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「歳だから仕方ない」とあきらめないで ── 筋力低下を防ぐためにできること

加齢による筋力低下(サルコペニア)は予防・改善が可能です。ご家庭でできるセルフチェックと、毎日の食事・運動・活動の工夫をわかりやすくまとめました。

📅 2026年5月5日 更新読了目安 28分

この記事のポイント

  • サルコペニアは加齢に伴う筋肉量・筋力・身体機能の低下を指す症候群で、転倒・骨折・要介護のリスクを高めます
  • 2019年改訂のAWGS基準では、握力・歩行速度・筋肉量の3指標で診断します
  • サルコペニアとフレイルは密接に関連しますが、適切な栄養・運動・活動の継続で予防・改善が可能です
  • OTは「やりたい活動」を手がかりに、日常生活のなかで筋力と活動量を維持する支援を行います

サルコペニアとは何か

「ペットボトルのフタが開けにくくなった」「横断歩道を渡りきれなくなった」──こうした変化を「歳だから仕方ない」と思っていませんか?

サルコペニアとは、加齢に伴って筋肉の量や力が落ちてしまう状態です。80歳以上の方の約3割にみられるとされていますが、大切なのは適切な対策で予防・改善が可能ということです。

AWGS2019による診断基準

サルコペニアかどうかの目安となるのは、握力歩く速さです。男性で握力28kg未満、女性で18kg未満の場合、筋力低下の可能性があります。気になる場合はかかりつけ医に相談してみてください。

サルコペニアとフレイルの関係

サルコペニアと深く関係しているのがフレイルです。フレイルとは、加齢で心身が弱った状態のことで、介護が必要になる手前の段階を指します。

筋力が落ちる→動かなくなる→さらに筋力が落ちる→転倒・骨折→介護が必要に、という悪循環が起きます。この悪循環を防ぐには、サルコペニアの段階で早めに対策することが大切です。

サルコペニアの原因を理解する

筋力低下の原因は加齢だけではありません。

  • 動かないこと:入院や自宅での安静が長引くと急速に筋力が落ちます
  • 病気:がん、心臓病、うつ病なども筋肉の減少に関わります
  • 栄養不足:食欲が落ちてたんぱく質の摂取が減ると筋肉の材料が不足します

これらの原因は同時に起こることが多いため、「動く」「食べる」「活動を続ける」の3つを意識することが大切です。

予防の3本柱── 栄養・運動・活動

1. 栄養── たんぱく質の十分な摂取

筋肉をつくる材料はたんぱく質です。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品を毎食少しずつ取り入れましょう。

ポイントは、3食に分けて均等に摂ることです。朝食を抜いたり、夜だけ多く食べたりすると効率が悪くなります。

ただし、腎臓の病気がある方はたんぱく質を摂りすぎないよう、主治医に相談してください。

2. 運動── レジスタンストレーニングの効果

筋力を維持するには筋力トレーニングが最も効果的です。

  • 椅子からの立ち座りを5〜10回(スクワットの代わりになります)
  • つま先立ちを10回(ふくらはぎの筋力アップ)
  • 週2〜3回、少しずつ回数を増やしていく

無理をせず、「ちょっときつい」くらいの負荷で続けることが大切です。

3. 活動── 日常生活のなかで体を使う

運動だけでなく、日常生活の中で体を動かすことがとても大切です。

買い物に歩いて行く、庭の手入れをする、料理をする──こうした日常の活動が、実は全身の筋肉を使っています。座っている時間を減らし、こまめに立ち上がることを意識してみてください。

作業療法士が「やりたい活動」でサルコペニアに立ち向かう

「運動しましょう」では続かない

「筋トレしましょう」と言われても続かないのは自然なことです。目的のない運動は続けにくいものです。

作業療法士は、ご本人の「やりたいこと」を手がかりにします。「庭の手入れを続けたい」「孫と公園に行きたい」という目標があれば、それに向けて必要な体の動きを練習します。やりたいことがあるから続けられる──これが作業療法の強みです。

OTによるサルコペニア予防の具体的アプローチ

活動分析という武器

自宅でできるサルコペニアのセルフチェック

指輪っかテスト

ご自宅で簡単にチェックできる方法があります。

指輪っかテスト:ふくらはぎの一番太いところを、両手の親指と人差し指で輪を作って囲んでみてください。

  • 囲めない、ちょうど囲める:リスクは比較的低い
  • 隙間ができる:筋肉が減っている可能性があります

SARC-F質問票

次の5つの質問にも答えてみてください。

  • 4.5kgの荷物を持ち上げて運ぶのが大変ですか?
  • 部屋の端から端まで歩くのが大変ですか?
  • 椅子やベッドから立ち上がるのが大変ですか?
  • 10段の階段を昇るのが大変ですか?
  • 過去1年間に転んだことがありますか?

2つ以上「はい」がある場合は、かかりつけ医に相談してみてください。

まとめ── 「歳だから」をやめるところから始まる

ポイント
  • 筋力の低下は「歳だから仕方ない」ではなく、適切な対策で予防・改善が可能です
  • 毎食のたんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)、週2〜3回の筋力トレーニング日常生活での活動量の維持が予防の3本柱です
  • 指輪っかテストで気軽にセルフチェックできます。気になったらかかりつけ医に相談しましょう
ご家庭でできること
  • まずご家族と一緒に「指輪っかテスト」をやってみてください。話のきっかけになります
  • 毎食のたんぱく質を意識しましょう。朝に卵、昼に魚、夜に豆腐など、3食に分けて摂るのがコツです
  • 「一緒に散歩する」「買い物に歩いて行く」など、日常の活動をご家族で楽しむ工夫を取り入れてみてください

参考文献
  • Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.
  • Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age and Ageing. 2019;48(1):16-31.
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  • WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Geneva: World Health Organization; 2020.

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