この記事のポイント
- 自分を責める気持ちは「弱さ」ではなく、真面目に向き合っている証拠
- その感情は、あなたの性格ではなく病気や状況が引き起こしている
- 「元通り」を目指さなくていい。小さな「できた」の積み重ねが回復の道
「自分が悪い」と思ってしまうあなたへ
「自分が悪いのではないか」「もっとちゃんとしなければ」――そう感じているのは、あなただけではありません。
ご家族の介護をされている方、お子さんのことで悩んでいる方、ご自身の体調を崩して休んでいる方。多くの方が、同じ気持ちを抱えています。
でも、知ってほしいことがあります。自分を責める気持ちは、あなたが弱いから生まれるのではありません。一生懸命に向き合っているからこそ、そう感じてしまうのです。
この記事では、作業療法士(OT)からのメッセージをお伝えします。
自責の念はなぜ生まれるのか
自分を責める気持ちには、よくある3つのパターンがあります。
- 「前はできていたのに」と比べてしまう — 病気やケガの前、介護が始まる前の自分と今を比べて、「ダメになった」と感じてしまうパターンです。でも、人生は常に変わるもの。以前と同じに戻ることだけが正解ではありません
- 「迷惑をかけている」と感じてしまう — 家族や職場に申し訳ないという気持ちです。でも、もしあなたの大切な人が同じ状況だったら、「迷惑だ」と思いますか?きっと「ゆっくり休んで」と思うはずです
- 「こうあるべき」に縛られてしまう — 「働いて当然」「母親はこうあるべき」といった社会のルールに追い詰められるパターンです。あなたの人生は、あなたのものです
作業療法士が伝えたい3つのこと
1. その気持ちは、病気や状況が引き起こしているもの
自分を責める気持ちは、あなたの性格が弱いから生まれるのではありません。病気や、疲れ切った状態が引き起こしている反応です。
たとえば、うつ病には「自分を責めてしまう」という症状そのものがあります。脳の状態が変わることで、自分を過度に責める考え方になってしまうのです。
介護疲れや仕事のストレスで限界を超えた状態でも、同じことが起こります。追い詰められた状況が、「自分が悪い」という感覚を作り出してしまうのです。
自分を責めている自分を、さらに責めなくて大丈夫です。2. 「元通り」を目指さなくていい
「前のように戻りたい」と思うのは自然な気持ちです。でも、作業療法士はこう考えます。
「前の自分に戻る」のではなく、「今の自分にできる生活を作る」。
回復は、過去に戻ることではありません。今の自分の中に、新しいやり方を見つけていくことです。以前とは少し違う形かもしれませんが、自分なりの暮らしを作り直していくことができます。
3. 小さな「できた」を積み重ねること
自分を責めているとき、「自分には何もできない」と感じてしまいがちです。でも、今日あなたがしたことを思い出してみてください。
- 朝、目が覚めた
- ご飯を食べた
- この記事を読んでいる
これは「当たり前」ではありません。つらい中でも生活を続けていること、それ自体が小さな「できた」です。
作業療法士は、この小さな「できた」を一緒に見つけていく専門家です。大きな目標は必要ありません。今日の小さな「できた」が、明日の自分を少しだけ支えてくれます。
あなたの声に応えたい
自分を責める気持ちは、状況によって異なる形で現れます。あなたに近い状況があれば、読んでみてください。
仕事を休んでいる自分を責めている方へ
「みんなは頑張っているのに」「甘えているだけでは」と感じていませんか。
休職は甘えではありません。体が「もう限界だ」と出したサインに従っただけです。骨折したら足を休めるのと同じように、こころが疲れたら休むのは当然のことです。
焦らず、まずは生活リズムを少しずつ整えることから始めてみましょう。
子どもの不登校・ひきこもりを自分のせいだと感じている方へ
「育て方が悪かったのでは」「もっと早く気づいていれば」。そう思ってしまう親御さんはとても多いです。
でも、不登校やひきこもりの原因はとても複雑で、「親のせい」という考え方は専門家の間では否定されています。
