この記事のポイント
- 運転をやめることは「移動の自由」を失うことではなく、移動手段を切り替えることです
- 公共交通、福祉タクシー、地域の移動支援など、多くの選択肢があります
- 作業療法士は「移動」だけでなく、買い物・通院・社会参加を含めた暮らし全体を支援します
運転をやめることの意味 ── 「移動」を失うわけではない
「運転をやめる=どこにも行けなくなる」と思っていませんか。
確かに、車は便利な移動手段です。しかし、運転をやめた後にも使える移動手段はたくさんあります。大切なのは、「運転できなくなった」と落ち込むのではなく、「どうやって行きたい場所に行くか」を一緒に考えることです。
コミュニティモビリティ──この言葉は、「車が運転できること」ではなく「行きたい場所に行けること」を意味しています。
この記事は「運転をやめた後」の移動手段と暮らしの工夫に絞って紹介します。「そもそも運転を続けられるか」を知りたい方は運転適性評価と支援の実際を、認知症のご家族の免許返納で悩んでいる方は認知症と運転・免許返納をご覧ください。
使える移動手段の選択肢
1. 公共交通機関
バス・電車
- 免許返納者の割引があることをご存知ですか。多くの自治体やバス会社で、運転経歴証明書を見せると割引が受けられます
- コミュニティバス(地域の循環バス)は、停留所が多く、利用しやすいことがあります
デマンド交通(予約型乗合タクシー)
- 電話やアプリで予約すると、自宅近くまで迎えに来てくれる乗合サービスです
- 料金はバス並みで、地方でも導入が進んでいます
- お住まいの自治体に確認してみてください
2. タクシー・福祉タクシー
- タクシー: 配車アプリを使えば、自宅から簡単に呼べます
- 福祉タクシー: 車椅子ごと乗れる車両や、乗り降りの介助がつくサービスです
- タクシーチケット: 自治体が割引チケットを交付していることがあります
車を持っていると、駐車場代・保険料・車検代・ガソリン代で月に3〜5万円かかることがあります。タクシーに切り替えた場合の費用と比較すると、意外とタクシーの方が安くなることもあります。一度計算してみてください。
3. 地域の移動支援・ボランティア
地域には、さまざまな移動を助けてくれるサービスがあります。
- 社会福祉協議会: ボランティアの方が送迎してくれることがあります
- NPOの移送サービス: 通院や買い物の送迎をしてくれる団体があります
- 近所の助け合い: 買い物のついでに乗せてもらうなど
お住まいの地域にどんなサービスがあるかは、地域包括支援センターに相談すると教えてもらえます。
4. 自分で動ける手段
自分の力で動ける手段もあります。
- 電動アシスト自転車: 坂道でもラクに走れます(安全に乗るためのポイントは別記事で解説しています)
- シニアカー(電動カート): 免許なしで乗れる小型の乗り物です。近所のスーパーへの買い物などに便利です
- シルバーカー: 荷物も載せられる歩行補助具。休憩もできます
移動だけではない ── 暮らし全体の見直し
運転をやめると、移動だけでなく買い物や通院にも影響があります。以下の工夫で対応できます。
買い物
- ネットスーパー: スマートフォンやパソコンから注文、自宅に届きます
- 宅配サービス: 生協の個人宅配は週1回届けてくれます
- 移動販売車: 地域によっては、スーパーの車が近所まで来てくれます
通院
- オンライン診療: 自宅からビデオ通話で診察を受けられます
- 訪問診療: お医者さんが自宅に来てくれるサービスもあります
- 送迎つきの福祉サービス: デイサービスなどは送迎がついています
人との交流
- 近所のサロンや集いの場に参加する
- 家族や友人とビデオ通話でつながる
免許返納のタイミングと心理的サポート
運転をやめることは、ご本人にとってとても大きな決断です。「自由を奪われた」と感じる方も多いため、以下の点を心がけてください。
- 気持ちを受け止める: 「つらいよね」「悔しいよね」と共感する
- 段階的に: いきなり返納ではなく、「夜は乗らない」「近所だけ」と段階を踏む
- 事前に体験: 返納前にバスやタクシーを一緒に使ってみる
- 一方的に決めない: 家族だけで決めず、ご本人と話し合う
運転経歴証明書を忘れずに
免許を返納するときは、「運転経歴証明書」を申請しましょう。身分証明書として使えるほか、バスやタクシーの割引が受けられることがあります。返納と同時に申請できます。
自治体の支援制度を活用する
お住まいの自治体に、さまざまな移動の支援制度がある可能性があります。
- バスの割引パス: コミュニティバスが無料や半額になる
- タクシーチケット: 月に数枚のタクシー割引券がもらえる
- 買い物支援: 買い物に困っている高齢者向けのサービス
お住まいの地域でどんな支援が使えるか、地域包括支援センターに相談してみてください。電話一本で、使える制度やサービスを教えてもらえます。「こんなことも相談していいのかな」と思うようなことでも、遠慮なく聞いてみましょう。
まとめ ── 運転をやめた後の暮らしを支える
- 運転をやめることは「移動の自由」を失うことではなく、移動手段を切り替えることです
- 公共交通、タクシー、地域の送迎サービスなど、多くの選択肢があります
- ネットスーパーやオンライン診療で、外出しなくても済むことも増えています
- 免許返納時は「運転経歴証明書」を申請し、各種割引を活用しましょう
- 地域包括支援センターに相談すると、使える制度やサービスを教えてもらえます
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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