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まず覚えたいOT英語キーワード50──日本語の概念と対比して身につける【英語×OT 第2回】

作業療法の英語文献を読むために最初に覚えるべきキーワード50語を、日本語の概念と対比しながら解説します。occupation、engagement、client-centered など、OT特有の専門用語を「知っている概念の英語版」として効率的に学びましょう。

📅 2026年5月7日 更新読了目安 18分

この記事のポイント

  • OTの英語論文を読むために必要な専門用語は、実はそれほど多くありません。50語を押さえれば論文の大意がつかめるようになります
  • ポイントは「知らない英単語を覚える」のではなく、「すでに知っている概念の英語での言い方を知る」ことです
  • 日本語のOT用語と英語のOT用語には、微妙なズレがある場合があります。そのズレを理解することで、概念の理解も深まります
  • 前回:なぜ今OTに英語が必要なのか

はじめに──知っている概念に英語のラベルを貼る

前回の記事で、OTの専門家であるあなたには英語学習における大きなアドバンテージがあると述べました。概念をすでに理解しているため、英語という別のラベルを貼るだけで多くの専門用語を身につけることができます。

本記事では、英語のOT文献を読む際に頻出する50のキーワードを、日本語の概念と対比しながら紹介します。

すべてを一度に暗記する必要はありません。まずは目を通して「こう言うのか」と感じるだけで十分です。論文を読む際に繰り返し出会ううちに、自然と定着していきます。

カテゴリ1:作業療法の核心概念(10語)

OTのアイデンティティに関わる最も重要な用語です。

1. occupation(作業)

OTにとって最も重要な単語であり、最も誤解されやすい単語です。一般英語では "occupation" は「職業」を意味しますが、OTの文脈では「人が日常生活で行うすべての活動」を指します。

セルフケア、仕事、余暇、休息、社会参加──これらすべてが occupation です。日本語の「作業」よりもさらに広い意味を持つことを理解しておきましょう。

2. occupational therapy(作業療法)

そのままですが、略称はOTです。英語圏でも "OT" は日常的に使われます。ただし文脈によっては "overtime"(残業)と混同されることがあるため、初出では正式名称を使うのが無難です。

3. occupational therapist(作業療法士)

こちらもOTと略されます。理学療法士はPT(physical therapist)、言語聴覚士はSLP(speech-language pathologist)またはST(speech therapist)です。

4. engagement(従事・参加・没頭)

「作業に従事すること」を表す重要な概念です。単に「やっている」ではなく、主体的に関与し、意味を感じながら取り組んでいる状態を含みます。"occupational engagement" は、OTの目標を表すキーフレーズです。

5. participation(参加)

ICFの「参加」に対応する用語です。"social participation"(社会参加)は、OTの重要なアウトカムのひとつです。

6. meaningful(意味のある)

"meaningful occupation"(意味のある作業)は、OTの実践を貫く中心的な考え方です。「その人にとって意味がある」ことが、治療的な活動とそうでない活動を分ける基準になります。

7. purposeful(目的のある)

"purposeful activity"(目的のある活動)も頻出します。meaningful と似ていますが、purposeful は明確な目的に向かっているというニュアンスがより強いです。

8. client-centered(クライエント中心の)

「利用者を中心に据えた」という意味です。OTの実践原則を表す最も重要な形容詞のひとつです。"client-centered practice"(クライエント中心の実践)という表現で頻繁に登場します。

なお、英語圏では "patient"(患者)ではなく"client"(クライエント)を使うことが多い点に注目してください。これは、受動的な治療の受け手ではなく、主体的なパートナーとして位置づける意図があります。

9. evidence-based(エビデンスに基づく)

"evidence-based practice"(EBP:エビデンスに基づく実践)は、現代のOTにおける重要な枠組みです。略称のEBPも頻出します。

10. holistic(全人的な・包括的な)

「身体だけでなく、心理・社会・環境を含めた全体を見る」というOTの基本姿勢を表します。"holistic approach"(全人的アプローチ)として使われます。

