この記事のポイント
- 住宅内の転倒事故の約7割は「玄関・浴室・階段」の3か所に集中しています
- 介護保険の住宅改修費支給制度を使えば、上限20万円(自己負担1〜3割)で手すり設置や段差解消が可能です
- OTは実際の生活動作を観察し、本人に合った改修プランを提案できる専門職です
- この記事では7か所のチェックリストと、制度活用の手順をまとめています
住み慣れた家が「危険な場所」に変わるとき
高齢のご家族が暮らすお住まいに、「危ない場所」はありませんか。
高齢者の転倒事故の多くは、自宅の中で起きています。特に玄関・浴室・階段の3か所に事故が集中しています。
この記事では、ご家族と一緒にチェックできる安全確認リストと、介護保険を使った住宅改修の方法をお伝えします。
場所別・住宅内危険箇所チェックリスト
1. 玄関
玄関の段差は転倒が起きやすい場所です。以下の点を確認してみましょう。
2. 廊下
3. 浴室
浴室は最も転倒しやすい場所です。濡れた床、裸足、温度変化が重なります。
ヒートショックにも注意
冬場は脱衣所と浴室の温度差で体に大きな負担がかかります。脱衣所に暖房器具を置いて、温度差を5度以内に抑えましょう。
4. トイレ
5. 寝室
6. キッチン
7. 階段
OTが行う訪問アセスメントとは
作業療法士に相談するとどうなるの?
作業療法士(OT)にお住まいの安全を見てもらうと、以下のようなことをしてくれます。
- ご本人の体の状態を確認します
- 実際に動作を見て、どこが危ないかを判断します
- ご家族の予算や希望に合わせて、改修の優先順位を提案してくれます
- 工事後に再確認して、使い勝手を調整してくれます
ケアマネジャーやかかりつけ医に「住まいの安全を見てほしい」と伝えると、OTの訪問を手配してもらえます。
介護保険を使った住宅改修制度
介護保険で住宅改修ができることを知っていますか?
要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険を使って住宅改修ができます。
- 上限は20万円(自己負担は1〜3割なので、実質2〜6万円程度)
- 手すり設置、段差解消、滑り止め床材への変更、引き戸への変更、洋式便器への変更が対象です
- 工事前に必ず市区町村に申請が必要です(申請前に工事すると全額自己負担になります)
手順を間違えないように
住宅改修は「申請してから工事」の順番が大切です。先に工事をしてしまうと、介護保険の支給が受けられません。まずはケアマネジャーに相談してください。
具体的な改修事例
実際にどんな改修ができるの?
たとえば以下のような改修が、介護保険の20万円の範囲でできます。
- 浴室に手すりを3本設置(約4万円)
- 和式トイレを洋式に変更(約10万円)
- 玄関に手すりと踏み台を設置(約3万円)
- 廊下に手すりを設置(約3万円)
合計約20万円で、自己負担が1割の場合は約2万円で済みます。
改修だけに頼らない──福祉用具との組み合わせ
福祉用具も活用しましょう
住宅改修のほかに、福祉用具のレンタルも介護保険で利用できます。
- シャワーチェア(浴室で座って体を洗える椅子)
- 補高便座(トイレの座面を高くする道具)
- 介護用ベッド(高さ調整ができるベッド)
工事をしなくても、福祉用具を使うだけで安全になることも多いです。担当のケアマネジャーやOTに相談してみてください。
まとめ
高齢のご家族が安全に暮らし続けるために、お住まいの安全チェックはとても大切です。
- 玄関・浴室・トイレ・階段を中心にチェックリストで確認してみましょう
- 介護保険の住宅改修制度を使えば、自己負担2〜6万円程度で手すり設置や段差解消ができます
- 改修の前に、まずはケアマネジャーに相談してください。OTの訪問も依頼できます
- 「工事前に申請」の順番を必ず守りましょう
- まずは今日、この記事のチェックリストを見ながら、ご家族と一緒にお住まいの安全を確認してみてください
- 気になる箇所が見つかったら、ケアマネジャーやお住まいの市区町村の窓口に相談しましょう
- すぐにできる対策として、足元灯の設置・通り道の整理整頓・滑り止めマットの設置から始めてみてください
参考文献・ガイドライン
- 厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修の手引き」
- 東京消防庁「救急搬送データからみた日常生活事故の実態」
- 日本作業療法士協会「訪問リハビリテーション実践ガイド」
- Clemson L, et al. "Environmental interventions for preventing falls in older people living in the community." Cochrane Database Syst Rev. 2023.
- 村田伸ほか「在宅高齢者の転倒予防に関する住宅改修の効果」日本作業療法研究学会雑誌, 2021.