この記事のポイント
- 急性期病院のOTは発症・手術直後から介入し、早期離床と生活動作の再獲得を支援します
- 医師・看護師・PTとの密な連携が求められ、リスク管理能力が最も重視される領域です
- 平均在院日数が短いため、限られた時間で的確にアセスメントし次の段階へつなぐ力が必要です
急性期病院とはどんな場所か
急性期病院とは、発症直後や手術直後の患者さんに対して集中的な治療を行う医療機関です。平均在院日数は14日前後と短く、状態が安定したら回復期リハビリ病棟や自宅へ転院・退院していきます。
OTがこの領域で果たす役割は、「生活への橋渡し」です。ベッドの上で過ごす時間をできるだけ短くし、食事・排泄・着替えといった基本的な生活動作をいち早く取り戻せるよう支援します。
急性期病院とは、病気やケガの直後に集中的な治療を行う病院です。入院期間は2週間前後と短いのが特徴です。
この病院で働く作業療法士(OT)は、入院直後から食事やトイレといった日常の動作ができるようにサポートしてくれる専門家です。
OTの1日の流れ
急性期病院で働くOTの典型的な1日を紹介します。施設によって異なりますが、おおよその流れは以下の通りです。
8:30 ── 出勤・情報収集
電子カルテで担当患者の夜間の状態を確認します。バイタルサインの変動、夜間のナースコールの有無、医師の指示変更などを把握します。急性期では一晩で状態が大きく変わることがあるため、毎朝の情報収集は欠かせません。
9:00 ── チームカンファレンス
医師、看護師、PT、ST、MSWとの短時間カンファレンスに参加します。新規入院患者の情報共有、退院予定患者の調整、リハビリの方針確認などを行います。
9:30〜12:00 ── 午前のリハビリ介入
担当患者のもとへ訪問し、ベッドサイドでの介入を行います。急性期のOTが行う主な介入は以下の通りです。
- 早期離床: ベッド上での座位練習、端座位での活動
- ADL練習: 食事動作、整容、更衣の練習
- 上肢機能評価・訓練: 脳卒中後の麻痺側上肢の評価と介入
- 認知機能スクリーニング: せん妄や高次脳機能障害の早期発見
- 自助具の選定: 片手でも食事ができるスプーンやお皿の提案
12:00〜13:00 ── 昼休憩・記録
カルテ記入と午後の準備を行います。
13:00〜16:30 ── 午後のリハビリ介入・カンファレンス
午後も患者への介入を続けます。退院前カンファレンスや、家屋調査の打ち合わせが入ることもあります。
16:30〜17:30 ── 記録・翌日の準備
リハビリ実施記録、計画書の作成、翌日のスケジュール調整を行います。
急性期病院のOTは、朝から夕方まで忙しく動いています。
- 朝: 患者さんの夜間の様子をカルテで確認し、チームのミーティングに参加します
- 午前〜午後: 患者さんのベッドサイドを訪問し、食事やトイレの練習、腕や手のリハビリを行います
- 夕方: その日の記録を書き、翌日の準備をします
入院直後は体力が落ちているため、1回のリハビリは20〜40分程度と短めです。患者さんの体調に合わせて、無理のない範囲で進めていきます。
急性期OTの主な役割
早期離床の推進
急性期における最大のミッションは早期離床です。長期臥床は廃用症候群を引き起こし、筋力低下、関節拘縮、肺炎、深部静脈血栓症などのリスクを高めます。OTはPTと協働し、患者の状態に応じた離床プログラムを立案・実施します。
せん妄の予防と対応
ICUや急性期病棟ではせん妄が高頻度で発生します。OTは生活リズムの調整、日中の活動提供、見当識の促進などを通じて、せん妄の予防と早期回復に貢献します。
退院支援の起点をつくる
急性期OTは入院早期から退院後の生活を見据えたアセスメントを行います。ADLの自立度、認知機能、家屋環境、家族のサポート体制などを評価し、回復期への転院か自宅退院かの判断材料を提供します。
リスク管理
急性期では患者の状態が不安定なため、リハビリ中の急変リスクが常にあります。バイタルサインのモニタリング、中止基準の遵守、急変時の対応手順の熟知が求められます。
注意
急性期OTは、リハビリ中止基準(血圧・脈拍・SpO2の基準値)を必ず把握しておく必要があります。「おかしい」と感じたら介入を中止し、すぐに医師・看護師に報告する判断力が求められます。
急性期病院のOTが特に力を入れているのは、以下の3つです。
- 早期離床: 長くベッドに寝ていると体力がどんどん落ちてしまいます。できるだけ早く起き上がり、座る練習から始めます