カテゴリ2:評価・介入に関する用語(15語)

臨床で日常的に使う概念の英語版です。

11. assessment(評価)

"evaluation" も「評価」を意味しますが、OTの文脈では assessment は情報収集と分析のプロセス全体を、evaluation は特定の検査や測定を指すことが多いです。ただし、この使い分けは文献によって異なる場合もあります。

12. intervention(介入)

「治療的な働きかけ」を広く指す用語です。"treatment"(治療)よりも広い概念で、直接的な治療だけでなく、環境調整や教育的指導も含みます。

13. outcome(成果・結果)

介入の結果として得られる変化を指します。"functional outcome"(機能的成果)、"client outcome"(クライエントの成果)などの形で使われます。

14. activity analysis(活動分析・作業分析)

作業を構成要素に分解して分析するOT独自の技法です。"task analysis"(課題分析)と使い分けられることもあります。

15. grading(段階づけ)

活動の難易度を段階的に調整する技法です。"upgrade"(難度を上げる)、"downgrade"(難度を下げる)という動詞形でも使われます。

16. adaptation(適応・適合)

二つの意味があります。ひとつは活動や環境を個人に合わせて修正すること("activity adaptation")。もうひとつは人が環境に適応するプロセスです。文脈で判断します。

17. ADL(Activities of Daily Living:日常生活活動)

セルフケアを中心とした基本的な日常活動です。英語圏でも日本と同じく "ADL" という略称が広く使われています。

18. IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活活動)

買い物、調理、金銭管理など、ADLよりも複雑な日常活動です。

19. functional(機能的な)

「実際の生活で役に立つ」という意味です。"functional ability"(機能的能力)、"functional performance"(機能的遂行)など、OTの論文で最も頻出する形容詞のひとつです。

20. occupational performance(作業遂行)

人が日常の作業をどのように遂行しているかを表す概念です。CMOP-Eの中心的な用語でもあります。

21. self-care(セルフケア)

入浴、更衣、食事、整容など、自分の身体を管理する活動です。

22. leisure(余暇)

余暇活動を指します。OTでは occupation の重要な一領域として位置づけられています。

23. productivity(生産活動)

仕事、家事、学業など、社会的な役割に関連する活動です。OTの文脈では一般的な「生産性」の意味よりも広いです。

24. range of motion / ROM(関節可動域)

日本でも ROM として広く使われています。"active ROM"(自動ROM)、"passive ROM"(他動ROM)という区別も同じです。

25. splint / orthosis(スプリント / 装具)

上肢の装具を指します。最近は "orthosis"(装具)という用語が推奨される傾向にありますが、"splint" も広く使われています。

カテゴリ3:理論・モデルに関する用語(10語)

OTの理論的基盤を理解するための用語です。

26. frame of reference(参照枠)

介入の理論的根拠となる枠組みです。"biomechanical frame of reference"(生体力学的参照枠)のように使われます。

27. model of practice(実践モデル)

臨床実践を導くための理論的モデルです。MOHO、CMOP-E、OAなどがこれに当たります。

28. occupational science(作業科学)

作業を科学的に研究する学問領域です。OTの学術的基盤のひとつです。

29. occupational justice(作業的公正)

すべての人が意味のある作業に参加する権利を持つという概念です。近年のOTで非常に重要な位置を占めています。

30. occupational deprivation(作業剥奪)

環境的・社会的な要因によって、意味のある作業への参加が妨げられている状態です。

31. occupational balance(作業バランス)

セルフケア・生産活動・余暇のバランスが取れた状態です。作業バランスチェックの記事でも取り上げた概念です。

32. occupational identity(作業的アイデンティティ)

「自分がどのような作業をする人間か」という自己認識です。MOHOの重要概念です。

33. volition(意志)

MOHOの中心概念で、作業に動機づけられる過程を指します。単なる「やる気」ではなく、個人の価値観・興味・自己効力感を含む複合的な概念です。

34. habituation(習慣化)

