この記事のポイント
- 介護保険の住宅改修費支給は上限20万円(自己負担1〜3割)で、手すり設置・段差解消など6種類の工事が対象です
- 福祉用具レンタルとは別枠の制度であり、併用することでより安全な住環境を実現できます
- 事前申請が必須です。工事を始めてから申請しても給付されません
- 20万円の枠は原則1回限りですが、要介護度が3段階以上上がった場合や転居した場合にリセットされます
- 作業療法士は住環境評価と動線分析に基づいて、優先度の高い改修箇所を提案できます
はじめに ── 福祉用具だけでは解決できないこと
介護保険で利用できる福祉用具(レンタル13種目・購入5種目)については別の記事で解説しました。しかし、福祉用具だけでは対応しきれない住環境の問題があります。
たとえば、廊下に手すりを固定したい、玄関の上がり框の段差をなくしたい、浴室の床を滑りにくくしたい──こうした構造的な変更は、福祉用具ではなく住宅改修の領域です。
介護保険の住宅改修費支給制度(介護保険法第45条・第57条に基づく居宅介護住宅改修費・介護予防住宅改修費)を正しく理解し、福祉用具と組み合わせることで、利用者の住環境を包括的に整えることが可能になります。
ヒント
住宅改修と福祉用具は別枠の制度です。福祉用具のレンタル費用や購入費用とは別に、住宅改修として工事費20万円までが支給対象になります(20万円は工事費の限度額で、実際に給付されるのはその7〜9割です)。
介護保険を使って福祉用具を借りたり買ったりできる制度は別の記事でご紹介しました。しかし、福祉用具だけでは解決しにくいこともあります。
たとえば、壁にしっかりした手すりをつけたい、玄関の段差をなくしたい、浴室の床を滑りにくくしたい──こうした工事が必要なものは、「住宅改修」という別の制度で対応できます。
介護保険を使えば、上限20万円(自己負担は1割なら最大2万円)でこうした改修ができます。福祉用具のレンタル費用とは別枠なので、両方を組み合わせて使えます。
住宅改修の対象となる6種類の工事
介護保険の住宅改修費支給の対象となる工事は、以下の6種類に限定されています(厚生労働省「介護保険における住宅改修」)。
注意
以下に示す費用の目安には公的な統一単価はありません。住宅の構造、下地の状態、地域、施工業者によって大きく変動します。実際の金額は必ず見積書で確認してください。
1. 手すりの取り付け
対象
廊下・トイレ・浴室・玄関・階段などへの手すりの設置。壁への固定式(I型、L型、可動式)が対象。据え置き型は福祉用具レンタルの対象
費用の目安
1か所あたり3〜8万円(材料費+工事費)。トイレのL字手すりで約5万円、階段の連続手すりで約8〜15万円
臨床的意義
転倒予防の最も基本的な環境整備。立ち座り動作・移動動作・段差昇降の安全性に直結する
2. 段差の解消
対象
敷居の撤去、スロープの設置(固定式)、床のかさ上げなど。ただし、取り外し可能なスロープは福祉用具レンタルの対象
費用の目安
敷居の撤去で1か所1〜3万円、玄関スロープの設置で5〜15万円、浴室と脱衣所の段差解消で3〜8万円
臨床的意義
つまずきによる転倒の直接的な原因を排除する。車椅子利用者には特に重要。わずか1〜2cmの段差でもつまずきリスクがある
3. 滑りの防止および移動の円滑化のための床材の変更
対象
浴室の床を滑りにくい素材に変更、廊下のフローリング化、畳からフローリングへの変更(車椅子利用のため)など
費用の目安
浴室の床材変更で5〜10万円、廊下のフローリング化で3〜8万円(範囲による)
臨床的意義
浴室の滑り転倒は重篤な外傷につながりやすい。床材の変更は根本的な滑り防止策。車椅子利用者には畳→フローリングが移動の円滑化に必須
4. 引き戸等への扉の取り替え
対象
開き戸を引き戸・折り戸・アコーディオンカーテンに変更。ドアノブをレバーハンドルに交換。戸車の設置
費用の目安
開き戸→引き戸への交換で5〜15万円、ドアノブのレバーハンドル化で1〜3万円
臨床的意義
開き戸は車椅子での通過が困難で、片麻痺の方にも操作しにくい。引き戸化により開閉動作の自立度が向上する。レバーハンドルは握力低下のある方に有効
5. 洋式便器等への便器の取り替え
対象
和式便器から洋式便器への交換。便器の高さの変更(立ち座りしやすい高さへの交換)。暖房便座・洗浄機能付き便座の設置(便器本体の交換を伴う場合のみ)
費用の目安
