この記事のポイント
- 作業療法士が働く場所は病院が最多ですが、介護施設・訪問・精神科・子どもの発達支援・学校・行政・企業と広く、2026年4月からは保育園にも道が開きました
- 日本作業療法士協会の会員63,352人のうち、医療関連35,576人(56.2%)・介護関連9,105人(14.4%)・児童福祉法関連施設1,330人・特別支援学校46人です(2025年3月末)
- 資格は1つで、どの場所にも通用します。最初の職場と一生の職場は別で、途中で場所を変える人は珍しくありません
- この記事は「行き先案内」です。各職場の1日を書いた記事に分岐します
「病院だけじゃないんですね」
作業療法士(OT: Occupational Therapist)の話をすると、高校生から「病院以外の職場はあるんですか」「病院だけじゃないんですね」という反応が返ってきます。答えは「病院が最多、でも病院だけではない」です。
作業療法士の免許は1つで、病院でも、介護施設でも、子どもの発達支援の教室でも、同じ免許で働けます。だから「どこで働くか」は、資格を取るときではなく、その後に何度でも選び直せます。この記事では、8つの働く場所を一覧にして、それぞれの職場の1日を書いた記事に案内します。
作業療法の職域を制度の面から整理した記事は作業療法の職域とは?にあります。この記事はそれを「高校生が行き先を眺める」ために組み直したものです。
作業療法士の勤務先は病院が最多ですが、法律上の免許は1つで、医療・介護・児童福祉・教育・行政のいずれの分野でも同じ資格で勤務できます。分野間の移動は制度上可能で、就職後に領域を変える例は珍しくありません。
この記事では、日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料(2025年3月31日現在、会員63,352人)をもとに分野別の人数を示し、お子さんが発達支援を志望する場合に知っておきたい施設数・配置基準・2026年の保育所特例を整理します。
働く場所マップ ── 8つの職場
働く場所を8つに分けました。それぞれ「何をするか」「誰と組むか」が違います。
1. 急性期病院
病気やけがの直後の人に、ベッドのそばで早期の練習を行う。医師・看護師・理学療法士・言語聴覚士と毎朝情報を交わす。1回20〜40分の短い関わり
2. 回復期リハビリ病棟
家に帰るための集中的な練習を数か月かけて行う。着替え・料理・外出など生活の動作が中心。退院前に自宅を見に行くこともある
3. 精神科病院・デイケア
統合失調症やうつ病などの人と、手工芸・調理・スポーツなどの活動を通して生活のリズムと社会とのつながりを整える。法律上、精神の障害を対象に明記しているのは作業療法士だけ
4. 介護施設(老健・特養など)
高齢者の暮らしを、介護職と一緒に組み立てる。食事・入浴・趣味の継続、家に帰るための準備。介助の中に評価と練習を組み込む
5. 訪問(訪問リハビリ・訪問看護)
利用者の自宅に行き、その家の台所や浴室で練習する。1人で判断する場面が多く、家族とケアマネジャーとの連携が要
6. 子どもの発達支援(児童発達支援・放課後等デイサービス・療育センター)
遊びを通して、手の使い方・感覚の受け取り方・友達との関わりを支える。保護者に家でできることを伝え、園や学校とも連携する
7. 学校・保育園
特別支援学校で先生と一緒に授業や道具を工夫する。2026年4月からは保育所などで作業療法士等を保育士1人分とみなす特例も始まった
8. 行政・企業・その他
保健センターの介護予防教室、就労支援事業所、企業の復職支援、自費リハビリ、養成校の教員など。作業療法士の免許を土台に、働き方を自分で組み立てる領域
このうち1〜6については、それぞれの職場で働く作業療法士の1日を書いた記事があります。どれも現役の作業療法士向けに書いた記事ですが、仕事の雰囲気はそのまま伝わります。
7の学校については学校に作業療法士がいたら何が変わるか、8のうち自費リハビリなどの独立については作業療法士の独立開業があります。
