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OT入門#作業療法#基礎知識

作業療法の「作業」ってなに?

「作業療法」の「作業」は工場の作業ではありません。食事、趣味、家族との時間――日常のすべてが「作業」です。その意味を家族向けにわかりやすく解説します。

📅 2026年3月7日 更新読了目安 11分

この記事のポイント

  • 作業療法の「作業」は工場作業ではなく、日常のあらゆる営みを指す
  • 英語の「occupation(オキュペイション)」の訳語で、「その人にとって意味のある活動」がカギ
  • 意味のある活動を中心に据えることで、回復への意欲が高まる

「作業」という言葉の誤解

「作業療法」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、工場での単純作業や手作業のようなイメージではないでしょうか。実は、作業療法における「作業」は、日本語の辞書的な意味とはまったく異なります。

作業療法でいう「作業」とは、英語の「occupation(オキュペイション)」の訳語です。occupationには「従事すること」「時間を満たすもの」という広い意味があり、人が日常の中で行うあらゆる営みを指します。

作業療法における「作業」の定義

国際的な定義

世界各国の作業療法士協会は、「作業(occupation)」を以下のように定義しています。

作業療法の世界では、「作業」は大きく3つの種類に分けて考えられています。

  • 自分の身の回りのこと: 食事、入浴、着替えなど
  • 役割としての活動: 仕事、家事、学校の勉強など
  • 楽しみの活動: 趣味、遊び、スポーツなど

この3つがバランスよく行えていることが、健康な生活の土台になります。

大切なポイントは、何が「作業」にあたるかはご本人がどう感じるかで決まるということです。同じ料理でも、楽しんでやる人にとっては「趣味の活動」ですし、義務として感じている人にとっては「役割としての活動」になります。

日本語の「作業」との決定的な違い

日本語で「作業」というと、手仕事や単純労働を連想しがちです。この言葉のイメージが、作業療法の理解を妨げている面は否定できません。

作業療法における「作業」は、以下のすべてを含みます。

作業療法における「作業」の例
朝起きて顔を洗う家族と食事をする子どもと遊ぶ仕事に行く趣味の園芸を楽しむ友人とおしゃべりするペットの世話をする季節の行事に参加する

つまり、人が生活の中で行うすべての活動が「作業」に含まれるのです。

なぜ「作業」が治療になるのか

作業と健康の関係

人は意味のある作業に従事することで、心身の健康を維持・向上させることができます。逆に、病気やけが、障害、加齢などによって大切な作業が行えなくなると、身体機能の低下だけでなく、意欲の減退や社会的孤立にもつながります。

作業療法では、この「作業と健康の密接な関係」を治療の基盤としています。

「その人にとって意味のある作業」がカギ

作業療法士のリハビリが特徴的なのは、「ご本人にとって大切な活動」を目標にするところです。

たとえば、脳卒中で手が動かしにくくなった方がいるとします。作業療法では、ただ握力を鍛えるのではなく、「自分でコーヒーを淹れたい」「孫に手紙を書きたい」といったご本人の願いを目標にします。

やりたいことに向かって取り組むから、リハビリへのやる気が続き、回復にもつながるのです。

対象者によって「作業」は変わる

作業療法における「作業」は、対象者の年齢、立場、価値観によって大きく異なります。

対象者大切な「作業」の例
子ども遊び、学校生活、友達との交流
働き盛りの方仕事、育児、地域活動
主婦・主夫家事、買い物、家族の世話
高齢者日常生活動作、趣味活動、社会参加

作業療法士は、ご本人やご家族と話し合いながら「何が大切な活動か」を一緒に見つけ、その実現をサポートしてくれます。

作業についてもっと知る

作業療法における「作業」の概念は、一見シンプルですが、実は非常に奥深いものです。「人は作業をすることで健康になれる」というこの考え方が、作業療法という専門職の根幹を成しています。

ポイント
  • 「作業」=工場作業ではなく、食事・趣味・家族との時間など日常のすべて
  • ご本人にとって「意味のある活動」がリハビリの原動力になる
  • 何が大切な作業かはご本人の気持ちで決まる。家族が決めつけないことが大事
ご家庭でできること
  • 「何がしたい?」と聞いてみる: リハビリの目標はご本人の「やりたいこと」から始まります。ふだんの会話の中で、好きなことや楽しみを聞いてみましょう
  • 小さな「できた」を一緒に喜ぶ: 自分でお茶を淹れられた、散歩に出かけられたなど、日常の小さな達成を一緒に喜ぶことが回復を後押しします
  • 作業療法士に「本人の好きなこと」を伝える: リハビリの担当者に、ご本人が昔から好きだったことや大切にしていた活動を伝えると、より良い目標設定につながります

免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言を構成するものではありません。個別の症状や治療については、必ず医師やかかりつけの作業療法士等の専門家にご相談ください。

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