この記事のポイント
- 作業療法士は、食事や着替えなど日常の活動を通じてリハビリを行う国家資格の専門職で、有資格者は全国に約11.8万人(2024年度)、平均年収は約444万円(令和7年賃金構造基本統計調査)です
- 身体障害・精神障害・発達障害・老年期障害の4領域で活躍し、勤務先は病院が約7割を占めます
- 業務は「理学療法士及び作業療法士法」に基づき、医師の指示の下で行うと定められています
- 「その人らしい生活」の実現を一緒に考え支援することが、この仕事の最大のやりがいです
作業療法士とは
作業療法士(OTR: Occupational Therapist Registered)とは、作業療法を仕事にする国家資格を持った専門職です。「OTR」とは「登録された作業療法士」を意味し、国家試験に合格し厚生労働大臣の免許を受けた者を指します。
日常では「OT」や「OTR」と略されることが多く、医療機関や福祉施設で活躍するリハビリテーション専門職のひとつです。
作業療法士(OT)は、国家資格を持ったリハビリの専門家です。病院や施設で「OTさん」と呼ばれていることが多いです。
「OTR」は「登録された作業療法士」を意味する正式な略称で、国家試験に合格した専門職を指します。
作業療法士の役割
作業療法士の役割を一言でまとめると、対象者の「やりたい」「こうなりたい」という想いを、作業(活動)を通じて実現する支援者です。
具体的には、以下のようなプロセスで支援を行います。
- 評価: 対象者の現在の身体的・精神的・社会的な状態を詳しく把握する
- 目標設定: 対象者と一緒に「どうなりたいか」を話し合い、具体的な目標を立てる
- 介入計画: 目標達成に向けた活動プログラムを考案する
- 実践: 計画に基づいて作業療法を実施する
- 再評価: 定期的に成果を確認し、計画を調整する
作業療法士は、ご本人の「やりたい」「こうなりたい」という想いを、日常の活動を通じて実現するお手伝いをする人です。
たとえば「自分でご飯を食べたい」「また料理がしたい」といった目標に対して、ご本人と一緒に計画を立て、練習し、定期的に見直しながら支援を進めます。
作業療法士の仕事内容
作業療法士の仕事内容は、活躍する領域によって大きく異なります。ここでは主な領域ごとに紹介します。
身体障害領域での仕事
病院のリハビリテーション科で最も多い作業療法士の仕事です。脳卒中や骨折などで身体機能が低下した方に対して、以下のような介入を行います。
- 上肢機能訓練 — 手や腕の動きの回復を促す練習
- ADL訓練 — 食事、着替え、入浴、トイレなど日常生活動作の練習
- 自助具の選定・作成 — 残存能力を活かすための道具の提案
- 住宅改修のアドバイス — 自宅での生活を安全にするための環境調整
病院で最も多い作業療法士の仕事です。脳卒中や骨折のあとに、こんなサポートをしてくれます。
- 手や腕の動きの回復練習
- 日常生活動作の練習(食事、着替え、入浴など)
- 自助具(生活を楽にする道具)の提案
- 自宅の環境調整のアドバイス
精神障害領域での仕事
精神科病院やデイケアで、精神疾患を持つ方の社会復帰を支援します。
- 集団活動プログラム — 創作活動、スポーツ、調理活動などを通じた対人スキルの向上
- 生活リズムの調整 — 規則正しい生活習慣の確立を支援
- 就労支援 — 仕事への復帰に向けた段階的なプログラム
- 心理的サポート — 自信の回復や障害の受容を支援
精神科の病院やデイケアで、心の病を持つ方の社会復帰を支援します。創作活動や調理などを通じた対人スキルの練習、生活リズムの立て直し、就労支援などを行います。
発達障害領域での仕事
子どもの発達を支援する作業療法士も増えています。
- 感覚統合療法 — 感覚の処理が苦手な子どもへのアプローチ
- 微細運動の発達支援 — 書字や箸の使用など手先の器用さを育む
- 学校生活への適応支援 — 授業への参加や友達との関わりをサポート
- 保護者への助言 — 家庭での関わり方のアドバイス
お子さんの発達を支援する作業療法士も増えています。箸の使い方や字を書く練習、学校生活への適応サポートのほか、保護者への関わり方のアドバイスもしてくれます。
