この記事のポイント
入浴は脱衣から着衣まで9つの工程に分かれます。介護保険の調査で項目があるのは、体を洗うこと・衣服の着脱・浴室への移動だけで、浴槽をまたぐ・浸かる・出る工程には項目がなく、調査員が特記事項に手間と頻度を書いて審査会に委ねます。この動作で最も食い違う言葉は「見守り」です。
この記事の位置づけ
この記事は、入浴の介助で使われる言葉が書類ごとにどう対応するかを整理するものです。判定するのは、介護保険では認定調査員と介護認定審査会、病棟では院内研修を受けた評価者です。本文の事例はすべて架空です。
入浴をやめるとき、看護師・医師に相談するとき
湯船をまたぐ途中でふらついた、縁や手すりを持つ手が滑った、本人が「怖い」「無理」と言ったときは、上げた足を床に戻して縁や椅子に座ってもらい、その先を続けずに看護師へ伝えます。湯に浸かっている間や湯から立ち上がった直後に、声をかけても返事がない、ろれつが回らない、顔色が白い・赤い、冷や汗が出ている、「気持ち悪い」「胸が苦しい」と言う、のどれか一つでも見えたら、人を呼んで湯から出し、座らせて看護師か医師に連絡します。入浴前に測る血圧や体温がいつもと違うとき、顔色が悪いときは入浴せずに看護師へ伝え、再開してよいかは医師に確かめます。何を「いつもと違う」とするか、入ってよい数値・やめる数値は施設の基準と医師の指示で決まっているため、この記事では示しません。心臓の病気や血圧の薬がある方は、入る前でも途中でも、迷ったら看護師・医師に相談します。
結論: 入浴で最も食い違う言葉は「見守り」
「入浴は一部介助」と1語で申し送ると、受け手は9つの工程のどこで手が出ているのかを補って読むことになります。背中を洗うことなのか、湯船をまたぐときに腰を支えることなのかは、その1語からは分かりません。
介護保険の認定調査で入浴に関わる項目は、1-10 洗身(介助の方法)、2-10 上衣の着脱、2-11 ズボン等の着脱、2-2 移動の4つです。浴槽をまたぐ・浸かる・出る工程は、1-10 洗身の留意点に「入浴行為は、この項目には含まない」とあり、2-1 移乗の列挙にも浴槽はありません(認定調査員テキスト p.57、p.70)。
その場合、調査員は「能力の項目の中でもっとも類似または関連する調査項目の特記事項に、具体的な介護の手間とその頻度を記載し」、審査会の二次判定に委ねます(同 p.22)。この記事は、現場の言葉をその手続きに乗る形へ言い換えるための1本です。
最も食い違うのは「見守り」です。1-10 洗身では見守り等は一部介助に含まれ、2-2 移動では独立した選択肢で、訪問介護の見守り的援助は必要に応じて行う介助を含み、通所介護の入浴介助加算では「観察」がこの見守り的援助を指します。
工程分解表: 9工程を現場の言葉と制度の言葉で並べる
入浴を9つの工程に分け、現場での呼び方、制度での呼び方、よく食い違う点を並べます。制度の欄は認定調査員テキスト(令和6年4月改訂)を軸にし、項目がない工程は「特記事項」と書きました。
| 工程 | 現場での呼び方 | 制度での呼び方 | よく食い違う点 | 関連する問い |
|---|---|---|---|---|
| 1 脱衣 | 「脱衣」「脱がせる」「脱衣所で介助」 | 認定調査 2-10 上衣の着脱/2-11 ズボン等の着脱(介助の方法)。入浴介助加算の「入浴」に脱衣を含むかは通知に明記なし | 「脱衣は介助」が、脱がせることか、脱衣所での立位を支えることか | 「脱衣は介助」は、脱がせることか、脱衣所での立位を支えることか |
| 2 浴室へ入る | 「浴室誘導」「浴室内は見守り」 | 認定調査 2-2 移動(入浴等で必要な場所への移動) | 「浴室内は見守り」が、手を出せる位置にいることか、脱衣所から見ていることか | 「浴室内は見守り」は、手を出せる位置にいることか、脱衣所から見ていることか |
| 3 洗い場で座る | 「シャワーチェアに座らせる」「座位OK」 | 該当項目なし。1-5 座位保持・1-8 立ち上がりは能力の項目で、介助の有無を書く欄ではない → 特記事項 | 「座れる」が、椅子に座れることか、座ったまま洗えることか | 「座れる」は、椅子に座れることか、座ったまま洗えることか |
| 4 洗体 | 「洗体」「背中だけ介助」「洗身」 | 認定調査 1-10 洗身(見守り等は一部介助に含む。洗髪・入浴行為は含まない)。FIM では「清拭(入浴)」の項目に当たる(段階は本記事では扱わない) | 背中だけ洗えば一部介助。本人が洗った後に全身を洗い直せば全介助 | 「洗身は一部介助」は、背中だけか、下肢もか |
| 5 洗髪 | 「洗髪介助」「流すだけ」 | 認定調査 1-10 洗身に含まない → 洗身の特記事項 | 「洗髪は介助」が、流すだけか、洗うところからか | 洗髪は洗身に入るか。では洗髪介助はどこに書くか |
| 6 浴槽へ移動 | 「浴槽まで誘導」「縁に手を添える」 | 認定調査 2-2 移動に含めるかは割れる → 特記事項 | 縁に手を添えて誘導するのは、見守りか、一部介助か | 浴槽の縁に手を添えて誘導する。見守りか |
| 7 またぎ(入る・出る両方向) | 「またぎ」「またぎ見守り」「またぎ軽く」 | 該当項目なし(1-10 は入浴行為を含まない。2-1 移乗の列挙に浴槽はない)→ 関連する項目の特記事項に手間と頻度(p.22) | 座位またぎか、立位またぎか、バスボードか。職員の立つ位置 | 「またぎは見守り」は、座位またぎか立位またぎか/またぐとき膝の裏を支える。一部介助か、全介助か |
| 8 浸かる/出る(浴槽内で立ち上がるまで) | 「浴槽見守り」「湯船で見守り」「脇を支えて出す」 | 該当項目なし → 特記事項。訪問介護では老振発0330第2号 1-6「入浴、更衣等の見守り」 | 目を離さないことか、時間を決めて声をかけることか。脇を支えて立つのは一部介助か | 「浴槽で見守り」は、目を離さないことか、5分経ったら声をかけることか/浴槽から出るとき脇を支える。一部介助か |
