この記事のポイント
- 訪問リハビリとは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自宅を訪問し、生活の場でリハビリを行う公的保険サービスで、介護保険1割負担なら月額5,000〜6,000円程度(週2回・1回40分の場合)が目安です
- 介護保険または医療保険で利用でき、1回20分単位、週6回までが基本です。通院が難しい方だけでなく、自宅での生活動作を改善したい方にも適しています
- 訪問看護ステーションからのリハビリとは運営母体や指示系統が異なります
- 利用開始には主治医の指示書とケアマネジャーとの相談が必要です
はじめに──「家でどうすれば?」という不安
退院が決まったとき、うれしい気持ちと同時に「家に帰ってからどうすればいいんだろう」という不安を感じる方は少なくありません。入院中はリハビリの専門職が毎日そばにいてくれたのに、退院した途端にひとりで生活しなければならない。病院ではできていた動作も、自宅の環境では思うようにいかないことがあります。
段差がある玄関、狭い浴室、手すりのないトイレ──病院と自宅では環境がまったく異なります。そうした生活の場でのリハビリを担うのが、訪問リハビリテーションです。
この記事では、訪問リハビリのサービス内容、利用条件、費用、そして利用開始までの手続きを分かりやすく解説します。
退院が決まったとき、「家に帰ってからどうすればいいの?」と不安になるご家族は多いです。入院中は毎日リハビリがあったのに、退院後はどうすればよいのでしょうか。
訪問リハビリを利用すれば、リハビリの専門家がご自宅に来て、実際の生活環境の中でリハビリを行ってくれます。この記事では、サービスの内容、費用、手続きの方法をお伝えします。
訪問リハビリとは
訪問リハビリテーション(訪問リハビリ)とは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がご自宅を訪問し、生活の場で直接リハビリを行うサービスです。
介護保険法では、「居宅要介護者について、その者の居宅において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション」と定義されています(出典: 介護保険法 第8条第5項, 1997)。
病院やクリニックで行う外来リハビリとの最大の違いは、実際に生活している環境でリハビリができる点です。訓練室で「階段の練習」をするのと、自宅の実際の階段で練習するのとでは、得られる効果がまったく異なります。
訪問リハビリの強みは「その人の生活の場」でリハビリができること。実際の環境で練習するからこそ、生活に直結する力が身につきます。
— 作業療法士の視点
そもそも作業療法とはどのような考え方のリハビリなのかについては、作業療法とは何かで詳しく解説しています。
訪問リハビリとは、作業療法士や理学療法士がご自宅を訪問して、生活の場でリハビリを行うサービスです。
病院でのリハビリとの一番の違いは、実際の自宅環境で練習できることです。病院の訓練室で歩けるようになっても、自宅の段差や狭い廊下ではうまくいかないことがあります。訪問リハビリなら、そうした自宅ならではの課題に直接取り組めます。
訪問リハビリで作業療法士が行うこと
訪問リハビリでは、作業療法士はさまざまな支援を行います。ここでは主な4つの内容を紹介します。
ADL訓練(日常生活動作の練習)
ADL(日常生活動作)とは、食事・入浴・着替え・トイレ動作など、毎日の生活に必要な基本的な動作のことです。訪問リハビリでは、自宅の実際の環境でこれらの動作を練習します。
たとえば入浴動作の練習では、ご自宅の浴室の広さ、浴槽の高さ、手すりの位置を踏まえた上で、安全に入浴できる方法を一緒に考え、繰り返し練習します。
環境調整
自宅の環境を整えることも、作業療法士の重要な役割です。具体的には以下のような提案を行います。
- 手すりの設置場所や種類の選定
- 家具の配置変更による動線の確保
- 段差の解消方法の提案
- ベッドや椅子の高さの調整
住宅改修と介護保険
介護保険を利用すると、手すりの設置や段差の解消などの住宅改修に対して上限20万円(自己負担1〜3割)の支給を受けられます(出典: 厚生労働省 老企第42号, 2000)。作業療法士は「どこにどんな改修が必要か」を専門的な視点から助言できますので、改修前にぜひ相談してみてください。
対象となる工事の種類や申請手順は、介護保険の住宅改修 完全ガイドで詳しく解説しています。
家族指導
ご家族に対して、介助の方法や注意点をお伝えするのも訪問リハビリの大切な役割です。たとえば「立ち上がりの介助で腰を痛めないためのコツ」や「転倒しそうなときの対応方法」など、ご家族の身体的な負担を減らす方法を具体的にお伝えします。
また、ご本人の回復状況に合わせて「ここまでは見守りで大丈夫です」「この動作はまだ手伝ってあげてください」といった介助量の調整を提案します。
福祉用具の提案
歩行器、杖、シャワーチェア、ポータブルトイレなど、生活を助ける福祉用具の選定と使い方の指導を行います。カタログの情報だけでは分からない「この方のこの動作にはこの用具が合う」という判断は、作業療法士の専門性が活きる場面です。
たとえば、シャワーチェアひとつとっても、背もたれの有無、座面の高さ、ひじ掛けの形状など選択肢は多岐にわたります。作業療法士は、ご本人の座位バランスや立ち上がり動作を実際の浴室で評価した上で、最適な製品を提案します。さらに、導入後も「使いにくい点はないか」「身体の状態に変化はないか」を定期的に確認し、必要に応じて用具の変更や調整を行います。
具体的にどんなことをしてくれるの?