勤務先は大きく8つに分けられます。
| 職場 | 主な業務 | 連携する相手 |
|---|---|---|
| 急性期病院 | 発症直後からの早期介入、ベッドサイドでの生活動作練習 | 医師・看護師・理学療法士・言語聴覚士 |
| 回復期リハビリテーション病棟 | 在宅復帰に向けた集中的な生活動作訓練、退院前の家屋評価 | 多職種、家族、ケアマネジャー |
| 精神科病院・デイケア | 作業活動を通じた生活リズムの調整、社会参加の支援 | 医師・看護師・精神保健福祉士 |
| 介護施設(介護老人保健施設・特別養護老人ホーム等) | 生活機能の評価、介護職と協働した生活の組み立て | 介護職・看護師・家族 |
| 訪問リハビリテーション・訪問看護 | 自宅での生活動作練習、住環境の調整 | 家族・ケアマネジャー |
| 児童発達支援・放課後等デイサービス・療育センター | 遊びを通じた発達支援、保護者への助言、園・学校との連携 | 保育士・児童指導員・教員 |
| 特別支援学校・保育所 | 授業や教材の工夫、2026年4月からの保育所特例 | 教員・保育士 |
| 行政・企業・その他 | 介護予防事業、就労支援、復職支援、自費リハビリ、養成校教員 | 自治体・企業・教育機関 |
各職場の実際の1日は、急性期病院で働くOTのリアル・小児領域で働くOTのリアルなど、職場ごとの記事(現役の作業療法士向け)で確認できます。
数字で見る「どこにいるか」
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料(2025年3月31日現在、会員63,352人)で、分野別の人数を見てみます。
医療関連(会員の56.2%)
介護関連(会員の14.4%)
児童福祉法関連施設
特別支援学校
病院で働く会員は34,016人で、勤務先が分かっている会員の69.0%です。つまり3人に2人は病院にいます。介護関連の9,105人の内訳は、介護老人保健施設や介護療養型医療施設、訪問看護、通所介護などです。
子どもの発達支援に関わる人は少数派です。児童福祉法関連施設で働く会員は1,330人(児童発達支援525人・放課後等デイサービス422人・児童発達支援センター112人など)で、対象とする疾患で見ても、発達障害を主な対象にしている会員は1,491人(2.7%)です。会員が最も多く関わっているのは脳血管疾患(24,537人、45.2%)です(いずれも同統計、2025年3月末)。
少ないということは、情報も少ないということです。発達支援の現場で働く作業療法士の1日を知りたければ、小児領域で働くOTのリアルと発達障害の子どもに作業療法士ができることから読んでみてください。
日本作業療法士協会の2024年度会員統計資料(表10-1 領域別会員数、2025年3月31日現在)による分野別の会員数は次のとおりです。有資格者118,465人のうち協会会員は63,352人で、会員ベースの数値である点にご留意ください。
| 分野 | 会員数 | 割合(会員63,352人に対して) |
|---|---|---|
| 医療関連(うち病院34,016人) | 35,576人 | 56.2% |
| 介護関連 | 9,105人 | 14.4% |
| 児童福祉法関連施設(児童発達支援525・放課後等デイサービス422・児童発達支援センター112ほか) | 1,330人 | 約2% |
| 特別支援学校 | 46人 | 0.1% |
| 発達障害者支援センター | 30人 | 0.0% |
対象疾患別では、発達障害を主対象とする会員は1,491人(実働会員の2.7%)、脳血管疾患が24,537人(45.2%)で最多です(同統計、2025年3月31日現在)。お子さんが発達支援を志望する場合、現時点では少数の領域であり、就職先の情報も限られることを前提に進路相談を進めることをおすすめします。
精神科ってどんな仕事?