| 9 拭く・着衣 | 「拭いて着せる」「背中だけ拭く」 | 拭く行為は該当項目なし(1-10 は洗うことのみ)→ 特記事項。着衣は 2-10・2-11 | 「拭くのは介助」が、背中だけか、足の指の間もか。入浴介助はどこで終わるか | 体を拭くのは入浴か、更衣か |
工程の範囲を2点だけ決めておきます。工程7「またぎ」は、浴槽に入るときも出るときも、脚が縁を越える動作を指します。工程8「浸かる/出る」は、湯に浸かっている間から、浴槽内で立ち上がるまでです。
この切り方にしたのは、出るときの危険が「縁を越える」と「湯の中で立つ」で別だからです。前者は転倒、後者は血圧の変化とのぼせが重なります。申し送りで「出るときは介助」とだけ言うと、どちらの危険に手を出しているのかが伝わりません。
つまずき別 見立て表: 症状 → 原因の候補 → まず試すこと
「まず試すこと」は、その日の介助で職員が自分で変えられることに限りました。用具の導入や改修が要るものは、06・07 の章へ送っています。
| 見えたこと | 原因の候補(能力か、環境か) | まず試すこと(今日) | 用具・改修が要るなら |
|---|---|---|---|
| 脱衣所で服を脱ぎ始めない | 寒さ/脱ぎ方の手順が出てこない/脱ぐ理由が伝わっていない | 脱衣所を先に暖める。上着の襟を持って「片腕を抜きます」と1手順ずつ声をかける | 脱衣所の暖房(07) |
| 浴室の入口で足が止まる | 段差/床の濡れ/履物/怖さ | 床の水を流してから入る。段差の手前で止まって「一段あります」と言う。手すりを先に握ってもらう | 入口の段差解消・すのこ(07) |
| シャワーチェアに座らない・座っても浅い | 座面が低い・高い/座面が見えない/座り方の手順 | 椅子を壁につけて動かないようにし、本人の手を座面に触れさせてから座る | 座面高が合う椅子(06) |
| 背中・足先を洗わない | 手が届かない/片側を見落とす/洗ったつもり | 長柄のスポンジを渡す。見落とす側に立って「左の足も」と場所を言う | 長柄ブラシ・ループ付きタオル(06) |
| 浴槽の縁で動きが止まる | 縁が高い/またぐ方式が本人と職員で違う/怖さ | 縁に腰掛けてから片脚ずつ入れる方式に、その場で切り替える。職員は正面に立つ | バスボード・浴槽台・手すり(06・07) |
| 湯の中で立ち上がれない | 深さ/床が滑る/のぼせ/手すりがない | 浴槽台があれば座面を上げる。立つ前に「手すりを持って、ゆっくり」と声をかけ、立ったら数秒止まる | 浴槽台・浴槽内手すり(06) |
| 拭くのに時間がかかり体が冷える | 腕が上がらない/順番が分からない/浴室が寒い | バスタオルを肩にかけてから拭き始める。背中は職員、前は本人と分担を先に言う | 脱衣所の暖房(07) |
原因の欄は「本人の能力」と「環境」を分けて書いています。「またげない」と記録するときも、股関節が曲がらないのか、縁が高いのか、方式が合っていないのかを1語ずつ分けると、次の章の介助量の判断と、06・07 の相談につながります。
介助量別の具体的手順: 自立/見守り/一部介助/全介助
介助量の呼び方は、認定調査の 1-10 洗身の選択肢(介助されていない/一部介助/全介助/行っていない)を軸にします。認定調査員テキスト p.23 は、調査員が選択肢を選ぶ基準として「『見守り等』や『一部介助』『全介助』といった選択肢は、介助の量を意味するものではなく、『介助の方法』を示すもの」と書いています。
調査では、手が出た回数の多さではなく、どの行為に介助が行われているかで選ばれます。浴槽の工程は選択肢がないので、この4段階を浴槽に当てはめずに、手間と頻度を調査員に伝えます。
| 現場の言い方 | 認定調査 1-10 洗身(調査員が選ぶ) | 浴槽の工程(認定調査) | 訪問介護の記録(老振発0330第2号) | 病棟の評価票(看護必要度) |
|---|---|---|---|---|
| 自立 | 1. 介助されていない(介助も見守りも行われていない) | 項目なし。介助がなくても、転倒・のぼせの既往があれば特記事項に | 身体介護に該当する行為がなければ記録は事実のみ | 入浴の項目なし(B項目は移乗・口腔清潔・食事摂取・衣服の着脱など) |
| 見守り | 2. 一部介助(見守り等が行われている場合も含まれる) | 項目なし → 特記事項に位置・声かけ・頻度 | 1-6 見守り的援助(入浴、更衣等の見守り。必要に応じて行う介助を含む) | 同上 |
| 一部介助 | 2. 一部介助(介護者が石鹸等を付けて、体の一部を洗う等) | 項目なし → 特記事項に手の位置・脚を上げたのは誰か・頻度 | 身体介護(入浴介助) | 同上 |
| 全介助 | 3. 全介助(本人が洗った箇所も含めて介護者が全てを洗い直す場合を含む) | 項目なし → 特記事項に抱える・持ち上げる等の内容と頻度 | 身体介護(入浴介助) | 同上 |
FIM の段階と BI の点数は一次資料(有償の手引き・原著)を本記事の執筆時点で照合できていないため、この表には並べていません。
自立(介助されていない)
職員は脱衣所か浴室の外にいて、手も声も出していない状態です。転倒やのぼせの既往がある方は、介助がなくても「入浴前に血圧を測っている」「浴室のドアを開けている」といった見守りの体制を記録に残します。
見守り(付き添い・声かけ)
脱衣〜浴室へ入る
- 1脱衣所を暖めてから入る
- 2段差の手前で「一段あります」と言い、手すりを先に握ってもらう
- 3浴室の床の水を流してから入る
洗い場〜洗体・洗髪
- 4椅子の横に立ち、座り終わるまで見る
- 5洗い残しやすい場所を言葉で指す(「左の足も」)
- 6シャワーの湯温を職員が先に手で確かめる
浴槽へ移動〜またぎ
- 7方式(座位・立位・バスボード)を本人と確かめる
- 8座位またぎなら正面、立位またぎなら手すりの反対側に立つ
- 9「右足から」と1脚ずつ声をかける。手は構えるだけ
浸かる〜出る〜着衣
- 10浴槽の横に立ち、2〜3分おきに声をかける(間隔は施設の基準で)
- 11立つ前に「手すりを持って、ゆっくり」と言う
