この記事のポイント
食前に座り直しを手伝い、配膳後は皿を寄せただけなら、介護保険の調査では見守り等、病棟の評価票では一部介助です。
この記事の位置づけ
この記事は、介助の言葉が書類ごとにどう対応するかを整理するものです。判定するのは、介護保険では認定調査員と介護認定審査会、病棟では院内研修を受けた評価者です。本文の事例と例題はすべて架空です。
食事中にむせて止まらないときは、食事をやめる
食事中に強くむせて止まらない、声が出ない、顔色が変わる、口の中の物を飲み込めずに苦しそうなときは、姿勢を直すより先に食事をやめ、看護師や医師にすぐ連絡してください。反応がない、息が弱いときは救急車を呼びます。食べ物の形やとろみを変えるかどうかは、医師・看護師・言語聴覚士に相談して決めてください。
この言葉、誰がどう使っている?
「一部介助」を、それぞれの立場がどう言っているかを並べます。
5つの立場の言い方と定義を見る
| 誰の言葉か | 「一部介助」の言い方 | 決まった定義 |
|---|---|---|
| 本人・家族 | 「少し手伝ってもらう」「そばで見ていてもらう」。姿勢を直すことは「座らせてもらう」と別の言葉で言われます | なし |
| 介護職・看護師(現場の口語) | 「食事は見守りで」「食介は一部」。座り直しやエプロンまで含めて言う職場と、口に運ぶ介助だけを指す職場があります | なし(施設・地域で割れる) |
| リハ職(OT・PT・ST) | 「監視」「近位見守り」「部分介助」「軽介助」。姿勢を整えることは「姿勢設定」「セッティング」と呼び、食べる前の工程に置くことが多いです | なし(職種・流派で割れる) |
| 制度(認定調査・看護必要度など) | 「見守り等」「一部介助」(認定調査)「一部介助」(看護必要度) | あり。認定調査 2-4 食事摂取: 配膳後の食器から口に入れるまで。声かけ・皿の置き換えは見守り等/看護必要度(令和8年版 別紙7)B11 食事摂取: 患者の状態「一部介助」×介助の実施 |
| 論文・尺度 | 「supervision」「partial assistance」「minimal assistance」。日本語訳(監視・部分介助・最小介助)は複数あります | あり(訳語は複数) |
なぜ食い違うのか
食前に座り直しを手伝い、あとは本人が食べる場面は、現場で「見守り」とも「一部介助」とも呼ばれます。「見守り」を手伝った量の少なさとして使う人と、書類の選択肢の名前として使う人がいるためです。選択肢は介助の量を意味しない、と認定調査員テキストにもあります(p.23)。
背景にあるのは、送り手が手伝った量を、受け手が手を出すかどうかを、同じ「見守り」に載せていることです。たとえば、日勤の介護職 Aさんは「座り直しは手伝ったが、食べるのは本人だから見守り」のつもりで申し送り、夜勤の Bさんは「見守り=手を出さなくてよい」のつもりで受け取ります。食前の座り直しは、ここで落ちます。
制度の線は「配膳のあと、食卓の上で手を出したか」にあり、食前の座り直しは認定調査 2-4 食事摂取の範囲の外です。ただし認定調査は見守り等を独立した選択肢に置き、看護必要度(令和8年版 別紙7)B11 は見守りや指示が必要な場合も一部介助に含めます。配膳後に小鉢を寄せる同じ1回が書類で分かれるのは、このためです。
事例で見る: 当てはまる・当てはまらない・微妙
「一部介助」に当てはまる例: 座り直しと皿寄せのあと、本人が全部食べた
状況:80代の女性、急性期の一般病棟。昼食前に看護師が骨盤を支えて座り直しを手伝いました。
配膳後に小鉢を手前へ1回寄せました。本人は左手のスプーンで全部食べ、食卓への介助はこの1回です。