和式→洋式への交換で15〜30万円(20万円の枠を大きく使う工事になるため優先順位の判断が重要)
臨床的意義
和式便器のしゃがみ動作は膝関節・股関節の可動域と筋力を要求し、高齢者には転倒リスクが高い。洋式化は排泄の自立維持に直結する
注意
和式→洋式便器の交換は工事費が高額になりやすく、20万円の枠の大部分を消費します。他に優先度の高い改修(手すり設置、段差解消など)がある場合は、ポータブルトイレ(特定福祉用具購入)と組み合わせる選択肢も検討してください。
6. 上記に付帯して必要な工事
対象
手すり取り付けのための壁の下地補強、段差解消のための周辺の床仕上げ、扉交換に伴う壁・柱の改修、便器交換に伴う給排水工事・床材変更など
注意点
付帯工事は単独では対象にならない。上記1〜5のいずれかの工事に伴う場合にのみ認められる
介護保険の住宅改修で対象になる工事は、6種類です。
1. 手すりの取り付け
廊下、トイレ、浴室、玄関、階段などに手すりを設置する工事です。1か所あたり3〜8万円程度です。
ヒント
手すりは転倒予防の基本です。特にトイレ・浴室・玄関の3か所は優先度が高い場所です。
2. 段差の解消
玄関の段差をなくすスロープの設置や、部屋の間の敷居の撤去などです。1〜15万円程度です。
3. 床材の変更
浴室の床を滑りにくい素材に変えたり、畳をフローリングに変えたり(車椅子が使いやすくなります)する工事です。3〜10万円程度です。
4. 扉の交換
開き戸(押す/引くドア)を引き戸(横にスライドするドア)に変える工事です。車椅子の方や、片手が使いにくい方に便利です。5〜15万円程度です。ドアの取っ手をレバー式に変えるだけの工事(1〜3万円)もあります。
5. 洋式便器への交換
和式トイレを洋式トイレに変える工事です。ただし15〜30万円と高額になりやすく、20万円の枠をほとんど使ってしまいます。
注意
トイレの交換は高額です。他にも手すりや段差解消が必要な場合は、先に手すりと段差解消をして、トイレはポータブルトイレで対応するという方法もあります。ケアマネジャーに相談してみてください。
6. 上記に伴う工事
手すりをつけるための壁の補強工事や、便器交換に伴う給排水工事など、上の5つの工事に付随して必要になる工事も対象になります。
福祉用具との使い分け ── 迷ったときの判断基準
住宅改修と福祉用具は目的が重なる場面があり、どちらを使うかの判断が必要です。
| 場面 | 住宅改修 | 福祉用具 |
|---|---|---|
| 手すり | 壁にネジ固定(永続的) | 据え置き・突っ張り型(移動可能) |
| 段差解消 | 固定式スロープ・床かさ上げ | 取り外し可能なスロープ(レンタル) |
| トイレ | 和式→洋式の便器交換 | ポータブルトイレ(購入)、補高便座(購入) |
| 浴室 | 床材変更・手すり固定 | シャワーチェア(購入)、浴槽用手すり(購入) |
判断の原則
- 永続的な安全対策が必要 — 転倒リスクが高く、一時的な対応では不十分。壁固定の手すりや段差そのものの解消が必要
- 介護度の変化が少ないと見込まれる — 慢性疾患や安定期で、大幅な機能変化が見込まれない。一度の改修で長期間効果が持続
- 介護者の導線改善が必要 — 日常的に介護者が行き来する動線上の構造的障壁を除去する場合
- 車椅子利用が前提 — 床材変更(フローリング化)や段差解消は車椅子生活の基盤。福祉用具では代替困難
- 回復期で状態が変化しやすい — 退院直後など、機能回復が見込まれる時期は用具の方が柔軟に対応できる。改修後に不要になるリスクを避けられる
- 転居の可能性がある — 持ち運びできる福祉用具のほうが転居後も継続利用できる。賃貸住宅では原状回復の問題もある
- 20万円の枠を温存したい — 今後さらに重度化した際の改修に備えて、現時点では据え置き型手すり等で対応する判断もあり得る
- 試してから決めたい — 据え置き型手すりで使い勝手を確認してから、固定式への移行を判断する段階的アプローチ
ヒント
臨床的には「まず福祉用具で試し、効果が確認できたら住宅改修で恒久化する」という段階的アプローチが安全です。特に退院直後の在宅復帰時は、生活パターンが定まるまで1〜2か月は福祉用具で対応し、その後改修の優先箇所を確定するのが望ましいでしょう。
福祉用具そのものの種類と選定の考え方については、福祉用具の選び方のポイントで詳しく解説しています。
福祉用具と住宅改修、どっちを使えばいいの?