生活動作の練習:入浴、トイレ、着替えなど、実際の自宅環境で日常の動作を練習します。
住環境のアドバイス:手すりの設置場所、家具の配置、段差の解消方法を提案してくれます。介護保険を使えば住宅改修に上限20万円の補助が出ます。
ご家族への介助指導:介助の方法や注意点を教えてもらえます。「腰を痛めない介助のコツ」や「見守りでいい場面と手伝うべき場面の判断」なども相談できます。
福祉用具の選定:歩行器やシャワーチェアなど、ご本人に合った用具を選んで使い方を教えてもらえます。
1回の訪問の流れ
訪問リハビリの1回あたりの時間は40〜60分が一般的です(20分単位で、多くの場合2〜3単位で実施)。具体的な流れを見てみましょう。
到着・体調確認(5〜10分)
- 1ご自宅に到着し、ご挨拶
- 2血圧・脈拍・体温の測定
- 3体調や前回からの変化を確認
- 4ご本人やご家族からの相談を聞く
リハビリの実施(30〜40分)
- 5目標に合わせたプログラムを実施
- 6ADL訓練(入浴・トイレ・着替えなどの動作練習)
- 7筋力トレーニングやストレッチ
- 8屋外歩行の練習(必要に応じて)
- 9環境調整や福祉用具の調整
振り返り・次回の確認(5〜10分)
- 10本日のリハビリの内容と結果を共有
- 11自主トレーニングの内容を確認
- 12次回の訪問日時を確認
- 13ご家族への申し送り
体調が優れないときは
訪問日に体調が優れない場合は、無理をせずリハビリの内容を軽くしたり、体調確認と相談だけで終わりにしたりすることもあります。「今日は調子が悪い」と遠慮なく伝えてください。状態に合わせて柔軟に対応するのが訪問リハビリの強みです。
1回の訪問はどんな感じ?
1回あたり40〜60分程度が一般的です。
まず血圧や体温を測って体調を確認し、次にリハビリの本題(動作練習、筋力トレーニングなど)を30〜40分行います。最後に次回の予定を確認して終了です。
体調が良くないときは、無理せずに内容を軽くしてもらえます。「今日は調子が悪い」と遠慮なく伝えてください。
訪問看護ステーションからのリハビリとの違い
「訪問リハビリ」と似たサービスに、「訪問看護ステーションからのリハビリ」があります。どちらも自宅でリハビリを受けられる点は同じですが、いくつかの違いがあります。
| 項目 | 訪問リハビリテーション | 訪問看護ステーションからのリハビリ |
|---|---|---|
| 運営母体 | 病院・クリニック・介護老人保健施設 | 訪問看護ステーション |
| 指示書 | 訪問リハビリテーション指示書 | 訪問看護指示書 |
| 医師の関与 | 事業所の医師が直接診察 | 主治医が指示書を発行 |
| 看護師との連携 | 必要に応じて連携 | 同じステーション内で日常的に連携 |
| 介護報酬(1回あたり) | 308単位(20分) | 294単位(20分) |
どちらが良い・悪いということではなく、ご本人の状態や地域の事業所の状況に応じて選ぶものです。医療的なケアが必要な方は訪問看護ステーションからのリハビリが向いている場合もありますし、リハビリに特化したい方は訪問リハビリが向いている場合もあります。担当のケアマネジャーに相談すると、適切なサービスを提案してもらえます。
「訪問看護のリハビリ」とは何が違うの?
