この記事のポイント
- 作業療法とは、食事・入浴・趣味・仕事など「その人にとって意味のある活動(作業)」を治療手段として用い、心身の回復と生活の再構築を支えるリハビリテーションの専門技術です
- 対象は身体障害・精神障害・発達障害・老年期障害の4領域と幅広く、年齢や疾患の種類を問いません
- 理学療法が「立つ・歩く」など基本的動作の回復を担うのに対し、作業療法は応用的動作や社会適応の支援を担います
- 病院・介護老人保健施設・訪問リハビリ・児童発達支援事業所など、さまざまな場所で受けられます
作業療法(OT)とは何か
作業療法(Occupational Therapy、略称:OT)とは、「作業」を用いて治療やリハビリテーションを行う専門的な医療技術です。ここでいう「作業」は、仕事だけを指すものではありません。食事、入浴、着替え、料理、趣味活動、仕事、遊びなど、人が日常生活の中で行うあらゆる活動を含みます。
日本作業療法士協会は作業療法を「人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す」と定義しています(出典: 日本作業療法士協会「作業療法の定義」, 2018年改定)。
作業療法では、これらの「その人にとって意味のある活動」を戦略的に選び、支援することで、心身の回復や生活の再構築を促します。作業療法がどのように生まれ発展してきたかは作業療法の歴史で年表つきで解説しています。
作業療法(OT)とは、日常生活の中の「活動」を使って、心や体の回復を助ける医療技術です。
ここでいう「活動」とは、仕事だけではありません。食事、入浴、着替え、料理、趣味、遊びなど、毎日の暮らしの中で行うすべてのことを指します。
「作業」の意味
作業療法における「作業」とは、辞書的な意味とは異なり、その人の人生において個人的に意味を持つ活動全般を指します。何が「作業」に該当するかは、客観的な価値ではなく、当事者本人がどう感じるかによって決まります。
例えば、ある人にとっての大切な「作業」が「孫と一緒に散歩すること」であったり、「自分でコーヒーを淹れること」であったりします。一見すると些細なことに思えるかもしれませんが、その人にとっては生活の質(QOL)を大きく左右する重要な活動なのです。「作業」という概念の意味と定義は作業療法の「作業」とは何かでさらに掘り下げて解説しています。
作業療法でいう「作業」は、その人にとって大切な活動すべてのことです。何が大切かは、本人の気持ちで決まります。
たとえば「孫と散歩すること」や「自分でコーヒーを淹れること」。些細に見えても、その人にとっては暮らしの満足度を大きく左右する大切な活動なのです。
「療法」の意味
「療法」は、不健康な状態から健康な状態へ向かうための治療的アプローチを意味します。癒やし、安らぎ、回復を含む幅広い概念です。
作業療法の目的
作業療法の最大の目的は、人々が意味のある作業に参加することを通じて、健康と幸福(ウェルビーイング)を促進することです。
具体的には、以下のような目的があります。
日常生活動作(ADL)の回復・維持
食事、排泄、入浴、着替えなどの基本的な生活動作
手段的日常生活動作(IADL)の支援
家事、買い物、外出、金銭管理などの複雑な生活活動
社会参加の促進
仕事への復帰、地域活動への参加、人間関係の構築
心理的サポート
障害受容、自己効力感の向上、メンタルヘルスケア
環境調整
住環境の改善、福祉用具の選定、バリアフリー化の提案
病気やけがが完全に治らない場合であっても、作業療法は「その人らしい生活」を再構築するための支援を行います。これが作業療法の大きな特徴です。なお、ADLとIADLの区別や評価方法についてはADLとIADLの違いで具体例とともに整理しています。
作業療法の一番の目的は、「その人らしい生活」を取り戻すことです。具体的には、次のようなことを支援します。
- 毎日の基本動作: 食事、入浴、着替えなどができるようになること
- 暮らしに必要な活動: 家事、買い物、外出などをこなせるようになること
- 社会とのつながり: 仕事への復帰や、地域の活動への参加
- 心のサポート: 気持ちの整理や、前向きに過ごすための支え
