この記事のポイント
- 介護福祉士は「心身の状況に応じた介護」を、作業療法士は「医師の指示の下に作業療法」を行う国家資格です(それぞれの法律の定義)
- 介護職は今日の生活を支える仕事、作業療法士はできることを増やすために評価し、計画を立てる仕事です。どちらが上ということはありません
- 作業療法士になるには養成校で3年以上学び、国家試験に合格します。介護福祉士は養成施設2年以上や実務経験3年以上などのルートがあります
- 有資格者は作業療法士が約11.8万人(2025年3月末)、介護福祉士は約211.6万人(2026年7月末)です
「介護の仕事だと思っていた」という声から
作業療法士(OT: Occupational Therapist)という仕事を、「介護のように、誰かのお世話をする仕事」だと思っていた、という声を高校生からよく聞きます。半分は当たっています。作業療法士も、病気やけが、障害のある人の生活を支える仕事だからです。
でも、支え方が違います。介護職は、食事や入浴などの毎日の生活が今日も成り立つように、直接手を貸す仕事です。作業療法士は、その人が自分でできることを増やすために、体や心の状態を評価し、練習や道具、環境の工夫を組み立てる仕事です。
この記事では、法律の定義、同じ場面での動き方、資格の取り方、働く場所の4つから違いを整理します。作業療法士の仕事そのものを先に知りたい人は、作業療法士ってどんな仕事?から読んでも大丈夫です。
お子さんが「作業療法士になりたい」と言ったとき、介護職とどう違うのかがわからず戸惑う保護者の方は少なくありません。どちらも、病気や障害のある方の生活を支える国家資格であり、働く場所も重なります。
一方で、法律上の役割、資格取得までの年数、有資格者の規模は大きく異なります。この記事では、法令と職能団体の統計をもとに両者の違いを整理します。
法律に書かれた「仕事の中身」
どちらの仕事も、国の法律に定義があります。少し硬い文章ですが、違いがいちばんはっきり出るところなので、要点をそのまま見てみましょう。
作業療法士
厚生労働大臣の免許を受け、医師の指示の下に作業療法を行う人。作業療法とは、身体や精神に障害のある人の応用的動作能力や社会的適応能力の回復を図るため、手芸や工作などの作業を行わせること(理学療法士及び作業療法士法 第2条)
介護福祉士
専門的知識と技術をもって、身体上・精神上の障害で日常生活に支障がある人に、心身の状況に応じた介護を行い、本人と介護者に介護の指導を行う人(社会福祉士及び介護福祉士法 第2条第2項)
ポイントは3つあります。
- 目的の置き方。作業療法は「能力の回復を図る」ことが目的で、介護は「心身の状況に応じた介護を行う」ことが目的です。前者は「変える」、後者は「支える」に重心があります
- 医師との関係。作業療法士は「医師の指示の下に」働くと決められています。医療の一部として位置づけられているということです
- 「作業」という言葉。法律には「手芸、工作その他の作業」と書かれています。実際の現場では、食事・着替え・料理・仕事・遊びなど、その人にとって意味のある活動すべてが「作業」です
なお「介護職」には、介護福祉士のほかに、介護職員初任者研修などを修了して働く人も含まれます。この記事では、国家資格である介護福祉士を代表として比べています。
両者の法的な定義は次のとおりです。
作業療法士(理学療法士及び作業療法士法 第2条)
厚生労働大臣の免許を受け、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に作業療法を行うことを業とする者。作業療法は、身体または精神に障害のある者の応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るために作業を行わせること
介護福祉士(社会福祉士及び介護福祉士法 第2条第2項)
専門的知識および技術をもって、身体上または精神上の障害により日常生活に支障がある者に心身の状況に応じた介護を行い、その者と介護者に介護に関する指導を行うことを業とする者
作業療法士は「医師の指示の下に」業務を行うと定められており、医療職として位置づけられています。介護福祉士は、日常生活に支障がある方への介護と、本人・介護者への指導を業とします。どちらも名称の使用が法律で保護された国家資格です(理学療法士及び作業療法士法 第17条、社会福祉士及び介護福祉士法 第48条)。
なお「介護職」という言葉は、介護福祉士のほか、介護職員初任者研修などの修了者を含む広い呼び方です。本記事では国家資格である介護福祉士を比較対象にしています。
同じ場面で、何をするのか
定義だけではイメージしにくいので、同じ場面での動き方を並べてみます。どれも特定の誰かの話ではなく、現場でよくある状況を一般化した例です。
介護職の仕事は「今日の生活を成り立たせる」こと、作業療法士の仕事は「明日できることを増やすための設計」と言えます。どちらが欠けても、その人の生活は回りません。
3つ目の例のように、作業療法士は子どもの発達支援の現場でも働いています。どんな関わり方をするのかは、発達障害の子どもに作業療法士ができることや字を書くのが苦手な子どもへで読めます。