迷ったときの目安をご紹介します。
住宅改修がおすすめなのは- 壁にしっかり固定した手すりが必要なとき
- 段差そのものをなくしたいとき
- 車椅子生活のために床をフローリングにしたいとき
- 体の状態がこの先大きく変わらないと思われるとき
- 退院直後で、体の状態がまだ変わりそうなとき
- 引っ越す可能性があるとき
- まずは試してみたいとき
ヒント
「まずは福祉用具で試して、よければ住宅改修に切り替える」という方法がおすすめです。たとえば、まずは置くだけの手すりを借りてみて、場所が決まったら壁に固定する手すりに変える、というステップを踏めば失敗が少なくなります。
費用と上限額のルール
基本ルール
支給限度基準額
要支援・要介護区分にかかわらず生涯20万円。これは工事費の限度額であって給付額ではない点に注意(厚生労働省「介護保険における住宅改修」)
給付割合と自己負担
保険給付は原則9割(上限18万円)、所得に応じて8割(上限16万円)・7割(上限14万円)。20万円の工事で1割負担なら自己負担2万円
支給方式
償還払いが原則(全額支払い→保険給付分が後から振込)。受領委任払いに対応する自治体もある
分割利用
20万円を一度に使い切る必要はない。複数回に分けて利用可能(例: 1回目に手すり8万円、2回目に段差解消6万円)
枠のリセット
原則1回限りだが、①要介護度が3段階以上上がった場合、②転居した場合に再度20万円が利用可能
枠のリセット条件 ── 詳細
- 要介護度3段階以上の上昇 — 厚労省の定める6段階区分(第1段階: 要支援1、第2段階: 要支援2・要介護1、第3段階: 要介護2、第4段階: 要介護3、第5段階: 要介護4、第6段階: 要介護5)で3段階以上の上昇が条件。例えば要支援1(第1段階)→要介護3(第4段階)は3段階上昇でリセット対象
- 転居した場合 — 新しい住所での住宅改修として、改めて20万円の枠が利用可能。同一市区町村内の転居でも適用される
- リセットの回数と運用は事前確認を — 厚生労働省「介護保険における住宅改修」は、要介護状態区分が3段階上昇したとき、および転居したときに再度20万円までの支給限度基準額が設定される、とだけ示している。リセットが何回まで適用されるかといった運用の細部は同資料に記載がなく、保険者(市区町村)によって扱いが異なることがある。複数回の利用を計画する際は必ず事前に窓口で確認すること
注意
「3段階以上の上昇」の判定は、通常の要介護度の数字ではなく、厚労省が定めた6段階の区分に基づきます。注意すべきは要支援2と要介護1が同一段階(第2段階)として扱われる点です。たとえば要介護1(第2段階)→要介護4(第5段階)は3段階上昇でリセット対象になります。
いくらまで使えるの?