自宅でリハビリを受けられるサービスには、「訪問リハビリ」と「訪問看護ステーションからのリハビリ」の2種類があります。
どちらもリハビリの内容は似ていますが、運営母体が異なります。どちらが合うかはご本人の状態によりますので、ケアマネジャーに相談して最適なほうを選びましょう。
利用条件と費用
利用条件
訪問リハビリを利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 介護保険の場合:要介護認定(要支援1〜2、要介護1〜5)を受けていること
- 医療保険の場合:主治医が訪問リハビリの必要性を認めていること(介護保険の対象外の方、急性期の方など)
- いずれの場合も主治医の指示書が必要
費用の目安(介護保険の場合)
介護保険を利用する場合の費用は以下の通りです(2024年度介護報酬改定〔2024年6月施行〕に基づく目安。出典: 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定, 2024)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本報酬 | 1回20分あたり308単位(約3,080円) |
| 自己負担 | 1割負担の場合:1回約310円(20分あたり) |
| 一般的な利用 | 1回40分(2単位)×週2回の場合、月額約5,000〜6,000円(1割負担) |
| 利用上限 | 週6回まで(ただしケアプランの範囲内)(出典: 兵庫県 訪問リハビリテーションの手引き, 2024) |
費用は目安です
上記は概算です。加算(リハビリテーションマネジメント加算など)の有無や負担割合(1〜3割)によって実際の費用は変わります。正確な金額はケアマネジャーや訪問リハビリ事業所に確認してください。
費用はどのくらいかかるの?
介護保険を利用する場合、1割負担で月額5,000〜6,000円程度(週2回・1回40分の場合)が目安です。
利用には主治医の指示書が必要です。ケアマネジャーに「訪問リハビリを使いたい」と相談すると、手続きを進めてもらえます。
利用開始までの手続き
訪問リハビリを始めるまでの一般的な流れをご紹介します。
Step 1:相談する
- 1担当のケアマネジャーに「訪問リハビリを利用したい」と相談する
- 2要介護認定をまだ受けていない場合は、まず認定の申請を行う
- 3ケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターに相談する
Step 2:主治医の指示書を取得する
- 4主治医に訪問リハビリの必要性を相談する
- 5主治医が指示書(訪問リハビリテーション指示書)を作成する
- 6指示書には、疾患名、リハビリの目標、注意事項などが記載される
Step 3:事業所を選ぶ
- 7ケアマネジャーが地域の訪問リハビリ事業所を紹介してくれる
- 8事業所の特徴や空き状況を確認する
- 9利用者やご家族の希望も伝える
Step 4:契約・サービス開始
- 10訪問リハビリ事業所と契約を結ぶ
- 11担当のリハビリ専門職が初回訪問で評価を行う
- 12リハビリの目標と計画を一緒に立てる
- 13定期的な訪問リハビリがスタートする
退院前カンファレンスを活用しましょう
入院中の方は、退院前に病院のスタッフと訪問リハビリの担当者が集まる「退院前カンファレンス」を活用すると、スムーズにサービスを開始できます。入院中のリハビリの内容や注意点を直接引き継いでもらえるので、退院後の不安が大きく減ります。
どうやって始めるの?