同じ場面での役割を対比すると、次のようになります(特定の事例ではなく、一般化した例です)。
| 場面 | 介護職 | 作業療法士 |
|---|---|---|
| 朝の着替え | 今日の着替えが安全に終わるよう介助する | 動きにくい原因を評価し、片手で着る手順や衣類の選び方を練習して自立の範囲を広げる |
| 食事 | 器の位置を整え、必要に応じて口に運ぶ介助をする | 持ちやすい食具や滑り止めを選び、腕の使い方を練習して自分で食べ続けられるようにする |
| 書字が苦手な子ども | 宿題に付き添い、励ます | 鉛筆の持ち方・姿勢・手の感覚を評価し、練習と道具を組み立てる |
介護職は「今日の生活を成り立たせる」役割、作業療法士は「できることを増やすための評価と計画」の役割を担います。子どもの発達支援における作業療法士の関わりは、発達障害の子どもに作業療法士ができることに詳しくまとめています。
資格の取り方と人数
作業療法士
高校卒業後、国が指定した養成校(大学・専門学校など)で3年以上学び、作業療法士国家試験に合格します(理学療法士及び作業療法士法 第12条)。文系・理系による受験資格の制限はありません
介護福祉士
養成施設で2年以上学ぶ、福祉系高校で3年学ぶ、介護の仕事を3年以上経験して所定の研修を受ける、などのルートがあり、いずれも国家試験があります(社会福祉士及び介護福祉士法 第40条)
人数にも大きな差があります。
作業療法士の有資格者
介護福祉士の登録者
介護福祉士は作業療法士の約18倍います。作業療法士は「少数の専門職」で、1人が関わる人の数も多くなります。だからこそ、介護職や看護師など、たくさんの職種と組んで働くことになります。
養成校の選び方や国家試験の流れは、作業療法士になるにはにまとめています。
資格取得までのルートと有資格者数は次のとおりです。
作業療法士
大学入学資格を持つ者が、文部科学大臣指定校または都道府県知事指定の養成施設で3年以上学び、国家試験に合格する(理学療法士及び作業療法士法 第12条)。修業年限は3年制と4年制があり、学校種による受験資格の差はありません
介護福祉士
指定養成施設で2年以上(第40条第2項第1号)、指定を受けた高等学校で3年以上(同第4号)、介護等の業務に3年以上従事したうえで指定養成施設で6月以上(同第5号)などのルートがあり、国家試験を受験します(養成施設卒業者には、令和8年度末までの卒業者を対象とする経過措置があります)
作業療法士 有資格者
介護福祉士 登録者
介護福祉士の登録者は作業療法士の有資格者の約18倍です。作業療法士は相対的に少数の専門職であり、多職種と協働する前提で養成されています。学費や修業年限の詳細は作業療法士になるにはをご覧ください。
働く場所と「チーム」の関係
作業療法士の約7割は病院で働いていますが、介護老人保健施設や訪問リハビリなど、介護保険のサービスで働く人も協会会員の14.4%います(日本作業療法士協会 2024年度会員統計資料)。つまり、介護職と作業療法士は同じ職場にいることが多いのです。
介護施設では、介護職が毎日の生活を支え、作業療法士が「この人にはどんな動きや活動ができそうか」を評価して、介護職と一緒に生活の組み立てを考えます。作業療法士自身が食事や移動の介助をする場面もあります。「作業療法士は介護をしない」のではなく、介助の中に評価と練習を組み込むのが作業療法士の関わり方です。
介護施設で働く作業療法士の1日は介護施設で働くOTのリアルに、子どもの現場は小児領域で働くOTのリアルにあります。どちらも現役の作業療法士向けに書いた記事ですが、仕事の雰囲気はそのまま伝わると思います。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料によると、会員の勤務先は医療関連が56.2%、介護関連が14.4%です。病院が最も多い一方で、介護老人保健施設や訪問リハビリテーションなど介護保険サービスで働く作業療法士も一定数おり、介護職と同じ職場で協働する場面は珍しくありません。
介護施設では、介護職が日常生活を支え、作業療法士が生活動作や活動の可能性を評価して、介護職と共有します。作業療法士が介助を行う場面もありますが、それは評価と練習の一環として位置づけられます。具体的な働き方は介護施設で働くOTのリアルに記載しています(現役の作業療法士向けの記事です)。
よくある誤解にひとこと
「作業療法士のほうが上」ではありません
役割が違うだけで、優劣はありません。介護職が毎日そばで見ている変化は、作業療法士の評価に欠かせない情報です。逆に、作業療法士が組み立てた練習は、介護職が日常の中で続けてくれて初めて生活に定着します。
もうひとつ、「介護の経験はムダになる」という心配もよく聞きます。むしろ逆です。人の生活を毎日そばで支えた経験は、作業療法士になったときの評価や関わり方の土台になります。ただし、後で説明するように、介護の経験で養成校の年数が短くなることはありません。
よくある質問
介護の仕事をしてから作業療法士になれますか