- 12拭き始める前にバスタオルを肩にかける
見守りの位置と声かけの間隔は、どの文書にも定義がありません。訪問介護の見守り的援助が「必要に応じて行う介助」を含むように、見守りは手が出せる位置にいることの約束です。
一部介助(手を添える・体を支える)
脱衣〜浴室へ入る
- 1上衣は本人、ズボンは職員、のように分担を先に決めて声に出す
- 2段差では手すり側の反対に立ち、肘を下から支える
- 3浴室内では前を歩かず、患側の斜め後ろにつく
洗い場〜洗体・洗髪
- 4座るときは腰に手を添え、座面に着くまで離さない
- 5本人が洗った後に、届かない部分(背中・足先)だけを職員が洗う
- 6洗髪は泡立てまで職員、洗うのは本人、流すのは職員、と工程で分ける
浴槽へ移動〜またぎ
- 7縁に腰掛けるまで腰に手を添える
- 8またぐ脚の膝裏に手を添え、脚を上げるのは本人に任せる
- 9職員の手が添えられている時間(越える間、離さない)を記録する
浸かる〜出る〜着衣
- 10立つ動きが起きてから脇を支える。動きが起きる前に引き上げない
- 11縁に腰掛け直してから脚を出す
- 12背中は職員が拭き、前は本人。着衣は袖を構える
一部介助で申し送るときは、手の位置と、力を受けているのが誰かを1語ずつ添えます。「腰に手を添える」と「腰を支える」は、記録では別の行為として書き分けます。
全介助(抱える・運ぶ・洗い直す)
脱衣〜浴室へ入る
- 1脱衣は一連の行為すべてを職員が行う
- 2移動はシャワーキャリーか車椅子で、乗り移りは2人で行う
洗い場〜洗体・洗髪
- 3本人に手の届くところを洗ってもらった後、職員が全身を洗い直す場合も全介助に当たる
- 4洗髪は職員が行い、目に湯が入らないよう顔を上に向ける
浴槽へ移動〜またぎ〜浸かる〜出る
- 5リフト・機械浴か、職員2人で脚を抱えて入れる
- 6浸かっている間は職員が浴槽の横を離れない
- 7出るときは動きが起きるのを待たず、2人で抱え上げる
拭く・着衣
- 8拭く・着衣とも職員が行う
- 9着衣中も体を冷やさないよう、拭き終えた部分から順に着せる
全介助の記録で残す事実は「誰が何人で、何を抱えたか」です。1-10 洗身の全介助には「本人に手の届くところを『洗身』してもらった後、本人が『洗身』した箇所も含めて、介護者が全てを『洗身』し直している場合」が含まれ、本人が手を動かしていても全介助が選ばれることがあります(認定調査員テキスト p.57)。
障害像別の注意点: 「できない」の主語を書き分ける
「またげない」「洗えない」と記録するとき、主語が本人の能力なのか、環境なのかを分けて書きます。同じ「できない」でも、相談先と変えられることが違うからです。
| 障害像 | 入浴で起きやすいこと | 能力の側(本人) | 環境の側(浴室・用具・方式) | 記録で分けて書く1語 |
|---|---|---|---|---|
| 片麻痺 | 患側の脚が縁を越えない。患側の背中・足先を洗い残す | 股関節・膝の曲がる角度、患側の足の感覚 | 縁の高さ、手すりの位置(健側で握れるか)、またぐ方式 | 「患側の脚を上げたのは本人か職員か」 |
| 高次脳機能障害(半側空間無視・失行) | 片側を洗わない。手順が途中で止まる。洗ったつもり | 注意の向く範囲、手順の想起 | 洗い場の物の置き方(見落とす側に置かない)、手順の声かけ | 「左側を洗わなかった」と「左側に手が届かなかった」を分ける |
| 認知症 | 脱衣所で脱がない。湯船に入らない。長湯になる | 場面の理解、寒さ・怖さの訴え方 | 脱衣所の温度、湯の見え方、声のかけ方 | 「拒否」ではなく、本人の言葉と行動をそのまま書く |
| 疼痛・可動域制限(腰・膝・股関節) | 縁をまたぐ角度が取れない。座面が低いと立てない | 関節の可動域、痛みの出る動作 | 座面高、浴槽台、バスボード | 「痛みで止まった」と「高さで止まった」を分ける |
| 失調・パーキンソン病 | 立位で揺れる。動き出しが遅い。すくみ足 | バランス、動き出しの時間帯(薬の効き) | 手すりの位置、床の滑り止め、座位またぎへの変更 | 「揺れた」ではなく「手すりを離した瞬間に右へ傾いた」と場面で書く |
認知症の方の入浴の拒否は、別記事「お風呂に入りたがらない」認知症の方への声かけと環境の整え方に分けています。本記事では「拒否」と一語で記録せず、本人の言葉と行動を書き残す点だけ扱います。
福祉用具・自助具: 選択基準と相談先
用具は、工程表のどこで止まっているかから選びます。またぎで止まる人と、座るところで止まる人では、足す用具が違います。
| 用具 | 止まっている工程 | 選ぶときに見ること | 合わない場合に起きること |
|---|---|---|---|
| シャワーチェア(入浴用いす) | 3 洗い場で座る/4 洗体 | 座面の高さが本人の膝下の長さに近いか。背もたれ・肘掛けの有無。座面が浴槽の縁と同じ高さなら、腰を浮かせて縁に腰掛ける形で移れる | 低すぎると立てない。高すぎると足が床に着かず洗えない |
| バスボード(浴槽の縁に渡す板) | 7 またぎ | 縁に腰掛けて片脚ずつ入れる方式に変えられるか。板の上で向きを変えるだけの座位バランスがあるか | 板の上で回れないと、立位またぎより危ない |
| 浴槽台(浴槽内いす) | 8 浸かる/出る | 浴槽の深さから台の高さを引いた残りが、座ったときの湯面の高さ。立つときの座面高にもなる | 高すぎると肩まで浸からない。低すぎると立てない |
| 浴槽用手すり(縁に固定) | 6 浴槽へ移動/7 またぎ | 縁の厚みに合うか。握る手が健側か。立位またぎで握る位置に来るか | 縁に固定できない浴槽では使えない |
| 浴室内すのこ | 2 浴室へ入る/3 洗い場で座る | 脱衣所と洗い場の段差を埋められるか。排水を妨げないか | 段差が残ると入口でつまずく |
| 滑り止めマット | 2〜9 すべて | 浴槽内用と洗い場用を分ける。吸盤が浴槽の底に着くか | ずれるマットは、無いより滑る |
