この記事のポイント
- 住宅内の転倒事故の約7割は「玄関・浴室・階段」の3か所に集中しています
- 介護保険の住宅改修費支給制度を使えば、上限20万円(自己負担1〜3割)で手すり設置や段差解消が可能です
- OTは実際の生活動作を観察し、本人に合った改修プランを提案できる専門職です
- この記事では7か所のチェックリストと、制度活用の手順をまとめています
住み慣れた家が「危険な場所」に変わるとき
高齢のご家族が暮らすお住まいに、「危ない場所」はありませんか。
高齢者の転倒事故の多くは、自宅の中で起きています。特に玄関・浴室・階段の3か所に事故が集中しています。
この記事では、ご家族と一緒にチェックできる安全確認リストと、介護保険を使った住宅改修の方法をお伝えします。
場所別・住宅内危険箇所チェックリスト
1. 玄関
玄関の段差は転倒が起きやすい場所です。以下の点を確認してみましょう。
段差が高くないですか?
上がりかまちの段差が高い場合は、踏み台を置くと安全です
靴を履くとき体を支える場所はありますか?
手すりや壁に手をつける場所があると安心です
照明は十分明るいですか?
足元が暗いと段差が見えにくくなります
靴や荷物が通り道に散らばっていませんか?
つまずきの原因になるので、整理しておきましょう
2. 廊下
手すりはありますか?
廊下に手すりがあると、歩行が安定します
夜間の足元灯はありますか?
夜中のトイレの移動時に転びやすくなります。センサー式の足元灯がおすすめです
床は滑りやすくないですか?
靴下で歩いて滑る感じがあれば注意が必要です
3. 浴室
浴室は最も転倒しやすい場所です。濡れた床、裸足、温度変化が重なります。
浴槽のまたぎは高すぎませんか?
浴槽の縁が高いと、出入りのときにバランスを崩しやすくなります
浴室に手すりはありますか?
立ち上がりや移動のとき、体を支える手すりがあると安全です
床は滑りやすくないですか?
滑り止めマットを敷くだけでも効果があります
座って体を洗える椅子はありますか?
シャワーチェアがあると、立って洗うより安全です
ヒートショックにも注意
冬場は脱衣所と浴室の温度差で体に大きな負担がかかります。脱衣所に暖房器具を置いて、温度差を5度以内に抑えましょう。
4. トイレ
便座の高さは合っていますか?
低すぎると立ち上がりが大変です。補高便座で高さを調整できます
手すりはありますか?
L字型の手すりがあると立ち上がりが楽になります
ドアは外開きか引き戸ですか?
内開きだと、中で倒れたときにドアが開けられなくなる危険があります
5. 寝室
ベッドの高さは合っていますか?
座ったとき足が床にしっかりつく高さがちょうどよいです
ベッドのそばに照明のスイッチはありますか?
暗い中で動くと転倒の危険が高まります
ベッドからトイレまでの通り道に物はありませんか?
夜中にトイレに行くときの安全を確保しましょう
6. キッチン
よく使う食器は手の届く場所にありますか?
高い棚にある食器を取ろうとして転倒する事故があります
床が滑りやすくないですか?
油はねや水はねはこまめに拭きましょう
火の消し忘れはありませんか?
心配な場合は、IHコンロへの変更も検討してみてください
7. 階段
手すりは両側にありますか?
片側だけだと、体の状態によって使いにくいことがあります
段の先端が見えやすいですか?
色の違うテープを貼るだけで、段差がわかりやすくなります
照明は十分ですか?
階段の上と下の両方にスイッチがあると便利です
OTが行う訪問アセスメントとは
作業療法士に相談するとどうなるの?
作業療法士(OT)にお住まいの安全を見てもらうと、以下のようなことをしてくれます。
- ご本人の体の状態を確認します
- 実際に動作を見て、どこが危ないかを判断します
- ご家族の予算や希望に合わせて、改修の優先順位を提案してくれます
- 工事後に再確認して、使い勝手を調整してくれます
ケアマネジャーやかかりつけ医に「住まいの安全を見てほしい」と伝えると、OTの訪問を手配してもらえます。
介護保険を使った住宅改修制度
介護保険で住宅改修ができることを知っていますか?
要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険を使って住宅改修ができます。
- 上限は20万円(自己負担は1〜3割なので、実質2〜6万円程度)
- 手すり設置、段差解消、滑り止め床材への変更、引き戸への変更、洋式便器への変更が対象です
- 工事前に必ず市区町村に申請が必要です(申請前に工事すると全額自己負担になります)
手順を間違えないように
住宅改修は「申請してから工事」の順番が大切です。先に工事をしてしまうと、介護保険の支給が受けられません。まずはケアマネジャーに相談してください。
具体的な改修事例
実際にどんな改修ができるの?
たとえば以下のような改修が、介護保険の20万円の範囲でできます。
- 浴室に手すりを3本設置(約4万円)
- 和式トイレを洋式に変更(約10万円)
- 玄関に手すりと踏み台を設置(約3万円)
- 廊下に手すりを設置(約3万円)
合計約20万円で、自己負担が1割の場合は約2万円で済みます。
改修だけに頼らない──福祉用具との組み合わせ
福祉用具も活用しましょう
住宅改修のほかに、福祉用具のレンタルも介護保険で利用できます。
- シャワーチェア(浴室で座って体を洗える椅子)
- 補高便座(トイレの座面を高くする道具)
- 介護用ベッド(高さ調整ができるベッド)
工事をしなくても、福祉用具を使うだけで安全になることも多いです。担当のケアマネジャーやOTに相談してみてください。
まとめ
高齢のご家族が安全に暮らし続けるために、お住まいの安全チェックはとても大切です。
- 玄関・浴室・トイレ・階段を中心にチェックリストで確認してみましょう
- 介護保険の住宅改修制度を使えば、自己負担2〜6万円程度で手すり設置や段差解消ができます
- 改修の前に、まずはケアマネジャーに相談してください。OTの訪問も依頼できます
- 「工事前に申請」の順番を必ず守りましょう
- まずは今日、この記事のチェックリストを見ながら、ご家族と一緒にお住まいの安全を確認してみてください
- 気になる箇所が見つかったら、ケアマネジャーやお住まいの市区町村の窓口に相談しましょう
- すぐにできる対策として、足元灯の設置・通り道の整理整頓・滑り止めマットの設置から始めてみてください
参考文献・ガイドライン
- 厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修の手引き」
- 東京消防庁「救急搬送データからみた日常生活事故の実態」
- 日本作業療法士協会「訪問リハビリテーション実践ガイド」
- Clemson L, et al. "Environmental interventions for preventing falls in older people living in the community." Cochrane Database Syst Rev. 2023.
- 村田伸ほか「在宅高齢者の転倒予防に関する住宅改修の効果」日本作業療法研究学会雑誌, 2021.
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士(OTR)
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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