本文へスキップ
作業療法.net
専門職向け#作業療法#新人教育#キャリア

「見学」の技術 ── 先輩の臨床から何を盗むか

入職直後は見学が中心。ただ見るのと「観察する」のは違います。何に注目すべきか、質問の仕方、見学ノートの取り方を解説します。

📅 2026年3月24日 更新読了目安 7分

新卒OTスタートアップコラム「4月1日までに知っておきたいこと」── 第4回

この記事のポイント

  • 「見る」と「観る」は違います。先輩の臨床から学ぶには、観察の視点が必要です
  • 見学中に注目すべき5つのポイントと、効果的な見学ノートの取り方を紹介します
  • 受け入れ側は「何を見てほしいか」を事前に伝えるだけで、見学の学習効果が大きく変わります

入職後の最初の仕事は「見ること」

多くの施設では、入職後すぐに患者さんを担当するわけではありません。最初の数日から数週間は、先輩の臨床を見学する期間が設けられます。

この期間を「まだ何もできない待機時間」と捉えるか、「臨床力の土台を作る最重要期間」と捉えるかで、その後の成長スピードが大きく変わります。

ただし、漫然と見ているだけでは何も身につきません。「見る」と「観る」は違います。

見学中に注目すべき5つのポイント

先輩の臨床を観察するとき、以下の5つの視点を意識してみてください。

1. 治療の「構造」を見る

先輩はどのような順番で治療を進めていますか。導入→評価→介入→クールダウンという流れがあるはずです。なぜその順番なのかを考えてみましょう。

2. 言葉がけのタイミングと内容を聴く

先輩が患者さんにかける言葉に注目してください。「もう少しがんばりましょう」ではなく「あと3回やりましょう」と具体的に伝えている、あるいは沈黙を上手に使っている場面があるかもしれません。何を言っているかだけでなく、いつ言っているかも重要です。

3. 患者さんの反応を観察する

先輩だけでなく、患者さんの表情や動作にも注目します。介入の前後で表情が変わっていないか、疲労のサインが出ていないか、痛みを我慢している様子はないか。先輩はそれらのサインにどう対応していますか。

4. 環境設定を確認する

ベッドの高さ、テーブルの位置、椅子の選択、道具の配置。先輩はどのように環境を整えてから治療を始めていますか。作業療法では環境調整が介入の大きな柱です。この視点を見学中から持っておくことは非常に重要です。

5. 記録の仕方を見る

可能であれば、先輩が書いたカルテを読ませてもらいましょう。見学した治療内容がどのように文章化されているかを知ることで、前回のコラムで紹介した記録の書き方が具体的にイメージできるようになります。

見学ノートの取り方

見学中にすべてを暗記するのは不可能です。ポケットサイズのノートを必ず持参しましょう。

おすすめの記録フォーマットは以下の通りです。

おすすめの見学ノート記録フォーマット
  • 日時と患者さんの情報個人情報に配慮した形で
  • 先輩が行ったこと事実のみ、簡潔に
  • 気づいたこと・疑問に思ったこと
  • 後で質問したいこと

特に大切なのは「疑問」を書き留めることです。見学中に感じた「なぜ?」は、その場では聞けなくても、後から質問するための貴重な種になります。

質問のタイミングと聞き方

見学後の質問は、学びを深める最大のチャンスです。

タイミング:治療中ではなく、治療後に聞くのが基本です。ただし、先輩が「何か気づいたことはある?」と聞いてくれた場合は、遠慮なく答えてください。

聞き方のコツ:「すごかったです」だけでは会話が続きません。代わりに具体的な場面を挙げて聞いてみましょう。

「途中で課題の難易度を下げていましたが、患者さんのどのような反応を見て判断されたのですか?」

このように具体的な場面 + 「なぜ」の質問をすると、先輩は自分の臨床判断を言語化しやすくなり、より深い学びにつながります。

先輩が見学で見てほしいこと

実は、先輩と新人の間には「見てほしいポイント」のギャップがあります。

新人は「手技」や「テクニック」に目が行きがちです。しかし先輩が見てほしいのは、治療全体の「流れ」や「判断のプロセス」です。

「なぜこの評価を最初にしたのか」「なぜこのタイミングで介入を切り替えたのか」「なぜこの環境設定にしたのか」── 手技の裏にある臨床推論に目を向けることが、見学の本質です。

受け入れ側へ── 見学を「学びの時間」にする工夫

「じゃあ見てて」と言うだけでは、新人は何を見ればいいかわかりません。

見学前に「今日はここに注目してほしい」と一言伝えるだけで、学習効果が大きく変わります。

「今日の患者さんは注意障害があるから、私がどうやって注意を引きつけているか見ていてね」── このような一言があるだけで、新人の目は格段に鋭くなります。

見学後に5分でも振り返りの時間を取り、「何が見えた?」と問いかける。この積み重ねが、新人の観察力を育てます。


前回:カルテは誰のために書くのか次回:リスク管理の超基本

関連記事

若手OT・OT学生含む全てのプロOTへ

専門職向け

ANCHOR フレームワーク ── 活動を錨にした生活リズム再構築の6段階モデル

生活リズムの再構築を体系的に支援するためのOT実践フレームワーク「ANCHOR」を提案します。評価から再調整までの6段階を、臨床推論・既存モデルとの接続・疾患別の適用例とともに解説します。

作業療法フレームワークリハビリテーション

読んでみる →

若手OT・OT学生含む全てのプロOTへ

専門職向け

同じ「作業療法」なのに、国が変わるとこんなに違う ── 社会のかたちがリハビリを変える

アメリカ、イギリス、スウェーデン、オーストラリア、日本。同じ作業療法でも、その国の社会制度・文化・価値観によって驚くほど姿が変わります。世界を巡りながら、作業療法と社会の関係を考えます。

作業療法国際比較社会制度

読んでみる →