この記事のポイント
- 一言で言うと、理学療法士(PT)は立つ・歩くなど体の土台をつくる、作業療法士(OT)はその体で生活・学校・遊びを「できる」ようにする、言語聴覚士(ST)は話す・聞く・食べるの専門職です
- 法律上の対象は、PTが身体の障害、OTが身体または精神の障害、STが音声・言語・聴覚の障害です(嚥下訓練は医師の指示の下でSTが行います)
- 3つとも国家資格で、養成校3年以上と国家試験が必要です。2026年の合格者はPT 11,156人・OT 4,947人・ST 1,453人です
- 同じ人を3人で見る「チーム」で、優劣はありません。どれを選んでも、他の2職種と一緒に働きます
「リハビリの仕事」は3つある
「コメディカルの中で迷っている」という声を、高校生からよく聞きます。コメディカルとは、医師以外の医療専門職のことです。その中でも「リハビリ」と呼ばれる国家資格は3つあり、理学療法士(PT: Physical Therapist)、作業療法士(OT: Occupational Therapist)、言語聴覚士(ST: Speech-Language-Hearing Therapist)です。
3つは同じ病院の同じ病棟で、同じ人を担当することがよくあります。それでも性格はまったく違います。この記事では、法律の定義、同じ人を3人でどう見るか、資格の取り方と人数、そして迷ったときの見方の順に整理します。作業療法士と理学療法士の2職種だけを深く比べた記事は作業療法士と理学療法士の違いにあります。
リハビリテーションに関わる国家資格には、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の3つがあります。名称も養成校も似ているため、お子さんが「どれにするか迷っている」と相談してきたとき、保護者の方も違いを説明しにくいのが実情です。
この記事では、それぞれの法律上の定義、同じ患者を3職種がどう分担するか、養成年限・国家試験・有資格者数の違いを、法令と公的統計をもとに整理します。
法律で見る守備範囲
3つの仕事は、それぞれ法律に定義があります。守備範囲の違いがいちばんはっきり出るところなので、要点を並べます。
理学療法士(PT)
身体に障害のある人に対し、主として基本的動作能力の回復を図るため、治療体操などの運動を行わせ、電気刺激・マッサージ・温熱などの物理的手段を加える。医師の指示の下に行う(理学療法士及び作業療法士法 第2条)
作業療法士(OT)
身体または精神に障害のある人に対し、主として応用的動作能力や社会的適応能力の回復を図るため、手芸・工作などの作業を行わせる。医師の指示の下に行う(同法 第2条)
言語聴覚士(ST)
音声機能・言語機能・聴覚に障害のある人の機能の維持向上を図るため、言語訓練などの訓練、必要な検査、助言・指導などの援助を行う。嚥下訓練や人工内耳の調整は医師または歯科医師の指示の下に行う(言語聴覚士法 第2条・第42条)
読み比べると、違いは3つに絞れます。
- 対象の広さ。PTは「身体」、OTは「身体または精神」、STは「音声・言語・聴覚」です。OTだけが精神の障害を法律上の対象に含んでいます
- 目指すもの。PTは「基本的動作能力」、OTは「応用的動作能力・社会的適応能力」、STは「機能の維持向上」です。基本的動作とは起きる・立つ・歩くなどの土台、応用的動作とは着替える・料理する・働くなど、その土台を使った生活の動きです
- 手段。PTは運動と物理的手段、OTは「作業」、STは訓練と検査・助言です。OTの「作業」は法律では手芸・工作と書かれていますが、現場では食事・仕事・遊びなど、その人にとって意味のある活動すべてを指します
ちなみに、理学療法士及び作業療法士法は1965年にできた法律で、条文には「マツサージ」と書かれています。古い法律の名残です。
3職種の法的な定義は次のとおりです。
理学療法士(理学療法士及び作業療法士法 第2条第1項・第3項)
身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、および電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること(理学療法)を、医師の指示の下に業として行う者
作業療法士(同法 第2条第2項・第4項)
