この記事のポイント
- 文系でも作業療法士になれます。法律上の受験資格は「指定の学校・養成施設で3年以上学ぶこと」だけで、文理選択による制限はありません(理学療法士及び作業療法士法 第12条)
- 入試科目は学校ごとに違います。学科試験が現代文と小論文で理科を課さない専門学校の例がある一方、共通テストで理科を使う大学もあります
- 入学後は全員が同じスタートラインです。101単位のうち人体・疾病などの専門基礎分野は30単位で、残りは「人間と生活、社会の理解」を含む基礎分野14単位と作業療法の専門分野57単位です
- 記録を書く、説明する、話を聞く。作業療法士の1日には文系の力が生きる仕事が多く含まれます
法律の答え ── 文理は関係ない
「文系だけど作業療法士になれますか」。答えは「なれます」です。まず、法律を見てみましょう。
作業療法士(OT: Occupational Therapist)の国家試験の受験資格は、理学療法士及び作業療法士法 第12条に「大学に入学することができる者で、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した養成施設において、3年以上作業療法士として必要な知識及び技能を修得したもの」と定められています。ここに「理系であること」は一言も出てきません。高校で何を選択したかは、受験資格に関係ないのです。
毎年の国家試験の施行公告でも、受験資格はこの条文のとおりに書かれています。「文系だから資格が取れない」ということは、制度上ありえません。
作業療法士国家試験の受験資格は、理学療法士及び作業療法士法 第12条第1号に「学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することができる者で、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した作業療法士養成施設において、3年以上作業療法士として必要な知識及び技能を修得したもの」と定められています。高等学校での履修科目(文系・理系)による制限はありません。厚生労働省の国家試験施行公告も同じ要件を掲げています。
入試の答え ── 学校で違う
法律は関係ないとして、実際の入試はどうでしょうか。ここは学校によって違います。
理科を課さない学校
専門学校を中心に、学科試験が現代文と小論文、あとは面接という学校があります。一例として、ある専門学校の2027年度一般選抜は学科試験(現代文+小論文・50分)と面接(15〜20分)です(例示であり、推薦ではありません)
理科を選択できる学校
英語・国語・数学・理科などから選択する方式の大学・専門学校があります。得意科目で受けられます
共通テストで理科を使う大学
国公立大学を中心に、大学入学共通テストで理科(生物基礎など)を課す学校があります。文系選択でも、理科基礎科目なら高2からの準備で対応できることが多いです
どのパターンかは、志望校の入学者選抜要項で分かります。国公立大学は7月末までに要項を公表する扱いなので、高2の夏に志望校の科目を確認するのが最初の一歩です。要項の見方と入試カレンダーは作業療法士の受験勉強はいつから?にまとめています。
なお、総合型選抜や学校推薦型選抜では、教科の試験の代わりに小論文・面接・志望理由書で評価されることが多く、ここは文系の得意分野です。
入試科目は養成校ごとに異なります。理科を課さない学校の一例として、ある専門学校の2027年度一般選抜は学科試験(現代文+小論文・50分)と面接(15〜20分)で構成されています(例示であり、特定校の推薦ではありません)。一方、国公立大学を中心に大学入学共通テストで理科を課す学校もあります。
志望校の入学者選抜要項で「理科の要否」「科目選択の可否」「総合型・学校推薦型の有無」を確認してください。国公立大学の要項は各大学が7月末までに公表する扱いです。
入学後の答え ── 全員が同じスタートライン
「入ってから理系の勉強についていけるか」が、いちばんの心配だと思います。養成校のカリキュラムは法律で決まっているので、中身を見てみましょう。
基礎分野 14単位
科学的思考の基盤、人間と生活、社会の理解。一般教養にあたる部分で、人と社会を学ぶ内容が含まれます
専門基礎分野 30単位
人体の構造と機能及び心身の発達(12)、疾病と障害の成り立ちと回復過程の促進(14)、保健医療福祉とリハビリテーションの理念(4)。解剖学・生理学・運動学はここです。いわゆる理系寄りの部分
専門分野 57単位
基礎作業療法学(5)、作業療法管理学(2)、作業療法評価学(5)、作業療法治療学(19)、地域作業療法学(4)、臨床実習(22)。作業療法そのものを学ぶ部分で、人の生活・心理・社会を扱います
ポイントは2つです。
- 理系寄りの専門基礎分野は101単位のうち30単位。解剖学・生理学は必修で、暗記の量は正直多いです。ただし、これは理系選択の人も文系選択の人も、全員が入学してから同じ教科書で始めます。高校の物理や化学が前提になっている科目ではありません