判定:当てはまる。病棟の評価票では患者の状態「一部介助」、認定調査では見守り等。
根拠:看護必要度(令和8年版 別紙7)B11 食事摂取「患者に応じた食事環境を整える食卓上の介助」。認定調査 2-4「皿の置き換え」は見守り等
記録ではこう書く:「昼食前、座り直し介助(骨盤を支える)。配膳後、小鉢の置き換え1回。以後スプーンで自力摂取、全量」
「一部介助」に当てはまらない例(介助されていない): 車椅子に移してエプロンをかけ、食卓では何もしなかった
状況:80代の女性、特別養護老人ホーム。夕食前、職員がベッドから車椅子へ移し、エプロンをかけて食堂へ運びました。
配膳後は別のテーブルの介助に回り、声かけも皿の置き換えもしていません。本人は箸で全部食べました。
判定:当てはまらない(介助されていない)。配膳後に介助も見守りもないためです。
根拠:認定調査 2-4 食事摂取の留意点「エプロンをかける、椅子に座らせる等は含まない」
記録ではこう書く:「夕食前、車椅子移乗・エプロン装着を介助し食堂へ。配膳後は付き添い・声かけなし、箸で自力摂取、全量」
「一部介助」に当てはまるか割れる例: 食事の途中で傾いた体を2回起こした
状況:80代の女性、介護老人保健施設。職員が同じテーブルに付き添う昼食で、食べる途中に体が左へ傾きました。
脇と骨盤を支えて座り直しを2回手伝いました。皿・食具には触れていません。
判定:割れる。座り直しが「食事摂取」の行為の一部か「椅子に座らせる等」かが決めきれません。
根拠:認定調査 2-4 食事摂取「配膳後の食器から口に入れるまで」、留意点「椅子に座らせる等は含まない」
記録ではこう書く:「配膳後、付き添いあり。食事中に左へ傾き、座り直し介助2回(脇と骨盤)。皿・食具への介助と声かけなし」
例題で確かめる
基準: (○: 主張のとおり ×: 違う △: 割れる)
- 認定調査員テキスト 2-4 食事摂取: 対象は「配膳後の食器から口に入れるまでの行為」。見守り等は常時の付き添い・確認・指示・声かけ・皿の置き換え、一部介助は食卓で小さく切る・ほぐす・スプーンに乗せる等(時間の長短は問わない)。エプロンをかける、椅子に座らせる等は含まない。介助の量は特記事項に書く(p.23)
- 看護必要度(令和8年版 別紙7)B11 食事摂取: 対象は「患者が食事を摂るための介助、患者に応じた食事環境を整える食卓上の介助」で、車椅子への移乗の介助・エプロン等は含まれない。一部介助は食卓で食べやすいように配慮する行為(切る、ほぐす、蓋をはずす等)や見守り・指示が必要な場合。患者の状態と介助の実施の2欄で書く
例題1
状況:整形外科の一般病棟のA様の夕食。看護補助者が座面とテーブルの高さを整え、配膳後に汁物の椀を手前へ置き換えて隣の患者へ移りました。A様はスプーンで全量を食べました。
この場合、「病棟の評価票では自立・実施なし」となる。
例題2
状況:デイサービスのB様の昼食。職員が同じテーブルに付き添い、配膳後に「熱いですよ」と声をかけ、食事中は手を出していません。B様は箸で全量を食べました。
この場合、「認定調査 2-4 では見守り等」となる。
例題3
状況:有料老人ホームのC様の朝食。職員が同じテーブルに付き添い、おかずをすくいにくそうなときに皿の縁を手で3回押さえました。切る・乗せる介助はなく、C様はスプーンで全量を食べました。
この場合、「認定調査 2-4 では見守り等」となる。
記録・書類にはこう書く
現場で起きたこと
昼食前、看護師が車椅子の後ろから骨盤を支えて座り直しを手伝った。配膳後に小鉢を手前へ1回寄せた。以後は本人が左手のスプーンで全部食べ、むせなし
記載例(介護記録/看護記録)
