この記事のポイント
- 理学療法士及び作業療法士法とは、1965年(昭和40年)制定の法律第137号で、作業療法士の定義・免許・国家試験・名称独占・守秘義務・罰則を定める全6章22条の根拠法です
- 作業療法は第2条で「手芸、工作その他の作業を行わせること」と定義され、作業療法士は医師の指示の下に業務を行う
- 「作業療法士」は名称独占資格であり、守秘義務は資格を失った後も継続する
- 制定から60年が経過し、定義の狭さなど条文と現代の実践とのギャップが課題として指摘されている
作業療法士の根拠法とは
作業療法士は、「理学療法士及び作業療法士法」(昭和40年法律第137号)に基づく国家資格です。この法律は1965年(昭和40年)に制定され、理学療法士と作業療法士の資格制度を一つの法律で定めています(出典: e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」, 昭和40年法律第137号)。
全6章・22条で構成されるこの法律は、作業療法士がどのように定義され、どのような条件で免許が与えられ、どのような業務を行うのかを規定しています。
各章の要点
第一章: 総則(定義と基本的な枠組み)
第2条で、作業療法と作業療法士が法的に定義されています。
法律上、作業療法は「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせること」と定義されています(出典: 理学療法士及び作業療法士法 第2条)。
この条文では「手芸、工作その他の作業」という表現が使われていますが、現代の作業療法の実践範囲はこれよりもはるかに広いことに注意が必要です。
「医師の指示の下に」の意味
法律では、作業療法士は「医師の指示の下に」作業療法を行うと規定されています。ただし、これは作業療法の実施のたびに医師から個別具体的な指示を受けなければならないという意味ではありません。
全体としての治療方針や処方が医師によって出されていれば、日々の具体的な介入内容は作業療法士の専門的判断に委ねられるとされています。
第二章: 免許
作業療法士の免許は、作業療法士国家試験に合格した者に対して厚生労働大臣が与えます。免許を受けた者は、厚生労働省の「作業療法士名簿」に登録されます。
欠格事由
以下に該当する場合、免許が与えられないことがあります。
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 作業療法士の業務に関して犯罪または不正の行為があった者
- 心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
ただし、これらに該当しても必ずしも免許が取得できないわけではなく、個別に判断されます。
第三章: 試験
作業療法士国家試験は、毎年1回以上、厚生労働大臣が行います。受験資格を得るためには、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した養成施設で、3年以上作業療法に関する知識・技能を修得する必要があります(出典: 厚生労働省「作業療法士国家試験の施行」)。
第四章: 業務等
作業療法士でない者が「作業療法士」の名称を使用することは禁止されています(名称独占)。ただし、作業療法という行為自体は作業療法士以外でも行える場合があり、「業務独占」ではない点が特徴です。
また、作業療法士には守秘義務が課されており、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。この守秘義務は、資格を喪失した後も継続します。
第五章: 試験委員
国家試験の問題作成や採点を行う試験委員についての規定です。試験委員には守秘義務が課されています。
第六章: 罰則
法律に違反した場合の罰則が定められています(出典: 理学療法士及び作業療法士法 第20〜22条)。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 試験問題の漏洩(試験委員) | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 守秘義務違反 | 50万円以下の罰金 |
| 名称の不正使用 | 30万円以下の罰金 |
なお、刑法改正による拘禁刑の創設に伴い、条文上の「懲役」は「拘禁刑」に改められています。
法律の課題と今後
制定から60年以上が経過
この法律は1965年の制定以来、根本的な改正が行われていません。当時と比較して、作業療法の実践範囲は大幅に拡大しており、法律の条文と実際の臨床との間にギャップが生じています。
主な課題
- 「手芸、工作その他の作業」という表現は、現代の作業療法の多様な実践を十分に反映していない
- 現代のリハビリテーションはチーム医療が基本だが、法律にはその視点が欠けている
- 介護保険制度や地域包括ケアシステムにおける作業療法士の役割が法律上は明確でない
- 「障害のある者」に対する行為と定義されているため、予防的な介入の位置づけが不明確
厚生労働省の通知や解釈によって実質的な業務範囲は拡大していますが、法律そのものの現代化が求められている状況です。
作業療法士って、どんな資格の人ですか?
作業療法士は、国の法律にもとづく国家資格です。1965年(昭和40年)にできた「理学療法士及び作業療法士法」という法律に、作業療法士の資格と仕事の範囲が定められています。
資格を得るには、指定の学校や養成施設で3年以上学び、国家試験に合格しなければなりません。合格すると厚生労働大臣から免許が与えられ、国の名簿に登録されます。
「医師の指示のもとで行う」とは、どういう意味ですか?
法律には、作業療法士は医師の指示のもとで作業療法を行うと書かれています。リハビリは主治医の治療方針の中で進められる、ということです。
ただし、毎回すべての中身を医師が決めるわけではありません。全体の方針を医師が示したうえで、その日にどんな練習をするかといった具体的な内容は、作業療法士が専門家として判断します。
ですから、「トイレに一人で行けるようになりたい」「また料理をしたい」といったご希望は、担当の作業療法士に直接お伝えいただいて大丈夫です。医師への確認が必要なときは、作業療法士のほうから相談してもらえます。
何をしてもらえる人なのでしょう?
条文には、作業療法とは「手芸、工作その他の作業を行わせること」だと書かれています。古めかしい言い回しですが、これは制定当時の言葉です。
いまの作業療法が扱う範囲はずっと広く、食事・着替え・入浴といった毎日の生活動作から、家事や買い物、お仕事や学校、趣味の活動まで、その方の暮らしそのものを支えます。「手芸や工作しかしてもらえないのかな」と心配される必要はありません。
「作業療法士」と名乗れるのは資格を持つ人だけです
この法律は、資格のない人が「作業療法士」と名乗ることを禁じています(名称独占といいます)。ただし作業療法に似た活動そのものは、資格のない人が行う場合もあります。民間のサービスなどで気になることがあれば、担当の方に資格の有無をたずねてかまいません。
また作業療法士には守秘義務があり、仕事で知ったことを正当な理由なく他人へ話すことは禁じられています。ご家庭の事情やお金の不安も、安心してお話しください。
- 担当の作業療法士の名前と所属(病院名・事業所名)をメモに控えておきましょう。困ったときの相談先がはっきりします
- 「できるようになりたいこと」を3つだけ紙に書いて渡してみてください。作業療法は目標から組み立てるので、練習の中身が変わります
- 治療全体の方針は医師、日々の練習は作業療法士が担当します。迷ったらどちらにたずねても構いません
ご本人・ご家族に知っておいてほしいこと
- 作業療法士は法律で定められた国家資格です。3年以上の養成教育と国家試験を経て、厚生労働大臣の免許を受けています
- リハビリは主治医の方針のもとで進みますが、日々の練習の組み立ては作業療法士が専門家として考えます
- 条文の言葉は古いものの、実際の支援は食事や入浴から家事・仕事・趣味まで、暮らし全体におよびます
- 資格のない人が作業療法士を名乗ることは認められておらず、仕事上知ったことを口外しない義務も課されています
関連記事
- 作業療法士の仕事: 「[作業療法士ってどんな仕事?](/articles/what-job-is-otr)」
- 作業療法士になるには: 「[作業療法士になるには](/articles/how-to-become-ot)」
- 作業療法の職域: 「[作業療法の職域とは?](/articles/ot-occupational-field)」
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
運営者プロフィールを見る →