新卒OTスタートアップコラム「4月1日までに知っておきたいこと」── 第9回
この記事のポイント
- リアリティショック(理想と現実のギャップ)は、新人の約7割が経験する「正常な反応」です
- 「できない自分」に落ち込むのは、向上心がある証拠。大切なのは比較の対象を変えることです
- 受け入れ側は、新人の「小さな成長」を言葉にして伝えることで、自己効力感を育てられます
5月に来る「壁」
入職直後の4月は、緊張感とやる気で乗り切れることが多いです。しかし、5月の連休明けあたりから、多くの新人に共通する感情が訪れます。
「自分は向いていないのかもしれない」
これがリアリティショックです。学校で学んだこととの違い、先輩との圧倒的な実力差、患者さんの期待に応えられない焦り。新卒者の約7割がこのような感情を経験するという調査もあります。
まず知っておいてほしいのは、これは異常ではなく正常な反応だということです。
よくある3つの落とし穴
リアリティショックに陥る新人には、共通するパターンがあります。
落とし穴1:先輩と比較する先輩の流れるような臨床を見て、「自分にはこんなことできない」と感じます。しかし、その先輩も1年目のときは同じように悩んでいました。10年目の先輩と1年目の自分を比べるのは、そもそもフェアではありません。
落とし穴2:同期と比較する同期が先に患者さんを担当し始めたり、カンファレンスで上手に発表していたりすると焦ります。しかし、配属先も担当患者も教育環境も違います。見えている部分だけで比較しても、実態はわかりません。
落とし穴3:「全部できなきゃダメ」と思い込む評価もできない、治療もうまくいかない、記録も遅い。「何もできない」と感じる瞬間があるでしょう。しかし実際には、「全部できない」のではなく「全部に不慣れ」なだけです。ひとつずつ慣れていけば、必ずできるようになります。
比較の対象を変える
先輩や同期ではなく、「1週間前の自分」と比較してみてください。
小さなことです。しかし、その「小さな変化」の積み重ねが成長です。
「つらい」は相談していい
リアリティショックを一人で抱え込む必要はありません。
第2回のコラムで伝えた「相談」は、臨床の疑問だけでなく、メンタル面の相談にも使ってほしいのです。
「最近、自分がこの仕事に向いているかわからなくなってきました」── こう言うのは勇気がいるかもしれません。しかし、先輩の多くは「自分もそうだった」と答えてくれるはずです。
同期との間でも、互いの悩みを共有することは大きな支えになります。「自分だけが苦しいわけではない」と知るだけで、気持ちが楽になることがあります。
セルフケアを軽視しない
心身の疲弊はリアリティショックを悪化させます。基本的なセルフケアを意識してください。
睡眠:最低でも6時間。できれば7時間。睡眠不足は判断力と感情コントロールを直接低下させます。
食事:忙しいとコンビニ食やカップ麺に偏りがちです。完璧な食事でなくても、1日3食を抜かないことを目標にしてください。
休日:勉強しなければという焦りから休日も教科書を開く新人がいますが、休むことも仕事のうちです。以前のコラムで紹介した休日の過ごし方も参考にしてみてください。
受け入れ側へ── 「小さな成長」を言葉にする
新人は自分の成長に気づきにくいものです。毎日の変化は、自分では見えません。
「先週より移乗が安定してきたね」「記録の書き方がわかりやすくなったよ」── こうした具体的なフィードバックが、新人の自己効力感を育てます。
定期的な面談(月1回程度)も効果的です。業務の進捗だけでなく、「最近どう? 困っていることはない?」と気持ちの面にも触れてください。
新人が「辞めたい」と言い出す前に、変化のサインを察知することも大切です。遅刻が増えた、表情が暗くなった、質問しなくなった── これらは新人からのSOSかもしれません。
最も効果的なのは、先輩自身の1年目の経験を話すことです。「自分も5月に辞めたくなった」「最初の3ヶ月は毎日泣いていた」── 先輩の正直な言葉が、新人の「自分だけじゃないんだ」という安心感につながります。