- 上限は20万円です(介護度にかかわらず同じ)
- 自己負担は工事費の1割(所得に応じて2〜3割)
- 20万円の工事なら、自己負担はたった2万円(1割の場合)
一度に全部使わなくてOK
20万円を一度に使い切る必要はありません。たとえば、まず手すりの設置に8万円を使い、半年後に段差解消で6万円を使う、というように分けて使うことができます。
20万円が「もう一度使える」ケース
原則として20万円は1回きりですが、次の場合には改めて20万円が使えます。
- 介護度が大幅に上がった場合(3段階以上の上昇)
- 引っ越した場合(新しい家での改修として)
ヒント
「今は手すりだけで十分だけど、将来もっと必要になるかも」という場合は、20万円を使い切らずに残しておくのも賢い方法です。
申請の流れ ── 事前申請が絶対条件
住宅改修費支給の最も重要なルールは、工事前に事前申請が必要であるという点です。工事を開始してから申請した場合、原則として給付は受けられません。
1. ケアマネジャーに相談
- 1住宅改修の希望をケアマネジャーに伝える
- 2ケアマネジャーが自宅を訪問し、改修の必要性を確認する
- 3必要に応じてOT・PTの評価を依頼する
2. 住宅改修が必要な理由書の作成
- 4「住宅改修が必要な理由書」を作成する。作成できるのは介護支援専門員、地域包括支援センター担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上その他これに準ずる資格等を有する者(厚生労働省)
- 5理由書には: 利用者の身体状況、改修が必要な箇所と理由、改修後の生活の見込みを記載
- 6実務上はケアマネジャーが作成することが多いが、OT自身が作成者となることもできる
3. 事前申請(工事前)
- 7市区町村の介護保険窓口に以下の書類を提出する
- 8①支給申請書 ②住宅改修が必要な理由書 ③工事費見積書 ④改修前後の図面 ⑤改修箇所の写真(改修前・日付入り)
- 9市区町村が内容を確認し、承認(不承認)を通知する
4. 施工業者の選定と工事
- 10指定業者の制限はない(福祉用具販売と異なり、一般の工務店でも可)
- 11複数業者から相見積もりを取ることを推奨
- 12承認後に工事を実施する
5. 事後申請(工事完了後)
- 13工事完了後に以下の書類を提出する
- 14①工事費の領収書 ②改修箇所の写真(改修後) ③工事内訳書
- 15市区町村が確認後、保険給付分(7〜9割)を支給する
OTが関わるポイント
- 住環境評価 ── 自宅訪問で動線上のリスクを特定し、改修の優先順位を提案する
- 動作分析に基づく改修提案 ── 手すりの位置・高さを本人の体格と動作パターンに基づいて決定する
- 理由書の作成・評価所見の提供 ── 作業療法士は厚生労働省の様式で理由書の作成者として明記されている。自ら作成するほか、ケアマネジャーが作成する際に臨床的根拠を提供する
- 将来の変化を見据えた助言 ── 進行性疾患や回復途上の場合、現時点での改修と将来の改修を分けて計画する
- 施工後の確認と使用指導 ── 改修後に手すりの使い方や新しい動線での安全な移動方法を指導する
手続きの流れ ── 「工事の前に」申請が必要です
住宅改修で最も大切なルールがあります。それは、工事を始める前に申請しなければならないということです。先に工事をしてしまうと、お金が戻ってきません。
ステップ1: ケアマネジャーに相談する「手すりをつけたい」「段差をなくしたい」とケアマネジャーに伝えます。ケアマネジャーがご自宅を見に来てくれます。
ステップ2: 理由書を作ってもらうケアマネジャーが「なぜこの改修が必要か」を書いた書類(理由書)を作成してくれます。
ステップ3: 市区町村に事前申請する理由書、工事の見積書、改修箇所の写真を市区町村に提出します。承認が下りるまで工事は始めません。
ステップ4: 工事をする承認が下りたら工事を行います。業者は一般の工務店でもOKです。複数の業者に見積もりを取るのがおすすめです。
ステップ5: 完了報告をする工事が終わったら、領収書と改修後の写真を市区町村に提出します。確認後、保険給付分(7〜9割)が振り込まれます。
注意
繰り返しになりますが、工事の前に必ず申請してください。先に工事をしてしまうと、介護保険からお金が出ません。「急いでいる」場合でも、まずケアマネジャーに電話して段取りを確認しましょう。
そもそも介護保険の申請がまだの方や、住宅改修以外にどんなサービスがあるか知りたい方は、介護保険で使えるサービス一覧と申請の流れをご覧ください。
場所別 ── 改修の優先順位と費用シミュレーション
場所別の改修優先度
20万円という限られた予算の中で、どこから改修するかの判断が重要です。一般的な優先順位を示しますが、実際は本人の動作評価と生活パターンに基づいて個別に判断してください。
- 優先度1: トイレ — 排泄は1日に何度も行う動作。手すり設置(L字型推奨)で立ち座りの安全を確保。和式の場合は洋式化も最優先だが高額のため予算配分に注意
- 優先度2: 浴室 — 転倒リスクが最も高い空間。出入口の段差解消+手すり設置(浴槽横+洗い場)がセット。床材変更も有効だが高額