看護記録: 昼食前、車椅子上で座り直し介助(後ろから骨盤を支える)。配膳後、小鉢を手前へ置き換え1回。以後スプーンで自力摂取、全量、むせなし/介護記録: 食前の座り直しは朝・昼・夕の毎食、職員が骨盤を支えて行う。配膳後に手を出したのは小鉢の置き換え1回のみ、付き添いなし
根拠
看護必要度(令和8年版 保医発0305第7号)別添6 別紙7 B11 食事摂取: 食事環境を整える食卓上の介助が対象で、見守りや指示が必要な場合も一部介助に含む。認定調査員テキスト 2-4 食事摂取: 皿の置き換えは見守り等の例示、椅子に座らせる等は含まない。介助の量の多寡は特記事項に書く(p.23)
判定するのは誰か:認定調査では、調査員がこの事実を聞き取り、定義に照らして 2-4 食事摂取の選択肢を選びます。食前の座り直しのように範囲の外にある手間や、迷う場合は特記事項に手間と頻度を書いて審査会に委ねます。病棟の評価票は院内研修を受けた評価者が、観察と当日の記録に基づいて記入します。
制度によって定義が違います
認定調査 2-4 では「見守り等」と「一部介助」が別の選択肢ですが、看護必要度(令和8年版 別紙7)B11 では見守りや指示が必要な場合も「一部介助」に含まれます。
また、認定調査は調査日より概ね過去1週間で最も頻回な状況を選び、看護必要度は評価日の状態を、評価時間帯のうちに状態が変わったときは自立度の低い方で評価します。
現場で変えられること、変えられないこと
今日から自分で変えられること
- 記録は、食前の姿勢の調整と配膳後の行為を別の文に分けて書きます。
- 申し送りの「見守り」には、小鉢の置き換え1回など何をしたかを1つ足します。
- 足の裏が床につく位置・テーブルの高さ・クッションの当て方は、次の食事から直せます。
相談すれば変えられること
- 誰に: 病棟なら看護必要度の評価担当の看護師
- 伝える事実: 食事中に体を起こす座り直しが昼に2回ある
- 頼むこと: 食事中の座り直しを評価票でどう扱うかの確認
- 誰に: 施設・在宅なら生活相談員・介護支援専門員
- 伝える事実: 食前の座り直しが1日3回、食事中の傾きの直しが昼に2回ある
- 頼むこと: 認定調査の特記事項の材料にすること
変えられないこと
- 認定調査 2-4 と看護必要度 B11 の対象範囲は、現場では変えられません。
- 片麻痺や体幹の筋力低下で体が傾くこと自体は、記録の書き方では変わりません。
まとめ
- 食前に骨盤を支えて座り直しを手伝い、配膳後は小鉢を寄せただけで本人が全部食べたなら、看護必要度 B11 は食卓上の介助で患者の状態「一部介助」、認定調査 2-4 は皿の置き換えで見守り等。食前と配膳後を別の文に分けて書く
- 車椅子に移してエプロンをかけ、配膳後は食卓に手を出していないなら、認定調査 2-4 は椅子に座らせる・エプロンを含まないので介助されていない。配膳後に付き添いも声かけもなかったことを添える
- 食事の途中で脇と骨盤を支えて2回起こしたなら、それが食事摂取の行為の一部か「椅子に座らせる等」かは 2-4 の条文で決めきれず割れる。手の位置と回数を書き、特記事項で審査会に判断を渡す
- 申し送りで「見守りで」と言うときは何をしたかを1つ足す。選択肢は介助の量を意味しない(認定調査員テキスト p.23)ので、手間の多さは特記事項に書く
関連する問い
- 姿勢を整えるのは食事介助に入るか。看護必要度では「車椅子に座らせる」は含まない
- 途中から疲れて介助に切り替える。一部介助と全介助のどちらで書くか
- 手すりを持って座る本人を、腰に手を添えて支える。一部介助か、見守りか
- もっと詳しく: 食事の動作別ガイド(公開後にリンク)
- 定義の原文と変遷: otwiki『一部介助』(ページ作成後にリンク)
