この記事のポイント
- 作業療法の「作業」は工場作業ではなく、日常のあらゆる営みを指す
- 英語の「occupation(オキュペイション)」の訳語で、「その人にとって意味のある活動」がカギ
- 意味のある活動を中心に据えることで、回復への意欲が高まる
「作業」という言葉の誤解
「作業療法」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、工場での単純作業や手作業のようなイメージではないでしょうか。実は、作業療法における「作業」は、日本語の辞書的な意味とはまったく異なります。
作業療法でいう「作業」とは、英語の「occupation(オキュペイション)」の訳語です。occupationには「従事すること」「時間を満たすもの」という広い意味があり、人が日常の中で行うあらゆる営みを指します。
作業療法における「作業」の定義
国際的な定義
世界各国の作業療法士協会は、「作業(occupation)」を以下のように定義しています。
作業療法の世界では、「作業」は大きく3つの種類に分けて考えられています。
- 自分の身の回りのこと: 食事、入浴、着替えなど
- 役割としての活動: 仕事、家事、学校の勉強など
- 楽しみの活動: 趣味、遊び、スポーツなど
この3つがバランスよく行えていることが、健康な生活の土台になります。
大切なポイントは、何が「作業」にあたるかはご本人がどう感じるかで決まるということです。同じ料理でも、楽しんでやる人にとっては「趣味の活動」ですし、義務として感じている人にとっては「役割としての活動」になります。
日本語の「作業」との決定的な違い
日本語で「作業」というと、手仕事や単純労働を連想しがちです。この言葉のイメージが、作業療法の理解を妨げている面は否定できません。
作業療法における「作業」は、以下のすべてを含みます。
つまり、人が生活の中で行うすべての活動が「作業」に含まれるのです。
なぜ「作業」が治療になるのか
作業と健康の関係
人は意味のある作業に従事することで、心身の健康を維持・向上させることができます。逆に、病気やけが、障害、加齢などによって大切な作業が行えなくなると、身体機能の低下だけでなく、意欲の減退や社会的孤立にもつながります。
作業療法では、この「作業と健康の密接な関係」を治療の基盤としています。
「その人にとって意味のある作業」がカギ
作業療法士のリハビリが特徴的なのは、「ご本人にとって大切な活動」を目標にするところです。
たとえば、脳卒中で手が動かしにくくなった方がいるとします。作業療法では、ただ握力を鍛えるのではなく、「自分でコーヒーを淹れたい」「孫に手紙を書きたい」といったご本人の願いを目標にします。
やりたいことに向かって取り組むから、リハビリへのやる気が続き、回復にもつながるのです。
対象者によって「作業」は変わる
作業療法における「作業」は、対象者の年齢、立場、価値観によって大きく異なります。
| 対象者 | 大切な「作業」の例 |
|---|---|
| 子ども | 遊び、学校生活、友達との交流 |
| 働き盛りの方 | 仕事、育児、地域活動 |
| 主婦・主夫 | 家事、買い物、家族の世話 |
| 高齢者 | 日常生活動作、趣味活動、社会参加 |
作業療法士は、ご本人やご家族と話し合いながら「何が大切な活動か」を一緒に見つけ、その実現をサポートしてくれます。
作業についてもっと知る
作業療法における「作業」の概念は、一見シンプルですが、実は非常に奥深いものです。「人は作業をすることで健康になれる」というこの考え方が、作業療法という専門職の根幹を成しています。
- 作業療法の全体像: 「作業療法とは?わかりやすく解説」
- 作業療法士の仕事: 「作業療法士ってどんな仕事?」
- 作業療法の歴史: 「作業療法の歴史」
- 「作業」=工場作業ではなく、食事・趣味・家族との時間など日常のすべて
- ご本人にとって「意味のある活動」がリハビリの原動力になる
- 何が大切な作業かはご本人の気持ちで決まる。家族が決めつけないことが大事
- 「何がしたい?」と聞いてみる: リハビリの目標はご本人の「やりたいこと」から始まります。ふだんの会話の中で、好きなことや楽しみを聞いてみましょう
- 小さな「できた」を一緒に喜ぶ: 自分でお茶を淹れられた、散歩に出かけられたなど、日常の小さな達成を一緒に喜ぶことが回復を後押しします
- 作業療法士に「本人の好きなこと」を伝える: リハビリの担当者に、ご本人が昔から好きだったことや大切にしていた活動を伝えると、より良い目標設定につながります
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。