- 環境の工夫: 住まいの改善や、便利な道具の提案
病気やけがが完全に治らなくても、暮らし方を工夫することで「その人らしい生活」を再構築できる。これが作業療法の大きな特徴です。
作業療法の対象
作業療法は、年齢や疾患の種類を問わず、幅広い方を対象としています。主な領域は以下の4つです。
身体障害領域
脳卒中(脳梗塞・脳出血)、骨折、脊髄損傷、関節リウマチ、パーキンソン病などの身体的な障害を持つ方のリハビリテーションを行います。手の機能回復や日常生活動作の練習が中心です。神経難病や内部障害も対象で、具体的な関わり方はALSのある方の暮らしを支える作業療法や心臓の病気と日常生活の組み立て方で紹介しています。
脳卒中、骨折、パーキンソン病などで体に障害がある方のリハビリを行います。手の動きの回復や、日常の動作の練習が中心です。脳卒中の後に「動作のやり方がわからなくなる」症状が出ることもあり、そうした症状と家族のサポートについては失行症の理解と家族ができることで解説しています。
精神障害領域
うつ病、統合失調症、双極性障害、アルコール依存症などの精神疾患を持つ方の社会復帰を支援します。集団活動や創作活動を通じて、対人関係スキルや生活リズムの改善を図ります。依存症領域での実践例はアルコール依存症からの回復を支える作業療法で詳しく解説しています。
うつ病や統合失調症などの精神疾患をお持ちの方の社会復帰を支援します。グループ活動や創作活動を通じて、人との関わり方や生活リズムの改善を図ります。
発達障害領域
自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、脳性まひ、知的障害などの発達に課題のある子どもたちの成長を支援します。遊びを通じた発達促進やスクールリハビリテーションなどを行います。
自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなど、発達に課題のあるお子さんの成長を支援します。遊びを通じて、できることを少しずつ広げていくのが特徴です。
老年期障害領域
認知症、フレイル(虚弱)、廃用症候群などの高齢者特有の課題に対応します。住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、心身の機能維持と生活環境の調整を行います。
認知症やフレイルなど、高齢の方に多い課題に対応します。住み慣れた場所で安心して暮らし続けられるよう、心身の機能維持と生活環境の調整を行います。
理学療法との違い
作業療法と理学療法はどちらもリハビリテーション専門職ですが、アプローチに違いがあります。
| 比較項目 | 作業療法(OT) | 理学療法(PT) |
|---|---|---|
| 主な焦点 | 日常生活全般の「活動」 | 基本的な身体機能・運動 |
| 対象領域 | 身体・精神・発達・老年期 | 主に身体機能 |
| アプローチ | 意味のある活動を通じた回復 | 運動療法・物理療法による機能回復 |
| 特徴的な介入 | 上肢機能、精神科OT、高次脳機能 | 歩行訓練、筋力強化、呼吸リハ |
理学療法が「立つ・歩く」などの基本的な身体機能の回復に重点を置くのに対し、作業療法は「その人らしく生活する」ための包括的な支援を行います。法律上も、理学療法は「基本的動作能力の回復」を、作業療法は「応用的動作能力又は社会的適応能力の回復」を図るものとして区別して定義されています(出典: 理学療法士及び作業療法士法 第2条, 1965年)。どちらも患者さんのリハビリテーションに欠かせない専門職です。
ざっくり言うと、理学療法は「立つ・歩く」などの体の基本機能を回復させることが得意です。一方、作業療法は「その人らしく暮らす」ための生活全体を支援します。どちらもリハビリに欠かせない専門職で、協力して支援にあたります。
作業療法が受けられる場所
作業療法は、以下のような施設で受けることができます。
- 病院 — 急性期から回復期まで、入院中のリハビリテーション
- 介護老人保健施設(老健) — 在宅復帰を目指すリハビリテーション
- デイケア・通所リハビリ — 通いながらリハビリを受ける
- 訪問リハビリテーション — 自宅でリハビリを受ける