インタビューでいちばん多かった質問の一つが「精神科ってどんな仕事をするんですか」でした。
精神科の作業療法士は、統合失調症やうつ病、依存症などの人と、手工芸・調理・スポーツ・音楽などの活動を一緒に行います。目的は「上手に作ること」ではなく、活動を通して生活のリズムを取り戻し、人とのつながりを再びつくることです。法律上、精神の障害を対象に明記しているリハビリの国家資格は作業療法士だけで(理学療法士及び作業療法士法 第2条)、精神科病院で働く会員は4,799人います(日本作業療法士協会 2024年度会員統計資料、2025年3月末)。
精神科デイケアの1日は精神科で働くOTのリアルにあります。理学療法士・言語聴覚士との守備範囲の違いは作業療法士・理学療法士・言語聴覚士の違いで整理しています。
精神科領域では、作業療法士が手工芸・調理・運動などの作業活動を用いて、生活リズムの回復と社会参加を支援します。理学療法士及び作業療法士法 第2条が「身体又は精神に障害のある者」を対象に定めており、リハビリテーション専門職のうち精神の障害を法律上の対象に明記しているのは作業療法士のみです。精神科病院に勤務する会員は4,799人です(同統計)。
子どもの発達支援の現場は、広がっている。ただし
発達支援の現場そのものは増えています。厚生労働省の社会福祉施設等調査によると、2024年10月1日現在で児童発達支援は14,855か所(前年比+10.8%)、放課後等デイサービスは22,643か所(同+7.2%)です。
ただし、これらの施設に作業療法士の配置義務はありません。法令上の必置職種は児童指導員または保育士と児童発達支援管理責任者で、作業療法士などの機能訓練担当職員は「機能訓練を行う場合」に置く任意配置です(児童福祉法に基づく指定通所支援の基準省令)。施設が増えたぶんだけ求人が増えるわけではない、という構造です。一方で、2024年度の報酬改定では専門職の配置を評価する加算が設けられ、作業療法士を雇う施設への後押しはあります。
「広がっている」までが事実です
発達支援の現場は拡大していますが、作業療法士の配置義務はなく、求人の数は施設数ほど多くありません。「発達領域なら必ず就職できる」とは言えません。「広がっている」「専門職を評価する仕組みがある」までが、今言える事実です。
新しい動きもあります。2026年4月1日から、保育所・認定こども園などで作業療法士等を保育士1人分とみなす特例が始まりました(こども家庭庁・文部科学省の通知)。子育て支援の経験などの条件付きで、施設ごとに1人までです。統計上、保育所で働く会員はまだ1人ですが、制度としての入口は開きました。学校で働く作業療法士については学校に作業療法士がいたら何が変わるかで解説しています。
発達支援の施設数は増加しています(2024年10月1日現在、児童発達支援14,855か所・前年比+10.8%、放課後等デイサービス22,643か所・同+7.2%。厚生労働省 社会福祉施設等調査)。一方、これらの事業所における作業療法士の配置は義務ではなく、機能訓練を行う場合の任意配置です(児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第5条ほか)。2024年度報酬改定で専門職配置を評価する加算が設けられましたが、施設数の伸びがそのまま求人の伸びにはならない点を、進路相談の前提として共有してください。
2026年4月1日施行の特例により、保育所・小規模保育・認定こども園・事業所内保育で、作業療法士等を保育士1人分とみなすことが可能になりました(子育て支援経験等の要件あり、施設ごとに1人まで。こども家庭庁・文部科学省 令和8年4月8日通知)。制度は始まったばかりで、実際の配置状況はこれから明らかになります。
場所を選ぶ前に知っておくこと
- 最初の職場と一生の職場は別です。免許は1つなので、病院で数年働いてから発達支援や訪問に移る人もいれば、その逆もいます。領域を変えるときの考え方は作業療法士の転職ガイドにあります(現役向けの記事です)
- 場所によって「向いている」の中身が変わります。急性期なら短時間で判断する力、発達支援なら遊びを分析する力が前に出ます。詳しくは作業療法士に向いているのはどんな人?へ
- 見学では「この施設に作業療法士は何人いますか」と聞いてください。1人職場か、チームがいるかで、働き方も学び方も大きく変わります
- 免許は分野共通で、就職後の領域変更は制度上可能です。最初の勤務先で一生が決まるわけではありません
- 領域ごとに求められる力の重心が異なります。本人の関心と照らす方法は作業療法士に向いているのはどんな人?に整理しています
- 施設見学では、作業療法士の在籍人数と、新人教育の体制を確認することをおすすめします