介護保険の調査のあとや、施設の面会で、「食事は見守りです」「一部介助です」と言われることがあります。家では食事の前に椅子や足の位置を直し、そのあとは介助されている方が自分で食べている。同じ場面が、書類ではどちらの言葉にもなります。
「一部介助」と言われたら、何が起きているのか
介護保険の認定調査では、食事は「配膳されてから口に入れるまで」だけを見ます。食事の前に椅子に座らせたり、エプロンをかけたりすることは、この範囲に入りません。配膳のあとにそばで見ている、声をかける、お皿を手前に寄せる、までなら「見守り等」です。食べ物を小さく切る、スプーンに乗せる、といった手助けがあると「一部介助」になります。入院中は病棟の評価の言葉が別にあり、お皿を寄せるだけでも「一部介助」と書かれることがあります。椅子や足台の準備のように範囲の外にある手間は、調査員が特記事項という欄に文章で書けます。
当てはまる例: 皿を寄せ、魚の骨を取ってから母が食べる 娘が食事の前に母の椅子を引き、足台を置きます。配膳のあと、魚の骨を取り、小鉢を手前に寄せてから台所へ戻り、母は自分の箸で最後まで食べます。魚の骨を取ることは食べやすくする手助けなので、調査では「一部介助」です。椅子や足台のことは数えません。
当てはまらない例: 椅子に座らせ、足を直してから父が食べる 息子が食事の前に父を椅子の奥まで座らせ、足の裏が床につくよう直します。配膳のあとは声をかけることも、お皿に手を出すこともなく、父は自分で全部食べます。調査では「介助されていない」です。座らせることは、調査が数える範囲の外にあります。
介助されている方がこの記事を読んだときは、「一部介助」は食事のどこか1か所に人の手が入ったという事実を表す書類の言葉だと受け取ってください。食べているのは本人です。
| 相談先 | 相談すること |
|---|---|
| ケアマネジャー | 調査のときに伝えた内容と、日頃の食事の様子が違うとき。食前の椅子や足台の準備を毎食していることを、回数とともに伝える |
| 訪問看護 | 食事中にむせる回数が増えた、食事の途中で体が傾くようになったとき。食事の場面を実際に見てもらう |
| かかりつけ医 | 食事に手がかかるようになったのが急で、病気や薬の変化が疑われるとき。いつから・どの動作かを伝える |
| 施設の相談員 | 施設の記録に「一部介助」とあるとき。食事のどの部分に手が入っているかを聞く |
明日の食事から、食べる前に3つを見てください。お尻が椅子の奥まで入っているか、足の裏が床か足台についているか、テーブルが肘を置いて楽な高さか。この3つは介助している人が家で直せる部分で、「食前に椅子と足台を毎食直している」とケアマネジャーに伝えると特記事項に書く材料になります。食べ物の形やとろみは、相談してから変えてください。
家ではこう分けて伝える
まとめ
- 食事の前に椅子や足台を直し、配膳のあとに魚の骨を取って小鉢を寄せてから本人が食べているなら、調査では「一部介助」。骨を取ることが手助けに数えられ、椅子や足台は数えられない
- 椅子の奥まで座らせて足を直し、配膳のあとは声もかけずお皿にも触れていないなら、調査では「介助されていない」。手伝っていないのではなく、数える範囲の外にある
- 食前の準備は毎食していると、回数を添えてケアマネジャーや調査員に伝える。範囲の外でも特記事項に書く材料になる
- 家族向けの関連記事: 食べる・のみこむが心配なときに読むガイド/ADL(日常生活動作)って何?
この説明で、知りたいことは分かりましたか?
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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