- せん妄の予防: 入院中にせん妄(一時的な混乱状態)が起きることがあります。日中に活動する時間をつくることで予防します
- 退院の準備: 入院早期から「退院後にどんな生活ができるか」を見据えて評価します
面会時にご本人の趣味の話題を出したり、写真を見せたりすることは、せん妄の予防に効果的です。「今日は何曜日か」「ここはどこか」といった会話も、意識をはっきりさせる助けになります。
急性期OTに求められる力
迅速なアセスメント力
急性期では限られた時間で的確な評価を行う必要があります。初回評価で「この方にとって最も重要なADL課題は何か」「退院先はどこが適切か」を見極める力が求められます。
リスク管理能力
不安定な全身状態の中でリハビリを行うため、バイタルサインの変化を読む力が不可欠です。心電図モニター、酸素飽和度、血圧変動の意味を理解し、介入の可否を自分で判断できなければなりません。
多職種連携力
急性期病院は最も多くの職種が関わる現場です。医師、看護師、PT、ST、MSW、管理栄養士、薬剤師など、それぞれの専門性を理解した上でOTの視点を伝える力が重要です。
精神的なタフさ
急性期では患者の急変や死に直面することもあります。感情をコントロールしながら次の患者に向き合うレジリエンスが求められます。
急性期病院で働くOTには、素早く判断する力、患者さんの体調の変化に気づく力、他のスタッフとスムーズに連携する力が求められます。入院直後の不安定な時期に関わるため、安全管理の意識がとても高い専門家です。
急性期OTのやりがいと大変さ
やりがい
- 発症直後の患者が初めて食事を口から取れた瞬間に立ち会える
- 自分の介入が回復期以降のリハビリの土台をつくっている実感がある
- チーム医療の中でOTの専門性を発揮できる場面が多い
- 短期間で患者の変化が見えやすい
大変さ
- 在院日数が短く、一人の患者にじっくり関われない
- 急変リスクが常にあり、精神的な緊張感が持続する
- カンファレンスや記録が多く、事務作業の負担が大きい
- 患者の入れ替わりが激しく、新規評価の連続になる
急性期病院で働くOTは、「患者さんが初めて自分の力で食事できた瞬間」にやりがいを感じる方が多いです。一方で、入院期間が短いため一人の患者さんにじっくり関わることが難しいという面もあります。
急性期OTを目指す方へ
急性期病院への就職を考えている方には、以下の準備をおすすめします。
- 解剖学・生理学の知識を確実にしておく(全身状態の理解が基盤になる)
- 脳血管疾患と整形外科疾患の基礎知識を深める
- 実習で急性期を経験できる場合は積極的に選択する
- 先輩OTの症例報告を読み、急性期ならではの臨床推論を学ぶ
急性期は厳しい環境ですが、OTとしての基礎力を高めるには最適なフィールドです。ここで身につけた「全身を診る目」は、どの領域に転向しても必ず活きます。
急性期病院のOTは、病気やケガの直後から患者さんの「日常生活への復帰」をサポートする大切な役割を担っています。入院中にOTのリハビリを受ける機会があれば、退院後の生活について気になることを相談してみてください。
急性期病院で働くOTのポイント
- 急性期OTの最大の使命は早期離床とADLの再獲得支援です
- リスク管理能力と迅速なアセスメント力が最も求められる領域です
- 平均在院日数が短いため、限られた時間で次の段階へつなぐ視点が重要です
- チーム医療の中でOTの専門性を発揮する場面が多く、やりがいのある分野です
- 全身を診る力が身につくため、OTとしてのキャリアの基礎を築くのに適しています
ご家族の方へ ── 急性期リハビリのポイント
- 入院直後からリハビリが始まるのは、体力低下を防ぐためです
- OTは食事やトイレなど日常生活の動作をサポートする専門家です
- 面会時に趣味の話や日常の話題を出すことが、回復の助けになります
- 退院後の生活で不安なことがあれば、OTに気軽に相談してください
「〜で働くOTのリアル」シリーズ
このシリーズでは、働く場所ごとに作業療法士の1日の流れ・求められる力・やりがいをまとめています。ほかの職場の記事も読み比べてみてください。
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この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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