老年期障害領域での仕事
高齢者施設や訪問リハビリで、認知症や虚弱高齢者の生活を支援します。
- 認知症ケア — 回想法や作業活動を用いた認知機能の維持
- 転倒予防 — 環境調整と身体機能の維持向上
- 在宅生活支援 — 安全に自宅で暮らし続けるためのサポート
- 家族支援 — 介護者の負担軽減と相談対応
高齢者施設や訪問リハビリで、認知症や体が弱った高齢者の暮らしを支えます。転倒予防や在宅生活のサポートに加え、介護するご家族への相談対応も大切な役割です。
作業療法士が活躍する場所
作業療法士が働く場所は多岐にわたります。日本作業療法士協会の会員統計によると、就業先の内訳は概ね以下の通りです(出典: 日本作業療法士協会 2024年度会員統計資料, 2025年)。
- 病院(約69%) — 一般病院、リハビリテーション病院、精神科病院
- 介護老人保健施設 — 在宅復帰を目指す入所者のリハビリテーション
- 障害者支援施設 — 障害者の自立した生活を支援
- 訪問リハビリテーション事業所 — 利用者の自宅でリハビリを実施
- 児童発達支援センター — 発達に課題のある子どもの支援
- 行政機関 — 保健センターなどでの地域保健活動
- 教育機関 — 特別支援学校や養成校での教育活動
作業療法士の就業状況
日本には現在約11.8万人の作業療法士(有資格者)がいます(118,465人、2025年3月31日現在。出典: 日本作業療法士協会 2024年度会員統計資料, 2025年)。毎年約5,000人が新たに国家試験に合格し(2026年の第61回試験では4,947人が合格。出典: 厚生労働省 国家試験合格発表, 2026年)、有資格者数は年々増加しています。
就業データ
| 項目 | データ |
|---|---|
| 有資格者数 | 約11.8万人(2025年3月末時点) |
| 年間新規取得者 | 約5,000人(第61回試験合格者: 4,947人) |
| 男女比 | 女性約6割(協会会員の60.8%) |
| 主な勤務先 | 病院(約69%) |
| 平均年収 | 約444万円(出典: 厚生労働省jobtag, 令和7年賃金構造基本統計調査) |
就職・求人状況
リハビリテーション専門職としての需要は高く、就職は比較的しやすい状況にあります。特に訪問リハビリや発達支援領域での求人が増加傾向にあります。
作業療法士の法的な位置づけ
日本では「理学療法士及び作業療法士法」(1965年制定)に基づき、作業療法士は国家資格として定められています(出典: 理学療法士及び作業療法士法, 1965年)。
重要なポイントとして、作業療法士は「医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者」と定義されており、その業務は医師の指示のもとで行うことが法律で定められています(同法第2条)。そのため、現在のところ作業療法士が独立して開業することは認められていません。
作業療法士のやりがい
作業療法士の仕事のやりがいとして、多くの現職者が挙げるのは以下の点です。
- 人の人生に直接関わる仕事 — 対象者が「できなかったことができるようになる」瞬間に立ち会える
- クリエイティブな仕事 — 一人ひとりに合わせたオーダーメイドのプログラムを考案する
- 幅広い活躍の場 — 病院から地域まで、多様なフィールドで力を発揮できる
- 社会的意義 — 超高齢社会において、ますます必要とされる職種
高校生からよくある質問
作業療法士を進路として考えている高校生から、よく受ける質問に短く答えます。段階順にまとめた記事群は作業療法士を目指す高校生へ ── 進路ガイドにあります。
作業療法士は何を「治す」のですか
病気そのものを治すのは医師の仕事です。作業療法士が扱うのは、病気やけがのあとに難しくなった生活の動作と、その人らしい暮らしです。食事・着替え・仕事・遊びなど、その人にとって意味のある活動(作業)を評価し、練習と道具と環境の工夫で「できる」に近づけます。
介護の仕事と何が違うのですか
介護職は今日の生活を直接支え、作業療法士はできることを増やすために評価して計画を立てます。詳しくは作業療法士と介護職は何が違う?へ。