| 長柄スポンジ・ループ付きタオル | 4 洗体 | 背中・足先に届くか。片手で持てる重さか | 届かない部分の洗い残しが続く |
購入・貸与の相談先は、福祉用具専門相談員とケアマネジャーです。入浴用いす・浴槽用手すり・浴槽内いす・入浴台(バスボード)・浴室内すのこ・浴槽内すのこは、介護保険では「入浴補助用具」として特定福祉用具販売(購入)の種目に挙げられています(厚生省告示第94号)。貸与か購入か、費用の自己負担がいくらかは、この2者に確認します。
職員が用具の変更を切り出すときは、「立位またぎで縁を持つ手が今週2回滑った」のように、工程・回数・時間帯を添えて伝えます。家庭向けの用具の解説はお風呂に安全に入るための工夫にあります。
環境設定・住宅改修: 高さ・位置・段差を数字で測る
入浴の環境は数字で測れて、数字で伝えられます。「浴槽が深い」ではなく「深さ55cm」と書けば、浴槽台の高さが決まり、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員にそのまま渡せます。
測る5つの数字
| 測る場所 | 測り方 | 何と比べるか | 合わせ方 |
|---|---|---|---|
| 浴槽の縁の高さ(洗い場の床から) | 床から縁の上面まで | 本人の膝下の長さ(座って膝裏から床まで)と、シャワーチェアの座面高 | 座面と縁が同じ高さなら、腰を浮かせて縁に腰掛ける形で移れる。縁が高いなら洗い場側にすのこを敷くか、座面を上げる |
| 浴槽の深さ(浴槽の底から縁まで) | 内側で底から縁まで | 浴槽台の高さ | 深さから台の高さを引いた残りが、座ったときの湯面と、立つときの座面高になる |
| シャワーチェアの座面高 | 床から座面まで | 本人の膝下の長さ | 足の裏が床に着き、膝がほぼ直角になる高さ。立ち上がりが難しい人は少し高め |
| 手すりの位置と高さ | 縁からの距離と、床からの高さ | 本人が握る手(健側)の高さ。立位またぎで軸足側に来るか | 本人に浴槽の横に立ってもらい、握りやすい高さに印を付けてから決める |
| 脱衣所と洗い場の段差 | 床面の差 | すのこの厚み | すのこで段差をなくす。排水の向きを確かめる |
基準値はこの記事では置きません。本人の体格と浴槽で決まる数字だからです。代わりに、本人に実際に座り、立ち、握ってもらって、その位置を数字で記録します。
今日変えられること・決裁が要ること
その日の介助で職員が変えられるのは、椅子の位置、すのこや滑り止めマットの置き場所、浴槽台の高さ、脱衣所の暖房と湯温、シャワーの向きです。手すりの新設、段差の解消、浴槽の交換、脱衣所の暖房機の設置は、管理者・ケアマネジャーの決裁が要ります。
湯温と浸かる時間について、消費者庁は一般向けに「湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安」と示しています(消費者庁 令和2年11月19日 注意喚起。目安の出典は厚生労働科学研究の「安全な入浴の手引き」)。これは施設の中止基準ではなく、環境を設定するときの参考です。個々の利用者の湯温と時間は、看護師・医師の指示を優先します。
管理者・ケアマネジャーに見せる文面の型
決裁が要る改修を頼むときは、「困っている」ではなく、数字と回数で書きます。
場面と数字
浴槽の縁の高さ 60cm、深さ 58cm、洗い場の床から縁まで段差なし。本人の膝下の長さ 40cm。シャワーチェアの座面 40cm
起きていること(回数・時間帯)
立位またぎで縁を握る右手が滑ったのが今週2回(火・金の午後)。いずれも職員が腰を支えて止めた
頼むこと
縁に固定する浴槽用手すりの導入と、縁の高さに合わせて座面 60cm のバスボードを試すこと。試す日に福祉用具専門相談員の同席を頼む
通所介護で入浴介助加算(Ⅱ)を算定している事業所では、この訪問評価が加算の要件そのものです。留意事項通知は「医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士若しくは介護支援専門員又は利用者の動作及び浴室の環境の評価を行うことができる福祉用具専門相談員、機能訓練指導員、地域包括支援センターの職員その他住宅改修に関する専門的知識及び経験を有する者」が「利用者の居宅を訪問」し「浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を評価する」と書いています(介護保険最新情報 Vol.1213 通所介護 7⑽イ②a)。
同じ項に、居宅での入浴が難しいと判断した場合は「福祉用具の貸与若しくは購入又は住宅改修等の浴室の環境整備に係る助言を行う」とあります。上の文面の型は、この助言を現場側から書き起こしたものです。
評価と記録への落とし込み: 現場の言葉を記録の言葉に変える
現場で起きたことを、記録に書ける言葉と根拠に変える表です。記載例は事実だけを書き、認定調査の選択肢名を施設の記録には書きません。選択肢を選ぶのは調査員だからです。
| 現場で起きたこと(申し送りの言い方) | 記録に書ける言葉 | 根拠(文書名・項目) |
|---|---|---|
| 「洗身は一部介助で」 | 本人が前面と両腕を洗い、職員が背中と両足先をスポンジで洗った | 認定調査員テキスト 1-10 洗身 2. 一部介助(介護者が石鹸等を付けて、体の一部を洗う等)p.57 |
| 「洗身は見守り」 | 本人が全身を洗い、職員は横に立って「左の足も」と2回声をかけた。手は出していない | 1-10 洗身 2. 一部介助(見守り等が行われている場合も含まれる)p.57。※洗身では見守りと一部介助が同じ選択肢 |
| 「洗髪は介助」 | 本人が泡立てて洗い、職員がシャワーで流した | 1-10 の留意点「洗髪行為は含まない」p.57 → 洗身の特記事項に書く事実 |
| 「浴室内は見守り」 | 脱衣所から洗い場までの4歩、職員は患側の斜め後ろについて歩いた。手は出していない | 認定調査 2-2 移動 2. 見守り等(常時の付き添いの必要がある見守り、声かけ等)p.73 |
