この記事のポイント
- COPMはクライアント自身が「困っていること」「大切にしたいこと」を挙げ、重要度・遂行度・満足度を10段階で評価する面接式の評価ツール
- クライアント中心の実践(Client-Centred Practice)を具体化した、OT独自の評価法
- リハビリの目標設定と効果判定に活用でき、2点以上の変化が臨床的に意味のある改善とされる
COPMとは何か
COPM(Canadian Occupational Performance Measure:カナダ作業遂行測定)は、カナダ作業療法士協会が開発したクライアント中心の評価ツールです。
1991年の初版以来、40以上の言語に翻訳され、世界中のOTが使用しています。COPMの最大の特徴は、評価の主体がクライアント自身にあることです。
従来の評価は、専門家が「何ができるか・できないか」を判定するものでした。COPMはそのアプローチを180度転換し、「クライアントが何に困っているか」「何ができるようになりたいか」から出発します。
COPMが測定するのは以下の3つです。
- 遂行度: その活動を自分でどれくらいできているか(1〜10点)
- 満足度: その活動の出来具合にどれくらい満足しているか(1〜10点)
- 重要度: その活動が自分にとってどれくらい重要か(1〜10点)
COPMは、ご本人が「何に困っているか」「何ができるようになりたいか」を聞くことから始まるリハビリの評価方法です。
一般的なリハビリの評価は、専門家が「何ができるか」をテストします。COPMはその逆で、ご本人の声を中心に据えています。
「料理がまたできるようになりたい」「孫と公園に行きたい」「趣味の絵を描きたい」。こうしたご本人の望みを引き出し、リハビリの目標にするための評価です。
COPMの実施方法
ステップ1:作業遂行上の問題を特定する
半構造化面接を通じて、クライアントの作業遂行上の問題を引き出します。以下の3つの作業領域について尋ねます。
- セルフケア: 身の回りのこと(食事、入浴、更衣など)、移動、地域での生活
- 生産活動: 仕事、家事、学業
- レジャー: 趣味、社会参加、静的レジャー
面接では、「日常生活でうまくできないこと、困っていることはありますか?」「やりたいのにできていないことはありますか?」「やらなければならないのにできていないことはありますか?」といった質問から始めます。
ステップ2:重要度の評価
挙がった問題すべてに対して、重要度(1〜10点)を尋ねます。
- 1点: まったく重要でない
- 10点: 非常に重要
ステップ3:重要な問題を5つまで選ぶ
重要度の高い問題から最大5つを選び、それぞれについて遂行度と満足度を評価します。
ステップ4:遂行度と満足度の評価
選ばれた問題それぞれについて以下を尋ねます。
- 遂行度(1〜10点): 「この活動を自分でどれくらいできていますか?」
- 満足度(1〜10点): 「この活動の出来具合にどれくらい満足していますか?」
ステップ5:合計スコアの算出
- 遂行度スコア = 各問題の遂行度の合計 ÷ 問題数
- 満足度スコア = 各問題の満足度の合計 ÷ 問題数
ステップ6:再評価
介入後に同じ問題について再評価し、変化量を算出します。2点以上の変化が臨床的に意味のある改善(MCID: Minimal Clinically Important Difference)とされています。
COPMは以下のような流れで行われます。
- 困っていることを話す: 日常生活で困っていること、やりたいのにできていないことを話します
- 大切さを点数にする: それぞれがどれくらい大切かを1〜10点で答えます
- 特に大切な5つを選ぶ: 最も大切な問題を5つまで選びます
- 今の状態を点数にする: 「どれくらいできているか」「どれくらい満足しているか」を1〜10点で答えます
- リハビリ後に再評価: 同じ質問に答えて、変化を確認します
「何に困っていますか?」と聞かれると、すぐには答えられないかもしれません。面接の前に、ふだんの生活の中で「困っていること」「やりたいのにできていないこと」をメモしておくと、伝えやすくなります。
臨床での活用ポイント
面接の質が結果を左右する
COPMの結果は、面接者の技量に大きく依存します。以下のポイントを意識してください。
- 急がない: 十分な時間をとる(30〜40分が目安)
- 誘導しない: OTが「これが困っていませんか?」と誘導しない
- 言い換えを確認: クライアントの言葉をそのまま記録し、「こういう意味ですか?」と確認する
- 家族の意見と区別: 家族が同席する場合、クライアント自身の声を明確に区別する
COPMが難しい場合の対応
以下のケースではCOPMの実施が困難なことがあります。
- 重度の認知症: 自分の作業遂行上の問題を認識できない
- 重度の失語症: 言語的なやり取りが困難
- 病識の欠如: 問題がないと認識している
こうした場合、家族や介護者を代理回答者とすることが認められていますが、代理回答であることを明記し、結果の解釈には注意が必要です。
目標設定との連動
COPMで特定された問題は、そのままリハビリの目標に直結します。「料理ができるようになりたい(遂行度3/10、満足度2/10)」というCOPMの結果は、「調理動作の自立度向上」という具体的な目標に変換できます。
介入後の再評価で遂行度や満足度が2点以上上がれば、クライアントにとって意味のある改善が達成されたことになります。
COPMのよいところ
- ご本人の声が中心: 「専門家が決める」のではなく、ご本人が大切にしていることがリハビリの目標になります
- 変化がわかりやすい: 数字で表されるので、リハビリの前後でどれくらい改善したかが明確です
- モチベーションにつながる: 自分が「やりたい」と思ったことに取り組むので、リハビリへの意欲が高まります
ヒント
COPMでは「正解」や「間違い」はありません。ご本人が感じていることをそのまま伝えてください。「こんなことを言っていいのかな」と遠慮する必要はまったくありません。
まとめ ── COPMの臨床的意義
- COPMはクライアント自身の声を起点とする、OT独自のクライアント中心評価ツールである
- 重要度・遂行度・満足度の3軸で作業遂行上の問題を定量化し、目標設定に直結させる
- 2点以上の変化がMCIDであり、介入効果の判定基準として信頼性がある
- 面接の質が結果を左右するため、非誘導的な面接技術の研鑽が重要
ご家族の方へ ── 大切なポイントのまとめ
- COPMはご本人の「困っていること」「やりたいこと」から始まるリハビリの評価です
- 正解や間違いはありません。感じていることをそのまま伝えてください
- 数字で変化がわかるので、リハビリの成果を実感しやすい評価方法です
- 事前に「困っていること」をメモしておくと、面接がスムーズに進みます
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
運営者プロフィールを見る →