なれます。ただし、介護の実務経験で養成校の年数が短くなる仕組みはなく、作業療法士になるには養成校で3年以上学ぶ必要があります(理学療法士及び作業療法士法 第12条)。介護の経験は、評価や関わり方の土台として現場で生きます。
高校生のうちにできることはありますか
介護施設や病院の職場体験・ボランティアに参加してみると、介護職と作業療法士が同じ場所でどう動いているかを実際に見られます。「この人は何をしている人ですか」と聞いてみてください。同じ介助に見えても、目的が違うことに気づけると思います。
理学療法士とはどう違いますか
理学療法士は「立つ・歩く」など体の土台をつくる専門職です。作業療法士は、その体を使って生活や学校、遊びを「できる」ようにする専門職です。詳しくは作業療法士と理学療法士の違いにまとめています。
作業療法士は介助をしないのですか
します。介護施設や病院では、作業療法士が食事や移動の介助をする場面もあります。ただし介助そのものが目的ではなく、評価と練習のために介助を使う、という位置づけです。
介護職として働いたあとに作業療法士を目指せますか
目指せます。ただし、介護の実務経験によって作業療法士養成校の修業年限が短縮される制度はなく、3年以上の課程を修了して国家試験を受ける必要があります。
進路相談で確認しておきたいことは
オープンキャンパスでは「介護職や看護師との連携をどう学ぶか」「実習先にはどのような施設が含まれるか」を質問すると、養成校ごとの特色がわかります。特定の学校の優劣ではなく、公表されている実習体制やカリキュラムで比較することをおすすめします。
まとめ
- 違いは「支える」か「変える」か。介護職は毎日の生活そのものを直接支え、作業療法士は評価にもとづいて自分でできる範囲を広げる計画をつくります。優劣ではなく役割の違いです
- 作業療法士は法律上「医師の指示の下に作業療法を行う」医療職で、養成校3年以上と国家試験が必要です。有資格者は約11.8万人(2025年3月末、日本作業療法士協会)で、介護福祉士の約18分の1です
- 介護施設や子どもの発達支援の現場など、介護職と作業療法士は同じ職場でチームを組みます
次は、作業療法士の働く場所ごとの1日を見てみてください。小児領域で働くOTのリアルは発達支援の現場、介護施設で働くOTのリアルは介護職と最も近い現場の記事です。
- 作業療法士と介護福祉士は、いずれも法律で定義された国家資格ですが、作業療法士は「医師の指示の下に作業療法を行う」医療職、介護福祉士は「心身の状況に応じた介護」を行う福祉職です
- 資格取得には、作業療法士は養成校3年以上と国家試験、介護福祉士は養成施設2年以上や実務経験3年以上などのルートと国家試験が必要です
- 有資格者数は作業療法士118,465人(2025年3月末)、介護福祉士2,116,188人(2026年7月末)で、作業療法士は相対的に少数の専門職です
- 「介護とどう違うの?」と聞いてみる: お子さんが自分の言葉で説明できるかどうかは、職業理解の深さの目安になります。この記事を一緒に読むのも一つの方法です
- 職場体験・見学の機会を探す: 介護施設や病院の見学で、介護職と作業療法士が同じ場所でどう動いているかを実際に見ると、違いが具体的にわかります
- 学校選びは公表情報で比較する: 実習体制やカリキュラムは各校が公表しています。作業療法士になるにはで確認の手順をまとめています
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言や進路の保証を構成するものではありません。制度・法令は改正されることがあります。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
- 作業療法士と介護職は何が違うのですか?
- 介護職は、食事や入浴など毎日の生活が今日も成り立つように直接手を貸す仕事です。作業療法士は、その人が自分でできることを増やすために、体や心の状態を評価し、練習や道具、環境の工夫を組み立てる仕事です。法律上、作業療法士は「医師の指示の下に作業療法を行う」医療職と定められています。
- 作業療法士と介護福祉士では、資格の取り方はどう違いますか?
- 作業療法士は、高校卒業後に国が指定した養成校で3年以上学び、国家試験に合格します。介護福祉士は、養成施設で2年以上学ぶルート、福祉系高校で3年学ぶルート、介護の実務経験3年以上と所定の研修を組み合わせるルートなどがあり、いずれも国家試験があります。
- 介護の仕事をしてから作業療法士になれますか?
- なれます。ただし、介護の実務経験で養成校の年数が短くなる仕組みはなく、作業療法士になるには養成校で3年以上学ぶ必要があります。介護の経験は、評価や関わり方の土台として現場で生きます。
- 作業療法士は介助をしないのですか?
- します。介護施設や病院では、作業療法士が食事や移動の介助をする場面もあります。ただし介助そのものが目的ではなく、評価と練習のために介助を使う、という位置づけです。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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