| 「またぎは見守り」 | 縁に腰掛けて右脚、左脚の順に入れた。職員は正面に立ち「右足から」と声をかけた。触れていない | 項目なし。関連する項目の特記事項に手間と頻度(p.22)。訪問介護は老振発0330第2号 1-6 見守り的援助 |
| 「またぎは軽く介助」 | 立位で左手で手すりを握り、右脚から越えた。職員は右側で右手を腰に添え、越える間離さなかった | 項目なし → 特記事項に手の位置と頻度(p.22) |
| 「出るときは介助」 | 本人が手すりを引いて立ち始めた動きに合わせ、職員が両脇を支えた。抱え上げていない | 項目なし → 特記事項に「立つ動きに合わせて脇を支える介助が入浴のたびに必要」と書ける事実(p.22) |
| 「拭くのは介助」 | 背中と両足先を職員が拭き、前面と腕は本人が拭いた | 項目なし → 特記事項。着衣は 2-10・2-11 p.93〜96 |
認定調査員に伝える事実(特記事項に書かれる形)
特記事項を書くのは調査員です。現場や家族は、調査員が書ける形で事実を伝えます。伝える形は「工程・手の位置・誰が動かしたか・頻度」の4点です。
現場で起きたこと
週2回の入浴のたびに、立位またぎで右脚を上げるときに職員が膝裏に手を添える。脚を上げるのは本人。湯から立ち上がるときは、本人が立ち始めてから両脇を支える
調査員に伝える言葉
「湯船をまたぐとき、右脚の膝裏に職員が手を添えています。脚を上げるのは本人です。週2回の入浴で毎回です。湯から出るときは、立ち始めてから両脇を支えます」
根拠
認定調査員テキスト p.22(「介助の方法」に適切な項目がない場合、関連する調査項目の特記事項に具体的な介護の手間とその頻度を記載し、二次判定の判断を仰ぐ)。1-10 洗身の留意点「入浴行為は、この項目には含まない」p.57
訪問介護の記録(サービス提供記録)
訪問介護では、老振発0330第2号の 1-6「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」に「入浴、更衣等の見守り(必要に応じて行う介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを含む)」が列挙されています。記録には、見守りの位置、声かけの内容、手が出た場面と回数を事実で書きます。
記載例:「入浴。洗い場で座るまで腰に手を添える。洗身は本人、背中のみヘルパーが洗う。またぎは縁に腰掛けて片脚ずつ、ヘルパーは正面で声かけ、触れず。浴槽内5分、横で気分を2回確認。出るときは立ち始めてから両脇を支える」
病棟の看護記録
看護必要度(令和8年版 保医発0305第7号 別添6 別紙7 一般病棟用)の B項目に入浴の項目はありません。衣服の着脱は B12 にあり、「患者の状態」と「介助の実施」の2欄で評価者が記入します。病棟の看護記録は、入浴前後のバイタルと、介助の事実、途中でやめた場合はその場面と時刻を書きます。
記載例:「シャワー浴。入浴前 BP・HR いつもの範囲(数値は看護記録の欄に)。シャワーチェアへの移乗は腰に手を添え、洗身は背中のみ介助。洗髪は看護師。終了後ふらつきなし。着衣は袖を構え、本人が腕を通す」
判定するのは誰か:認定調査では、調査員がこの事実を聞き取り、項目がある工程は定義に照らして選択肢を選び、項目がない浴槽の工程は特記事項に手間と頻度を書いて審査会に委ねます。病棟の評価票は院内研修を受けた評価者が、観察と当日の記録に基づいて記入します。施設や病棟の記録に選択肢名を書くのではなく、判定者が判断できる事実を残すのが現場の役割です。
計画書の目標文例(期間・時間帯・達成時期を必ず書く)
「入浴の自立を目指す」では、いつ・どの工程が・どうなれば達成なのかが分かりません。目標は工程・条件・期間で書きます。
- 「3か月後(2026年12月末)までに、週2回の午後の入浴で、バスボードに腰掛けて片脚ずつ浴槽に入る動作を、職員が正面で声をかけるだけで行う」
- 「1か月後までに、洗身のうち背中以外を本人が長柄スポンジで洗い、職員は背中のみ洗う(週2回の入浴すべてで)」
- 「2か月後までに、湯から立ち上がるとき、浴槽台に座った状態から浴槽用手すりを引いて本人が立ち始め、職員は両脇に手を構えるだけにする」
通所介護の入浴介助加算での言葉
通所介護の入浴介助加算(Ⅰ)は「入浴中の利用者の観察を含む介助を行う場合」に算定され、この「観察」は「自立生活支援のための見守り的援助」で、「極力利用者自身の力で入浴し、必要に応じて介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを行うことにより、結果として、身体に直接接触する介助を行わなかった場合についても、加算の対象となる」と書かれています(介護保険最新情報 Vol.934 通所介護 ⑻ア①。令和6年度改定の Vol.1213 では通所介護 7⑽ア①は改正なし)。
令和6年度の改定で(Ⅰ)の要件に研修が加わり、「入浴介助に関する基礎的な知識及び技術を習得する機会」と示されました(同 ア②)。(Ⅱ)は、居宅での訪問評価(前章)、個別の入浴計画、「個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境」での入浴介助の3つで構成されます(同 イ②a〜c)。
この「観察」と、認定調査の「見守り等」、訪問介護の「見守り的援助」は、同じ「見守り」を別の文書が別の目的で定義したものです。記録では、どの文書の言葉で書いているかを決めたうえで、事実は同じ形(位置・声かけ・手が出た場面と回数)で残します。
制度によって「見守り」の扱いが違います
認定調査の 1-10 洗身には見守り等の選択肢がなく、見守り等は一部介助に含まれます。2-2 移動では見守り等が独立した選択肢です。訪問介護の見守り的援助は「必要に応じて行う介助」を含み、通所介護の入浴介助加算の「観察」はこの見守り的援助を指します。浴槽の工程はどの文書にも項目がなく、調査員が特記事項に書きます。
ヒヤリハット・失敗例: 転倒と温熱