- 残りの71単位は、人と生活と社会の話です。作業療法は「その人がどう暮らし、何をしたいか」を扱う仕事なので、専門分野の中心は生活・心理・社会です
国家試験の科目を見ても同じことが分かります。出題科目は解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、作業療法の8つで、臨床心理学と人間発達学が入っています。体のしくみと同じくらい、心と発達を問われる試験です。
養成課程の教育内容は、理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則 別表第二で次のとおり定められています。
| 区分 | 教育内容 | 単位 |
|---|---|---|
| 基礎分野 | 科学的思考の基盤、人間と生活、社会の理解 | 14 |
| 専門基礎分野 | 人体の構造と機能及び心身の発達 | 12 |
| 疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進 | 14 | |
| 保健医療福祉とリハビリテーションの理念 | 4 | |
| 専門分野 | 基礎作業療法学 | 5 |
| 作業療法管理学 | 2 | |
| 作業療法評価学 | 5 | |
| 作業療法治療学 | 19 | |
| 地域作業療法学 | 4 | |
| 臨床実習 | 22 | |
| 合計 | 101 |
解剖学・生理学・運動学を含む専門基礎分野は30単位で、高校の理系科目を前提とはしていません。国家試験の出題科目は解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)、作業療法の8科目です(厚生労働省 国家試験施行公告)。
文系の力が生きる場面
作業療法士の1日は「情報を集める・評価する・一緒にやってみる・道具と環境をつくる・伝えてつなぐ・記録を書く」の6つの仕事でできています(作業療法士に向いているのはどんな人?)。このうち、文系の力がそのまま生きるのは次の場面です。
記録を書く
毎日の記録、計画書、報告書。読んだ人が状況を再現できる文章を、短く正確に書く力です。どの職場でも毎日あります
伝えて、つなぐ
本人・家族・医師・看護師・先生に、相手に合わせて説明を変える。面接で話を最後まで聞き、言葉の裏にある希望を拾う力です
精神科の作業療法
法律上、精神の障害を対象に明記しているリハビリ職は作業療法士だけです。人の心理と生活のリズムを読み解く仕事で、心理学や社会の理解が土台になります
子どもの発達支援
遊びや学校生活の中で、その子の行動の理由を読み解きます。国家試験の科目にもある人間発達学と、言葉にならないものを観察する力が要ります
発達支援の現場で作業療法士が1日に何をしているかは作業療法士の1日 ── 発達支援の現場からに、子どもの行動をどう読み解くかは発達障害の子どもに作業療法士ができることに書きました。「体のしくみ」と「人の生活」の両方を扱うのが作業療法士で、後者は文系の人が得意にしてきたことです。
「理科が苦手」は「向いていない」ではありません
入学後の解剖学・生理学は暗記の量が多く、文系・理系を問わず苦労する科目です。苦手意識があるなら、高2のうちに生物基礎で「体のしくみ」に触れておくと、入学後の負担が軽くなります。それ以上の準備は要りません。向いているかどうかは、理科の得意不得意ではなく、1日の仕事の中身で考えてください。
作業療法士の業務には、記録・報告書の作成、本人・家族・多職種への説明、面接による情報収集が日常的に含まれます。精神科領域では法律上、精神の障害を対象とする唯一のリハビリテーション専門職として心理・社会面の理解が求められ、発達支援領域では人間発達学と行動観察が中心になります。文系で培った読む・書く・聞く力は、これらの場面で直接生きます。
入学後の解剖学・生理学は暗記量が多く、文理を問わず負担の大きい科目です。学校見学では、学習サポート体制(補習・個別指導の有無)を確認することをおすすめします。
高2までにやっておくと楽なこと
- 生物基礎で「体のしくみ」に触れる: 細胞・器官・神経の基本用語を知っておくと、解剖学・生理学の最初の壁が低くなります。物理や化学は必須ではありません
- 国語で「書く」を続ける: 小論文と志望理由書は、総合型・学校推薦型の主戦場です。記録を書く仕事の土台にもなります
- 志望校の要項を見る: 理科の要否は学校で違います。高2の夏に確認すれば、必要な科目だけ準備できます
- 作業療法士の仕事を自分の言葉で言えるようにする: 面接でも志望理由書でも必ず問われます。作業療法士と介護職は何が違う?と作業療法士・理学療法士・言語聴覚士の違いが出発点になります
- 生物基礎(体のしくみの基本用語)に高2のうちに触れておくと、入学後の解剖学・生理学の負担が軽くなります。物理・化学は必須ではありません
