新卒OTスタートアップコラム「4月1日までに知っておきたいこと」── 第6回
この記事のポイント
- 患者さんとの信頼は「最初の5分」で土台が決まります。自己紹介の後に何を話すかが重要です
- 「若い先生で大丈夫?」は攻撃ではなく不安の表現。受け止め方で関係が変わります
- 受け入れ側は、新人の最初の担当患者の選定に配慮するだけで、成功体験を作れます
自己紹介の「その後」が勝負
「はじめまして、作業療法士の○○です。本日からリハビリを担当させていただきます」
ここまでは言えます。問題は、その後です。
沈黙が怖くて矢継ぎ早に説明を始めてしまう。あるいは「よろしくお願いします」で会話が終わってしまう。多くの新人が経験する壁です。
大切なのは、自己紹介の後は「話す」のではなく「聴く」ことです。
「今、一番困っていることは何ですか?」「退院後にやりたいことはありますか?」── こうしたオープンクエスチョン(はい/いいえで答えられない質問)を使うと、患者さんの方から話し始めてくれます。
非言語コミュニケーションの力
言葉以上に大切なのが、非言語のメッセージです。
目線の高さを合わせる:ベッド上の患者さんに立ったまま話しかけると、見下ろす形になります。椅子に座る、しゃがむなどして目線を合わせるだけで、患者さんの安心感が大きく変わります。
話すスピードを合わせる:緊張するとつい早口になりがちです。患者さんの話すペースに合わせてゆっくり話すことを意識しましょう。
適度な沈黙を恐れない:患者さんが考えている時間を、沈黙で埋めようとしないでください。待つことも大切なコミュニケーションです。
「若い先生で大丈夫?」と言われたら
新人が最も動揺する一言かもしれません。しかし、この言葉の裏にあるのは攻撃ではなく不安です。
「自分のリハビリは大丈夫だろうか」「ちゃんと回復できるだろうか」── 患者さん自身が不安を抱えている表れです。
このとき、してはいけないのは「大丈夫です!」と即答することです。根拠のない「大丈夫」は信頼を損ないます。
代わりに、こう答えてみてください。
「ご不安にさせてしまい、申し訳ありません。新人ですので至らない点もあるかと思いますが、先輩のサポートを受けながら、○○さんのリハビリに全力で取り組みます。気になることがあれば、いつでもおっしゃってください」
不安を受け止め、正直に伝え、努力を約束する。 この姿勢が、信頼の出発点になります。
最初の治療で意識すること
初回の治療は、技術を見せる場ではありません。関係を築く場です。
意識すべきポイントは3つです。
1. 患者さんの話を最後まで聴く評価のために質問を連発したくなりますが、まずは患者さんのペースで話してもらうことを優先してください。「こちらの質問」より「あちらの話」を先に聴く姿勢が信頼を生みます。
2. 説明してから触れる「肩の動きを確認させてください」と必ず一言伝えてから身体に触れるようにしましょう。いきなり触れるのは、信頼関係ができていない段階では不安や不快感を与えます。
3. 小さな約束を守る「明日また来ますね」と言ったら必ず行く。「次回は○○を確認しますね」と言ったら確認する。小さな約束の積み重ねが、信頼を形にします。
受け入れ側へ── 新人の最初の担当患者選び
新人が初めて担当する患者さんの選定は、教育担当の腕の見せどころです。
理想的なのは、以下のような患者さんです。
- コミュニケーションが取りやすい方(失語や重度認知症のない方)
- リハビリに意欲的な方(「若い先生でも頑張ってね」と応援してくれるタイプ)
- 医学的にリスクが比較的低い方
新人の最初の成功体験は、その後の臨床人生に大きな影響を与えます。「この患者さんが笑ってくれた」「『ありがとう』と言ってもらえた」── そんな体験が、新人のモチベーションの原点になります。
また、初回治療にはバディの先輩が同席し、治療後に「今の良かったよ」「次はこうしてみようか」とフィードバックする時間を設けると効果的です。