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「もの忘れ」と「認知症」の見分け方 ― 作業療法士が教えるIADLチェックリスト

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#セルフチェック#作業療法#家族支援

この記事のポイント

  • 加齢によるもの忘れと認知症のもの忘れには明確な違いがある
  • OTは「記憶力テスト」ではなく「生活行為(IADL)の変化」から認知症の兆候を見つける
  • 日常生活の15のサインをチェックし、受診すべきタイミングを解説

「最近もの忘れが増えた」― それは加齢? それとも認知症?

「鍵をどこに置いたか忘れる」「人の名前がすぐ出てこない」。年齢を重ねれば、誰でもの忘れは増えるものです。

しかし、「もの忘れの質」に変化があるとき、それは認知症の初期症状かもしれません。

認知症の当事者は約471.6万人、軽度認知障害(MCI)を含めると1,000万人以上。早期に気づくことで、進行を遅らせる治療や生活の工夫が可能になります。

OTは、記憶力のテストだけでなく、「日常生活の変化」から認知症の兆候を見つける専門家です。この記事では、OTが注目するIADL(手段的日常生活動作)の視点から、受診のタイミングを考えるためのチェックリストをお伝えします。

加齢によるもの忘れと認知症の違い

まず、加齢と認知症の「もの忘れ」の違いを整理します。

加齢によるもの忘れ認知症によるもの忘れ
忘れ方体験の一部を忘れる(何を食べたか忘れる)体験そのものを忘れる(食べたこと自体を忘れる)
自覚「あれ、忘れた」と自覚がある忘れたこと自体を覚えていない
ヒントヒントがあれば思い出せるヒントがあっても思い出せない
日常生活ほぼ支障なく過ごせる少しずつ支障が出てくる
進行急激に悪化しない時間とともに進行する

ただし、この区別は「もの忘れ」だけでは難しいことがあります。日常生活の変化に注目することで、より早く気づける可能性があります。

OTが注目する「生活行為の変化」とは

一般的な認知症チェックリストは、記憶力や見当識(日時・場所の認識)を中心に評価します。一方、OTはIADL(手段的日常生活動作)の変化に着目します。

IADLとは、「買い物」「料理」「金銭管理」「服薬管理」「電話の使用」「交通機関の利用」など、自立した生活を送るために必要な複雑な活動のことです。

認知症の初期には、基本的な身の回りのこと(食事、入浴、トイレ)は自分でできるのに、IADLに変化が出始めることが多いのです。

IADLチェックリスト ― 日常生活の15のサイン

以下は、OTの視点で作成した日常生活の変化チェックリストです。離れて暮らす親が心配な方は、帰省時にさりげなく確認してみてください。

料理・食事の変化

  • 1. 以前は得意だった料理の味が変わった(塩辛い、味が薄い)
  • 2. 料理のレパートリーが減った(同じメニューが続く)
  • 3. 鍋を焦がすことが増えた
  • 4. 冷蔵庫に同じものが大量にある(買ったことを忘れて買い直す)
  • 5. 賞味期限切れの食品が増えた

お金の管理・買い物の変化

  • 6. お釣りの計算ができなくなった(常にお札で支払う)
  • 7. 不要なものを大量に買うことが増えた
  • 8. 通帳の記帳をしなくなった、請求書の支払いを忘れる

外出・社会参加の変化

  • 9. 趣味の集まりや近所づきあいに行かなくなった
  • 10. 同じ道で迷うことがある
  • 11. 外出の頻度が明らかに減った

身だしなみ・生活リズムの変化

  • 12. 以前より服装に気を使わなくなった(季節に合わない服、汚れた服)
  • 13. 入浴の頻度が減った
  • 14. 薬を飲み忘れる、飲んだかどうかわからない

コミュニケーションの変化

  • 15. 会話の中で同じ話を何度も繰り返す(本人に自覚がない)

結果の見方

  • 0〜2項目: 加齢に伴う自然な変化の範囲内の可能性が高い。ただし、気になる項目があれば経過を見守る
  • 3〜5項目: 軽度認知障害(MCI)の可能性。かかりつけ医への相談をおすすめ
  • 6項目以上: 認知症の初期症状の可能性。早めの受診を

注意: このチェックリストは診断ツールではありません。あくまでも受診の目安としてお使いください。

チェックリストに該当したら ― 受診の目安と相談先

まず相談すべき場所

相談先特徴
かかりつけ医まず最初の窓口。必要に応じて専門医を紹介してくれる
もの忘れ外来認知症の専門的な評価ができる(大学病院、総合病院に多い)
地域包括支援センター介護・医療・福祉の総合相談窓口。無料
認知症疾患医療センター各都道府県に設置。認知症の鑑別診断と対応

受診を勧めるときのコツ

ご本人に「認知症かも」と直接伝えると、強く否定されることがあります。

  • 「健康診断のついでに」: 定期検診の一環として、もの忘れの相談もする
  • 「自分も一緒に」: 「自分も最近もの忘れが気になるから、一緒に相談しよう」
  • 「かかりつけ医から」: 事前にかかりつけ医に相談し、次回の診察時に話題にしてもらう

早期発見が大切な理由

認知症と診断されても「できること」はたくさんある

認知症の診断は「終わり」ではありません。

  • 薬物療法: 症状の進行を遅らせる薬がある(特にアルツハイマー型)
  • 非薬物療法: OTが行う回想法、生活行為向上訓練、環境調整は初期ほど効果的
  • 生活の工夫: メモ、アラーム、チェックリストなどの代償手段で、自立した生活を長く続けられる
  • 支援制度の早期活用: 介護保険サービスや障害福祉サービスの利用準備ができる

OTが早期から関わるメリット

OTは、認知症の初期段階から以下の支援ができます。

  • 「まだできること」を見つける: 記憶が低下しても、手続き記憶(体で覚えた動作)は保たれやすい。料理、洗濯、趣味活動など「続けられること」を一緒に見つける
  • 環境調整: 物の定位置を決める、ラベルを貼る、動線をシンプルにするなどの生活環境の調整
  • 家族へのアドバイス: 接し方のコツや、家庭でできる工夫を具体的に伝える

認知症の家族への接し方は認知症の家族への接し方ガイドで詳しく解説しています。

OTは暮らしの変化の専門家です

医師が「診断」の専門家、看護師が「ケア」の専門家だとすれば、OTは「暮らし」の専門家です。

「もの忘れが増えた」だけでなく、「料理の味が変わった」「外出しなくなった」「お金の管理ができなくなった」。こうした暮らしの中の小さな変化に気づき、適切な支援につなげることがOTの役割です。

暮らしの変化セルフチェックも参考にしてください。使える制度については支援制度まるわかりガイドをご覧ください。


「もの忘れ」は誰にでもあります。でも、もし生活の中に「あれ?」と思う変化があるなら、それは早めに専門家に相談するタイミングかもしれません。

早期に気づくことで、できることはたくさんあります。まずは、このチェックリストをきっかけに、日常を少し丁寧に見てみてください。


免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。

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