この記事のポイント
- 加齢によるもの忘れと認知症のもの忘れには明確な違いがある
- OTは「記憶力テスト」ではなく「生活行為(IADL)の変化」から認知症の兆候を見つける
- 日常生活の15のサインをチェックし、受診すべきタイミングを解説
「最近もの忘れが増えた」― それは加齢? それとも認知症?
「鍵をどこに置いたか忘れる」「人の名前が出てこない」。年齢を重ねれば、こうしたもの忘れは誰にでもあります。
でも、もの忘れの「質」が変わってきたと感じたら、少し注意が必要です。
認知症は早い段階で気づくことで、進行を遅らせたり、生活の工夫で自立した暮らしを長く続けられる可能性があります。
この記事では、ご家庭で確認できる15のチェックポイントと、受診の目安をわかりやすくお伝えします。
加齢によるもの忘れと認知症の違い
「年のせいかな?」と「認知症かも?」の違いは、次のようなポイントで見分けることができます。
- 何を忘れるか — 年のせい:「何を食べたか」を忘れる → 認知症:「食べたこと自体」を忘れる
- 自覚があるか — 年のせい:「あれ、忘れた」と本人が気づく → 認知症:忘れたこと自体に気づかない
- ヒントで思い出せるか — 年のせい:「あ、そうだ!」と思い出せる → 認知症:ヒントがあっても思い出せない
- 生活への影響 — 年のせい:困ることはほとんどない → 認知症:少しずつ日常生活に支障が出る
ただし、もの忘れだけで判断するのは難しいこともあります。次のセクションでお伝えする「日常生活の変化」に注目することが大切です。
OTが注目する「生活行為の変化」とは
認知症の初期には、食事やトイレなどの基本的なことは問題なくできるのに、少し複雑な生活動作に変化が出始めることが多いです。
たとえば、料理の段取り、お金の管理、買い物の計画、薬の管理といった、IADL(手段的日常生活動作)と呼ばれる活動です。
こうした変化に気づくことが、早期発見の大きな手がかりになります。
IADLチェックリスト ― 日常生活の15のサイン
以下は、OTの視点で作成した日常生活の変化チェックリストです。離れて暮らす親が心配な方は、帰省時にさりげなく確認してみてください。
料理・食事の変化
- 1. 以前は得意だった料理の味が変わった(塩辛い、味が薄い)
- 2. 料理のレパートリーが減った(同じメニューが続く)
- 3. 鍋を焦がすことが増えた
- 4. 冷蔵庫に同じものが大量にある(買ったことを忘れて買い直す)
- 5. 賞味期限切れの食品が増えた
お金の管理・買い物の変化
- 6. お釣りの計算ができなくなった(常にお札で支払う)
- 7. 不要なものを大量に買うことが増えた
- 8. 通帳の記帳をしなくなった、請求書の支払いを忘れる
外出・社会参加の変化
- 9. 趣味の集まりや近所づきあいに行かなくなった
- 10. 同じ道で迷うことがある
- 11. 外出の頻度が明らかに減った
身だしなみ・生活リズムの変化
- 12. 以前より服装に気を使わなくなった(季節に合わない服、汚れた服)
- 13. 入浴の頻度が減った
- 14. 薬を飲み忘れる、飲んだかどうかわからない
コミュニケーションの変化
- 15. 会話の中で同じ話を何度も繰り返す(本人に自覚がない)
結果の見方
- 0〜2項目: 加齢に伴う自然な変化の範囲内の可能性が高い。ただし、気になる項目があれば経過を見守る
- 3〜5項目: 軽度認知障害(MCI)の可能性。かかりつけ医への相談をおすすめ
- 6項目以上: 認知症の初期症状の可能性。早めの受診を
注意: このチェックリストは診断ツールではありません。あくまでも受診の目安としてお使いください。
チェックリストに該当したら ― 受診の目安と相談先
まず相談すべき場所
どこに相談すればいいか迷ったら、以下を参考にしてください。
- かかりつけ医 — まず最初に相談しましょう。必要に応じて専門の病院を紹介してもらえます
- もの忘れ外来 — 認知症の専門的な検査ができます。大学病院や総合病院にあります
- 地域包括支援センター — 介護・医療・福祉の総合相談窓口です。無料で相談できます
- 認知症疾患医療センター — 各都道府県にあり、認知症の詳しい検査と対応をしてくれます
受診を勧めるときのコツ
ご本人に「認知症かも」と直接伝えると、強く否定されることがあります。
- 「健康診断のついでに」 — 定期検診の一環として、もの忘れの相談もする
- 「自分も一緒に」 — 「自分も最近もの忘れが気になるから、一緒に相談しよう」
- 「かかりつけ医から」 — 事前にかかりつけ医に相談し、次回の診察時に話題にしてもらう
早期発見が大切な理由
認知症と診断されても「できること」はたくさんある
認知症と診断されても、それは「終わり」ではありません。早く気づくことで、できることがたくさんあります。
- お薬で症状の進行を遅らせることができます
- リハビリの専門家と一緒に、生活の工夫を見つけられます
- メモやアラームなどの道具を活用して、自立した生活を長く続けられます
- 介護保険などの支援制度を早めに準備できます
OTが早期から関わるメリット
作業療法士(OT)は、認知症の初期から次のようなサポートができます。
- 「まだできること」を見つけてくれます。記憶が低下しても体で覚えた動作は残りやすく、料理や趣味など続けられることを一緒に探します
- 暮らしやすい環境づくりのアドバイスをしてくれます。物の置き場所を決める、ラベルを貼るなどの工夫です
- ご家族への接し方のコツや、家庭でできる工夫を具体的に教えてくれます
認知症の家族への接し方は認知症の家族への接し方ガイドで詳しく解説しています。
OTは暮らしの変化の専門家です
「もの忘れが増えた」だけでなく、「料理の味が変わった」「外出しなくなった」「お金の管理が難しくなった」。こうした暮らしの中の小さな変化に気づくことが、早期発見につながります。
気になることがあれば、ぜひ暮らしの変化セルフチェックもお試しください。利用できる支援制度については支援制度まるわかりガイドをご覧ください。
- 帰省時のさりげないチェック: 冷蔵庫の中身、郵便物の溜まり具合、家の中の散らかり方など、いつもと違う点がないか確認してみましょう
- 電話で気づくサイン: 離れて暮らしている場合、電話で同じ話を繰り返す、約束を忘れるなどの変化に注目してみてください
- 変化のメモを残す: 気づいた変化を日付とともにメモしておくと、受診時にお医者さんに伝えやすくなります
「もの忘れ」は誰にでもあります。でも、もし生活の中に「あれ?」と思う変化があるなら、それは早めに専門家に相談するタイミングかもしれません。
早期に気づくことで、できることはたくさんあります。まずは、このチェックリストをきっかけに、日常を少し丁寧に見てみてください。
親のもの忘れが気になったら、まずは日常生活の変化に注目してみましょう。料理、買い物、お金の管理など、「いつもと違う」と感じる変化が複数あれば、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談するタイミングです。早期に気づくことで、ご本人らしい暮らしを長く続けるための選択肢が広がります。
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。