身体または精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせること(作業療法)を、医師の指示の下に業として行う者
言語聴覚士(言語聴覚士法 第2条)
音声機能、言語機能または聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査および助言、指導その他の援助を業として行う者。嚥下訓練・人工内耳の調整などは医師または歯科医師の指示の下に行う(同法 第42条)
3職種とも名称の使用が法律で保護されています(理学療法士及び作業療法士法 第17条、言語聴覚士法 第45条)。対象の違いは、理学療法士が身体、作業療法士が身体または精神、言語聴覚士が音声・言語・聴覚です。精神の障害を法律上の対象に明記しているのは作業療法士のみです。
同じ人を、3人でどう見るか
定義だけではイメージしにくいので、同じ人を3職種がどう分担するかを並べます。特定の誰かの話ではなく、現場でよくある状況を一般化した例です。
3人が同じ人を見て、それぞれの専門から情報を持ち寄ります。PTが「歩けるようになった」と言い、OTが「では買い物に行けるように練習しましょう」と続け、STが「外食のときの飲み込みは大丈夫です」と補う、という具合です。
2つ目の例のように、3職種とも子どもの発達支援の現場で働いています。作業療法士がどう関わるかは発達障害の子どもに作業療法士ができることや「不器用」で片づけないで ── 発達性協調運動障害(DCD)で読めます。言語聴覚士の領域に近い話題は、失語症の家族への接し方や食事・のみこみの困りごとガイド(どちらも作業療法士の視点で書いた記事です)にあります。
同じ患者を3職種がどう分担するか、一般化した例で示します(特定の事例ではありません)。
| 場面 | 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) | 言語聴覚士(ST) |
|---|---|---|---|
| 脳卒中で右半身が動きにくい | 起き上がり・立ち上がり・歩行の練習 | 片手での着替え・調理、復職準備、自宅環境の調整 | 失語症の評価と訓練、嚥下の評価 |
| 発達に特性のある子ども | 走る・跳ぶなど粗大運動 | 手先の操作、感覚の処理、遊びと学校生活 | ことばの発達、構音、摂食 |
| 高齢で転倒しやすい | 筋力・バランス訓練 | 家庭内の動線、入浴・排泄動作、趣味の継続 | 嚥下機能の評価、誤嚥の予防 |
作業療法士の発達支援については発達障害の子どもに作業療法士ができることに詳しくまとめています。
資格の取り方と人数
3職種に共通
高校卒業後、国が指定した養成校(大学・専門学校など)で3年以上学び、それぞれの国家試験に合格します(理学療法士及び作業療法士法 第11条・第12条、言語聴覚士法 第33条)。高校での文系・理系の選択で受験資格が制限されることはありません
言語聴覚士だけの追加ルート
大学を卒業してから、指定の養成校で2年以上学ぶルートがあります(言語聴覚士法 第33条)。他の分野を学んでから目指す人がいるのはこのためです
人数を並べると、3職種の規模の違いがわかります。
理学療法士 国家試験合格者(2026年)
作業療法士 国家試験合格者(2026年)
言語聴覚士 国家試験合格者(2026年)
有資格者の累計で見ると、理学療法士は約24.8万人(2026年3月末、日本理学療法士協会の集計)、作業療法士は118,465人(2025年3月末、日本作業療法士協会)です。言語聴覚士は2023年3月時点で4万人近くとされています(日本言語聴覚士協会)。理学療法士がいちばん多く、作業療法士はその半分、言語聴覚士はさらに少ないのが今の姿です。
合格率は2026年の試験で理学療法士89.7%、作業療法士91.2%、言語聴覚士66.4%でした(厚生労働省の合格発表)。数字だけ見ると言語聴覚士が低く見えますが、受験する人の背景や試験の性質が違うため、そのまま難しさの順位にはなりません。合格率は年によっても動くので、複数年で見るのが基本です。
作業療法士の養成校の選び方と国家試験の流れは、作業療法士になるにはにまとめています。
養成年限・国家試験・有資格者数の制度比較は次のとおりです。
| 項目 | 理学療法士 | 作業療法士 | 言語聴覚士 |
