この記事のポイント
- 「外に出るのが怖い」は自然な反応。ひきこもり経験者の多くが同じ恐怖を語っている
- 就労だけがゴールではありません。「意味のある作業」を見つけることが社会参加の第一歩です
- 自宅での小さな活動から始める4ステップの段階的アプローチを紹介
「外に出るのが怖い」のは特別なことではない
「コンビニにも行けないの?」「いつまで家にいるの?」――つい、そう思ってしまうことがあるかもしれません。
でも、ひきこもり状態にある方にとって、外に出ることは想像以上に大きなハードルです。「怖い」という気持ちは、決して怠けではありません。過去に傷ついた経験から自分を守ろうとする、心の自然な反応です。
日本にはひきこもり状態の方が推定146万人いるとされています。それだけ多くの方が同じ不安を抱えています。
大切なのは、「安全だ」と感じられる範囲を少しずつ広げていくこと。作業療法士(OT)は、この「段階的なアプローチ」を得意としています。
就労だけがゴールじゃない ― OTが考える「社会参加」とは
「早く就職してほしい」「学校に戻ってほしい」と思う気持ちは自然です。でも、社会参加には、もっとたくさんの形があります。
「正社員として週5日働く」だけが社会参加ではありません。ご本人が「やりたい」「やってもいいかな」と思えることを見つけることが、最初の一歩です。
ご家族が「それも社会参加なんだよ」と伝えることが大きな力になります。たとえば、ネットで誰かとやりとりしている姿を見て「ゲームばかり」ではなく、「人と関わっている」と捉えてみてください。その視点の変化が、ご本人の安心感につながります。
ステップ1: 自宅の中で「小さなやりたい」を見つける
最初から外出を求めなくて大丈夫です。自宅の中でできることから始めましょう。
ご本人が好きなことや興味があることを入口にします。ゲームが好きならオンラインでの協力プレイ、料理に興味があるなら簡単なものを一つ作ってみる。「やらなきゃ」ではなく「やってもいいかな」がちょうどいいスタートラインです。
ご家族にお願いしたいのは、「できたこと」に注目するということ。「今日はお風呂に入れた」「ご飯を一緒に食べた」――それだけで十分な前進です。
ステップ2: 玄関の外へ ― 短い外出から始める
自宅での活動に慣れてきたら、外に出ることを少しずつ考えます。ただし、ステップはとても小さくするのがコツです。
玄関の外に出て1分で戻る → 家の周りを5分歩く → 自動販売機に行く → コンビニに行く。このくらいの小さなステップで進めます。
途中で引き返しても、それは後退ではありません。「今日は無理だ」と自分で判断できたということは、自分のペースを守れたということです。
ご家族は、「行けなかった」ことよりも「出ようとした」ことに注目してください。
NG: 「今日こそ外に出なさい」「いつまで家にいるの?」。プレッシャーになり、かえって外出が遠のきます。OK: 「一緒にコンビニ行こうか」「散歩に付き合ってくれない?」。ご本人が「頼まれた」形になると、自分からより動きやすいことがあります。
ステップ3: 居場所に行ってみる ― 人とのつながりを少しずつ
外出に慣れてきたら、人と過ごせる場所を探す段階です。
各都道府県にはひきこもり地域支援センターが設置されています。まずはご家族だけで相談することもできます。そのほか、居場所カフェやNPOの居場所事業、図書館なども選択肢です。外出が難しい場合はオンラインの居場所もあります。
大切なのは、初回は「行って帰るだけ」で十分ということ。話さなくてもいい、合わなかったら別の場所を探せばいい。そのくらいの気楽さで大丈夫です。
ステップ4: 自分の「作業」を広げていく
居場所に通えるようになったら、ボランティア、趣味のサークル、就労準備支援など、少しずつ活動の幅を広げていきます。
ここで最も大切なのは、「ご本人が自分で選ぶ」ということです。「そろそろ働いたら?」と言いたくなる気持ちはわかります。でも、ご本人が「やりたい」と感じたタイミングがベストタイミングです。ご家族の役割は、選択肢を一緒に調べることまで。最終的な決定はご本人に任せましょう。
焦らなくていい ― 「戻る」ことも大切なステップ
社会参加は一直線には進みません。居場所に通えていたのにまた家から出られなくなる、人と話せたのに翌日は動けない――そんなことは珍しくありません。
これは後退ではありません。「行けなくなったら、一つ前のステップに戻る」。それだけのことです。
回復のペースは人それぞれです。数ヶ月の方もいれば、数年かかる方もいます。どのペースも「正解」です。ご家族が「焦らなくていいよ」と伝えてくれるだけで、ご本人はとても安心します。
家族の方へ
ひきこもりのご家族を支えるのは、とても大変なことです。ご家族自身も疲れていて当然です。
- 「いつまでこうしてるの?」は禁句。ご本人が一番焦っています
- ゲームや動画を否定しない。それが今のご本人にとって大切な活動です
- 小さな変化に目を向ける。「お風呂に入った」「話しかけてきた」は前進のサインです
- ご自身のケアも忘れない。疲れたら休んでいいのです
不登校・ひきこもりの子どもとの向き合い方も参考にしてください。
ひきこもりのご家族を支えるうちに、ご自身が疲れ切ってしまう方は少なくありません。同じ境遇の家族が集まる「家族会」に参加してみるのも一つの方法です。「自分だけじゃない」と感じるだけで、気持ちが楽になることがあります。ひきこもり地域支援センターで家族会の情報を聞いてみてください。
OTに相談するという選択肢
作業療法士(OT)は、ひきこもり状態からの社会参加を段階的にサポートする専門家です。ご本人だけでなく、ご家族だけの相談にも対応してくれます。
まずはお住まいの都道府県のひきこもり地域支援センターに相談してみてください。電話相談やご家族だけの来所相談も可能です。そのほか、精神保健福祉センターや生活困窮者自立支援機関でも相談できます。
使える制度については支援制度まるわかりガイドもご確認ください。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。