お子さんにとって大切なのは、疲れ切った親ではなく、安定した親です。まずはご自身の心と体を整えることが、お子さんへの一番のサポートになります。
介護で疲れ果てている自分を責めている方へ
「もっとちゃんとしなければ」「イライラしてしまう自分が嫌だ」。そう感じていませんか。
介護で疲れてイライラするのは、あなたが冷たいからではありません。限界を超えているからです。
完璧な介護を目指す必要はありません。60点の介護を長く続けるほうが、あなたにとっても、介護を受ける方にとっても良い結果になります。
ショートステイやデイサービスを使うことは「逃げ」ではありません。共倒れを防ぐための知恵も参考にしてみてください。
産後、「母親として失格」と感じている方へ
「うまくあやせない」「かわいいと思えないときがある」。そう感じて自分を責めていませんか。
産後は、ホルモンの変化、睡眠不足、生活の激変が重なる大変な時期です。この時期に自分を責める気持ちが出るのは、あなたの能力や愛情とは関係ありません。体が極限状態にあるのです。
産後うつは10人に1人が経験するほど一般的なものです。「弱音を吐いてはいけない」と思わずに、かかりつけ医や周囲の方に正直に伝えてください。
「作業」を通じて自分を取り戻す
作業療法士は、「何かをする」ことで気持ちを楽にしていくアプローチをとります。考え方を変えるのではなく、手を動かしたり、好きなことをしたりすることで、少しずつ心を回復させる方法です。
- 手を動かしてみる — 料理、編み物、ぬり絵など。手を動かすことに集中すると、つらい考えから少し離れることができます
- 小さな役割を見つける — 食事を作る、花に水をやる。「自分がやった」という感覚が、少しずつ自信を取り戻してくれます
- 好きだったことに触れてみる — 音楽を聴く、散歩する。「ちょっと楽しい」という気持ちが、自分を責める気持ちをやわらげてくれます
自分の作業バランスを見直してみることも、回復の大きな一歩になります。
一人で抱え込まないために
自分を責めているとき、「相談しても迷惑だ」「こんなことで相談するのは大げさだ」と感じるかもしれません。
でも、つらいと感じていることは、相談する十分な理由です。
| 相談先 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| かかりつけ医 | すべての方 | まず最初に相談しやすい窓口 |
| 精神科・心療内科 | こころの不調がある方 | 薬物療法と専門的なケアを提供 |
| こころの健康相談統一ダイヤル | すべての方 | 0570-064-556(全国共通) |
| よりそいホットライン | すべての方 | 0120-279-338(24時間無料) |
| 地域包括支援センター | 高齢者・介護者 | 介護の相談全般 |
| 精神科デイケア | 精神疾患で通院中の方 | 作業療法士のプログラムあり |
使える制度については支援制度まるわかりガイドにまとめています。
- 「今日できたこと」を1つだけ書き出してみましょう。どんなに小さなことでも構いません。「ご飯を食べた」「顔を洗った」でもOKです。
- 「自分を責めているな」と気づいたら、深呼吸を3回してみましょう。気づくだけでも、自分を責める連鎖を止める第一歩になります。
- 信頼できる人に「つらい」と伝えてみましょう。家族、友人、かかりつけ医、電話相談。誰に言っても大げさではありません。
今のあなたは、病気や困難な状況の中で、精一杯生きています。自分を責めてしまうのは、それだけ真剣に向き合っているからです。
完璧でなくていい。前に進めなくてもいい。今日一日を過ごせたこと自体が、あなたの力です。
もし「誰かに話を聞いてほしい」と少しでも感じたら、作業療法士に相談してみてください。あなたの「今のまま」を受け止めて、小さな一歩を一緒に考える専門家がいます。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。