|---|---|---|---|
| 根拠法 | 理学療法士及び作業療法士法(1965年) | 同左 | 言語聴覚士法(1997年) |
| 受験資格 | 指定校・養成施設で3年以上(第11条) | 指定校・養成施設で3年以上(第12条) | 指定校・養成所で3年以上、または大学卒業後に2年以上など(第33条) |
| 2026年 国家試験 | 受験12,436人・合格11,156人・89.7% | 受験5,426人・合格4,947人・91.2% | 受験2,187人・合格1,453人・66.4% |
| 有資格者の累計 | 247,546人(2026年3月末・協会集計) | 118,465人(2025年3月末・協会統計) | 4万人近く(2023年3月・協会) |
理学療法士 合格累計
作業療法士 有資格者
合格率は年により変動し、受験者層も職種ごとに異なるため、単年の合格率で難易度の優劣を判断することはできません。学校選びの際は、志望校が公表している複数年の合格率と実習体制をあわせて確認することをおすすめします。
迷ったときの3つの問い
どれも国家資格で、どれを選んでも他の2職種と一緒に働きます。だから「どれが上か」ではなく、「自分はどの瞬間に心が動くか」で考えるのが一つの方法です。
どの瞬間に心が動くか
歩けなかった人が歩けた瞬間ならPT、暮らしが戻った瞬間(自分でご飯を作れた、学校に行けた)ならOT、ことばが通じた・食べられた瞬間ならST
相手の「何」を見たいか
体の動きそのものを見たいならPT、生活の全体(家・学校・仕事・遊び)を見たいならOT、ことばと飲み込みを見たいならST
どんな人と出会いたいか
3職種とも病院が中心ですが、OTは精神科や子どもの発達支援、STは聴覚やことばの支援など、法律上の対象の違いがそのまま出会う人の違いになります
合格率や人数で選ばない
合格率は年によって動き、受験する人の背景も職種ごとに違います。人数が少ないから狭き門、多いから安泰、とも言えません。数字は「規模を知る」ために使い、選ぶ理由には「どの瞬間に心が動くか」を置いてください。
「向いている人」については、性格ではなく1日の仕事の中身から考える記事を別に用意しています。
3職種に優劣はなく、いずれも他の2職種と協働する前提で養成されています。進路相談では、次の観点で本人の関心を整理すると話が進みやすくなります。
- 関心の対象: 体の動き(PT)、生活全体(OT)、ことばと嚥下(ST)のどれに惹かれているか
- 出会いたい対象者: 精神科や発達支援に関心があれば、法律上「精神」を対象に含む作業療法士が候補になります
- 数字の扱い: 合格率・有資格者数は規模の把握に使い、選択の理由にはしないこと
よくある質問
理学療法士と作業療法士は、どちらが人数が多いですか
理学療法士です。有資格者の累計は理学療法士が約24.8万人(2026年3月末)、作業療法士が約11.8万人(2025年3月末)で、およそ2倍の差があります。2026年の国家試験の合格者も、理学療法士11,156人に対して作業療法士4,947人です。
言語聴覚士は文系でもなれますか
なれます。3職種とも、受験資格は「指定の養成校で必要な年数を学ぶこと」で決まり、高校での文系・理系の選択で制限されることはありません。言語聴覚士には、大学を卒業してから2年制の養成校で学ぶルートもあります(言語聴覚士法 第33条)。
3つの資格をぜんぶ取ることはできますか
制度上は可能ですが、資格ごとに養成課程と国家試験が別で、それぞれ3年以上かかります。まず1つを選び、働きながら他の職種と組む中で理解を深めていくのが一般的です。
精神科で働けるのはどの職種ですか
精神科のリハビリは作業療法士が中心です。法律上、精神の障害を対象に明記しているのは作業療法士だけだからです。精神科での作業療法士の1日は精神科で働くOTのリアルにあります(現役の作業療法士向けに書いた記事ですが、雰囲気は伝わります)。
大学と専門学校で受験資格に差はありますか
ありません。3職種とも、指定を受けた学校・養成施設で必要な年数を修めれば受験資格が得られます。修業年限は3年制と4年制があり、取得できる学位・称号(学士・高度専門士・専門士)が異なります。
進路相談で確認しておきたいことは