- 小論文と志望理由書の練習は、総合型・学校推薦型選抜と入学後の記録業務の両方に生きます
- 志望校の要項で理科の要否を確認し、必要な科目に絞って準備します
よくある質問
数学は使いますか
日常の業務で高度な数学を使う場面はほとんどありません。評価の数値を読む、統計の基本を理解する程度です。入試で数学を課すかは学校によります。
生物と物理、どちらを取っておくべきですか
どちらも必須ではありません。あえて言えば生物基礎です。運動学では「てこ」や「力」の考え方が出てきますが、養成校で基礎から学びます。
大学の文系学部を卒業してから作業療法士になれますか
なれます。ただし、大学を卒業していても養成校で3年以上学ぶ必要があります(法第12条)。言語聴覚士には大卒者向けの2年課程がありますが、作業療法士にはありません。
文系から入って、途中で挫折しませんか
挫折するかどうかを文理で予測することはできません。解剖学・生理学は全員が苦労する科目なので、学校の学習サポート(補習や個別指導)を見学のときに確認してください。実習(22単位)で「自分に合うか」を確かめる仕組みも制度にあります。作業療法士に向いているのはどんな人?も参考にしてください。
文系の大学を卒業した後に目指す場合は
養成校で3年以上の課程を修了する必要があります(理学療法士及び作業療法士法 第12条)。大学卒業者向けの短縮課程は作業療法士にはありません。
見学で確認したいことは
入試科目の詳細、入学後の学習サポート体制(補習・個別指導)、留年率や国家試験合格率の複数年の推移です。特定校の優劣ではなく、公表情報で比較してください。
まとめ
- 文系でも作業療法士になれます。受験資格は法律上「養成校で3年以上」だけで、文理は関係ありません
- 入試科目は学校で違います。理科を課さない学校もあれば、共通テストで理科を使う大学もあります。高2の夏に志望校の要項で確認してください
- 入学後は全員が同じスタートライン。101単位のうち理系寄りは30単位で、残りは人と生活と社会の話です。記録・説明・面接・精神科・発達支援と、文系の力が生きる場面は多いです
次は、入試の仕組みとカレンダーを作業療法士の受験勉強はいつから?で確認してください。
- 受験資格は法律上「指定校・養成施設で3年以上」のみで、文理選択の制限はありません(理学療法士及び作業療法士法 第12条)
- 入試科目は学校ごとに異なり、理科を課さない学校の実例があります。志望校の要項で確認してください
- 養成課程101単位のうち専門基礎分野(人体・疾病)は30単位。国家試験8科目には臨床心理学と人間発達学が含まれ、文理を問わず同じ出発点から学びます
- 「文系だから無理」と言わない: 法律にも入試の仕組みにも、その根拠はありません。この記事の条文と表を一緒に見てください
- 要項で理科の要否を確認する: 高2の夏に志望校の入学者選抜要項を本人と読み、必要な科目だけ準備します
- 見学で学習サポートを聞く: 解剖学・生理学は全員が苦労する科目です。補習や個別指導の有無を確認してください
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、合格や進路の保証を構成するものではありません。入試科目・カリキュラムは年度と学校により異なります。必ず志望校の最新の要項をご確認ください。
よくある質問
- 文系でも作業療法士になれますか?
- なれます。理学療法士及び作業療法士法 第12条が定める受験資格は「大学に入学できる者で、指定の学校・養成施設で3年以上学んだ者」で、高校での文系・理系の選択による制限はありません。入試科目は学校ごとに違い、理科を課さない学校もあります。
- 作業療法士の養成校の入試に理科は必要ですか?
- 学校によります。学科試験が現代文と小論文で理科を課さない専門学校の例がある一方、大学入学共通テストで理科を使う大学もあります。志望校の入学者選抜要項で確認してください。
- 文系出身だと入学後についていけませんか?
- 養成課程は全員が同じスタートラインで解剖学・生理学から学ぶ設計です。101単位のうち、人体・疾病などの専門基礎分野は30単位で、残りは基礎分野(人間と生活、社会の理解を含む)14単位と作業療法の専門分野57単位です。国家試験の8科目には臨床心理学や人間発達学も含まれます。
- 文系の力は作業療法士の仕事で役に立ちますか?
- 役に立ちます。作業療法士の1日には記録を書く、本人・家族・他職種に説明する、面接で話を聞く、という仕事が多く含まれます。精神科や子どもの発達支援では、人の心理と生活を読み解く力が前に出ます。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
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