よくある質問
新卒で子どもの発達支援の現場に就職できますか
できる場合もありますが、求人は施設数ほど多くありません。配置義務がないためです。多くの人は病院で数年働いてから移っています。まず小児領域で働くOTのリアルで、現場の1日と求められる力を見てみてください。
学校で働くことはできますか
特別支援学校で働く協会会員は全国で46人です(2025年3月末)。少数ですが、実在します。学校に作業療法士がいると何が変わるかは学校に作業療法士がいたら何が変わるかにまとめています。
病院と病院以外で、仕事の中身はどう違いますか
「情報を集める・評価する・一緒にやってみる・道具と環境をつくる・伝えてつなぐ・記録を書く」という6つの仕事は共通です。違うのは配分と相手です。病院では医師・看護師と、介護施設では介護職と、発達支援では保育士や先生と組みます。介護職との役割の違いは作業療法士と介護職は何が違う?にあります。
途中で働く場所を変えられますか
変えられます。免許は1つで、どの分野でも通用します。領域を変えるときは、それまでの経験がそのまま土台になります。
発達支援を志望する場合、進学先はどう選べばよいですか
養成課程の科目構成は法令で共通に定められており、「発達に強い学校」を制度上区別する仕組みはありません。実習先に児童福祉施設が含まれるか、発達領域の教員が在籍するかを、各校の公表情報とオープンキャンパスで確認してください。特定校の推薦はしません。
就職先の情報はどこで確認できますか
日本作業療法士協会の会員統計資料(毎年公表)で分野別の人数の推移を確認できます。施設数は厚生労働省の社会福祉施設等調査で毎年更新されます。
まとめ
- 作業療法士の勤務先は医療関連が会員の56.2%(病院34,016人)、介護関連14.4%、児童福祉法関連施設1,330人、特別支援学校46人です(日本作業療法士協会 2024年度会員統計資料、2025年3月末)
- 発達支援の施設数は増加していますが(児童発達支援14,855か所・放課後等デイサービス22,643か所、2024年10月)、作業療法士の配置は任意で、求人は施設数ほど多くありません
- 2026年4月から保育所等で作業療法士等を保育士1人分とみなす特例が始まりました。免許は分野共通で、就職後の領域変更は制度上可能です
- 「どの職場の話に反応するか」を見る: 8つの職場の記事を本人と一緒に眺めると、関心の方向が具体的になります
- 発達支援志望なら数字を共有する: 少数の領域で、配置義務がないこと。夢を止めるためではなく、病院で経験を積んでから移る道も含めて選択肢を広げるためです
- 見学では在籍人数を聞く: 施設見学や職場体験で「作業療法士は何人いますか」と本人が聞けるよう、事前に話しておくと現場の解像度が上がります
免責事項: 当サイトの情報は一般的な知識提供を目的としたものであり、医療上の助言や就職・進路の保証を構成するものではありません。統計・制度は更新されることがあります。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
- 作業療法士は病院以外でも働けますか?
- 働けます。日本作業療法士協会の2024年度会員統計では、医療関連が会員の56.2%、介護関連が14.4%で、ほかに児童福祉法関連施設(児童発達支援・放課後等デイサービスなど)1,330人、特別支援学校46人、行政、養成校の教員などがいます。資格は1つで、場所は後から変えられます。
- 作業療法士は保育園で働けますか?
- 2026年4月1日から、保育所・認定こども園などで作業療法士等を保育士1人分とみなす特例が始まりました(こども家庭庁・文部科学省、令和8年4月8日通知)。条件付きで施設ごとに1人までです。始まったばかりの制度で、実際の配置はこれからです。
- 作業療法士は学校で働けますか?
- 特別支援学校に勤務する協会会員は全国で46人です(2025年3月末)。人数は少ないものの、学校で働く作業療法士は実在します。学校に作業療法士がいると何が変わるかを解説した記事もあります。
- 新卒で子どもの発達支援の現場に就職できますか?
- できる場合もありますが、求人は施設数ほど多くありません。児童発達支援・放課後等デイサービスには作業療法士の配置義務がなく、機能訓練を行う場合の任意配置だからです。施設数は伸びており、専門職の配置を評価する報酬加算もありますが、「広がっている」までが事実です。
この記事の執筆者
ひろえもん作業療法士
作業療法士の国家資格を持ち、2012年から作業療法の普及・啓発を目的に当サイトを運営。 臨床経験に基づき、確認できる情報源にあたった上で執筆しています。
運営者プロフィールを見る →