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リスク管理の超基本 ── 「何かあったら」の前に知っておくこと

転倒、バイタル変動、急変時の対応。新人OTに事故が多い場面と「わからなければ止まる」の原則を解説します。

📅 2026年3月25日 更新読了目安 5分

新卒OTスタートアップコラム「4月1日までに知っておきたいこと」── 第5回

この記事のポイント

  • リスク管理の最優先原則は「わからなければ止まる」です
  • 新人にインシデントが多い場面・時間帯には共通パターンがあります
  • 受け入れ側は「報告しやすい文化」と「バディ制度」で新人の安全ネットを作りましょう

最も大切なルール:「わからなければ止まる」

リスク管理について、入職前に覚えておいてほしいことがひとつだけあります。

迷ったら、止まってください。

患者さんの状態が普段と違うと感じたとき。訓練中に患者さんが「ちょっとフラフラする」と言ったとき。バイタルサインの数値の意味がわからないとき。

そのまま訓練を続けるのではなく、いったん中断して、先輩に確認する。これが新人にとって最も重要なリスク管理です。

「止める判断」は消極的に見えるかもしれません。しかし実際には、患者さんの安全を最優先にした積極的な判断です。先輩は「止めてくれてありがとう」と思うことはあっても、「なんで止めたんだ」と責めることはありません。

新人にインシデントが多い場面

医療安全のデータから、新人に特有のリスクパターンがわかっています。

場面1:移乗動作

車椅子からベッドへ、ベッドから車椅子への移乗は、転倒リスクが最も高い場面のひとつです。患者さんの体重を支えきれない、ブレーキのかけ忘れ、足の位置の確認不足。実習で経験していても、自分ひとりで行うと緊張から手順を飛ばしがちです。

場面2:訓練中の疲労の見落とし

先輩は患者さんの微細な疲労サインを読み取れますが、新人にはまだその目がありません。「もう少しやりたい」という患者さんの言葉を真に受けて続行し、結果的に過負荷になるケースがあります。

場面3:午後一番の治療

昼食後の患者さんは眠気や血圧変動が起きやすい時間帯です。特に高齢者では、食後低血圧による意識レベルの変動に注意が必要です。

入職前に確認しておきたいこと

4月に入職したら、できるだけ早い段階で以下の3つを確認してください。

入職前に確認しておきたい3つのこと
  • ナースコールの場所と使い方:リハビリ室にナースコールはあるか、訓練室から病棟への連絡手段は何か。初日に確認しておく
  • 急変時の対応フロー:「誰に」「どの手段で」「何を」伝えるか。入職オリエンテーションで説明がなければ自分から確認する
  • バイタルサインの中止基準:「この数値になったら訓練を中止する」という施設ごとの基準を把握する。自信がなければ訓練前後のバイタルチェックを習慣に

インシデントが起きたとき

どれだけ注意しても、インシデントは起こり得ます。そのとき大切なのは隠さないことです。

患者さんが転倒した、ぶつけた、痛がっている── 小さなことでも、すぐに先輩と看護師に報告してください。「大したことないかも」と自己判断して報告しない方が、はるかに危険です。

インシデントレポートを書くことになるかもしれません。それは「始末書」ではありません。同じことを繰り返さないための組織の学びの記録です。正直に、事実を正確に書いてください。

受け入れ側へ── 新人の安全ネットを作る

新人のリスク管理能力は、経験を積むことでしか伸びません。しかし「経験を積むまで待つ」間にインシデントが起きてしまっては本末転倒です。

バディ制度の導入をおすすめします。新人が担当する患者さんの治療には、最初の数週間は必ずバディとなる先輩が近くにいる体制を作りましょう。直接介入するのではなく、「何かあったらすぐ声をかけられる距離」にいるだけで、新人の安心感と患者さんの安全が確保されます。

もうひとつ大切なのは、報告しやすい文化です。インシデント報告が個人の責任追及に使われる職場では、新人はインシデントを隠すようになります。「報告してくれてよかった」「次はこうしよう」── この対応が、安全な職場を作ります。


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