場面・見えたこと・言動を分けて書き、推測と評価を混ぜません。各例の末尾に、今日変えられること・相談すれば変えられること・変えられないことを1行ずつ置きます。中止のラインと連絡先は冒頭の注意にまとめました。
例1(転倒): 洗い場の椅子から立ち上がった直後に滑った
場面:80代の男性、特別養護老人ホーム。週2回の午後の入浴。洗身を終え、浴槽へ移る前。
見えたこと:シャワーチェアから自分で立ち上がり、一歩目で右足が前へ滑って、しりもちをついた。床には泡が残っていた。職員は洗髪用のシャワーを戻すために背を向けていた。
言動:本人「大丈夫、痛くない」。職員はその場で座ったまま右腰と右肘を確かめ、看護師を呼んだ。
- 今日から変えられること: 立ち上がる前に床の泡を流し、職員は本人が立ち終わるまで背を向けない。
- 相談すれば変えられること: 洗い場の滑り止めマットの範囲を椅子の前まで広げる(管理者へ)。
- 変えられないこと: 洗い場の床材と排水の位置。
例2(転倒): 立位またぎの途中で膝が縁に当たった
場面:70代の女性、デイサービス。個浴。左片麻痺。立位またぎで右脚(健側)から入る方式。
見えたこと:右脚が縁を越えたあと、左脚を上げる途中で膝が縁に当たり、体が右へ傾いた。職員は右側で腰に手を添えていて、傾いた瞬間に腰を支えて止めた。
言動:本人「左が上がらない」。職員「一度戻します」と言い、右脚を洗い場に戻して縁に腰掛けてもらった。その日は縁に腰掛けて片脚ずつ入れる方式に切り替え、看護師に伝えた。
- 今日から変えられること: 左脚が上がりにくい日は最初から座位またぎにする。申し送りに「左膝が縁に当たった」と場面を書く。
- 相談すれば変えられること: バスボードの導入と縁の高さの再測定(福祉用具専門相談員・ケアマネジャーへ)。方式の変更はリハ職と決める。
- 変えられないこと: 縁の高さ(個浴の浴槽の交換は改修の範囲)。
例3(温熱): 湯から立ち上がった直後にふらついた
場面:80代の女性、介護老人保健施設。週2回の入浴。浴槽内で約8分。血圧の薬を朝に飲んでいる。
見えたこと:手すりを引いて立ち上がった直後、目を閉じて上体が左へ揺れた。職員は両脇に手を構えていたので、そのまま支えて浴槽台に座らせた。顔色は白かった。
言動:本人「目の前が暗い」。職員は人を呼び、2人で湯から出して洗い場の椅子に座らせ、看護師に連絡した。看護師の指示で、その後の入浴前後の血圧の記録欄が追加された。
- 今日から変えられること: 立つ前に「手すりを持って、ゆっくり」と言い、立ったら数秒止まってから脚を出す。浸かる時間を記録に書く。
- 相談すれば変えられること: 浴槽台の高さを上げて湯面を下げるか、半身浴に変えるかを看護師・医師と決める。
- 変えられないこと: 薬の効き方と血圧の変動そのもの。
例4(温熱): 浸かっている間、声をかけても返事が遅れた
場面:70代の男性、訪問介護。自宅の浴槽。ヘルパーは浴槽の横に立ち、2〜3分おきに声をかける約束。
見えたこと:入って5分ほどで、「気分はどうですか」に対して返事が3秒ほど遅れ、目が半分閉じていた。顔は赤かった。
言動:本人「……大丈夫」。ヘルパーは「一度出ましょう」と言い、栓を抜いて湯を減らし、本人が立ち始めてから両脇を支えて縁に腰掛けさせた。訪問看護に電話し、指示を受けた。
- 今日から変えられること: 声かけの間隔を短くし、返事の速さと目の開き方を見る。湯温を入る前に温度計で確かめる。
- 相談すれば変えられること: 湯温と浸かる時間の上限を訪問看護・かかりつけ医に決めてもらう。
- 変えられないこと: 自宅の浴槽の深さと、脱衣所との温度差(暖房機の設置は住宅改修・購入の相談)。
事故の規模を1つだけ数字で置きます。消費者庁は厚生労働省の人口動態統計をもとに、令和5年に「不慮の溺死及び溺水」で亡くなった65歳以上の高齢者は8,270人、うち浴槽での事故は6,541人(家や居住施設の浴槽は6,073人)で、12月・1月に多いと示しています(消費者庁 コラムVol.12)。浸かっている間の見守りが工程8の中心である理由です。
家族・他職種への伝え方: 言い換え表
同じ事実を、相手の言葉で言い換えます。本人には一人称で、家族には家庭の場面で、看護・介護・ケアマネジャーには相手の文書の言葉で伝えます。
| 職種の言い方(リハ職・介護職) | 本人への言い方(一人称で) | 家族への言い方 | 看護師・ケアマネジャーへの言い方 |
|---|---|---|---|
| 「またぎは座位で、正面から見守り」 | 「湯船に入るときは、縁に腰掛けてから片足ずつ入れましょう。私は正面に立って声をかけます。手は出しませんが、いつでも届く位置にいます」 | 「湯船をまたぐときは、縁に座ってから片足ずつ入れる入り方にしています。そばの人は正面に立って声をかけるだけです」 | 「浴槽の出入りは座位またぎ。職員は正面で声かけのみ、非接触。訪問介護の記録では見守り的援助の範囲です」 |
| 「膝裏を支えて一部介助」 | 「足を上げるのはご自身です。私は膝の裏に手を添えて、足が縁を越えるまで支えます」 | 「足を上げるのは本人で、そばの人は膝の裏に手を添えているだけです。抱えてはいません」 | 「立位またぎで右膝裏に手を添える介助が週2回の入浴のたびに必要。脚を上げるのは本人。認定調査では特記事項に伝える事実です」 |
| 「浴槽内は2〜3分おきに声かけ」 | 「湯に入っている間、私は横にいて、ときどき『気分はどうですか』と聞きます。返事をしてください」 | 「湯船に入っている間は、そばで2〜3分おきに声をかけて、返事の様子を見ています」 | 「浴槽内は横に立ち、2〜3分おきに気分を確認。間隔は施設の基準どおり。中止のラインは看護師の指示に従っています」 |
| 「出るときは脇を支える」 | 「立つときは手すりを引いて、ご自身で立ち始めてください。立ち始めたら私が両脇を支えます」 | 「湯船から出るときは、本人が立ち始めてから両脇を支えています。持ち上げてはいません」 | 「浴槽内からの立ち上がりは、本人の動きに合わせて両脇を支える介助。抱え上げは行っていない。特記事項に伝える事実です」 |