MOHOの概念で、日常生活のパターンや役割が習慣として定着している状態を指します。

35. environment(環境)

物理的環境だけでなく、社会的・文化的・制度的環境を含む広い概念です。OTの実践ではperson-environment-occupation(人-環境-作業)の関係が重視されます。

カテゴリ4:対象者・状態に関する用語(10語)

臨床で出会う対象者や状態を表す用語です。

36. disability(障害)

ICFの文脈では "impairment"(機能障害)、"activity limitation"(活動制限)、"participation restriction"(参加制約)を包括する上位概念です。

37. impairment(機能障害)

身体の構造や機能のレベルでの問題です。

38. chronic(慢性の)

"chronic condition"(慢性疾患)、"chronic pain"(慢性疼痛)など、長期にわたる状態を表します。

39. acute(急性の)

発症直後や症状が急激に現れている状態です。"acute care"(急性期医療)として使われます。

40. rehabilitation(リハビリテーション)

日本語でも「リハビリ」として定着していますが、英語では "rehab" と略されることもあります。

41. caregiver(介護者)

家族介護者を指す場合は "family caregiver" または "informal caregiver" と表現されます。

42. well-being(ウェルビーイング)

身体的・精神的・社会的に良好な状態です。OTのアウトカムとして重視されています。

43. quality of life / QOL(生活の質)

日本でも QOL として広く使われています。"health-related quality of life"(HRQOL)という表現も頻出します。

44. independence(自立)

OTの目標として頻繁に使われますが、近年は "independence" だけでなく"interdependence"(相互依存)という概念も重視されるようになっています。支援を受けながらも主体的に生活することの価値を認める考え方です。

45. aging(加齢・高齢化)

"aging in place"(住み慣れた場所での老い)は、高齢者支援の重要な概念です。英国綴りでは "ageing" となります。

カテゴリ5:論文でよく出会う表現(5語)

論文を読む際に頻出する、OT以外の学術的な用語です。

46. systematic review(システマティックレビュー)

特定のテーマについて、一定の基準に基づいて文献を網羅的に検索・評価する研究手法です。エビデンスレベルが最も高い研究デザインのひとつです。

47. randomized controlled trial / RCT(ランダム化比較試験)

対象者を無作為に介入群と対照群に分けて効果を比較する研究デザインです。

48. qualitative(質的な)

"qualitative research"(質的研究)は、数値では捉えられない経験や意味を探究する研究手法です。OTでは特に重要な研究アプローチです。

49. quantitative(量的な)

"quantitative research"(量的研究)は、数値データに基づく研究手法です。

50. significant(有意な)

"statistically significant"(統計的に有意な)は、結果が偶然ではないことを示す表現です。"p < 0.05" とセットで使われることが多いです。

効果的な覚え方

1. 日本語のOT教科書を英語で再読する

すでに日本語で理解している内容を英語で読むのは、最も効率的な学習法です。MOHOやCMOP-Eの原著を、日本語の教科書と並べて読んでみましょう。

2. PubMedのAbstractで実践する

次回の記事で詳しく解説しますが、論文のAbstract(要旨)は200〜300語程度の短い文章です。この50語を意識しながらAbstractを読むと、驚くほど内容がつかめるようになります。

3. 一度にすべてを覚えようとしない

50語を一覧で示しましたが、一度にすべてを暗記する必要はありません。まずはカテゴリ1の10語を意識するところから始めて、論文を読みながら徐々に語彙を広げていくのが現実的です。

まとめ

  • OTの英語キーワードは、すでに知っている概念の英語版として効率的に学べます
  • 特に "occupation" の広い意味、"client-centered" の意図、"meaningful" と "purposeful" の違いなど、日英の微妙なズレを理解することで概念理解も深まります
  • まずは核心概念の10語を意識しながら、英語のOT情報に触れてみましょう

次回は、これらのキーワードを武器にして、実際に英語論文のAbstractを読む方法を解説します。

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