- 優先度3: 玄関(上がり框) — 外出の起点。手すり設置+段差解消で外出頻度の維持に直結。社会参加の観点からも重要
- 優先度4: 廊下 — 主要動線に手すりを連続設置。特に寝室→トイレの夜間動線は転倒リスクが高い
- 優先度5: 寝室 — ベッド横の手すり設置。起居動作の安全確保。介護ベッドの介助バーで代替可能な場合は福祉用具を優先
費用シミュレーション ── 20万円の使い方パターン
パターンA: 手すり中心の改修(最も一般的)| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| トイレ L字手すり設置 | 5万円 |
| 浴室 手すり2か所設置 | 7万円 |
| 玄関 I字手すり設置 | 4万円 |
| 廊下 連続手すり設置 | 4万円 |
| 合計 | 20万円(自己負担2万円) |
| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| 浴室と脱衣所の段差解消 | 6万円 |
| 浴室 手すり2か所設置 | 7万円 |
| トイレ L字手すり設置 | 5万円 |
| 玄関 手すり設置 | 2万円 |
| 合計 | 20万円(自己負担2万円) |
| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| 和式→洋式便器交換(給排水含む) | 18万円 |
| トイレ 手すり設置 | 2万円 |
| 合計 | 20万円(自己負担2万円) |
パターンCは便器交換に予算の大部分を使ってしまうため、他の場所の手すりは福祉用具(据え置き型レンタル)で補完する必要があります。
どこから改修すればいい?
20万円で全部をやるのは難しいこともあります。優先順位をご紹介します。
1番目: トイレ ── 1日に何度も使う場所です。手すりがあると立ち座りが安全になります。
2番目: 浴室 ── 家の中で最も滑りやすい場所です。段差の解消と手すりの設置が効果的です。
3番目: 玄関 ── 外出するための入り口です。手すりと段差対策で、外出が怖くなくなります。
4番目: 廊下 ── 特に寝室からトイレへの夜間の動線に手すりがあると安心です。
20万円でできることの例
例1: 手すりを4か所に設置- トイレ: 5万円
- 浴室: 7万円
- 玄関: 4万円
- 廊下: 4万円
- 合計20万円 → 自己負担2万円
- 浴室の段差解消: 6万円
- 浴室の手すり: 7万円
- トイレの手すり: 5万円
- 玄関の手すり: 2万円
- 合計20万円 → 自己負担2万円
ヒント
「20万円で足りるかな」と心配な方は、まず優先度の高い場所だけ改修して、残りの枠は後のために取っておくこともできます。
賃貸住宅での住宅改修
賃貸住宅でも介護保険の住宅改修は利用可能です。ただし、家主(オーナー)の承諾が必要です。
家主の承諾
改修工事の実施について、事前に家主の書面による承諾を得る必要がある。自治体によっては承諾書の提出を求められる
原状回復の問題
退去時の原状回復義務との兼ね合いがある。手すりの取り外し跡や段差解消工事の原状回復費用は介護保険の対象外
現実的な対応
賃貸では福祉用具(据え置き型手すり、取り外し可能スロープ)を中心に対応し、住宅改修は必要最小限にとどめることが多い
公営住宅の場合
自治体の公営住宅では、バリアフリー改修への理解が比較的得られやすい。管理事務所に相談を
賃貸住宅でもできるの?
賃貸住宅でも介護保険の住宅改修は利用できます。ただし、大家さんの許可が必要です。
また、退去時に元に戻す費用(原状回復費用)は介護保険の対象外です。そのため、賃貸では次のような対応がおすすめです。
- 工事不要の福祉用具(置くだけの手すり、取り外せるスロープ)を中心にする
- 壁に固定する手すりは、本当に必要な場所だけに絞る
- 事前に大家さんに相談し、書面で許可をもらう
20万円で足りないとき ── 自治体独自の上乗せ・助成制度
介護保険の20万円だけでは希望する改修をまかなえない場合、自治体が独自に設けている上乗せ・横出しの助成制度を併用できることがあります。
高齢者住宅改修助成
介護保険の対象外となる工事(階段昇降機・ホームエレベーターの設置、大規模なバリアフリー化など)を独自に助成する制度。名称・条件は自治体ごとに異なる
障害者総合支援法に基づく住宅改修費助成
日常生活用具給付等事業(居宅生活動作補助用具)として住宅改修費が助成される。市町村の地域生活支援事業の必須事業であり、対象者・支給内容・利用者負担はいずれも市町村が定める。介護保険との優先関係も自治体の要綱によるため、窓口での確認が必須
介護保険の上限超過分への上乗せ助成
介護保険の20万円を超える部分について、自治体が独自に一定額を助成する制度を設けている場合がある
これらの制度を組み合わせることで、20万円を超える改修も現実的な選択肢になります。制度の有無・条件は自治体差が大きいため、改修計画の初期段階で市区町村の窓口またはケアマネジャーに確認し、OTとしても利用可能な制度を把握したうえで改修プランを設計することが重要です。
介護保険の20万円で足りないときは?