オープンキャンパスでは「3職種が合同で学ぶ科目があるか」「実習先にはどのような施設が含まれるか」を質問すると、養成校ごとの特色がわかります。特定の学校の優劣ではなく、公表されている実習体制やカリキュラムで比較することをおすすめします。
まとめ
- 一言で言えば、PTは体の土台、OTはその体で生活・学校・遊びをできるように、STは話す・聞く・食べるの専門職です。法律上の対象は身体/身体または精神/音声・言語・聴覚と分かれています
- 3つとも養成校3年以上と国家試験が必要な国家資格で、人数は理学療法士が最も多く、作業療法士はその半分、言語聴覚士はさらに少数です
- 選ぶ基準は数字ではなく「どの瞬間に心が動くか」。どれを選んでも、他の2職種と一緒に同じ人を支えます
次は、作業療法士が実際にどう働いているかを見てみてください。急性期病院で働くOTのリアルは3職種が最も近くで働く現場、小児領域で働くOTのリアルは発達支援の現場の記事です(どちらも現役向けですが、雰囲気は伝わります)。介護職との違いは作業療法士と介護職は何が違う?にまとめています。
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、いずれも養成校3年以上と国家試験を要する国家資格で、法律上の対象がそれぞれ身体、身体または精神、音声・言語・聴覚と定められています
- 2026年の国家試験合格者は理学療法士11,156人・作業療法士4,947人・言語聴覚士1,453人、有資格者の累計は理学療法士約24.8万人・作業療法士118,465人です
- 合格率や人数は規模の把握に使い、選択の理由は本人の関心(体の動き/生活全体/ことばと嚥下)に置くことをおすすめします
- 「どの瞬間に心が動く?」と聞いてみる: 歩けた瞬間、暮らしが戻った瞬間、ことばが通じた瞬間。この記事の3つの問いを一緒に考えると、本人の関心が言葉になります
- 3職種が同じ場所で働く様子を見る機会を探す: 病院の見学や職場体験では、リハビリ室で3職種がどう分担しているかを見られます
- 学校は公表情報で比較する: 複数年の合格率と実習体制は各校が公表しています。作業療法士になるにはに確認の手順をまとめています
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言や進路の保証を構成するものではありません。制度・法令・試験制度は改正されることがあります。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
- 作業療法士・理学療法士・言語聴覚士は何が違うのですか?
- 理学療法士(PT)は立つ・歩くなど体の土台をつくる専門職、作業療法士(OT)はその体を使って生活・学校・遊びを「できる」ようにする専門職、言語聴覚士(ST)は話す・聞く・食べるの専門職です。法律上の対象は、PTが身体の障害、OTが身体または精神の障害、STが音声・言語・聴覚の障害と定められています。
- 3つの資格はどれも国家資格ですか?取り方は違いますか?
- 3つとも国家資格で、高校卒業後に国が指定した養成校で3年以上学び、国家試験に合格します。言語聴覚士には、大学を卒業してから2年制の養成校で学ぶルートもあります。高校での文系・理系の選択によって受験資格が制限されることはありません。
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士では、どれが人数が多いですか?
- 国家試験の合格者は2026年で理学療法士11,156人・作業療法士4,947人・言語聴覚士1,453人です。有資格者の累計は理学療法士が約24.8万人(2026年3月末・協会集計)、作業療法士が118,465人(2025年3月末)で、言語聴覚士は2023年3月時点で4万人近くとされています。
- 3つのうちどれを選べばいいか迷っています
- 優劣はなく、どれを選んでも他の2職種と一緒に働きます。「体が動いた瞬間」「暮らしが戻った瞬間」「ことばが通じた瞬間」のどれに心が動くか、相手の何を見たいかで考えるのが一つの方法です。合格率や人数の数字で選ばないことをおすすめします。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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