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膝の痛みと上手につきあう ── 暮らしを楽にする工夫ガイド

膝が痛くて階段がつらい、正座ができない。日常生活を楽にする環境調整と動作の工夫をわかりやすくまとめました。

📅 2026年5月9日 更新読了目安 23分

この記事のポイント

  • 変形性膝関節症は50歳以上の女性に多く、日本では約2,500万人が罹患していると推定されています
  • 立ち上がり・階段・正座・入浴など、暮らしの中の「困りごと」は環境調整と動作の工夫で軽減できます
  • 作業療法士は「痛みをゼロにする」のではなく「痛みがあっても暮らしやすくする」視点で支援します

変形性膝関節症とはどんな病気か

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って、痛みや動かしにくさが出る病気です。日本では約2,500万人が抱えているとされ、特に50歳以上の女性に多く見られます。

女性に多い理由は、閉経後のホルモン変化や筋力の違いが関係しています。年齢とともに徐々に進行しますが、適切なケアで痛みを和らげ、暮らしやすくすることは十分に可能です。

暮らしの中の「困りごと」── OTが注目するポイント

膝の痛みがあると、日常生活のさまざまな場面で困りごとが出てきます。

  • 立ち上がり: 低い椅子や床から立ち上がるのがつらい
  • 階段: 特に下りるときに痛みが強くなる
  • 正座: 膝が曲がりきらず、法事や集まりの場で困る
  • トイレ: 和式トイレが使えない。洋式でも便座が低いと立てない
  • 入浴: 浴槽をまたぐのが怖い、洗い場でしゃがめない
  • 買い物: 長く歩けない、重い荷物が持てない

こうした困りごとが積み重なると、外出が減り、気持ちも沈みがちになります。でも、環境を整えたり、動き方を工夫したりすることで改善できるものが多いのです。

膝に優しい動作の工夫

立ち上がり方のコツ

立ち上がるときのちょっとしたコツで、膝への負担を減らせます。

  • 椅子を高めにする: クッションを敷くだけでも楽になります
  • 前かがみになってから立つ: 「お辞儀をするように」体を前に倒し、体重を足に乗せてから立ちます
  • 手で支える: 肘掛けやテーブルに手をついて立ちましょう
  • 勢いをつけない: 反動で立とうとすると膝に衝撃がかかります。ゆっくり立ちましょう
ご家庭でできること

座ったときに膝の角度が90度より少し浅い(足が少し前に出る)くらいが理想です。低い椅子しかない場合は、座布団を2枚重ねるだけでも違います。ダイニングチェアにクッションを足すのも簡単で効果的です。

階段の上り下り

階段、特に下りるときは膝に体重の3〜4倍もの力がかかります。

  • 手すりを必ず持つ: 体重を腕にも分散させます
  • 上りは「痛くない方の足」から、下りは「痛い方の足」から: これだけで膝への負担がかなり減ります
  • 一段ずつ足を揃える: 交互に足を出すのがつらければ、一段ごとに両足を揃えましょう
  • エレベーターを積極的に使う: 階段を使わなくてもよい場面では無理をしないことが大切です

荷物の持ち方

重い荷物を持って歩くと、膝への負担が増えます。

  • キャリーカートやリュックサックを使う: 片手で重い袋を持つのは避けましょう
  • 荷物は小分けにする: 一度にたくさん運ばないようにしましょう
  • ネットスーパーを活用する: お米や飲み物など重いものは配達してもらうのが賢い方法です

環境調整 ── 暮らしの場を膝に優しく変える

家の中の環境を少し変えるだけで、膝への負担が大きく減ることがあります。

  • 洋式トイレにする: 和式トイレは膝を深く曲げるので大きな負担です。簡単な工事で洋式に変えられます
  • 便座を高くする: 洋式でも便座が低い場合は、上に乗せるだけの「補高便座」が便利です
  • 椅子を見直す: 低すぎるソファや椅子は避け、座面の高いものを選びましょう
  • 布団からベッドに変える: 床からの立ち上がりが不要になり、毎朝の負担が激減します
  • 手すりをつける: トイレ、お風呂、玄関、階段に設置すると安心です
  • お風呂を安全にする: シャワーチェア、浴槽内の椅子、滑り止めマットを活用しましょう
ご家庭でできること

要介護認定を受けている方は、手すりの取り付けや段差の解消、洋式トイレへの変更などに対して、最大20万円(自己負担1〜3割)の補助が出ます。まずはケアマネジャーに相談してみてください。

自助具・便利グッズの活用

膝が曲がりにくい、かがむのがつらいという方に便利な道具があります。

  • ソックスエイド: 膝を曲げずに靴下が履ける道具です
  • リーチャー(マジックハンド): 床のものを拾ったり、高い棚のものを取ったりできます
  • シャワーチェア: お風呂で座って体を洗えます。高さ調整できるものがおすすめです
  • 長柄の靴べら: かがまずに靴が履けます
ご家庭でできること

ソックスエイドやリーチャーは1,000〜3,000円程度で購入できます。介護保険を利用すれば、シャワーチェアなどは1割負担で購入できることもあります。ケアマネジャーや担当の作業療法士に相談してみてください。

運動療法との関係 ── OTとPTの役割分担

膝の痛みに対しては、筋力をつける運動がとても大切です。特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることで、膝への負担が軽くなります。

リハビリには2つの専門家が関わります。

  • 理学療法士(PT): 筋力トレーニング、歩行の練習、痛みを和らげる治療
  • 作業療法士(OT): 日常生活を楽にする工夫、環境調整、便利な道具の提案

両方の専門家が協力して、「痛みを減らす」と「暮らしやすくする」の両方からサポートします。

体重管理と膝の負担

体重と膝の痛みには深い関係があります。歩くとき、膝には体重の2〜3倍の力がかかっています。つまり、1kg体重を減らすだけで、膝への負担が2〜3kg軽くなるのです。

ただし、無理なダイエットは禁物です。

  • 食事を極端に減らすと筋力が落ちて、かえって膝に悪影響が出ます
  • 膝が痛くてもできる運動から始めましょう(水中歩行、座ってできる運動など)
  • 日常生活の中で少しずつ体を動かすことも立派な運動です
ご家庭でできること

椅子に座ったまま膝をゆっくり伸ばす運動(10回×3セット)は、膝への負担が少なく太ももの筋力を鍛えられます。テレビを見ながらでもできるので、毎日の習慣にしてみてください。痛みが出る場合は無理をせず、主治医や理学療法士に相談しましょう。

手術を勧められたとき

医師から手術を勧められたとき、不安に感じるのは当然です。判断のために知っておきたいポイントをまとめます。

  • まずは保存療法(手術しない方法)を十分に試す: 運動療法、環境調整、体重管理で改善することもあります
  • 手術後もリハビリが必要: 3〜6か月程度のリハビリ期間があります
  • 人工関節は永久ではない: 15〜20年程度で入れ替えが必要になることがあります
  • 手術後は正座が難しくなることが多い: ただし、すでに正座ができない方には影響しません

ヒント

手術をするかどうかは、「痛みの程度」だけでなく「今の暮らしにどれだけ支障があるか」で考えることが大切です。主治医やリハビリの専門家と、ご自身の生活のことをよく話し合って決めましょう。焦って決める必要はありません。


ポイント

免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。

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