介護保険の20万円だけでは足りない場合でも、自治体独自の助成制度が使えることがあります。
- 介護保険の対象外の工事(階段昇降機の設置など)を助成する制度
- 障害者手帳をお持ちの方向けの別の助成制度(日常生活用具給付等事業。条件は市区町村ごとに違います)
- 20万円を超える部分への追加助成
制度があるかどうかは市区町村によって異なります。工事を計画する段階で、ケアマネジャーに「ほかに使える制度はありますか?」と聞いてみてください。
よくある疑問 Q&A
よくある疑問にお答えします
Q: どの業者に頼めばいいの?介護リフォームの経験がある工務店がおすすめですが、特に指定はありません。複数の業者に見積もりを取るのがよいでしょう。ケアマネジャーに紹介してもらうこともできます。
Q: あとから「もう1か所追加したい」と思ったら?20万円の枠が残っていれば、あとから追加の工事ができます。同じ手続き(事前申請→承認→工事→報告)を行います。
Q: 申請してから工事が終わるまで、どのくらいかかりますか?承認まで1〜2週間、工事の日程調整に1〜2週間、工事は1〜3日程度です。合計で約1か月を見ておくとよいでしょう。
Q: 福祉用具のレンタルや購入と一緒に使える?はい、使えます。住宅改修(20万円)と福祉用具購入(年間10万円)は別枠です。レンタルもまた別枠です。すべてを組み合わせて使えます。
まとめ
- 介護保険の住宅改修は6種類の工事が対象で、上限20万円(自己負担1〜3割)です
- 事前申請が絶対条件。工事開始後の申請では給付されません
- 福祉用具とは別枠の制度であり、併用することで住環境を包括的に整備できます
- 20万円の枠は分割利用が可能で、要介護度の3段階以上の上昇または転居でリセットされます
- OTは動線分析に基づく改修優先度の提案と理由書への評価所見の提供で中核的な役割を果たします
- 段階的アプローチ(まず福祉用具で試し、確定したら住宅改修で恒久化)がミスマッチを防ぐ有効な戦略です
福祉用具の選定と同様に、住宅改修も「工事すること」が目的ではなく、「本人の生活行為を安全に支えること」が目的です。限られた予算の中で最大の効果を得るために、OTの住環境評価と動作分析に基づく優先順位づけが不可欠です。
- 介護保険で手すり設置・段差解消・床材変更・扉交換・便器交換などの住宅改修ができます
- 上限は20万円。1割負担なら自己負担は最大2万円です
- 工事の前に必ず申請が必要です。先に工事をするとお金が出ません
- 20万円は分けて使えます。まずは優先度の高い場所だけ改修して、残りは後に取っておくこともできます
- 福祉用具のレンタル・購入とは別枠なので、組み合わせて使えます
住まいの安全は、ご本人の自信と、ご家族の安心につながります。「どこから手をつければいいかわからない」というときは、ケアマネジャーや作業療法士に相談してください。一緒に最善の方法を考えてくれます。
- まずケアマネジャーに電話:「住宅改修を考えている」と伝えるだけでOKです。ケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターに相談しましょう
- 改修前の写真を撮っておきましょう:申請に必要です。改修したい場所の「今の状態」をスマートフォンで撮影しておくとスムーズです
- 複数の業者に見積もりを:同じ工事でも業者によって費用が異なります。「相見積もり」は遠慮なくお願いしましょう
- 「まず試してから」のアプローチ:置くだけの手すり(レンタル)で場所を試してから、壁付け手すり(住宅改修)に切り替えると失敗が少ないです
- 「たかが手すり」と思わないでください:トイレに手すりを1本つけるだけで「一人でトイレに行ける」ようになる方がたくさんいます。1か所数万円からできる小さな工事が、暮らしを大きく変えることがあります
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
運営者プロフィールを見る →