本人への説明を一人称で書くのは、「見守り」や「一部介助」が本人不在の言葉だからです。「私が正面に立ちます」「足を上げるのはご自身です」と言い直すと、本人が何をするのかが本人に伝わります。ケアマネジャー向けには、特記事項に書かれる形(工程・手の位置・誰が動かしたか・頻度)で伝えると、サービス担当者会議でそのまま使えます。
1枚チェックリスト: 申し送る前に5つ
入浴の申し送りと記録を書く前に、次の5つが埋まっているかを確かめます。1つでも埋まらなければ、そこが言葉になっていない部分です。
場面
いつ(曜日・時間帯)、どこで(個浴・大浴槽・自宅)、9工程のどこで起きたか
見えたこと
本人の動き(脚を上げた・立ち始めた)、職員の手の位置(添えた・支えた・抱えた)、回数。推測(〜と思われる)を混ぜない
声かけと言葉
職員が何と言ったか、本人が何と言ったか。「拒否」「不穏」ではなく本人の言葉のまま
記録
項目がある工程(洗身・移動・着脱)は行為の事実、浴槽の工程は手間と頻度。選択肢名は書かない
変えられること
今日自分で変えること1つ、相談する相手と伝える数字、変えられないこと1つ
まとめ
- 入浴の申し送りは「入浴は一部介助」の1語にせず、9工程のどこで手が出たかを言う。「洗身は背中のみ介助、またぎは座位で正面から声かけのみ」の形にする
- 介護保険の調査で項目があるのは洗身(1-10)・衣服の着脱(2-10・2-11)・移動(2-2)だけ。浴槽をまたぐ・浸かる・出る工程は項目がないので、選択肢を当てずに「膝裏に手を添える介助が週2回の入浴のたびに必要」と手間と頻度を調査員に伝える
- 「見守り」は、洗身では一部介助に含まれ、移動では独立した選択肢で、訪問介護と通所介護の加算では必要に応じて行う介助を含む。どの文書の言葉で書いているかを決めてから記録する
- 環境は「浴槽の縁60cm・深さ58cm・座面40cm・手すりの位置」のように数字で測り、「手が滑ったのが今週2回」と回数を添えて、福祉用具専門相談員・ケアマネジャーに渡す
よくある質問
上位の問いは、それぞれ1問1答の記事に分けています。ここでは一行の答えだけ置きます。
- 「またぎは見守り」と申し送られた。座ってまたぐのか、立ってまたぐのか ── 「見守り」に方式は含まれません。方式と職員の立つ位置を聞き返します。
- またぐとき膝の裏を支えた。一部介助か、全介助か ── 脚を上げたのが本人か職員かで現場の言い方が分かれます。調査には項目がなく、「膝裏に手を添える。脚を上げるのは本人。週2回」の形で伝えます。
- 「浴槽で見守り」は、目を離さないことか、時間を決めて声をかけることか ── 訪問介護の文書では気分の確認まで含みます。位置と間隔は施設の基準と看護師の指示で決めます。
- 浴槽から出るとき脇を支えて立ち上がる場合は、一部介助か、全介助か ── 本人の立つ動きに合わせて支えたのか、動きが起きる前に抱え上げたのかを分けて記録します。
(各問いの記事は公開後にリンクします)
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- この動作の1問1答(公開後にリンク): 「またぎは見守り」は座位またぎか立位またぎか/またぐとき膝の裏を支える。一部介助か、全介助か/「浴槽で見守り」は目を離さないことか、時間を決めて声をかけることか/浴槽から出るとき脇を支える。一部介助か、全介助か
ケアマネジャーやデイサービスの連絡帳で「入浴は一部介助です」と言われても、お風呂のどの場面で手を貸してもらっているのかは分かりません。背中を洗うところなのか、湯船をまたぐところなのかで、家で気をつけることが変わります。
「入浴は一部介助」と言われたら、何が起きているのか
お風呂は、脱ぐ・浴室へ入る・座る・体を洗う・髪を洗う・湯船まで移る・またぐ・浸かって出る・拭いて着る、の9つの場面に分かれます。介護保険の認定調査で聞かれるのは、このうち「体を洗う」「服を脱ぐ・着る」「浴室まで移動する」の場面です。
湯船をまたぐ・浸かる・出る場面には、調査で選ぶ項目がありません。その場面で家族がどう手を貸しているかは、調査員が特記事項に文章で書き、審査会が介護の手間として見ます。だから、調査のときは「湯船をまたぐとき、右足の膝の裏に手を添えています。週に3回、毎回です」のように、場面と手の位置と回数をそのまま伝えます。
一部介助は、「体を洗う」場面では、そばで見ていて声をかけるだけの場合も含まれます。ヘルパーが来る家では、お風呂の見守りは見守り的援助という身体介護のひとつで、必要なときに手を出すことまで含まれています(架空の例で説明します)。
当てはまる例: 背中だけ娘が洗い、湯船は縁に座ってから片足ずつ母は前と腕を自分で洗い、背中と足の先は娘が洗います。湯船には縁に腰掛けてから右足、左足の順に入れ、娘は正面に立って「右足から」と声をかけるだけです。調査では「背中と足先を洗っています。湯船は座ってから入り、手は出していません」と伝えます。
当てはまらない例(手は出ていない): 声をかけるだけで、体には触れていない父は全身を自分で洗い、妻は浴室のドアを開けて脱衣所に立ち、湯船に入っている間は5分おきに声をかけて返事を聞いています。手は出ていないので「洗うのも湯船も自分で。5分おきに声をかけて返事を確かめている」と伝えます。声かけをしていることも、伝える事実です。
介助されている方がこれを読んだときは、「一部介助」は手が触れていたという事実を表す言葉で、ひとりで入れないという意味ではないと受け取ってください。座って入るか立って入るか、楽なほうを介助している人に伝えてかまいません。
| 相談先 | 相談すること |
|---|---|
| ケアマネジャー | デイサービスの介助と家での入り方が違うとき。湯船の縁に座る板(バスボード)や手すり・浴槽の中に置く台を借りたい・買いたいとき |
| 訪問看護 | 湯船から出たあとにふらつく、顔色が悪いことが続くとき。湯の温度や浸かる時間の目安を決めてほしいとき。入り方をその場で見てもらいたいとき |
| かかりつけ医 | またぐのが1〜2週間で急に難しくなったとき。血圧の薬が変わってからお風呂でふらつくようになったとき |