1. ケアマネジャーに相談する:「訪問リハビリを使いたい」と伝えましょう。ケアマネジャーがいない場合は地域包括支援センターに相談します。
2. 主治医に指示書をもらう:主治医に訪問リハビリが必要だと判断してもらい、指示書を出してもらいます。
3. 事業所を選ぶ:ケアマネジャーが地域の事業所を紹介してくれます。
4. サービス開始:契約後、リハビリの専門家が初回訪問で状態を確認し、目標と計画を一緒に立ててスタートします。
入院中の方は、退院前に手続きを始めておくと、退院後すぐにサービスを利用できます。
要介護認定の申請方法や、訪問リハビリ以外に介護保険で使えるサービスについては、介護保険で使えるサービス一覧と申請の流れをご覧ください。
こんな方におすすめ
訪問リハビリは、以下のような方に特におすすめです。
通院が難しい方
体力の低下や移動手段の問題で、病院やクリニックへの通院が困難な方に適しています
自宅での生活動作を改善したい方
入浴・トイレ・着替えなど、自宅で実際に困っている動作がある方にぴったりです
退院直後で在宅生活に不安がある方
入院中にできるようになった動作を、自宅環境でも安全に行えるよう支援します
住環境の調整が必要な方
手すりの設置や家具の配置変更など、自宅の環境を整えたい方に専門的な助言ができます
ご家族の介護負担を軽減したい方
介助方法の指導や福祉用具の提案により、ご家族の身体的・精神的な負担を減らします
外出の機会を増やしたい方
屋外歩行の練習や公共交通機関の利用練習など、社会参加に向けた支援も行います
こんなとき、訪問リハビリが役立ちます
- 退院したばかりで自宅生活に不安があるとき
- 通院が難しくなった方のリハビリ
- 入浴やトイレなど自宅の中で困っている動作があるとき
- 手すりの設置場所や福祉用具の選び方を相談したいとき
- 介助の仕方を教えてもらいたいとき
まとめ
- 訪問リハビリは自宅という生活の場でリハビリを受けられるサービスです。実際の環境で練習できるため、日常生活に直結する力が身につきます
- 作業療法士はADL訓練・環境調整・家族指導・福祉用具の提案など、暮らし全体を支える幅広い支援を行います
- 訪問看護ステーションからのリハビリとは運営母体や指示系統が異なりますが、どちらも自宅でリハビリが受けられるサービスです
- 介護保険を利用すれば、1割負担で月額5,000〜6,000円程度から利用できます
- 利用を始めるにはケアマネジャーへの相談と主治医の指示書が必要です。まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください
「退院したら終わり」ではありません。訪問リハビリを活用すれば、自宅での生活をより安全に、より自分らしく送ることができます。気になった方は、まずはお気軽に相談してみてください。
- 訪問リハビリは自宅の環境でリハビリが受けられるサービスです
- 介護保険を使えば月額5,000〜6,000円程度(1割負担の場合)で利用できます
- ケアマネジャーに「訪問リハビリを使いたい」と相談することが第一歩です
- ご家族への介助指導もしてもらえるので、介護の不安を減らすことにもつながります
- 退院前に訪問リハビリの手続きを始めましょう:入院中に病院のソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談しておくと、退院後すぐにサービスを利用できます
- 「困っていること」をメモしておきましょう:日常生活で困っている場面をメモして訪問リハビリの担当者に伝えると、的確な支援が受けられます
- 介助方法の相談も遠慮なくしましょう:ご家族の腰痛や疲労の原因が、介助の方法を変えるだけで解決することもあります
よくある質問
- 訪問リハビリの費用はどのくらいかかりますか?
- 介護保険を利用し1割負担の場合、1回40分・週2回で月額5,000〜6,000円程度が目安です。基本報酬は20分あたり308単位で、加算の有無や負担割合(1〜3割)により変わるため、正確な金額はケアマネジャーや事業所に確認してください。
- 訪問リハビリを利用するには何が必要ですか?
- 介護保険の場合は要介護認定(要支援1〜2、要介護1〜5)と主治医の指示書が必要です。まず担当のケアマネジャーに相談し、ケアマネジャーがいない場合は地域包括支援センターに相談すると手続きを進めてもらえます。
- 訪問リハビリと訪問看護ステーションからのリハビリは何が違いますか?
- 運営母体と指示系統が異なります。訪問リハビリは病院・クリニック・老健が運営し事業所の医師が診察しますが、訪問看護ステーションのリハビリは主治医の訪問看護指示書に基づき、看護師と日常的に連携できるのが特徴です。
- 訪問リハビリは1回どのくらいの時間で、週何回まで利用できますか?
- 1回あたり40〜60分が一般的で、20分単位(多くは2〜3単位)で実施されます。介護保険では週6回までが基本の上限ですが、実際の回数はケアプランの範囲内でケアマネジャーと相談して決めます。
- 訪問リハビリでは具体的にどんなことをしてもらえますか?
- 入浴やトイレなどのADL訓練、手すり設置や家具配置などの環境調整、ご家族への介助方法の指導、歩行器やシャワーチェアなど福祉用具の選定と使い方の指導を、実際の自宅環境に合わせて行ってもらえます。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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