- 児童発達支援事業所 — 子どもの発達支援
- 精神科デイケア — 精神疾患の方の社会復帰支援
- 就労支援事業所 — 仕事への復帰をサポート
作業療法は、さまざまな場所で受けることができます。
- 病院: 入院中のリハビリ
- 介護老人保健施設(老健): 自宅に帰るためのリハビリ
- デイケア・通所リハビリ: 施設に通いながらリハビリを受ける
- 訪問リハビリ: 自宅にリハビリの専門家が来てくれる
- 児童発達支援事業所: お子さんの発達を支援する
- 精神科デイケア: 精神疾患の方の社会復帰を支援する
- 就労支援事業所: 仕事への復帰をサポートする
「どこで受けられるかわからない」という場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみてください。
詳しくは作業療法士ってどんな仕事?や作業療法の職域もご覧ください。
まとめ
この記事のポイントを振り返ります。
作業療法は、「作業(その人にとって意味のある活動)」を用いて、人々の健康と幸福を促進するリハビリテーション専門技術です。身体障害、精神障害、発達障害、老年期障害と幅広い領域で活用され、「その人らしい生活」の再構築を支援します。
作業療法に関心のある方は、作業療法士になるにはもぜひご覧ください。
作業療法は、「その人にとって大切な活動」を通じて、暮らしを取り戻すためのリハビリです。体の障害だけでなく、心の問題やお子さんの発達、高齢の方の暮らしまで、幅広く支援します。
「立つ・歩く」の理学療法に対して、作業療法は「その人らしく暮らす」を支える専門職です。困りごとがあれば、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみてください。
- 「困っていること」を書き出してみる: 食事、入浴、外出など、日常で困っている活動を整理すると、作業療法士に相談しやすくなります
- かかりつけ医に聞いてみる: 「作業療法を受けたい」と伝えれば、近くの施設を紹介してもらえます
- 地域包括支援センターに電話する: 高齢の方の場合、お住まいの地域の支援センターが相談窓口になります
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
- 作業療法とは何ですか?
- 作業療法(OT)とは、食事・入浴・趣味・仕事など「その人にとって意味のある活動(作業)」を治療手段として用い、心身の回復と生活の再構築を支えるリハビリテーションの専門技術です。年齢や疾患の種類を問わず幅広い方が対象になります。
- 作業療法と理学療法の違いは何ですか?
- 理学療法は「立つ・歩く」など基本的な身体機能の回復に重点を置くのに対し、作業療法は日常生活全般の「活動」に焦点を当て、応用的動作や社会適応の支援を担います。法律上も基本的動作能力と応用的動作能力・社会的適応能力の回復として区別されています。
- 作業療法の対象になるのはどんな人ですか?
- 身体障害・精神障害・発達障害・老年期障害の4領域が主な対象です。脳卒中や骨折、うつ病や統合失調症、自閉スペクトラム症などの発達の課題、認知症やフレイルなど、年齢や疾患の種類を問わず幅広い方が対象になります。
- 作業療法はどこで受けられますか?
- 病院、介護老人保健施設(老健)、デイケア・通所リハビリ、訪問リハビリテーション、児童発達支援事業所、精神科デイケア、就労支援事業所などで受けられます。どこで受けられるかわからない場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみてください。
- 作業療法でいう「作業」とはどんな意味ですか?
- 仕事だけでなく、食事・入浴・着替え・料理・趣味・遊びなど、その人の人生において個人的に意味を持つ活動全般を指します。何が「作業」に該当するかは客観的な価値ではなく、当事者本人がどう感じるかによって決まります。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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