| 施設の相談員 | 施設の記録に「入浴一部介助」とあるが、9つの場面のどこで手が入っているかを聞きたいとき |
次の入浴のとき、9つの場面のうち「手を貸したところ」と「声をかけただけのところ」をメモしておき、ケアマネジャーやデイサービスに「家では背中だけ洗い、湯船は座ってから入り、手は出していない」のように場面ごとに伝えてください。
家ではこう分けて伝える
まとめ
- 「入浴は一部介助」と言われたら、9つの場面のどこで手を貸しているかを聞き返す。家からも「背中だけ洗う」「湯船は座ってから入る」と場面で伝える
- 湯船をまたぐ・浸かる・出る場面は調査で選ぶ項目がないので、「膝の裏に手を添えている。週3回、毎回」と手の位置と回数をそのまま調査員に言う。それが特記事項に書かれ、審査会が手間として見る
- 声をかけているだけでも、それは伝える事実。「5分おきに声をかけて返事を確かめている」と伝える
- 湯船の縁に座る板や浴槽の中に置く台は、ケアマネジャーに「湯船をまたぐところで止まる」と場面から相談する
- 家族向けの関連記事: お風呂に安全に入るための工夫/「お風呂に入りたがらない」認知症の方への声かけと環境の整え方
この説明で、知りたいことは分かりましたか?
- 厚生労働省 認定調査員テキスト2009改訂版(令和6年4月改訂)p.22(適切な項目がない場合は関連する項目の特記事項に手間と頻度を記載し二次判定に委ねる)、p.23〜24(介助の方法で評価する調査項目の選択基準)、p.57(1-10 洗身)、p.70(2-1 移乗)、p.73(2-2 移動)、p.93〜96(2-10・2-11 着脱)
- 厚生労働省 介護認定審査会委員テキスト2009改訂版(令和3年4月改訂)p.8(介護の手間は特記事項を根拠に判断)
- 厚生労働省 基本診療料の施設基準等(令和8年 保医発0305第7号)別添6 別紙7 重症度、医療・看護必要度 評価の手引き(一般病棟用)B項目(入浴の項目はない。B12 衣服の着脱)
- 厚生労働省 老振発0330第2号(平成30年3月30日)訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について(1-6 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1213(令和6年3月15日)「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について 通所介護 7⑽ 入浴介助加算(新旧対照表 p.44〜45)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年3月16日)「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について 通所介護 ⑻ 入浴介助加算(新旧対照表 p.35〜37。ア①「観察」の定義、イ②b 個別の入浴計画の全文)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.974(令和3年4月26日)令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.8)入浴介助加算(Ⅱ) 問1〜6(居宅の訪問評価、個別の入浴計画、居宅の状況に近い環境)
- 厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目及び厚生労働大臣が定める特定介護予防福祉用具販売に係る特定介護予防福祉用具の種目(平成11年3月31日 厚生省告示第94号)四 入浴補助用具
- 消費者庁 コラムVol.12 高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―(令和6年12月19日。令和5年 人口動態統計: 65歳以上の不慮の溺死及び溺水 8,270人、うち浴槽 6,541人)
- 消費者庁 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!(令和2年11月19日。湯温41度以下・10分までの目安)
よくある質問
- 「またぎは見守り」と申し送られた。座ってまたぐのか、立ってまたぐのか
- 「見守り」の一言には、縁やバスボードに腰掛けてまたぐのか、手すりを持って立ったまままたぐのかが入っていません。受けた側は方式と職員の立つ位置を聞き返し、送る側は「座位またぎ、正面で声かけのみ」のように方式と位置を添えます。介護保険の調査に浴槽の項目はなく、調査員は特記事項に手間と頻度を書きます。
- またぐとき膝の裏を支えた。一部介助か、全介助か
- 脚を持ち上げたのが本人で職員は膝裏に手を添えただけなのか、職員が脚を抱えて浴槽に入れたのかで、現場の言い方が分かれます。介護保険の調査では浴槽をまたぐ工程に項目がないため、選択肢を当てるのではなく、調査員が関連する項目の特記事項に「膝裏を支える介助が週2回の入浴のたびに必要」のように手間と頻度を書きます。
- 「浴槽で見守り」は、目を離さないことか、時間を決めて声をかけることか
- 訪問介護の文書では、入浴の見守りは転倒予防の声かけや気分の確認まで含む見守り的援助とされています。職員の立つ位置と声をかける間隔は文書に定義がなく、施設の基準と看護師の指示で決めます。申し送りでは「浴槽の横に立ち、2〜3分おきに声かけ」のように位置と間隔を言葉にします。
- 浴槽から出るとき脇を支えて立ち上がる場合は、一部介助か、全介助か
- 本人が立とうとする動きに合わせて脇を支えたのか、動きが起きず職員が抱え上げたのかを分けて記録します。介護保険の調査に浴槽から出る工程の項目はないため、調査員が特記事項に手間と頻度を書き、審査会が介護の手間として判断します。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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