病院以外でも働けますか
働けます。介護施設・訪問・精神科・子どもの発達支援・学校など8つの職場を病院だけじゃない ── OTが働く場所にまとめています。
向いているのはどんな人ですか
性格ではなく、1日の仕事の中身で考えてください。作業療法士に向いているのはどんな人?へ。
何から始めればいいですか
高2の夏に志望校の入学者選抜要項を見ることです。作業療法士の受験勉強はいつから?へ。
まとめ
この記事のポイントを振り返ります。
作業療法士は、国家資格を持つリハビリテーション専門職として、身体・精神・発達・老年期と幅広い領域で活躍しています。「その人らしい生活」の実現を支援するという、やりがいのある仕事です。
作業療法に興味を持った方は、作業療法とは?わかりやすく解説で基本を学んだり、作業療法士になるにはで資格取得の方法を確認してみてください。作業療法士の活動領域について詳しくは作業療法の職域もご覧ください。
- 作業療法士は国家資格を持ったリハビリの専門家で、全国に約11.8万人います(2024年度)
- 身体・精神・発達・高齢者と幅広い分野で活躍しています
- 「その人らしい暮らし」を一緒に考えてくれる存在です
- 困りごとがあれば、担当のOTさんに遠慮なく相談してみてください
- 担当のOTさんに名前を聞いてみる: リハビリを担当してくれている作業療法士に「何かあったら相談していいですか?」と声をかけてみましょう
- 自宅での困りごとをメモしておく: 退院後の生活で不安なことを書き出しておくと、OTさんとの相談がスムーズになります
- 関連記事を読んでみる: 作業療法とは?で基本を知ると、リハビリの意味がより深くわかります
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
- 作業療法士とはどんな仕事ですか?
- 作業療法士は、食事や着替えなど日常の活動を通じてリハビリを行う国家資格の専門職です。対象者の「やりたい」「こうなりたい」という想いを、評価・目標設定・介入計画・実践・再評価のプロセスで支援します。
- 作業療法士の平均年収はいくらですか?
- 厚生労働省jobtag(令和7年賃金構造基本統計調査)によると、作業療法士の平均年収は約444万円です。有資格者は全国に約11.8万人おり、毎年約5,000人が新たに国家試験に合格しています。
- 作業療法士はどこで働いていますか?
- 勤務先は病院が約69%を占め、一般病院やリハビリテーション病院、精神科病院が中心です。ほかに介護老人保健施設、訪問リハビリテーション事業所、児童発達支援センター、行政機関、教育機関など多岐にわたります。
- 作業療法士が活躍する領域にはどんなものがありますか?
- 身体障害・精神障害・発達障害・老年期障害の4領域が中心です。脳卒中後の日常生活動作の練習、精神疾患を持つ方の社会復帰支援、子どもの発達支援、認知症ケアや転倒予防など、領域によって仕事内容が大きく異なります。
- 作業療法士は独立して開業できますか?
- 現在のところ認められていません。「理学療法士及び作業療法士法」で、作業療法士は「医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者」と定義されており、業務は医師の指示のもとで行うことが法律で定められているためです。
- 作業療法士は何を「治す」のですか?
- 病気そのものを治すのは医師で、作業療法士が扱うのは病気やけがのあとに難しくなった生活の動作と、その人らしい暮らしです。食事・着替え・仕事・遊びなど意味のある活動を評価し、練習と道具と環境の工夫で「できる」に近づけます。
- 高校生が作業療法士を目指すには、何から始めればいいですか?
- 作業療法士と介護職の違い、働く場所、向いている人の考え方を知ったうえで、高2の夏に志望校の入学者選抜要項を確認することです。当サイトの進路ガイドに段階順にまとめています。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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