくれます。遠慮せず、あなたの生活状況を伝えることが最適なプランづくりの第一歩です。
「辞めない選択」のためのチェックリスト
「辞めるしかない」と決める前に、次のことを確認してみてください。
- 会社の介護支援制度(休業・休暇・短時間勤務など)を人事部に聞いたか
- 地域包括支援センターに相談したか
- 介護保険の申請をしたか
- デイサービスやショートステイなどを検討したか
- 家族や親族と介護の分担について話し合ったか
- 退職した場合の収入について計算してみたか
すべてを試してからでも、退職の判断は遅くありません。一つずつ確認していきましょう。
相談窓口一覧
困ったときは、一人で悩まずに相談してください。
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 高齢者の暮らし全般の相談窓口。各市区町村に設置 |
| 介護支援専門員(ケアマネジャー) | 介護保険サービスの計画作成と調整 |
| 会社の人事部・総務部 | 介護休業・介護休暇など社内制度の確認 |
| ハローワーク | 介護休業給付金の手続き |
| よりそいホットライン | 0120-279-338(24時間無料) |
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。